■WARWICK Thumb Bass 6st '91 その5 | ベーシストとエフェクター

■WARWICK Thumb Bass 6st '91 その5


THUMB_BASS_6_91_13


さて、前回プリアンプをaguilar OBP-3に換装し、時間の都合でそのままサウンドチェックをせずに一晩寝かせることとなってしまいましたが、サウンドチェックに行く前に、この'91サムになぜ自分がこだわってきたのか、その理由をご理解いただくためにも、あらためてspecに触れたいとおもいます。


    サム6FL         サム6①        サム6②
製造年 2003          2007          1991
ボディ ブビンガ       ブビンガ        ブビンガ
指板  エボニー       ウェンジ        ウェンジ
ネック オバンコル5p オバンコル+ブビンガ7p ウェンジ+ブビンガ7p
PU   MEC         MEC          bartolini
プリ  BEC(aguilar換装) BEC          bartolini?(aguilar換装)


チューニングペグやブリッジなどのハードウェアにはWARWICKの刻印が入っているオリジナルです。細かく見るとshaller製やJim Dunlop製のものと思しき物もありますが、詳細は不明です。'89モデルの4弦は、ハードウェアは基本的にshallerの刻印が入った物がそのまま取り付けられていたのですが、90年代に入ってからブランドロゴ入りの特注を出せるだけの量を生産できるようになった、ということかもしれません。いずれにしても、WARWICK社は96年までは旧西ドイツの当初の工場(「こうじょう」ではなく「こうば」)で製造されていることもあってか、'91モデルにはハンドメイド然とした趣を強く感じます。これは、決して良いことだけではなく、丁寧に作りこまれた部分もある反面、手作業ゆえの精度の低い部分(ご愛嬌のレベル)も若干見受けられる、ということです。


さて、木部に話を移します。上記表の通り、ボディは一貫してブビンガが使用されています。2000年代のサムはちょっと赤みがかっていますが、91年のサムはよりこげ茶に近い色。好みの問題でもありますが、この色味による印象の違いは結構大きく、91年モデルはいかにも質実剛健という感じからパッと見て強いインパクトを受けますが、高級という印象は一義的には浮かびません。一方、2000年代モデルは色味と杢の影響もあってか、ハイエンドベース然とした印象を受けます。


それ以上に大きな木部の変化はネック材と指板材です。'07サム6カスタムはオーダー品ですので材構成が違いますが、現行モデルはオバンコール5プライ(5枚のオバンコール材の間に薄いカーボン樹脂のような材が挟み込まれています)にエボニー指板。一方、'91モデルはウェンジ4枚にブビンガ3枚を挟み込んだ7プライに、さらに指板にウェンジを貼っています。このネックがボディ裏側からボディエンドまで貫通したスルーネック構造となっています。サムの場合は表から見るとネックのスルー部分が見えない特異な構造を採用していますが、いずれにしても、チューニングマシン→ナット→フレット→PU→ブリッジと、弦振動を直に受け音を出すパーツが全てスルーネック構造部に載っています。従って、ボディ材が一貫してブビンガではあるものの、このネック材の仕様変更が音に与える影響を無視することはできないと思いますし、実際にプレイした際のレスポンスの違いを掌で感じるほどの差異があり、これが決定的な音のキャラクター差に繋がっていると思います。たまに、木材が変わっても、所詮マグネティックPUが直接的に拾うのは弦振動による磁場の乱れであり、故に木材の違いによる差異は小さいとおっしゃる方もいますが、この2本のサム6のキャラの違いは、到底それでは説明が付きません。


ちなみに木材の一般的な特性で言うと、ウェンジは高域にクセがある材とされており、オバンコール(シェドゥア)がミッドのコシとともに、やはり高域に特徴があると言われています。また低域については、いずれも音像が明瞭で硬い傾向があるようです。この高域のクセというのは実際に弾いてみると良く分かる気がします。なかなか言葉での表現が難しいのですが、アコースティックギターに例えると、オバンコールネックのサム6がスティールギター、ウェンジネックのサム6はガットギター、といった趣を覚えます。どちらも明瞭で聴き取りやすい高域を持っています。ギタープレイヤーがスティールとガットを使い分けるように、この2本のサム6にも明確な違いがある訳です。ということで、次回はもう少し、'91サム6にフォーカスして音の特徴をご説明したいと思います。(結構、これを表現するのが難しいんです、笑)


つづく