(臨時営業)「まさか」という既視感、あるいはザ・ビートルズのハリウッド・ボウル公演
2016年11月10日(木) このところ韓国では、朴槿恵大統領が数十年来の知人(民間人)に国政や閣僚人事に関するアドヴァイスを受けていた「私人の国政介入および機密情報漏洩」問題と、配下の首席秘書官がサムソンなどの大企業に圧力をかけてこの知人の関与する財団に巨額の資金を投資させていた「職権濫用問題」とで、まさに上を下への大騒ぎとなっている。 大統領はスキャンダル発覚後の会見で自らの非を認めて国民に謝罪し、(韓国では法律上現職大統領が検察によって訴追されることはなく、これまでは捜査対象になったことすらないにもかかわらず)検察による捜査も受け容れると表明してみせたものの、野党のみならず与党セヌリ党内部でも大統領の辞任(韓国では「下野」と言うのが一般的なようである)や離党を求める声があがっている。また全国各地で一般市民による辞任を求める大規模なデモが繰り返し行われており、朴大統領は2013年2月の就任以来、最大の危機を迎えている。 などと、韓国の政治状況についてつらつら書き連ねるつもりでいたのだが、それも昨日のアメリカ大統領選の「まさか」の結果の前ではすっかり霞んでしまい、正直どうでも良くなってしまった。言ってしまえば韓国の政治状況がどれほど混乱しているにせよ、所詮私にとっては「よその国」のお話でしかなく、また日米関係に比べれば韓国政界の混乱が日本に及ぼす影響も小さく、個人的になんらかの実害を受けるようなことでもないかぎり、特に口出しをしたり批判したりするつもりは私にはない。 それよりも昨日は、まるで以前見た悪夢を繰り返し見せられているような不快な既視感を覚えながら「トランプ大統領」誕生の瞬間を目にすることになり、「まさか英国に次いでアメリカも・・・」とひとり呟きながら、徐々にトランプ候補が獲得する選挙人の人数が増えていく様子を呆然と見守り続けるしかなかった。 まさになにもかもが数ヶ月前の英国のEU離脱に関する国民投票の時とまるで同じで、事前の調査ではクリントン候補の優勢が伝えられ、株式市場や為替市場もそれを好感する反応を示していたが、いざ開票が始まってトランプ優勢の流れが伝えられると状況は一気に反転していき、「まさか」が多くの人の予想を裏切って現実となっていく様を目の当たりにすることになったのである。 このところトランプ氏の発言は以前ほど過激なものではなくなって来たようであるし、勝利宣言の際には敗者となったヒラリー・クリントン氏を気遣う余裕まで見せ、実際に大統領に就任すればそれなりに「理性的」な素振りを見せることになるのかも知れないが、アメリカ史上初の政治家や軍人の経験のない大統領がどのような政治を行っていくかどうかはまったくの未知数であることは間違いない。少なくともこれまでの「政治的パフォーマンス」のなかで行ってきた人種差別的な発言や、「偉大なるアメリカ」を再び取り戻すための自国中心主義的な主張を見るかぎり、旧弊の打破や変革といった肯定的な側面を過度に期待してはならないだろう。 特に日本や韓国の駐留米軍を巡っては、その費用分担などに関してかねてより挑発的な発言を繰り返しており、今後の米国の対アジア戦略次第では、韓国の大統領を巡るスキャンダルなどよりも遙かに重要でリスクも大きいパラダイムの大転換をもたらす元兇となりかねない。そうでなくとも度々挑発行為を繰り返しながら核武装を着々と進めつつある北朝鮮と、領有権を巡って周辺諸国を脅かし続けている大国・中国に隣接する日本や韓国は、「トランプ大統領」の決断如何では安保上大きな転換点を迎えて苦境に立たされることになるかも知れない。 話は変わるが、前々回、タイのプミポン国王の逝去について記したのだが、その後、タイ国内で王室批判の動きが出ているという報道に接し、やはり何事も「綺麗事」だけでは済まないのだということを改めて痛感した次第である。報道によれば、タイでは王室に対する批判や侮辱は不敬罪となるようで、こうした一部の動きに対してタイ国家警察の長官が「タイに住みたくないなら、私が航空券を買ってやってもいいから、外国に出ていくべきだ」といった発言をして物議を醸しているそうである。既に数十人が不敬罪の容疑で捜査対象となっており、今後もタイ警察では徹底して取り締まっていく方針だそうで、かつてやはり「不敬罪」を有していた(そしてその法律が濫用されもした)国の一構成員としては、今回の報道に接して複雑な気持ちにならざるをえないでいる。 しかしこのような真面目(?)な話題はこれくらいにして、以前このブログで採り上げた(https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502041697.html)ザ・ビートルズの最新アルバム「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」を入手して聞いてみたので、簡単に触れておきたい。 上のブログにも書いたのだが、もともと私はザ・ビートルズのライヴ演奏にほとんど興味を抱いたことがなく、正直なところ今回のアルバムにしてもスタジオ録音盤と比較してしまうと見劣りする内容だと思わざるをえないでいる。最新技術を駆使して大いに改善されたという音質にしても、そもそも元のアルバム(私の持っていたのはカセットテープであるが)の記憶もほとんど薄れてしまっているため、今回のリマスタリング作業でどれだけ改良されたのかも正直よく分からない。 それでも今回のアルバムは昔のライヴ録音一般から感じられた「聴きづらさ」がほとんどなく、それだけでもリマスター処理を施した成果はあったと言えるのかも知れない。個別の曲について細かく触れることはしないが、個人的にはジョン・レノンがリード・ヴォーカルをとっている「Dizzy Miss Lizzy」(★)におけるジョン・レノンの歌声と、間奏におけるエコーのかかったギターの独特な音(こればかりは実際に聴いてもらわないと分からないが)が気に入って、この曲を中心に何度も聴き返しているところである。その臨場感といいジョン・レノンの「ロック」ぶりといい、珍しくこの曲はスタジオ録音盤よりもこのライヴ盤の方が優れていると言ってもいい出来である。★その後、公式YouTubeにもアップされた。 https://www.youtube.com/watch?v=MZkoXOHLxbo アルバム全曲は以下のプレイリストで。 https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lyUDU9ALLrVNcpbmbNclXnUvH7GJpBclc 面白かったのはリンゴ・スターがヴォーカルをとる「Boys」(https://www.youtube.com/watch?v=KsS4e8zUgrY)で、曲名が紹介されてリンゴ・スターの名前が呼ばれた瞬間、観客の歓声が一気に高まって、(これまで噂では聞かされてきた)現役時代のリンゴ・スターの(意外な?)人気ぶりを見て取ることが出来る音源だと言える。実際ドラムを叩きながら熱唱するリンゴ・スターの歌声はなかなかのもので、これまた歌も音楽も大人しすぎるスタジオ録音盤よりもこちらのライブ演奏の方に軍配が上がるかも知れない。 今回このアルバムを聴いた人たちの感想やレヴューをチェックしていてなによりも評判の悪さが目立っていたのは、先ごろ公開された映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK」のポスターをそのまま使ったようなジャケット写真である(上の写真)。青が基調のシンプルなデザインからは確かに個性もなにも感じられない上に安っぽく、おそらくザ・ビートルズのアルバムのなかでも最も工夫がないジャケット・デザインだと言って間違いないだろう。 参考までにかつて出ていた「The Beatles at the Hollywood Bowl(日本盤は「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」)」のジャケットの写真を上に掲げてみたが(いずれもインターネットから拝借した)、これまた決して特徴ある優れたデザインだとは言い難いものの、今回のものに比べればまだマシだろう。 そもそもザ・ビートルズの音源がCD化された1987年以降に新たに発売されたアルバムのジャケットは、「アンソロジー」3部作を始めとして、「Let It Be...Naked」、「ザ・ビートルズ1」、「LOVE」、そして「Yellow Submarine Songtrack」など、どれもデザイン的には今ひとつのものばかりである(上1枚と下の写真)。かろうじて「On Air-Live at the BBC Volume 2」(下の最後から2番目の写真)のカヴァーがザ・ビートルズらしいジャケットだと言えるくらいだろうか。BBCライヴ盤の1枚目である「Live at the BBC」(最後の写真)も、あからさまなまでに合成だと分かる加工具合で、ノスタルジアを期待して施されたのだろうセピア風の色調も単に見すぼらしく見えてしまう。 ちなみに私は今回のこの「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」の輸入盤CDを日本のアマゾンで送料込み1,425円で購入したのだが、この値段であればまあ買っても損をしたと思うほどの内容ではないと言っていいだろう。リーフレットや歌詞の日本語訳がついた日本盤は同じくアマゾンで2,808円とほぼ倍の価格になっており、さすがにこの値段ではそもそもアルバム自体を買おうという気にもなれなかったかも知れない。 私の目下の悩みは、上記の映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK」のDVDを買うかどうかで、これは英国盤の2枚組スペシャル・エディションで約18ポンド、円換算で約2,300円となる(これに英国からの送料が加わる)。CD1枚に1,425円も払ったのだから、DVD2枚で2,300円(実際には送料を入れて3,000円弱)なら決して高くないとも言えるのだが、しかし毎度この「ビートルズ商法」に引っかかって散財し続けていることを考えると(さらに映画本編は、いずれレンタルして見られることになるかも知れないこともあって、なかなか手を出す気にはなれないのである(→調べてみたら、12月下旬からレンタルが始まるようである。http://rental.geo-online.co.jp/detail-402346.html。これであとは本編以外のボーナス・ディスクを見るためだけに3,000円近い金額を出すかどうかということになる)。=========================================================================== この間に読んだ本は、マルセル・プルースト「プルースト評論選 文学篇」(保苅瑞穂編、ちくま文庫)のみ。 後に「失われた時を求めて」へと発展していく評論「サント・ブーヴに反論する」や、フローベールやボードレールの文体について論じた「文体とその周辺」、その他に作家論や自作解説などを含む批評集。 「サント・ブーヴに反論する」は通常の批評文に加えて物語体による描写もあり、そこには既に「失われた時を求めて」の原型が明確に見て取れて興味深い。さらにジェラール・ド・ネルヴァルに関する文章を読むと、「失われた時を求めて」の源泉のひとつがネルヴァル作品にあることも分かり、今度はこのネルヴァルという作家にも俄然興味が湧いてきて、次回日本に戻った際には、実家の書架に眠っているネルヴァルの作品を持って来ようと思っているところである。 この間に見た映画は、数が多いため感想は省略することにするが、以下の通り。この中では(点数からも自然と分かるが)ポーランド映画の「イーダ」が図抜けて優れている。反対に一部マニアの間では評価の高いかつての日本の特撮映画(最後の3本)は全くの時間の無駄だった(特に最後の1本は0点でも良いくらいの駄作だった)。 邦画では橋口亮輔監督の最新作「恋人たち」が出色の出来である(意外なところでは俳優・大地康雄が企画・製作総指揮・脚本・主演をつとめた「恋するトマト」がなかなか良い)。・「ライムライト」(チャールズ・チャップリン監督) 3.0点(IMDb 8.1) テレビ放送を録画したものを視聴・「たたり(原題:The Haunting)」(ロバート・ワイズ監督) 3.0点(IMDb 7.6) 英国版DVD・「クローネンバーグのデッドゾーン(The Dead Zone)」(デイヴィッド・クローネンバーグ監督) 3.5点(IMDb 7.2) 日本版DVD・「ウディ・アレンのザ・フロント(The Front)」(マーティン・リット監督) 3.0点(IMDb 7.4) 日本版DVD・「ウディ・アレンの重罪と軽罪(Crimes and Misdemeanors)」(ウディ・アレン監督) 3.0点(IMDb 8.0) 日本版DVDで再見・「ウディ・アレンの愛と死(Love and Death)」(ウディ・アレン監督) 3.0点(IMDb 7.8) 英語版をインターネットで視聴(再見)・「大統領の陰謀」(アラン・J・パクラ監督) 3.5点(IMDb 8.0) 日本版DVD・「戦国野郎」(岡本喜八監督) 3.5点(IMDb 6.7) 日本版DVDで再見・「殺人狂時代」(岡本喜八監督) 3.0点(IMDb 7.3) 日本版DVDで再見・「暗黒街の顔役」(岡本喜八監督) 4.0点(IMDb 7.0) 日本版DVD・「暗黒街の対決」(岡本喜八監督) 3.5点(IMDb 6.8) 日本版DVD・「暗黒街の弾痕」(岡本喜八監督) 3.0点(IMDb 6.9) 日本版DVD・「愛の渇き」(蔵原惟繕監督) 3.0点(IMDb 7.2) 日本版DVD・「喝采の陰で(Author! Author!)」(アーサー・ヒラー監督) 3.0点(IMDb 6.1) 日本版DVD・「恋人たち」(橋口亮輔監督) 3.5点(IMDb 7.2) インターネットで視聴・「刺青一代」(鈴木清順監督) 3.0点(IMDb 7.3) 日本版DVD・「イーダ(Ida)」(パヴェウ・パヴリコフスキ監督) 4.5点(IMDb 7.4) 英語字幕付きのものをインターネットで視聴・「アジョシ」(イ・ジョンボム監督) 3.0点(IMDb 7.9) 日本版DVD・「虹をつかむ男」(山田洋次監督) 3.0点(IMDb 6.5) インターネットで視聴・「ファール・プレイ(Foul Play)」(コリン・ヒギンズ監督) 2.5点(IMDb 6.8) 英語字幕付きのものをインターネットで視聴・「恋するトマト」(南部英夫監督) 3.5点(IMDbなし。CinemaScape3.7) インターネットで視聴・「マタンゴ」(本多猪四郎監督) 2.5点(IMDb 6.6) インターネットで視聴・「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(本多猪四郎監督) 2.0点(IMDb 6.5) インターネットで視聴・「フランケンシュタイン対地底怪獣」(本多猪四郎監督) 1.5点(IMDb 4.8) インターネットで視聴