今回の旅は、来年春に廃止が見込まれる駅を訪ねることを主な目的としています。
まだ人影もほとんど見られない未明の5時過ぎの列車から行動を開始すべく南稚内の駅へとやって来ました。駅員配置の主要駅ですが、この時間帯は無人となり、ひっそりとしています。かつての天北線の分岐駅として賑わった面影は、もう感じられませんね。
稚内方面より旭川行の一番列車が入線。なお、跨線橋を渡った向かい側のホームから発着する列車はこれ1本のみです。
乗客は僅かに3人と、悲しいくらいの乗車率。それもそのうちの2人は明らかに旅行者と思われる若者なので、普段はほとんど誰も乗っていないというのが現状でしょうか。今日が土曜日であることを差し引いても、この後の鈍行は5時間以上もないことを思えば、やっぱりこれはただ事ではないように思えてしまいます。
昨日も見た抜海付近で一瞬現れる日本海の眺望を再び堪能。
貴重となった昔ながらの木造駅舎を今も残すことから人気の高い抜海。でも今のダイヤでは訪れるのも容易ではありません。
3年前に相方と訪れた思い出の兜沼も、今のダイヤでは訪れるのがかなり厳しくなっています。
途中、シカと衝突するというハプニングがあり、15分程遅れたものの、無事運転は再開され、下沼に到着。まずはここで降ります。
北海道によくある「貨車駅」で、だいぶガタがきているようです。今度のダイや改定で廃止が検討され、今後の動向が気になります。
外壁はだいぶ傷みが目立ちますが、中はきれいに整備され、居心地はいい方です。備え付けの駅ノートによると、廃止検討が発表されて以来、来訪者が一気に増えたようですね。
道路は駅前で行き止まりになっていて、駅から真っ直ぐ続く北海道にはよくある構造です。周辺に人家はほとんど見当たりません。
駅のそばの道路脇には美味しい湧き水が。こういう隠れたスポットを見つけると、ちょっと嬉しくなりますね。
50分程待って反対方向へ行く列車に乗り下沼を後にします。先ほどの列車が少し遅れたことで、単線でのすれ違いの関係からこの列車も少し遅れていましたが、全体的な行程にさほど影響はありません。
今度も列車はがら空きで、数名程度の乗客しか乗っていません。旅を楽しむ分にはこの方が嬉しいのですが。
次の豊富で、反対方向へ行く特急を捕まえるため早くも乗り捨てます。なお、ここからの乗車は結構あったので、ちょっと安心しました。
豊富は、特急も停まる立派な駅ですが、今はここも無人駅です。
豊富からは「スーパー宗谷」で来た道を引き返します。さすがに特急はそれなりに乗っていますね。
再び天塩川の流れに沿って。
再度反対方向へ向かう鈍行を捕まえるため、天塩中川で降ります。このように少ない列車を活用するためにはそれなりの工夫が必要です。
一見すると古そうな駅舎ですが、これは完全に建て替えられたもの。でもこうして昔の面影を残してくれたのは嬉しく思います。
中もレトロチックな造りで落ち着いた感じです。そしてここも今や無人駅。
そして一時間と少し待った後、再び反対方向へ戻る鈍行に乗り込みます。
今度はそこそこ乗っていますが、それでも10人と居ません。
またまた同じ景色を眺めることになりますが、意外と飽きないものです。
20分余り揺られ、南幌延で下車。取って付けたようなシンプルな『板切れ』駅で、今度のダイヤ改定で廃止が検討されています。
そばには掘っ建て小屋のような粗末な待合室があり、なかなかいい味出しています。実際に中で待つ人はほとんどいないかもしれませんが、雨の日などには重宝しそうですね。
次の列車まで時間があるので、隣の安牛まで歩いてみることにしました。周囲は牧場が続き、いかにも北海道といった道が続きます。
2キロにも満たない距離なので、20分も歩けば安牛の駅が見えてきました。
ここも下沼同様「貨車駅」で、だいぶ傷みが目立ちます。そして下沼同様、周囲に人家はほとんど見当たりません。でもここはひとまず廃止の候補には挙がらなかったみたいです。
そしてここも下沼同様、駅から始まる道路が印象的です。
待っている間に「スーパー宗谷」が猛スピードで通過。ホームに人が立っているのを見て、びっくりしたかもしれませんね。
ようやく列車が来る時間になり、安牛を後にします。次の列車は6時間以上後になるので乗り遅れたら大変です。
相変わらず列車は悲しいくらい空いています。次の列車はもう夕方までないというのに。
今度は2時間近く揺られ、南美深で下車。簡素なホームが一本あるだけの『板切れ』駅です。ここも今度のダイヤ改定で廃止が検討されています。
そしてここもホームの裏手に掘っ建て小屋のような待合室が。かなりいい味出しています。
さらに折り返し、南美深を離れます。
音威子府ではナント1時間半もの間停車します。駅前にタクシーが停まっていれば、隣の筬島まで先行してもよかったのですが、待機なし。
停車時間を利用して、しばし周辺をブラブラしてみます。駅舎内には天北線の資料室が設けられていて、当時の様子を窺うことができます。あの頃はこの駅もとても活気があり、多くの駅員と乗客で絶えず賑わっていたのを思い出します。それを思うとここも随分と寂しくなりましたね。
そのまま進むうちやがて陽もとっぷりと暮れ、今日の行動はもうやめようか迷ったものの、やっぱりもう一つ、途中の歌内で降りることにしました。ここも今度のダイや改定で廃止の候補に挙げられた駅です。
「貨車駅」となって久しく、その駅舎もかなりガタがきているようです。駅前に僅かに存在する家屋は、人が住んでいるかどうか定かではなく、随分と寂しい所です。こんな駅でもかつては立派な駅舎があり、多くの駅員と乗客で賑わったのもそんな昔のことではなく、これも時代の流れでしょうか。
それにしても、人の気配を全く感じない秘境駅と化した夜の歌内はどことなく無気味で降りてしまったことをやや後悔。次の列車が来るまで一時間半近く、ひたすら待つしかありません。
今年3月のダイヤ改定から、一日に上下僅かに3本ずつしか列車が来なくなりました。これではもはや利用したくてもできないというのが現状ではないでしょうか。全駅乗降を目指す人も、このダイヤではため息が出てしまうでしょう。
これでもし列車が来なかったりしたら、それこそ恐怖のどん底に陥ることは確実。それだけに闇夜を照らす列車のヘッドライトが近づいて来た時は思わず安堵。夏ならまだ明るい時間帯ですが、これが本日この駅に停まる最終列車です。
前の列車から6時間以上も間が開き、しかも最終列車だというのに乗客は見事なまでにゼロ。悲しいけれど、もはやこれでは駅や列車がどんどん削減されていくのも仕方がないことなのかもしれません。
そのまま名寄まで乗り通し、今夜は名寄に宿を取りました。できれば天塩中川か音威子府に泊まって早朝の列車に乗りたかったのですが、満室で諦めざるを得ず。
それにしても、今日は土曜日だったとはいえ、宗谷本線の極端なまでの利用者の少なさには驚くばかり。そして今日乗り降りした駅は、特急停車駅を除き、いずれも他に乗降客を見ることもなく、全てにおいて自分一人だけ。もはや駅としての役割は終わったと言っても過言ではないような、何とも複雑な気持ちに捕らわれた一日となりました。
南稚内 5:18 → 6:22頃 下沼 7:15頃 → 7:24頃 豊富 7:39(特急「スーパー宗谷2号」) → 8:26 天塩中川 9:38 → 10:11 南幌延 ⇒ 安牛 12:16 → 14:03 南美深 14:59 → 17:48 歌内 19:13 → 21:34 名寄
ビジネスホテルサンフラワー
税込 5340円(朝食付)