(臨時営業)ますます縁遠くなるザ・ビートルズ商法
2017年11月18日(土) 採り上げるのが少し遅くなってしまったが、今月初めにまたまたいわゆる「ザ・ビートルズ商法」関連の新商品が発売されることが明らかになった(https://www.youtube.com/watch?v=-HtBDK0y9-k) 今回発売になるのは、1963年から1969年まで、ザ・ビートルズがクリスマスにあわせてオフィシャル・ファンクラブの会員に配布したソノシートをカラー・シングル・レコードとして再現した「クリスマス・レコード・ボックス」というボックス・セットである(http://www.universal-music.co.jp/the-beatles/news/2017-11-02-release/。 上の写真1~3枚目)。 この音源のうち1967年版収録の「Christmas Time (Is Here Again)」は、故ジョン・レノンのデモ・テープに残りの3人のメンバーが歌や演奏を追加して完成させ、ザ・ビートルズの25年ぶりの「新曲」として発表された「Free as a Bird」のシングルCDの1曲として既に公式発売されているが(★)、今回はこのクリスマス・レコードの音源全てを初めて完全な形で公式発売することにしたという訳である。《★英語版Wikipediaによれば(https://en.wikipedia.org/wiki/The_Beatles%27_Christmas_records#Released_extracts)、このCDに収録されている音源は正確には、1967年版の最初の3分間に、1966年版の1部が編集で付け加えられたものだそうである。また、この曲は後にリンゴ・スターによって"Christmas Time Is Here Again"としてカバーされている(1999年発売の「I Wanna Be Santa Claus」に収録→https://www.youtube.com/watch?v=qeP9lS4vHpM)。 さらに1965年および1966年版の会話の1部が、2006年発売のザ・ビートルズ名義のコンピレーション・アルバム「Love」に収録されている上、1963年版の1部も2009年発売のヴィデオ・ゲーム「The Beatles:Rock Band」に収録されているそうである。》 今のところCDなど他形態での発売は予告されていないため、ザ・ビートルズのマニアのなかでもアナログ・レコードの再生機器を持っている人か、このボックス・セットを「モノ」として収集しておきたい人に向けられた、過去の「ザ・ビートルズ商法」関連商品のなかでも最も「マニアック度」の高いものだと言って間違いないだろう。 完全限定版で数に限りがあり、既に事前予約で事実上の「完売」になったせいなのか、日本や英国のAmazonサイトではもはや商品を注文できない状態となっていて早くも高値がついているのだが(https://www.amazon.co.jp/dp/B0773LJR8J/ref=wl_it_dp_o_pC_nS_ttl?_encoding=UTF8&colid=1ZQNQ3SD8V8X2&coliid=I39E1SGNOL5B0H)、発売が予告された時点での金額は税込で¥12,960(定価)となっていた(ただし輸入盤はまだ注文できるようで、価格は¥9,461となっている→https://www.amazon.co.jp/Beatles-Christmas-Records-inch-Analog/dp/B077181T6W/ref=pd_sim_15_4?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=7KTEQJR5NKG0A2BYN6D0)。 クリスマス・レコード(全7枚)の収録内容は上記サイト等によれば以下の通りである。①The Beatles Christmas Record(1963) 1963年10月17日にロンドン/アビイ・ロード・スタジオ2で録音.収録時間(片面)5分0秒②Another Beatles Christmas Record(1964) 1964年10月26日にロンド ン/アビイ・ロード・スタジオ2で録音.収録時間(片面)3分58秒③The Beatles Third Christmas Record(1965) 1965年11月8日にロンドン/アビイ・ロード・スタジオ2で録音.収録時間(片面)6分20秒④Pantomime Everywhere It's Christmas–The Beatles Fourth Christmas Record(1966) 1966年11月25日にロンドン/ディック・ジェイムス・ミュージックで録音.収録時間(片面)6分36秒⑤Christmas Time(Is Here Again)–The Beatles Fifth Christmas Record(1967) 1967年11月28日にロンドン/アビイ・ロード・スタジオ3で録音.収録時間(片面)6分6秒⑥The Beatles Sixth Christmas Record(1968) 1968年に様々な場所で録音.収録時間(両面)7分48秒⑦The Beatles Seventh Christmas Record(1969) 1969年に様々な場所で録音.収録時間(両面)7分39秒 今回のボックス・セットには、英国オリジナル盤のデザインを再現したカラー・シングル・レコード7枚と共に、当時ソノシートと一緒に送られたニュースレターを復刻した16ページのブックレットが収録されるそうである。 上の商品詳細を見れば分かる通り各レコードの収録時間は10分にも満たず、総時間数は45分にもならない短いものである。もし音質さえ気にしなければ、Youtubeなどで「The Beatles Christmas Record」とでも検索すればいくつでも音源が上げられており、簡単に聞くことが出来る(例えば下の動画は全音源を1つのファイルにまとめていて手頃である→https://www.dailymotion.com/video/x55pif7)。 従っておそらく音質が改善されているだろう「公式版」音源と、オリジナルのソノシートを再現したシングル・レコードやニュースレターを手元に置いておくために約1万円出費しても惜しくないという太っ腹(?)なマニア向けであり、今回はかなり「ニッチ」を狙った商品だと言える。 今回はこのクリスマス・ボックスに加え、今年5月に発売された「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の50周年記念版「スペシャル・エディション」をピクチャー・ディスク仕様で発売する<50周年記念ピクチャー・ディスク・エディション>も発売される(税込で¥5,400。https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%84%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89-50%E5%91%A8%E5%B9%B4%E8%A8%98%E5%BF%B5%E3%83%94%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%9B%A4-Analog-%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%BA/dp/B0773KHP4J/ref=sr_1_4?s=music&ie=UTF8&qid=1510919605&sr=1-4)。上の写真。 さらに同「スペシャル・エディション」にデモ演奏などを収録した2枚組ヴァージョンが、「96kHz / 24bitのハイレゾ音源」でデジタル配信されるらしいのだが、音質や音声技術に詳しくないので、音質が良くなるのだろうとは思うものの、正直なんのことやらさっぱり分からない。 これまでなんやかや「ザ・ビートルズ商法」に翻弄されてきた私も、さすがに今回は端から全く食指が伸びず、実際に購入することはないと断言していい。なによりも私はアナログ・レコードの再生機器を持っていないため購入しても聞く手段がなく、単なる「モノ」としてのレコードに1万円も払う気はない。そして仮に今後CD版などが発売されるとしても、余程の低価格(全曲あわせて1,000円前後くらい)でもない限り、気が変わることはないだろう。 今後の「ザ・ビートルズ商法」の対象になると思われる音源・映像としては、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」50周年記念スペシャル・エディションが発売された際、同盤のリミックスを担当したジャイルズ・マーティンが、既に「ホワイト・アルバム」(The Beatles)のリミックス作業を始めていることを明らかにしており、この2枚組アルバムのリミックス盤が発売50周年を迎える来年11月を前に発売されることになるだろう。前回「ザ・ビートルズ商法」について採り上げた際にも書いたように(https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502041814.html)、最終的にはザ・ビートルズのアルバムすべてのリミックス・ヴァージョンが発売されることになるに違いない。 その他にも、長年ザ・ビートルズのマニアたちが公式版の発売を待ち続けている映画「Let It Be」(マイケル・リンゼイ・ホッグ監督)、昨年ロン・ハワード監督によるドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK」が劇場公開された際に併映された(ただし権利関係の問題により、その後発売されたDVDには収録されなかった)NYシェイ・スタジアムでのライヴ・コンサート映像、日本武道館など世界各地で放送あるいは撮影されたライヴ映像・音源、これまで2度にわたって1部が公式発売された英国BBCにおける演奏(の残り)、公式デビュー前に「クォーリーメン」や「シルヴァー・ビートルズ」などと称していた頃のドイツ・ハンブルクやリヴァプール等におけるライヴ演奏、(最終的に不合格となった)デッカ・レコードでのオーディション演奏(の完全版)などなど、まだまだザ・ビートルズ関連の「ドル箱(未発売)商品」は数多く残されている。 ついでに最後に付け加えておくならば、前回採り上げた「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の50周年記念版「スペシャル・エディション」を、結局私はデモ音源などがついていない1枚組のリミックス盤を英国のAmazonから購入することで落ち着いた(本当は2枚組を買う予定だったのだが、勘違いして1枚組を注文してしまい、商品が到着して初めて間違いに気づいた)。 このリミックス盤は、ザ・ビートルズ自らが編集作業に立ち会ったため、かねてよりいわば唯一無二の「正典(Canon)」とも見なされてきたモノラル盤をもとに、「5人目のビートル」ジョージ・マーティン(https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502041588.html)の息子であるジャイルズが、オリジナルの4トラック・セッション・テープから編集したもので、「She's Leaving Home」など1部の曲は、これまで一般に流布してきたステレオ盤とは速度が異なるなど、従来のヴァージョンとは音源そのものに微妙な違いがある。加えてこれまでは左右片方に配置されてきたヴォーカルが中央に配置され、音質の向上により歌・演奏ともにクリアになり、「音圧」も高められて音の大きさも増し、2009年発売の「リマスター盤」と比べても音が改善された印象を受ける。 しかし果たしてそれがこの作品にとって望ましい効果をもたらしたのかと言えば、好みもあるのであくまで個人的な見解ではあるが、音がクリアになり非常に聞きやすくなった反面、全体に音がゴチャゴチャして「うるさく」感じたというのが正直な感想である。以前のヴァージョンでは左右どちらかに偏って配置されていたヴォーカルも、音響効果としては必ずしも「失敗」という訳ではなく、むしろ当時のサイケデリックな雰囲気を醸成するのに寄与していたと言えるものもあり(特に最後の「A Day in the Life」)、反対に曲冒頭でヴォーカルをしきりに左右に移動させている「Lucy in the Sky with Diamonds」などはかえって聞きづらくなってしまっていると言っていい。 モノラル盤=「正典(Canon)」という不文律にどこまで固執するか、そして音質の向上や音圧の上昇を無条件に「改善」と受け取るかどうかによって、このリミックス盤に対する評価は正反対なものになってしまうだろうが、まだステレオ盤作成の技術が確立されておらず、ヴォーカルは右、演奏は左と、ほぼ機械的に音を配置していた初期の作品についてならまだしも、ある程度技術的な土台が整っていた後期の作品について、大幅に手を加えることには個人的には賛成しない。現時点ではこのリミックス盤は、あくまで50周年の特別記念盤として一部マニア向けのヴァージョンに留まっているが(TSUTAYAやゲオなどレンタル・サイトでも50周年記念盤は現時点ではレンタル対象になっていない)、いずれは「音の良い」このリミックス盤が標準盤として扱われる可能性も決して排除できない。 むろんそれはそれでひとつの時代の潮流であり趨勢なのかも知れないが、オリジナル音源にある雑音や明らかな修正漏れなどを除去した2009年の「リマスター盤」こそがザ・ビートルズが現役だった時代に多くの人々が耳にしていた音に最も近いものであり、たとえその音質や音圧のクオリティが現代のレヴェルからすると見劣りがするものであったとしても、過度に手を加えることにはやはり違和感が残る。モノクロ撮影の映画を最新技術によってカラー化して現代の観客たちに近づきやすいフォーマットとして提供してみても、所詮それは「似て非なる」まがいものでしかないように、後世の人間たちが勝手に手を加え修正したものよりも、出来るだけオリジナルに近い形で作品に接したいというのが私個人の希望であり、その意味でこの50周年記念盤は、たとえ耳に心地よく響くようではあっても、繰り返し聞き続けていきたいと思えるようなものではないというのが正直な感想である。