ベーシストとエフェクター -3ページ目

■ライブレポート  その2

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大荷物を抱えて電車に乗車。身軽であれば、乗り換え2回のルートの方が数分だけ所要時間が短いのだが、30kgオーバーの大荷物を抱えているので、迷うことなく乗り換え1回を選択。乗車から20分で乗り換え地点に到着。エレベーターを使うのは初めてである。乗換駅のエレベーターに程近い所に乗ったものの、エレベータの搭乗口には行列。結局、2回見送って3回目に乗った。エライ時間のロス。次は山手線。山手線ホームまでは距離的には400mほどあったが、基本的には平坦であったのでそれほど苦労せずに乗車。でも恵比寿辺りでちょっと混んで来て・・・ 結構白い目で見られた。渋谷に到着し、ひとまずホームにおりて小休止。エレベータがないことはなさそうだが、多分あってもホームの反対の端。諦めてサム6を背負い、その上からalteregoを背負い、キャビ&アンプが乗った台車を両手で抱え、階段で降りた。途中、危うく荷崩れを起こしそうに・・・ walterwoodsの階段落ちなんかしようものなら・・・ 一瞬脂汗が出る思いだったが、何とか持ちこたえ、地上に降りた。ホッと一息である。


でも改札を出ると、土曜の真昼の渋谷。想定外の混雑。天気も良かったし、それに、大手町~虎ノ門~麹町界隈と割と行動範囲が限られた自分にとって、渋谷はとてもコワイ街(汗)。なので、お気に入りのサングラス(oakley penny X-METAL + ruby)をかけ、気合いを入れて雑踏に踏み込んだ。向かうはライブ会場ではなく、最終確認が必要とのことで予約しておいたスタジオ。普段は5分くらいでいけるのが、これまた15分くらいかかった。しかも、途中で荷崩れを起こし、rubyレンズのoakleyをかけた風貌で、しゃがみ込んで再荷造り、途中で壁に立てかけたalteregoが倒れそうになって慌てて押さえに行ったがために、荷造り中のゴムひもがビロロ~ンと戻ってしまうという、絵に描いたようなカッコ悪さである。やっとの思いでスタジオに到着し、メンバーと合流。ホッと一息、lunchを共にする。


スタジオ入り。練習の時はなかなか機材を持っていけないので、実はこのスタジオ入りが初めての本番フル機材でのリハ。いつもエレキベースで演っていたフレーズも、alteregoで弾くと、印象がだいぶ変わるらしく、他メンバーに若干の戸惑い。最初は焦ったが、すぐに一同慣れる。それよりも、rolandの改造キャビがアンサンブルの中でも予想以上にシッカリと鳴ってくれることに大満足。ところが、やはり四十路前後が主体のメンバー。毎度のことで、最近は特に驚きもしないが、一週間前の決め事を忘れている。紙に書いて覚えたつもりになってるが、結局その紙を見ないと思い出せない。もう一度、譜面を確認しながら構成やキメのチェック。練習で出来ないことは本番では絶対に出来ないし、練習で出来ても本番で出来るとは限らない、というのが自分の身上。練習でキワドイ(技術的に難しく、自分の許容範囲いっぱいいっぱいで弾いている)部分を何度か繰り返し練習する。満足は出来ないが、まあ、今の時点での精一杯を確認し、time's up。終了時間ギリギリでしたので、ケースにも入れず、楽器をそのままスタジオの外へ、周囲の注目(白い目?)を浴びつつ、そそくさと解体・収納。缶コーヒーを飲みながら、最終打合せを済ませ、メンバー全員で程近くのライブ会場(ハコ)へ。


ハコには予定時間より30分早く到着するも、既にエンジニアが入っており、機材を運び込む。僕らのユニットは1番目ということであったので、逆リハでしばらくやることがない。いずれにしてもアコースティックユニットらしからぬボリュームの機材であるため、早速開梱。こんなに持ち込んじゃって、迷惑かけちゃったかなーと思っていたら、今回のイベント主催者のバンドが到着。ボーカル・ギターは機材が少ないものの、パーカッショニストがおり、その機材ボリュームに圧倒される。なんだー、epifani 210持ってきても全然大丈夫だったなー(ヘタに電車で来てしまったことが、この感情に一層拍車をかける)、などと後悔するも後の祭り。この主催者バンドがトリと務めるとのことで、早速リハの準備。他の出演者はピンでしたので、リハはリバーブの確認くらい。すぐさま我々のリハ。


機材をステージに運ぶ。大荷物と思っていた割には開梱すると、結構すんなりとステージの要所要所にはまっていく。アンプの位置、babyegoの置き場所なども、迷うことなく決められた。早速リハーサル開始。ギターとボーカルはPAから、ベースはアンプのみから音出し、というスタイル。今までも無かったわけではないが、難しいのは、自分の音がモニターから返ってこないので、客席側でどういうバランスで聴こえているかが分からないこと。卓のエンジニアからは「もうちょっとベース上げてください」と言われるんですが、ステージにいる限りは「こんなにベース上げちゃっていいの?」って思うくらい、大きい。エンジニアを信じ、ステージ上でのモニターバランスをとるため、ギターとボーカルの返しを大きくしてもらった。(結局、客席ではどのように聴こえていたのか、分かりません・・・ どなたか、簡単でよいので教えてください・・・) ドラムがいると、リハはもうちょっと時間を要すると思いますが、3ピース構成のため、リハはあっけなく終了。それでは本番、よろしくお願いします、ということで終了。オープンまで1時間以上あったので、近くのスタバで美味しいコーヒーをすする。こういうときは、決まってバンドや音楽の話にならない。「自分の同僚はゲイだった」、「ゲイって、基本オシャレだよね」、「腹筋割れてる人多いしね」、「オマエなんでそんな腹筋のことまで知ってるの?」とか、なぜかそんな話に花が咲く。あっという間に時間が過ぎ、途中で、荷物運びで疲弊したカラダを癒すために(実は電車で来たことを後悔していたのは自分だけではなく、ギタリストもそうだった・・・)栄養ドリンクを購入し、ハコに戻った。


しばらくすると、お客さんが入ってきた。懐かしい顔が集う。ホントは、当blogを通じていろいろと教えていただいているshinmeiさんと是非お話をしたかったのですが、名前とお顔が一致せず(涙)、断念。というところで、いよいよshow time。サングラスをpennyからjulietに換えてステージへ。ちゃんとした(といってよいか分からないが)ステージは実に2年ぶりである。知人ばかりだし緊張するとは思っていなかったが、やはりいささか緊張するものである。babyegoを構え、他メンバーの準備完了を待つ。


また長くなってしまったので、これを第2弾とさせていただき、次回、最終回(そんなに、興味ないか・・・)

■ライブレポート(オレ流・・・笑) その1

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ご案内の通り、先週末にアコースティックユニットでのライブを開催いたしました。何とか無事に終わり、今は落ち着いて仕事をしている自分になんとも言えぬ安堵を感じている次第です(ライブまで、ちゃんと仕事してなかったのかよ、おい!)


さて、小生ライブについては、当ブログでもリンクさせていただいていますshinmeiさんに、極めて的確かつ客観的(かなーりホメ過ぎの部分がありますが、汗)な視点で書き綴っていただきました ので、こちらでは、その裏バージョンをご紹介したいと思います。ということで、早速、前日の夕方あたりまでタイムスリップ。


ライブ前日、18時頃。オフィスにてマジメに仕事中・・・のフリ。次の日のライブに向けて、練習不足はもうこの期に及んでどうしようもないので、せめて準備をすべき事項はないものか、等々と思いを巡らせる。この日の夜は敢えて予定は何も入れておらず、家に帰って機材のまとめをする予定。そうだ、機材のチェックリストを作っておこう、と思い立つ。サム6、babyego、GR-20・・・ シールド・パッチケーブルに至るまで、実際のセッティングを想像しながらリストに全ての機材を書き記していく。ついでといってはなんだが、小道具(筆記用具、栄養ドリンク、サングラス・・・)そんなものまでチェックリストに綴っていった。この細かい気遣いが仕事や日常生活にもあればどれだけ良いかと思いつつ・・・ よし、これでokということで、リストをプリント、ささっとプリンタまで行って、そそくさとカバンにしまい込む。さあ、今日は早く帰ろう・・・ というときに限って余計な仕事が。とりあえずやっつけてしまえとばかりに、ホントにやっつけ仕事で片付けて、帰路に着く。


自宅到着は20時頃。着いた早々、メシも食わずにとりあえず、チェックリストに従い、機材を全て一まとめ。列挙すると、こんな感じです。エレキ、アップライト、アンプ、キャビ、GR-20、シールド3本、パッチ2本、GKケーブル、ループセレクトbox(エレキ・アップの切替用)。本来、クルマで会場に行こうと思っていたが、パッと見、えらくコンパクトに見えて「クルマだとparking確保など、何かと煩雑だし、これなら充分電車でいけるな」と思い、電車で行くことを決意(これが後々、とんでもない誤認であったことが判明する)。さて、次はサングラス。OAKLEYのJULIETに、今回はステージが暗そうなので、明るめのレンズを組み合わせようと思い、TITAN CLEARという、クリアレンズにミラーコーティングをしたレンズを取り付け。次は衣装・・・ あ!忘れた! 今回は特に衣装なんかにこだわらず、普段着でやろう、ということにしていた。自分はジーンズにカモ(迷彩)柄のTシャツを着ようと思っていたが、なんと、そのTシャツを会社に置忘れた。なんでそんなもんが会社に置いてあるかと言うと、たまたま早く帰れたときなど、帰宅途中にジムなんかに行くために、ウェア一式を会社のロッカーに置いてあるのです。しまったー、まあでも、しょうがない。今回は違うTシャツを着よう。いい勉強になった、今度はチェックリストに「衣装」も加えようと思った。天井裏の物置から耐加重40kgのキャスター付荷車に、キャビ、アンプ、GR-20、ケーブル類一式を載せてゴムで目一杯強く縛ってフックで固定。うん、見るからにコンパクト。babyegoもちょっとだけ爪弾いたあと、電池容量だけチェックしてそのままケースにしまった。ライブは結局STATUSではなくサム6で行くことにし、弦を張り替えないといけないのでスタンドに立てかけたまま、とりあえずメシ&風呂。


メシ&風呂を済ませ、そそくさと自分の部屋に戻る。サム6の弦を張り替える。そのとき張ってあったのは、とても気に入っている弦なのですが、本邦未発売でサンプル入手した、WARWICKのEMPというコーティング弦。入荷が未定ということで、已む無く代替で同社のBLACK LABELを張った(ステンレスのざらつき感がとても強い弦・・・)。さてオクターブチューニング・・・ あ! シンセ用のドライバーユニット(GK-3B)を着けているので、レンチを入れる隙間がない。これは盲点でした。やってみないとわからないものです。でも、明日実戦投入するのに、GK-3Bをとりはずすと、またシンセ側の感度調整などもやり直さないといけない。これはちょっとリスクが高い。ということで、今回は「ま、いっか」ということでオクターブ調整はパス(同じ設計の弦であったことも幸いした)。弦を馴染ませる程度に、楽曲のおさらいをして、ケースにしまう。部屋の一角に明日持っていく荷物を全てあつめる。よし、これで準備万端。時計の針は既に0時を回っていましたが、ホッと一息ということで、コーヒーを淹れて(自分はアルコールが飲めない)徐にTVをつけ、いつも通り日テレのサッカーアースを観賞。大丈夫か、岡田JAPANなどと、つまらんことをささやきながら、リラックス(客観的に見れは、お前こそ明日のライブは大丈夫なのか?と問いたい)。


夜も更けて1:30頃。そろそろ寝るか、ということで寝室へ・・・ うーん、コーヒーとクリスチアーノ・ロナウドのせい(ホントは、自分のせい)で完全に目が冴えてしまった。いかん、いかん。こういうときは切替が早い。すぐにもう一度自分の部屋に戻り、本棚のベンチャー投資の関連書籍に手を伸ばす。ふふっ、思った通りだ。すぐに睡魔に襲われ、再び寝室へ。ぐっすりと眠りについた。


翌朝、7:30に目覚ましで起床。家を出るのは11時ちょっと前。余裕で、いつもの週末パターンに沿い、走る用意。玄関先でウォームアップを済ませ、10kmランに。江戸川の川原を走るのですが、今の季節は土手一面に菜の花が咲き乱れ、美しいことこの上ない。今日は朝から気分がいいね、と思いつつ走り終え、家に戻って、家族と朝食。食事中、長男(10歳)をボーヤにと思い、誘ってみるも「つまらないからイヤだ」とあっけなく断られた(涙) 食事が終わったあと、いつも通り掃除機かけと風呂掃除をし、いよいよ出発。


前日、部屋の一角にまとめた機材を1つずつ玄関へ運ぶ。玄関で靴を履き、気合いを込める意味で、玄関先に置いてあるコロン(ロクシタン・ヴァーベナ)を2-3ふき。先ずはサム6を背負い(mooradianケース)、babyegoを右肩に載せ、次にホイールカー(以降、台車と呼びます)をもって、いよいよ出発。駅まで手ぶらで歩くと5分程度ですが、今日は余裕をみて15分。でも、家をでて2-3分で、体が悲鳴を上げた。よくよく考えると、サム:約6kg、アップライト:約9kg、スピーカー:8kg:アンプ:3kg、GR-20:2-3kg、その他ケーブルもこの本数だと結構バカにならない。積算すると、総重量30kgオーバー。いやいや、完全に見た目に騙されました。でも、いまさら引き返してクルマで行っても、集合時間に間に合わない。ひいひい言いながら、駅に到着するころには、朝一の10kmランもたたり、ほぼその日の体力を使い果たした気分になった。幸い渋谷駅までは、エレベータで移動可能。でも渋谷の山手線ってエレベータあったっけ・・・ この期に及んで、どうしようもないので、エレベータで最寄り駅ホームに降り、予定通りの電車に乗る。ホントにバリアフリー??? そう思えるほど、ホームから電車に乗るだけで大変だった。


こんなに長く書き綴るつもりは毛頭なかったのですが・・・汗。長くなってしまったので、後半は次に(笑)

■小規模Acoustic Live用のアンプセット

僕の場合、アンプは普段はWALTER WOODS M-300とEpifani T210ULの組み合わせを使用しています。非常に軽量で、キャパの割にはとてもコンパクトで、しかも腰に優しいライトウェイト、ということもあり、今後も変更の予定はございません・・・ が、常日頃から困っていることがあります。


自分はバンドを2つ組んでいます。1つは4ピースのハードロックバンド、もう1つはドラムレス3ピースのアコースティックユニットです。結論から申しますと、Epifaniの210キャビは、大変気に入っていて、音質・音圧・重量、どれをとっても申し分ない(欲を言えば、もうちょっと暴れた感じの低音の出方が望ましい)超一流なのですが、用途に照らすと「帯に短し、襷に長し」になってしまうことが多いのです。具体的に言うと・・・


○友人宅でのちょっとしたparty。110サイズキャビとか小型コンボがちょうどいいのに、210は大げさ。
○ハードロックバンドでのホールライブ。epifani210でも機能的には全く役不足ではないものの、見た目も手伝い、結局、既設のampeg 8発キャビを使用。
○自宅練習。WALTER WOODS M-300+Epifani T210UL、これ以上無いくらい快適で心地よく練習に勤しむことができますが、ちょっとオーバースペック?


こんな感じです。「大は小を兼ねる」うちは良いのですが、今回のアコースティックライブのように、ステージ上に210を置くのに気が引けるほどハコが小さい場合は「襷に長し」状態になります。ということで、手持ちの機材に手を加えて、作っちゃいました。


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'80s Rolandの名器と言われるCUBEシリーズ。質の良いスピーカーと使って、それを鳴らし切るべくクローズドキャビに搭載し、さらに可能な限りコンパクトに小さくまとめたもの(最近のCUBEはアンプと言うより、スピーカー付のエフェクター的な感がありますが・・・)。そのRolandのSUPER CUBE 40 BASSという40wアンプのスピーカーキャビ(10インチ×1)のみを使って、背面に1/4インチフォーンジャック端子を取付け、さらにフロントグリルを外し、カーオーディオ用のピエゾツィーターをメインスピーカーの右上にネジ止で増設、極めてコンパクトで良く鳴る110サイズのキャビを自作しました。アンプは40w出力でしたが、スピーカーは余裕を持たせて50w RMS、ピーク100w/8オームの仕様になっていて、これにパラレルでピエゾツイーターを接続、都合4オームの10インチ一発キャビに仕上げました。


仕上がりですが、サイズ的にはw33×h37×d30cm、重量の8.6kgと、とてもハンドリングしやすいコンパクトサイズ。ご覧の通り、上にWALTER WOODSを置くと、オーダー物のごとくピッタリ収まります。しかも、このピエゾツイーター、なかなか優秀で、クロスオーバーネットワークが内蔵されていて、メインスピーカーで6kHzあたりまで、ツイーターで5kHzから20kHzまでを再生し、とても接続の良いナチュラルな再生印象があります。加えてツイーターはクルマ用のため、首振り機能が付いていて、正面~上下左右に半球の範囲で調整が出来るので、アッテネーター(ツイーター調整ツマミ)がなくても、物理的にツイーターのレベル調整が出来るスグレモノ。ツイーターをこういう形で取り付けてしまったため、純正グリルを取り付けることが出来なくなってしまいましたので、今度アキバにでも行って、スピーカーにダイレクトにかぶせる10インチの円形グリルでも買って来ようかと思ってます。


で、肝心の音ですが、これがまた、なかなか。あまり使わないので一度はオークションで処分しようと思いましたが、音が良いので手放すのが惜しくなり思い留まりすぐに取りやめてしまいました。流石にepifani、とまでは行きませんが、ローエンドからハイエンドまでキッチリと鳴らしきってくれますし、特にミッドの押し出し感にコシがあり、伝達性が良い音を鳴らしてくれます。WALTER WOODSアンプの素性のよさもあるとは思いますが、こんな適当な改造でこれだけの音を出してくれるのですから、昔のローランドは本当に良いスピーカーを奢っていたんだと思いました。基本設計のよさが光るスピーカーです。


ライブで使うには見た目的に頼りないのでやや不安があるところですが、50w RMSを結構超える入力をしても数値以上にキャパが広いようで出力も充分、敢えて週末のライブは、コレで行こうと思います。

■WARWICK Thumb Bass 6st '91 完結編回(やや長編)

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さて、いよいよ終盤です(笑) この'91サム6、早々にプリアンプをaguilar OBP-3に換装したのは大成功だったように思います。オリジナル(かどうかは不明だったのですが、先日米国のレビューサイトを見たら、シリアルがこの'91サムと50番違いの'91サムのレビュー記事が載っていて、僕と同じ悩みを抱えておられました。ちなみに、自分はその後にプリ交換の暴挙に出たわけですが、その御人はガマンしてオリジナル状態で使っておられる模様です・・・)のプリはハイを上げるとノイズが結構目立ったし、ミッドのトリムもちょっと動かすだけで劇的にキャラクターが変わってしまう始末で、とにかくナーバスな性格。一方、このOBP-3は、OBP-1のじゃじゃ馬的キャラを残しつつもノイズが極めて少なく、音圧とスピード感があり、飛躍的にハンドリングしやすくなりました。


ちなみに扱いやすさのお話が出ましたので、ついでに。この'91サム6、今までのベースの中で一番の重量級。ROSCOEやFODERAなどは比較的軽かったと思えるような重量で、サム6フレットレスの5.4kg、カスタム'07サムの5.5kg(この2本の差は、フレット材の重量だと思います)よりも重く、'91サム6はなんと5.8kg。300g程度なら大したことはなさそうな印象を受けますが、この辺りの重さになると、300gの差がとてつもなく大きく感じられます。こんなコンパクトなのに、なんでそんなに重いの?って思いますが・・・ ちなみに一番軽いのはSTATUS GRAPHITE STEALTH-2で6stで4.2kg。'91サム6と1.6kgも差があります。普段のスタジオ練習は担ぐのが楽なのでSTATUSを使ってますが、そろそろライブも近いので、本番をサムかSTATUSか、どっちで行くかを決めないといけません(汗) まあ、それは置いといて・・・


徐にWalterWoodsの電源を投入。普段通り、イコライザーはフルフラット(epifaniキャビとのマッチングの関係でlow-midをほんの僅か上げてます)で、inputゲインは12時、さすがに自宅なのでpostゲインは8時くらい(家では、このアンプのドライブ能力をほとんど使っていないことがよくわかります・・・)。サウンドチェック時のセオリー通り、シールドケーブル1本で直結。今回はBelden8412ではなく、よりニュートラルな印象をもつ国産の雄、MOGAMI 2534をチョイス。OBP-3イコライザーはフルフラット、ミッドの帯域は400Hz/800Hzが選択出来るのですが、自分はいつも通り400Hzにスイッチ。PUバランサーはセンター。


ブビン! 物凄いミッドのコシの強さです。この音なら、どんな爆音バンドでも、絶対にベースが埋もれずに聴こえるだろうと思われる主張の強い音。いささかミッドが強過ぎて、さすがにこのままではアコースティックな雰囲気やスラップには不向きと思われるので、ちょっとだけミッドをカット。中域を削るなんて、高校時代以来やったことがないのですが、'91サムの場合はミッドを1割くらい減らしてあげると程よい塩梅。このミッドの強さは、'91サムの最も大きな特徴であり、自分にとってはメリットであると思っています。というのも、そもそも楽器の音というのはフラット状態が本来的にその個体が持っているもの全てであり、それ以上でも以下でもないと考えています。従って、状況に合わせてサウンドの調整を行う場合、「足りない帯域を足す」という考え方をすると、そのベースが持っていない音域を電気(あるいは電子)的に別の所から借りてくることになるので、どうしてもムリが発生し、それが不自然さとして音に現れてくると思っています。足すのではなく「多すぎる部分をちょっと削ってあげる」というプロセスをとってこそ、楽器本来の音を保ったまま、臨機応変な対応が可能と思っています。従って、ロックもアコもやる自分にとって、豊かなミッドレンジにフォーカスされているベースというのが、とても大きなメリットになってきます。


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さて、本題からずれましたが、'91サムの音に戻りたいと思います。


2フィンガーやピックで16ビート系の速いパッセージを弾いても、明確に1音1音が聴き取れ、音に不要な膨張感がありません。凄く歯切れの良いビート感を感じる生々しい音です。ロングトーンにも特徴があり、ボディをあまり共鳴させずに音を出しているためか、珠粒のようなキレイな発音のあと、サスティンがそのまま延々と続きます。よくも悪くもあまり減衰していかないので、白玉を弾き続けるには都合が良いのですが、他メンバーのテレキャスなんかと合わせる場合、リリース特性があまりに違っていて、音の止めや減衰にとても気を使うほどです。いずれにしても、指・ピックでプレイすると、当初ピックアップとしてEMGとbartolini(たまにduncan)を選択的に搭載していたこの時代のサムでは、6弦にはあえてEMGではなく主としてbartoliniを載せていた設計者の意図がとてもよく理解できます。


スラップは、ビキビキっとしたWARWICKらしい独特のサウンドですが、最近のサム6に見られる、繊細で煌びやかな美しい高域とは異なり、ザクザクと切り込むような力強いサウンドです。やはりミッドのコシがスラップサウンドの特徴も決定付けているように思います。なかなか面白いもので、スラップの音というのは、ベースによってキャラクターが様々です。例えば、ROSCOEのスラップは、パリっとしていながら木の暖かみを感じるもの、STATUSはピシっとシャープに切れ込む印象で硬質で無機質な質感、FODERAとSMITH(ウォルナット系)は個人的には完全に指弾きにフォーカスした印象を受けます。メイプルSMITHのスラップはキャラ的にはROSCOEのそれに近い印象です。サムについては、'07モデルはSTATUSの硬く無機的な質感とROSCOEの空気感のある木質的な質感とのハイブリッド的なキャラです。とても美しく硬質ながら柔らかさも併せ持つ音。一方の'91モデルは、とにかくパワー感に溢れていて、6弦的なプレイよりは、4弦のようにシンプルにぶっ叩きたい、という衝動に駆られる音。PUバランサーをわずかにフロントに振ったほうが、よりワイルドさが強調され良い感じになります。最近、自分もあまりコンプを使わないのですが、FMR Audio RNLA7239でヴィンテージリミッター的な甘めの倍音を足してあげると、更に雰囲気がupし、なんとも言えないサウンドに仕上がります。


さて、大別して、指・ピック、スラップサウンドの特徴をご説明しましたが、これだけを捉えると、6弦にもかかわらずパワー一辺倒で繊細さに欠けるような印象を与えてしまいますが、これはひとえにプレイヤー次第であることを、改めて思い知らされます。うまく弾いてあげれば応えてくれますしその逆もしかり、その日の調子が生々しく演奏に反映されてしまう、そんな印象を受けます。なかなか表現が難しいのですが、現行版のサムのようにちょっと触れただけで軽やかに鳴るというタイプではなく、どちらかというとヴィンテージベースのような生々しさが垣間見れる、ひょっとすると、初期のサムベースを作っていた職人は、革新的なベースを作りたいという思いと同時に、ヴィンテージベースに対する強いリスペクトを持っていたのではないか、そんな気がしてなりません。それに感化され、自分自身も'91サムの個性に共感すると共に、かすかに香るエレクトリックベース発祥の地のアメリカンなフレーバーになんともいえない安心感と居心地の良さを覚えているのかも知れません。


とりあえず、完結です。ご高覧、誠にありがとうございました。

LIVEをやるのですが・・・

3月29日(土)、東京都内のとあるacoustic barにて、ライブを行う運びとなりました。


企画モノの1コマ30minをもらっての出演ですが、2年ぶりの人前での演奏、自分をふくめたメンバーの仕事多忙で練習もままならないものですから、アンサンブルの細かい詰めが進んでおらず、なかなか悩ましいところです。本当は、行ってやってもいいよ、とおっしゃる奇特な方がいらっしゃれば詳細ご案内差し上げようと思っていたのですが、仕上がりに自信がないため、今回はひっそりとやりたいと思います。


次の機会には、堂々と告知できる状態にしたいなと、思った次第です(汗)


ちなみに、ハコがせまくて、epifani 210を持ち込めそうになく、困ってます・・・ 家のオーディオ用のboseでも持っていくしかないか・・・

■Thumb Bass 6st番外編:GK-3B取付

サムベース6stでシンセ:Roland GR-20やV-BASSを鳴らそうとするとき、一番苦労するのがGKピックアップ:GK-3Bの取付です。Rolandは、GKピックアップの推奨取付位置がブリッジから5cm以内(だったかな)とされています。サムベースは4/5/6弦、いずれも、リアピックアップはスラントしています。4/5弦の場合は、PUがジャズベースタイプなので、ブリッジとリアPUの間、つまりブリッジから5cm以内の位置にGKピックアップを取り付けることができます。ところが、6弦の場合は、PUがソープバーでサイズが大きいため、ブリッジとリアPUの距離が狭すぎて、GKピックアップをその間に取り付けることが出来ません。従い、取付場所はおのずリアPUに近い、リアPUとフロントPUの間、ということになります。以下が、フレットレスのサム6での取付例。


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でも、これをやると、問題点が2つあります。


①GKピックアップの取付位置が推奨範囲を大きく超えてしまうため、シンセ発音までのタイムラグが長くなる。これは相当気になるレベルですので、おのずタイトにリズムを刻む音は使えず、コード弾きのバックにストリングスを入れるといったアタックが立たない音色を選択せざるを得ません。


②GKピックアップと弦との間に十分な隙間が取れない。これも、Roland推奨では1.5mmとなっています。ところが、自分のサム6はローアクションになっているため、ブリッジ付近ではまだ間隔が保てるものの、ネックに近付くと、ボディと弦の間隔が狭くなり、フロントPUとリアPUの間だと、強く弾いた場合、弦とGKピックアップが干渉してしまう。従い、これはもう、弦高を上げしか対応方法が無くなるわけですが、これでは本末転倒です。


そこで、ついにかなり乱暴ですが、以前から構想していた「GKピックアップの洋服を脱がそう作戦」を断行いたしました。別にどうということはなく、具体的には、GKピックアップを分解し、GKピックアップのセンサー部分を裸で取り付けようということです。最初に殻を割る(と言っても、アルミカバーの爪を開いて外すだけ)ときは相当ビビリましたが、どこかを壊したり切ったりする必要が最終的にはなかったので、やってみれば大したことはなく、もっと早くやればよかったと思っています。結果はご覧の通り、余計な殻がないため、ブリッジとリアPUの間にギリギリ収まり、配線の取り回しも無駄が無く、理想の取付位置と相成りました。写真は'91サム6での取付例。


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反応スピードは格段に速くなりました。低音弦は弦の振幅が大きいため、タイムラグは依然でますが、まあ許容範囲、高音弦はほぼラグ無くなります。ちょっと大胆な行動でしたが、やってみるもんです。同じようなことでお悩みの方、是非チャレンジしてみてください。ぶっ壊れても保証は出来ませんが(汗)

■リーサル・ウェポンか? ただのオモチャか? BOSS GT-10B

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この1年くらい、チューブタイプのオーバードライブやコンプレッサーなどの新製品がリリースされてはいますが、それほど興味をそそられなかったり、店頭で試してみて期待はずれだったりと、エフェクター分野ではあまり自分の熱が上がっていないのが実情です。楽器本体の入替えに伴う資金の枯渇や、本質的な部分で今のエフェクト群で必要十分、満足していることもあり、このような状況に至っております。


ところがこの4月、満を持して業界の雄が5年ぶりにフラッグシップのモデルチェンジをすることになっており、実は沸々と血が騒いでいる次第です。今年のNAMMで発表されたこともあり、一部では既に話題となり今さらの感もありますが、静かなコーフンの種は、BOSS GT-10B。


4月に店頭販売開始とのことで情報が流れていますが、ローランドのwebを観ると、興味をそそられるポイントがいくつか散りばめられています。これを、現行のフラッグシップであるGT-6Bを自分が手放してしまった理由と併せて説明してみたいと思います。(一部、英語版の方が特性を分かりやすく表現している部分があるので、一部英文を引用させていただいていますこと、ご容赦ください。)


<その1>

6B:通すだけでダイナミックレンジが狭くなる → 10B:provides top-quality sounds without sacrificing richness and bottom。6Bの取説には「アナログバイパス」と明記されているのですが、明らかに、walterwoods+epifaniから出力されるROSCOEの音は、シールド直結の方がダイナミックレンジが広い。シールドケーブルのせいかとも思い、その影響を排除する工夫もしましたが状況は改善されず。また一部のweb情報では「GT-10Bは6Bの音の軽さを解消」と、かなり直接的な表現がなされているので、これは期待大です。


<その2>

6B:自分にとってキモになるコンプ/リミッターとペダルベンド(ワーミー)がショボかった → 10B:ベースで使用頻度の高いエフェクトを基本設計から見直しチューン・アップ、Optimized for bass, with essential effects such as OD/DS, Comp/Limiter。ペダルベンドについては言及がないので使ってみないとなんとも言えないのですが、少なくともコンプ/リミッターについては、再設計されている雰囲気を漂わせています。モデリングタイプも6Bの4種から、10Bは7種に増えているようで、期待大です。


<その3>

6B:分かりやすいといいながら、自分にとっては分かりにくかった操作方法 → 10B:感覚的な操作で、すばやく音作りが完了する「EZ TONE」機能。これは、本当に大事です。今使っているマルチ、ZOOM b2の1つの美点はここにあります。操作が分かりやすく、感覚的なので、一度覚えたら忘れない。人にもよりますが、僕の場合は、マニュアルを見て6Bの使い方を一応理解はしたのですが、スタジオに連れ出していざ使いながら調整しようと思うと、やり方を忘れてしまっていました。これはものすごく大事な部分で、ライブ直前のリハで、ハコに合わせてちょっと調整しようと思ったけど、どうやって設定を変えるのか皆目見当がつかなかった、なんてことが起きると最悪です。自分にとって感覚的に理解しやすいものでないと、覚えられないんだと思います(歳のせいも多分にありますが)。一方、10Bは確かに見るからに分かりやすそう(ZOOM b2で自分が慣れ親しんでいる方法に似ている気がします)で、たしかに感覚的です。ここも期待大です。


<その4>

あとはその他、ということですが・・・  ①Phrase Loop機能、つまり単体で持っているループステーションRC-2の機能が盛り込まれている。 ②USBやMIDIを経由したパソコンへのデータ取り込み、デジタル録音ができる。


唯一心配なのがサンプリング周波数。これは6Bと同様44.1kHzとなっています。アナログ⇔デジタルの変換するには、アナログ音の2倍のサンプリング周波数が必要。epifaniキャビの再生帯域の上限がカタログ値で20kHzですので、CD(コンパクトディスク)と同じ44.1kHzあれば十分なはずなのですが、ZOOM b2は可聴領域に留まらず、高周波までをも再現するために96kHzサンプリングをしています。この辺が聴感を超える帯域というのは、耳では確かに聴こえないので、それがカットされた場合の影響は未知数です。これが、体感的な差として現れなければ良いな、と思っています。


現在の自分のエフェクトボードは、シンセ(GR-20)、ワーミー、コンプ、ミキサープリアンプ、マルチで組んでいますが、これは、ワーミーとコンプがマルチ:ZOOM b2では満足できず、かつミキサー機能(複数楽器の音量バランス調整)を任せるには、ZOOM b2のバイパス音はちょっといただけなかった、という理由でこうなっています。GT-10Bは、ひょっとすると、単体コンプもワーミーもいらず、GR-20以外は全てマルチ:GT-10Bに任せる、という積年の夢を叶えてくれるマルチかも知れない、そんな淡い期待をしています。待ち遠しいです、4月末!

■WARWICK Thumb Bass 6st '91 その5


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さて、前回プリアンプをaguilar OBP-3に換装し、時間の都合でそのままサウンドチェックをせずに一晩寝かせることとなってしまいましたが、サウンドチェックに行く前に、この'91サムになぜ自分がこだわってきたのか、その理由をご理解いただくためにも、あらためてspecに触れたいとおもいます。


    サム6FL         サム6①        サム6②
製造年 2003          2007          1991
ボディ ブビンガ       ブビンガ        ブビンガ
指板  エボニー       ウェンジ        ウェンジ
ネック オバンコル5p オバンコル+ブビンガ7p ウェンジ+ブビンガ7p
PU   MEC         MEC          bartolini
プリ  BEC(aguilar換装) BEC          bartolini?(aguilar換装)


チューニングペグやブリッジなどのハードウェアにはWARWICKの刻印が入っているオリジナルです。細かく見るとshaller製やJim Dunlop製のものと思しき物もありますが、詳細は不明です。'89モデルの4弦は、ハードウェアは基本的にshallerの刻印が入った物がそのまま取り付けられていたのですが、90年代に入ってからブランドロゴ入りの特注を出せるだけの量を生産できるようになった、ということかもしれません。いずれにしても、WARWICK社は96年までは旧西ドイツの当初の工場(「こうじょう」ではなく「こうば」)で製造されていることもあってか、'91モデルにはハンドメイド然とした趣を強く感じます。これは、決して良いことだけではなく、丁寧に作りこまれた部分もある反面、手作業ゆえの精度の低い部分(ご愛嬌のレベル)も若干見受けられる、ということです。


さて、木部に話を移します。上記表の通り、ボディは一貫してブビンガが使用されています。2000年代のサムはちょっと赤みがかっていますが、91年のサムはよりこげ茶に近い色。好みの問題でもありますが、この色味による印象の違いは結構大きく、91年モデルはいかにも質実剛健という感じからパッと見て強いインパクトを受けますが、高級という印象は一義的には浮かびません。一方、2000年代モデルは色味と杢の影響もあってか、ハイエンドベース然とした印象を受けます。


それ以上に大きな木部の変化はネック材と指板材です。'07サム6カスタムはオーダー品ですので材構成が違いますが、現行モデルはオバンコール5プライ(5枚のオバンコール材の間に薄いカーボン樹脂のような材が挟み込まれています)にエボニー指板。一方、'91モデルはウェンジ4枚にブビンガ3枚を挟み込んだ7プライに、さらに指板にウェンジを貼っています。このネックがボディ裏側からボディエンドまで貫通したスルーネック構造となっています。サムの場合は表から見るとネックのスルー部分が見えない特異な構造を採用していますが、いずれにしても、チューニングマシン→ナット→フレット→PU→ブリッジと、弦振動を直に受け音を出すパーツが全てスルーネック構造部に載っています。従って、ボディ材が一貫してブビンガではあるものの、このネック材の仕様変更が音に与える影響を無視することはできないと思いますし、実際にプレイした際のレスポンスの違いを掌で感じるほどの差異があり、これが決定的な音のキャラクター差に繋がっていると思います。たまに、木材が変わっても、所詮マグネティックPUが直接的に拾うのは弦振動による磁場の乱れであり、故に木材の違いによる差異は小さいとおっしゃる方もいますが、この2本のサム6のキャラの違いは、到底それでは説明が付きません。


ちなみに木材の一般的な特性で言うと、ウェンジは高域にクセがある材とされており、オバンコール(シェドゥア)がミッドのコシとともに、やはり高域に特徴があると言われています。また低域については、いずれも音像が明瞭で硬い傾向があるようです。この高域のクセというのは実際に弾いてみると良く分かる気がします。なかなか言葉での表現が難しいのですが、アコースティックギターに例えると、オバンコールネックのサム6がスティールギター、ウェンジネックのサム6はガットギター、といった趣を覚えます。どちらも明瞭で聴き取りやすい高域を持っています。ギタープレイヤーがスティールとガットを使い分けるように、この2本のサム6にも明確な違いがある訳です。ということで、次回はもう少し、'91サム6にフォーカスして音の特徴をご説明したいと思います。(結構、これを表現するのが難しいんです、笑)


つづく

【番外編】多弦アクティブベースとプリアンプ


Thumb 4 wiring
('89 WARWICK THUMB BASS + original preamp)


さて、みなさまの愛器にはプリアンプは搭載されていますでしょうか。ちょっと前と比べると、最近はパッシブ回帰の傾向が強く、プリを搭載していないベースも多いですが、多弦となると依然としてアクティブPU+プリのベースが幅を利かせているように思います。しかしながら、すごくシッカリした良い造りのベースなのに、なぜゆえにこんなプリを載せてるのか、意図はどこに?といった疑問を抱くようなアクティブベースが少なくないのも事実だと思います。


76_JB_org_wire
('76 FENDER Jazz Bass + bartolini TCT)


弦楽器全般に言えることではありますが、特に多弦ベースの場合は、弦テンションが強いこともあってか、残念ながらネックを中心として長期にわたって良好なコンディションを維持してくれるとは限らないのが実情です。そんな状況下、やはり楽器選びの最大のポイントは木部を中心とした楽器としての「コンディション」ということに、おのずとなってまいります。本来なら、全体として「これだ!」と思えるベースにめぐり合うのが最ものぞましいことではありますが、(例えば自分のように)なかなか市場に流通してこない廃盤ベースとなると、コンディションが良いものがあれば、即getするということになります。別の言い方をすれば、楽器としての素性がよく、弾きやすく、生鳴り(アンプラグド)の状態で心に響く音色と体に響く振動を感じることが出来れば、オリジナル状態にこだわらないという前提で、PUやプリといったエレクトロニクスはいくらでも良いものが揃ってますし、いつでも、本体加工をほとんど要さずに換装することができるのでOK、という訳です。多弦アクティブを使うベーシストとしては、もっとも手軽で、かつ、自身の意図を反映させやすいカスタムだと思います。


Streamer Stage1_wiring
('91 WARWICK STREAMER STAGE Ⅰ+ custom preamp)


そうは言いつつも、せっかく仕上がりの良い楽器なのに粗悪なオペアンプを使ったプリなんかを搭載しているベースを見ると、もったいない、って思ってしまいます。楽器本体は隅々まで思い至っているし、仕上げも丁寧、だからこそ総仕上げとして、楽器に命を吹き込むつもりで、製作者の意図が伝わるようなプリを入れて欲しいと思うのです。


最後に、プリアンプを交換する場合、自分はショップに頼まず自分でやることがほとんどです。木加工や高精度のセッティング等は、職人さんでないと出来ない仕事ですが、プリ交換は、文系ど素人の自分でも、いろいろと調べながらやってみると比較的簡単に理屈がわかり、応用が利くようになることと、自分でやると、その回路構成がとてもよく理解ができ、プレイヤーとしてその楽器に対する理解度も高まると思います。(配線の取り回しだけは、経験とセンスのなせる業だと思います・・・汗)


交換する際は、プリアンプの取説(installation manual等)を見ながら、その通りにやるというのが基本ですが、往々にしてマニュアルは、パッシブPUの使用を前提としていたり、2ボリュームものを前提としていたりしますので、ちょっとでもマニュアルと違うことがあると、一気にドツボにハマってしまいます。搭載しようと思ったベースが、2ボリュームではなく、バランサー付であったり、元のプリアンプ用の周波数切替スイッチ付のポットが付いてたり、プリアンプON/OFFスイッチ付のポットであったり・・・ 自分も以前はそうでした。でも、エレキベースというのは原始的な楽器なので、押さえるところを押さえれば、大丈夫だと思います。


番外編でこんなに長くなるとは思いませんでしたが、実はいくつかのプリをダメにしながら今まで得てきた自分の拙い経験に基づいて、押さえるべきと思われるポイントをさらに列挙しようと思いましたが、これまたとても長くなりそうですので、ご要望があれば、「番外編その2:はじめてのプリ交換(笑)」にでも譲りたいと思います。

■WARWICK Thumb Bass 6st '91 その4


91thumb6_wiring_org

先にも申し上げた通り、'07サム6カスタムとこの'91サム6とを改めて弾き比べてみると、根底に流れるサムベースの基本キャラクターは共通するものの、'91サム6は「攻撃的」「野性味」「無骨」、'07サム6カスタムは「クリーン」「繊細」「煌びやか」がそれぞれのキーワードといったところでしょうか。弦も張替え、ワックス塗布も一通り終わり、しばし'91サム6を弾き込みます。しばらく弾いていると、アンプラグドで弾いている時は全く感じなかった違和感をミッドに感じます。決して悪い音ではないのですが、これは例のプリアンプの所作と思い、おもむろに裏ブタを外し、ミッドコントロールのトリムを調整。しかしながら、いつまでたってもスウィートスポットが見つからない。ハイ/ローもいじりながらポイントを探りますが、1時間ほどで断念。「やっぱりプリアンプを換装しよう」と異例のスピード決断。


自分の場合、ベースに限らず、クルマやバイクもそうなのですが、とりあえずノーマル状態で本質を可能な限り認識した上で、もっと良くなりそうなところを探るというのが常套手段。にもかかわらず、今回珍しくも1時間そこそこでプリ交換をしようと決断したのは、最初の楽器店で試奏の段階で、プリアンプスルーの状態で弾きながら、既に別のプリアンプを載せた音を想像していたのかも知れません。そのプリアンプとは、サム6フレットレスで実績があり、プリを換えるならコレしかないと思っている、aguilar OBP-3。


THUMB_BASS_6_91_obp3

OBP-3はlow-mid-highの3eqコントロールのプリアンプで、9v×2の18v仕様、ミッドは400Hz/800Hzと周波数の切替ができるものです。自分の一番気に入っているポイントは、何といっても通常使用においては、low-mid-highの3つのコントロールが全てセンタークリック位置、すなわちブースト/カット無しの状態がもっとも「良い音」であり、OBP-3をスルーした音との音圧差が全く感じられないにもかかわらず、目の前の霧が一気に晴れたように、スルー音より明らかに音の輪郭がはっきりとし、音のスピードが速まった印象になる点。レスポンスの良さは18vプリならではのことでしょうか、とにかく静にも動にもフレキシビリティが高いゴキゲンなプリアンプです。


夜もだいぶ更けていましたが、思い立ったらいても立ってもいられず、早速開腹手術(笑) ダイニングのテーブルに作業用のマットを敷き、工具を持ってきて作業開始。とりあえず、現状のオリジナル状態の写真を撮りまくります。何かあったときに現状復帰しようと思って出来ない、というのが一番困るので、PU-プリ-ポット-ジャックの間の配線を中心に必ず写真を撮っておくようにしています。外すのはとても簡単です。基本的には、電池のアース、ボリュームポットからプリへの入力、プリからアウトプットジャックへの出力、の3つの配線をコテで温めて外すだけです。プリとトーンコントロールポットは抵抗値のマッチングの関係で、プリとセットで外します。次に、OBP-3のインストール。このOBP-3は、元々は昨年STATUSのSTEALTHに取り付けようとして断念、放置してあったものを活用。その関係で、ポット、スイッチ類は全てプリ配線に取付済であったため、取付も簡単、電池のアース、ボリュームポットからプリへの入力、プリからアウトプットジャックへの出力、この3ヶ所のみをkester44でハンダ付けしていきます。ただ1つだけ難点が。オリジナルのコントロールノブは「ボリューム」「バランサー」「high/lowスタックeq」の3つ、つまりコントロール部には3つの穴しかあいていない。「ボリューム」と「バランサー」は、これまたPUの抵抗値との関係でそのままにしておくので、プリ用の穴は1つのみ。ところが、このOBP-3は、「high/lowスタックeq」「mid eq」「mid周波数切替スイッチ(これがmidポットと一緒になっているバージョンもあるが、STATUS用に準備したものはその仕様ではなかった)」の3つの穴を必要とします。しょうがないのでとりあえずmidポット(キャビン内でも操作しやすいようにノブまでつけた・・・笑)とスイッチは絶縁してキャビン内部に遊ばせておき、high/lowスタックだけを外に出しました。(後日、vol+バランサー+スルースイッチが1つになったスタックポットを後日取り付け、midポットを表に出す予定。)文系出身の自分でも、ここまで場数を踏めばプリ交換も慣れたもの、多分10分もかからなかったと思います。配線取り回しに一切美しさが感じられないのは、毎度のことですが(苦笑)


さあ、いよいよ改めて音出し、と思いましたが、夜もかなり更けていますので、通電し音が出ることだけを確認し、サウンドチェックは翌日持ち越し(涙) それでもかすかに聞こえてくる音は明らかに輪郭がはっきりしつつ、さらに芯がコリっとした印象。期待大です。


つづく