世界がわかる現代マネー6つの視点
先日「世界がわかる現代マネーの6つの視点」
という本を読みました。
この本は、2006年12月に発売になった本なのですが、
現在起こっている問題について
かなりの部分が網羅されていて
今回の金融危機が、
「起こるべくして起こった」という事が
よく分かります。
結局今回の金融問題は、
世界中が米国一国の「消費」に依存し、
その必要な資金を貿易黒字国がファイナンスする
という構図が一体どこまでいけるか?
という事で、とうとうその限界が来たということでしょう。
レーガン時代に双子の赤字
(財政赤字、貿易赤字)に苦しんだ米国ですが、
クリントン政権でまさかの財政黒字化に成功。
しかし、ブッシュ政権の大盤振る舞いで
再び財政赤字が膨らんだ。
あれほど苦しんだ財政赤字が解消できたんだから
また景気が良くなれば大丈夫!といっているうちに
どんどん財政赤字が膨らむ一方になってしまった。
サブプライムというのは、
いわゆる米国の錬金システムだったわけで、
いままで住宅を買えなかったような世帯にも
住宅を販売する事で、新たな住宅需要を生み出し
結果住宅価格の値上がりを演出。
さらに値上がった住宅価格を利用して
消費に回し(ホームエクイティ)景気を拡大していった。
これって基本的に日本の不動産バブルと一緒ですよね。
で、現在はというとこのシステムが機能しなくなった
ばかりではなく、逆回転を始めたんですから
米国の金融市場の混乱は当然でしょう。
住宅市場の値下がり
↓
ローンの焦げ付き
↓
住宅の差し押さえ
↓
住宅在庫の増加
↓
住宅の値下がり
住宅が値下がった事で、
ホームエクイティーが使えなくなり、
消費が停滞。
景気が悪くなり、
住宅の買い手は益々減る。
その上、銀行は貸し倒れの急増で、
貸し出しの圧縮。
買いたい人が少なくなった上、
買いたくてもローンが組めない人が増える
悪循環。
これでは、しばらくよくなりっこない。
結局今回の問題が解決するには、
住宅価格が値上がるしかない。
住宅価格が上がるには、
まず現在積みあがった在庫がはけることでしょう。
しかし、在庫をはくためには、
新たな買い手が必要。
新たな買い手を作り出すには、
景気の回復と信用市場の秩序の回復が
不可欠でしょう。
銀行が不良債権の増大で倒産の懸念があるうちは、
そうそう貸し出しが増えるとは思えない。
日本の失われた10数年ではないが、
それ相応の年月がかかることは
当然といえます。
本書は、それらの構造について
かなり詳しく書いてあるので、
現在のマネー経済を理解する上で
助けになります。
お勧めです。
万有引力の法則
今週は「小室哲哉氏」の話題で、
もちきりでしたね。
お金持ちが、損したりすると
「ざまあみろ!」的な庶民の関心が
集中するようで
ちょっと見苦しい感じがします。
サッチャー女史の
「金持ちを貧乏にしても、
貧乏人はお金持ちになれません」
をつい思い出してしまいました。
しかし、今回の小室氏の話を聞いても
別にそれ程驚くことは無いと思います。
どんなにお金を持っていても
それを失う事はよくある事だからです。
「出る杭は打たれる」ではありませんが、
お金を持つということは、
経済においては
空気抵抗が増すような
効果があるからです。
この間の2億円の宝くじを当てたばっかりに
殺されたOLではありませんが、
お金には邪悪なものを惹きつける力も
あります。
小室氏のようにお金を持っていることが、
世間に広く知られているような人は、
やはり大掛かりな詐欺のようなものに
引っかかる可能性が高くなりますし、
その詐欺師のレベルも
狙う金額に応じて高くなるでしょうし、
手口も巧妙になると思います。
常々思うことですが、
世界には「万有引力の法則」が働いていて、
大きな成功には、それに匹敵するような
大きな失敗を引き寄せる力が
働くような気がします。
「マイクロソフト」もあまりにビジネスが強固だという事で、
独禁法違反で、米国やヨーロッパで重い制裁金をかけられたり
事業に一定の歯止めがかけられました。
「ウィンドウズ」に対抗して作られた「リナックス」なんかは、
世界中の技術者がボランティアでもいいから
マイクロソフトをやっつけたいと作られたんですから、
あれなんかは、正に「出る杭」は打たれるというか、
「万有引力の法則」が働いているような気がします。
かつて繁栄を誇った’80年代の日本もそうでした。
あちこちで貿易摩擦を起こし、
「日本人は働きすぎだ」と欧米諸国から
労働時間の削減を求められたりして、
腑抜けにされてしまいました。
1週間に何時間働こうが、
日本人の勝手だと思うのに
国際協調の名の下に
日本人はもっと遊ぶようにって話です。
クラスで一番成績のいい子に、
「テストの平均点があがるから、
お前は1日の勉強時間を減らせ」
とクラスの子供たちが言ったら、
「何を言ってるお前らこそもっと勉強しろ!」
と言われると思うのですが、
世界の常識はそうではなかったのです。
ともかく私の実感としては、
あらゆるものは常に地面へと引っ張られていて、
高いところにいるもの程
より強い力で下に引っ張られている気がします。
ですから、
人より高いところに登ろうとか、
登ってしまった人は、
常に足元には注意が必要ですね。
祗園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、
唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。
日経平均の行方
とりあえず、10月28日の7000円割れで、
底を打ったぽい日経平均。
しかし、今後はどうなったものやら・・・。
確かに今のところヘッジファンドの換金売りと
思われる切羽詰った売りは引っ込んだようだし、
「年金資金?」と思しき買いも入って一安心。
ただこれから先の世界経済の見通しは相当暗い。
それを織り込んでこれだけ下がったとも言えるし、
今後に起こると思われる自給悪化を考えると
これから一本調子に戻るとも思えない。
そこで、現在の日経平均を
バブル崩壊時の日経平均と
比較してみました。
好調な実態経済の元、
資産デフレによって金融危機が起こり
やがてそれが実体経済に波及していく現在の状況は、
日本の「バブル崩壊」の過程と酷似してますので、
参考になるのでは?と考えた次第。
下の図は、
89年12月の日経平均最高値を100としたものと
07年7月の日経平均最高値を100としたものとの比較です。
ピンクが89年、青が07年のもの。
これを見ると89年12月から90年10月の値下がりは、
本当の大暴落で今回の下げが穏やかに見えてしまいます。
しかし、今回の下げでも08年8月からの部分は、
89年12月からの下げに匹敵しているように
見えます。
下の図は、
90年10月安値と08年10月安値を比較したもの。
89年12月高値から90年10月安値までの下落率は-44%
08年8月から08年10月安値までの下落率は、-46%
結構いい線です。
ここだけ切り取って比較するのもどうか?とは思いますが、
その後の戻りについては今回の方がだいぶ鋭角です。
それでは、その後何度か訪れた下落局面とも
比較してみたいと思います。
下の図は、92年8月安値との比較です。
(ピンクが92年のチャート)
下落率反発率ともに結構似ています。
92年8月のケースでは、
その後は揉み合い相場になり、
この高値をやっと抜けるのに
93年3月までかかっています。
しかも92年8月に時の宮沢内閣が、
10.7兆円の経済対策をしても効かず。
93年4月に追加で13.2兆円の景気対策をして
やっと反発した状況。
現在も麻生内閣で、景気対策が行われる予定で、
これで効果があるかどうか?
これくらいに。