■WARWICK Thumb Bass 6st '91 完結編回(やや長編) | ベーシストとエフェクター

■WARWICK Thumb Bass 6st '91 完結編回(やや長編)

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さて、いよいよ終盤です(笑) この'91サム6、早々にプリアンプをaguilar OBP-3に換装したのは大成功だったように思います。オリジナル(かどうかは不明だったのですが、先日米国のレビューサイトを見たら、シリアルがこの'91サムと50番違いの'91サムのレビュー記事が載っていて、僕と同じ悩みを抱えておられました。ちなみに、自分はその後にプリ交換の暴挙に出たわけですが、その御人はガマンしてオリジナル状態で使っておられる模様です・・・)のプリはハイを上げるとノイズが結構目立ったし、ミッドのトリムもちょっと動かすだけで劇的にキャラクターが変わってしまう始末で、とにかくナーバスな性格。一方、このOBP-3は、OBP-1のじゃじゃ馬的キャラを残しつつもノイズが極めて少なく、音圧とスピード感があり、飛躍的にハンドリングしやすくなりました。


ちなみに扱いやすさのお話が出ましたので、ついでに。この'91サム6、今までのベースの中で一番の重量級。ROSCOEやFODERAなどは比較的軽かったと思えるような重量で、サム6フレットレスの5.4kg、カスタム'07サムの5.5kg(この2本の差は、フレット材の重量だと思います)よりも重く、'91サム6はなんと5.8kg。300g程度なら大したことはなさそうな印象を受けますが、この辺りの重さになると、300gの差がとてつもなく大きく感じられます。こんなコンパクトなのに、なんでそんなに重いの?って思いますが・・・ ちなみに一番軽いのはSTATUS GRAPHITE STEALTH-2で6stで4.2kg。'91サム6と1.6kgも差があります。普段のスタジオ練習は担ぐのが楽なのでSTATUSを使ってますが、そろそろライブも近いので、本番をサムかSTATUSか、どっちで行くかを決めないといけません(汗) まあ、それは置いといて・・・


徐にWalterWoodsの電源を投入。普段通り、イコライザーはフルフラット(epifaniキャビとのマッチングの関係でlow-midをほんの僅か上げてます)で、inputゲインは12時、さすがに自宅なのでpostゲインは8時くらい(家では、このアンプのドライブ能力をほとんど使っていないことがよくわかります・・・)。サウンドチェック時のセオリー通り、シールドケーブル1本で直結。今回はBelden8412ではなく、よりニュートラルな印象をもつ国産の雄、MOGAMI 2534をチョイス。OBP-3イコライザーはフルフラット、ミッドの帯域は400Hz/800Hzが選択出来るのですが、自分はいつも通り400Hzにスイッチ。PUバランサーはセンター。


ブビン! 物凄いミッドのコシの強さです。この音なら、どんな爆音バンドでも、絶対にベースが埋もれずに聴こえるだろうと思われる主張の強い音。いささかミッドが強過ぎて、さすがにこのままではアコースティックな雰囲気やスラップには不向きと思われるので、ちょっとだけミッドをカット。中域を削るなんて、高校時代以来やったことがないのですが、'91サムの場合はミッドを1割くらい減らしてあげると程よい塩梅。このミッドの強さは、'91サムの最も大きな特徴であり、自分にとってはメリットであると思っています。というのも、そもそも楽器の音というのはフラット状態が本来的にその個体が持っているもの全てであり、それ以上でも以下でもないと考えています。従って、状況に合わせてサウンドの調整を行う場合、「足りない帯域を足す」という考え方をすると、そのベースが持っていない音域を電気(あるいは電子)的に別の所から借りてくることになるので、どうしてもムリが発生し、それが不自然さとして音に現れてくると思っています。足すのではなく「多すぎる部分をちょっと削ってあげる」というプロセスをとってこそ、楽器本来の音を保ったまま、臨機応変な対応が可能と思っています。従って、ロックもアコもやる自分にとって、豊かなミッドレンジにフォーカスされているベースというのが、とても大きなメリットになってきます。


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さて、本題からずれましたが、'91サムの音に戻りたいと思います。


2フィンガーやピックで16ビート系の速いパッセージを弾いても、明確に1音1音が聴き取れ、音に不要な膨張感がありません。凄く歯切れの良いビート感を感じる生々しい音です。ロングトーンにも特徴があり、ボディをあまり共鳴させずに音を出しているためか、珠粒のようなキレイな発音のあと、サスティンがそのまま延々と続きます。よくも悪くもあまり減衰していかないので、白玉を弾き続けるには都合が良いのですが、他メンバーのテレキャスなんかと合わせる場合、リリース特性があまりに違っていて、音の止めや減衰にとても気を使うほどです。いずれにしても、指・ピックでプレイすると、当初ピックアップとしてEMGとbartolini(たまにduncan)を選択的に搭載していたこの時代のサムでは、6弦にはあえてEMGではなく主としてbartoliniを載せていた設計者の意図がとてもよく理解できます。


スラップは、ビキビキっとしたWARWICKらしい独特のサウンドですが、最近のサム6に見られる、繊細で煌びやかな美しい高域とは異なり、ザクザクと切り込むような力強いサウンドです。やはりミッドのコシがスラップサウンドの特徴も決定付けているように思います。なかなか面白いもので、スラップの音というのは、ベースによってキャラクターが様々です。例えば、ROSCOEのスラップは、パリっとしていながら木の暖かみを感じるもの、STATUSはピシっとシャープに切れ込む印象で硬質で無機質な質感、FODERAとSMITH(ウォルナット系)は個人的には完全に指弾きにフォーカスした印象を受けます。メイプルSMITHのスラップはキャラ的にはROSCOEのそれに近い印象です。サムについては、'07モデルはSTATUSの硬く無機的な質感とROSCOEの空気感のある木質的な質感とのハイブリッド的なキャラです。とても美しく硬質ながら柔らかさも併せ持つ音。一方の'91モデルは、とにかくパワー感に溢れていて、6弦的なプレイよりは、4弦のようにシンプルにぶっ叩きたい、という衝動に駆られる音。PUバランサーをわずかにフロントに振ったほうが、よりワイルドさが強調され良い感じになります。最近、自分もあまりコンプを使わないのですが、FMR Audio RNLA7239でヴィンテージリミッター的な甘めの倍音を足してあげると、更に雰囲気がupし、なんとも言えないサウンドに仕上がります。


さて、大別して、指・ピック、スラップサウンドの特徴をご説明しましたが、これだけを捉えると、6弦にもかかわらずパワー一辺倒で繊細さに欠けるような印象を与えてしまいますが、これはひとえにプレイヤー次第であることを、改めて思い知らされます。うまく弾いてあげれば応えてくれますしその逆もしかり、その日の調子が生々しく演奏に反映されてしまう、そんな印象を受けます。なかなか表現が難しいのですが、現行版のサムのようにちょっと触れただけで軽やかに鳴るというタイプではなく、どちらかというとヴィンテージベースのような生々しさが垣間見れる、ひょっとすると、初期のサムベースを作っていた職人は、革新的なベースを作りたいという思いと同時に、ヴィンテージベースに対する強いリスペクトを持っていたのではないか、そんな気がしてなりません。それに感化され、自分自身も'91サムの個性に共感すると共に、かすかに香るエレクトリックベース発祥の地のアメリカンなフレーバーになんともいえない安心感と居心地の良さを覚えているのかも知れません。


とりあえず、完結です。ご高覧、誠にありがとうございました。