ベーシストとエフェクター -12ページ目

「気持ちの問題」とは

NIKE_T90


今日は、音楽とはだいぶ離れますが、ちょっとだけサッカー談議をさせてください。(写真は、自分の愛用ボール、NIKE T90 ELECTRA LFP。ヒカリモノ系で、いかにも自分らしい・・・)


ご覧になった方も多いとは思いますが、昨日開幕となったサッカー東アジア選手権(2003年に続く2回目の開催)。今回、優勝を狙う日本が北朝鮮を相手に痛恨の敗戦。「まさかの」とか、そういう形容詞を付けられるようになったこと自体、日本サッカーの出世をあらわしているかも知れないが、先のアジアカップ優勝もあり、アジア圏では「勝って当たり前」の雰囲気が、やる方にも、観る方にもあることは事実であろう。かくいう自分も、昨年のJリーグ後節の浦和レッズの試合を観る感覚で、安心して観始めました。


前半の動きは良かったものの、時間を追うに連れて、選手の動きと共に、連携も悪くなる一方。前半で立て続けのミスから失点、それを奪い返すことが出来ずに終わってしまった。そんな状況で、自分は無論そうだが、おそらく観ていた多くの日本のサポーターは、後半は行ってくれる、と思っていたに違いない。ところが、前半よりも悪くなる動きで、目を覆いたくなる状態のまま、試合は終わってしまった。


試合終了後、監督も選手も口々に言っていたのは「気持ちで負けた」という言葉である。「気持ちの問題」というのは、なかなか根の深い問題だ。確かに、試合を観ている限り、今回は気持ちの面で北朝鮮に圧倒されていたことは事実だと思う。但し、それはチームとしての「総和」の問題であり、個々の選手を見ると、気持ちで負けていない選手も多くいたと思う。個人的な主観ではあるが、浦和の田中(達)などは「とにかく1点を」という気持ちが漲っていた。反面、いつもは海外組との競争に晒されていて必死になっている国内組トップ陣に、いつもの危機感が見られなかった。


サッカーは、やはり「チーム」で戦うスポーツである。個々のタレントがいくら高くても、個々の気持ちが強くても、チームとしての「総力」に昇華しなければ、チーム力の「総和」は下がる。これが、サッカーの厳しさであり、面白さでもあると自分は思っている。この試合の内容そのものを見る限りは、特に中盤からは、双方ともロングボールを多用する単調な攻撃に終始して、全くもって面白いものではなかったが、北朝鮮選手のチームとしての、そして個々の選手の、どちらをとっても「強い気持ち」が随所に見られ、その意味では、短期間の内にチームを再構築した北朝鮮は大したものだと思った。


ただ、新加入の田中(達)、巻の「個」の気持ちと頑張りには目を見張るものがあった。「点を取らないと意味がない」のは確かであるが、海外組のみならず新加入の若手にも煽られる状況は、国内組トップ陣の危機感に再び火をつけてくれるに違いない。次回に期待!

コンプレッサー談議 : リアルチューブ vs シミュレーション

compressors


自分は以前、ベースにはコンプレッサーをかけっぱなしにするのが当たり前と思っていました。最近はそんなこともなく、スラップやピック弾きの際、音量を上げずに音圧が欲しいといったシチュエーションにだけ使うようになっています。そんな、割り切った使い方を前提とすると、retrospec The Squeeze Boxの良さが際立ってきます。


以前にもお話ししたと思いますが、Squeeze Boxは、軽くかけるよりも、ちょっと深めにかけたときの方が、その良さがより前面に出てくる気がします。スラップでもピック弾きでも、最初のアタック音がカタマリのようにブリっと残って、急な圧縮が始まったと思ったら、また盛り返しがやってきます。まさにチューブコンプの王道といった感のセッティングです。音のツブを揃えるとか、そういった感覚ではなく、どちらかというと出音のエンベロープをカッコ良く加工する、といった感覚です。


で、つい最近、普段は面倒でなかなか引っぱり出さないエフェクトボードを引っぱり出して、Squeeze Boxをonにして爪弾いていたときに、「そういえば、EBS MULTICOMPって、どんな感じだったっけか?」と、何気に考えてしまいました。EBS MULTICOMPは、以前持っていたのですが、今はもう手元になく、比べようもありません。一度、比較して見たいと思うと、一旦手放したものでもまた買ってしまうのは、良くも悪くも自分の性分。買ってきてしまいました。ということで、リアルチューブ vs チューブシミュレーションの両方を使い比べたレビューをしてみたいと思います。


The Squeeze Boxの方は、上でも書いた通り、とても生々しい圧縮感があります。もちろん弾いいるときの心地よさは言うまでもありません。唯一の難点は、音量コントロールの難しさでしょうか。良く言えばダイナミックレンジが広いと言えなくもありませんが、出音のアタック音と圧縮時の音量差が聴感上とても大きく感じるように思います。単体で弾いているときは何ら問題はありませんが、アンサンブルでの使用を前提とすると、on/off間の音量バランスを上手くとらないといけないという難しさがあります


一方のEBS multicompは、改めて使うと、チューブシミュレーションモードよりも、ノーマルモードの方が、ホンモノのチューブコンプに近い感覚があります。新しい発見でした。サウンドそのものについては、改めて言うまでもなく、とても心地の良い使用感で、本当に良くできているなーと感心します。でも、この multicompとSqueeze Boxを比較して決定的に違うと思うのは、multicompの扱いやすさです。これだけいい感じでチューブコンプをシミュレートできていて、この扱いやすさは大したものだと思いました。Squeeze Boxで感じるセッティングの難しさとかは微塵もなく、on/off間の音量バランスも一瞬でアジャストできてしまいます。非常に高いレベルで感性の満足と機能性をバランスさせている名器だと改めて感じた次第です。


ただ、multicompはずっと弾き続けていると、あまりにツブが揃い過ぎていることに気付いてしまいます。手元のダイナミックレンジの調整幅が小さくなってしまい、ちょっと飽きが来るという感じでしょうか。Squeeze Boxのホンモノチューブの生々しいライブな圧縮感は、多少扱いづらくとも、何物にも代えがたいものがあります。この2つのペダル、要所で使い分けると面白いかも。

BAGEND D10-B その2

thumb&aguilar&bagend


またまた、久しぶりの更新です。


先日、更新をしたとき、おやぶんさん、BJさん、GWNNさんから早速のコメントを頂き、ありがたく思います。昨日、本業の企業買収案件が1つの山を越え、久しぶりにちょっと落ち着いた状態でブログを書いています。(といっても、仕事の合間をぬって、ですが・・・)


さて、先日ご紹介したBAGENDのスピーカー。音が出せる時間になかなか家にいない、という状況が続いていますが、使った印象などをご紹介します。


このモデルは、BAGEND D10-Bというモデルです。D10は10"をdoubleで搭載の意で、これがsだとsingle、qだとquattroということのようです。Bというのは、BAGENDの場合は2つに意味があり、使い分けが必ずしも明確に定義されていないようですが、「10B」と書くと、低域の再生周波数が40hz~となる低域重視のモデルを意味するbassで、xはcoaxialが搭載された~20Khzまで再生するものになります。無印のものは50hz~で若干中域の方に振った設定です。「10-B」と書くと、バーチシェルのモデルを意味するようで、この-Bが-Dとなっているものは、外装がdeep red carpetになっています。最近のスピーカーキャビがモデル名で仕様がわかるようになっている傾向は好ましいと思います。


いずれにしても、このモデルは10インチが2発で、再生帯域は50hz~5khz(ノンコアキシャル)、オイルフィニッシュされたバーチシェル仕様になっています。90年代の前半ころの正規輸入されたもののようで、搭載スピーカーはsoundbarrier製の8Ω350W(rms)×2で、これをパラレルに接続しています。従い、キャビ全体としては4Ω700W(rms)という、10インチ2発にしては、かなりの大出力に耐え得る設計になっています。

サイズは10インチ×2なので、555mm*451mm*300mmで重量25kg程度、以前の40kgを超える重量のEBSと比べると可搬性は格段に向上しています。一人で難なく異動ができる!これがコンパクトキャビを探し回っていた一番のポイントだったので、とても満足しています。あと、同じくオイルフィニッシュのTHUMB BASSと並べるととても絵になるそのキレイなアピアランスもとても気に入っています。


で、その軽量・コンパクトさを上回るメリットが、そのサウンドの上質さです。これは好みが分かれるところだと思いますが、以前自分が使用していたEBSのキャビは、ある意味とてもオーディオ的で、アンプから出力された音を、そのまま何の手心も加えずに再生してくれるイメージです。一方、この仕様のBAGENDは、楽器用(ベース、アコギ、セミアコギター等)として使うことを念頭に置いて設計されている感があります。これをナチュラルと言えるか言えないか、議論はあるとは思いますが、少なくとも決してオーディオ的ではありません。その点では「楽器用」というよりは、むしろ「楽器」そのものなのかも知れません。


前にもご紹介した通り、高域はハイファイでもなく、メロウになり過ぎることもなく、ベースキャビとしてちょうど良い感じがします。長時間弾いていても、高域が耳につき過ぎることもなく、飽きが来る音でもなく、聴感上、とても心地の良い高域です。低域はスーパーローを敢えて押さえているので、ローを上げてもブーミーになることもなく、締まった感じで、かといって10インチキャビにありがちな低域の不足は全くありません。このサイズで良くこれだけ低域が出るなという印象です。で、やっぱり特筆もののの珠玉の中域です。なかなか表現が難しいのですが、一言で言うとサムベースのミッドととても相性が良い、というところでしょうか。こんな感じで、上から下までとてもスムースな再生をしてくれます。


画像の通り、Thumb Bass → AGUILAR DB359 → BAGENDとつなぐと・・・ ご想像の通りのサウンドです。その音を十分に楽しめない現状が・・・(涙)

BAGEND D10-B

みなさま、大変ご無沙汰しております、kazでございます。

本当に長い間、更新が出来ていなくて申し訳なく思います、スミマセン。


今も、決して時間に余裕が出来た訳ではなく、好きなときにトイレに行く程度の余裕ができた、とでも表現しましょうか、そんな感じなので、トイレに行く代わり(?)に久しぶりにブログ更新をさせていただきます。


みなさまにもいろいろとコメントを戴いておりますが、順にお答えしていきたいと思いますので、今しばらくお待ちください。


さてさて、そんな多忙中でも、機材投資は忘れていません!!!


実は、新しいスピーカーキャビネットを買ってしまいました。BAGEND D10-Bです。10インチ2発のバーチシェルの、それはそれは美しいキャビです。ノンコアキシャルなので、高域のキラキラ感はありませんが、高域に艶があって、低域もバッチリでます。一番気に入っているのは、印象的な中域と、全体のバランスのよさ、そして、コンパクトで軽いところかな。また、時間のあるときにインプレッションを書きたいと思います。


BagEndD-10B


それでは、とりあえず今日は、こんなところで、また仕事に戻らせていただきます。see you!

ベースのメンテナンス 【その1】

ベースのメンテナンス 【その1】

今までもところどころでお話をしていましたが、自分は楽器に拘わらず、すべからく「道具」は全てメンテナンスが最重要事項の1つであると思っています。出音は別にして、演奏性だけで考えると、Roger Sadowskyがきっちりメンテをした2~3万のジャズベコピーモデルと、いい加減なメンテして放っておかれたSado○skyだったら、間違いなく前者の方が勝ると信じています。それほど、自分にとってメンテは重要だと認識しています。

ということで、今回は自分が普段のメンテナンスでどんなことに気を留めて、どんなことをしているかをご紹介する一方で、メンテは試行錯誤の繰り返しで、いろんな方からいろんなお話を伺って、どんどんブラッシュアップされるものだと確信しておりますので、皆さんがどんなことに気を留めていらっしゃるかを是非教えて頂きたいと思います。

楽器の入手時がメンテのスタートとなります。最近は中古楽器の入手が多いのですが、新品購入時でも基本的にはあまり変わりはありません。まずは、を全部外して、PUネジを外します。最初からPU下の構造が分かっている場合は外さない場合もありますが、多くのものはウレタンスポンジを緩衝材に敷いています。このスポンジは経年とともに機能を果たさなくなるので、径が大きめの短いバネに交換します(これはWARWICKのパクリです)。これで常にPUの高さが安定するようにします。で、PUを戻して、一旦、適当な高さに調整します。次は、念のためにフレットの揃い方をチェックします。よっぽどの安物でない限り、大抵フレットはキレイに揃ってますが、場合によっては高さが不揃いだったり、両端の処理がちゃんとされていなくて、スライド等をした際に手がひっかかる場合があるのです。程度が軽い場合は自分でやりますが、今まで重度の不揃いは幸い経験したことがありません。次にナットのチェックです。これもちゃんと作られた楽器の場合は溝がちゃんと掘られてますし、浮きもありません。

次はブリッジです。一応、ばらす前に簡単にスケッチ(最近はデジカメで撮影)をして、あとで再組み立てができなくなる(汗)ようなことがないようにして、そのあと、ばらばらに分解します。ガタツキの原因になるような問題がないかを確認することと、ネジ、ビス、バネ類にクレ556を塗布して操作性と安定性を高めるため。弦高調整等は、本当にとても微妙なセッティングを必要とする、と自分は思っているので、快適というか自己満足できる状態にするためにこうしています。ちなみに、多少状態の悪い中古品でブリッジにさびがあっても、これをやると、実用上問題のないレベルまで行くケースがほとんどです。1つ1つの部品を丁寧にクリーニングして潤滑材を塗布したあと、簡単に仮組み上げし、元に戻します。

次はオレンジオイルとワックスorクリーナーの塗布です。オレンジオイルは指板にまんべんなく塗布します。そして気持ち浸透させておいて、他の部分にワックス(オイルフィニッシュの場合)orクリーナー(塗装モノの場合)を塗ります。ちなみに、楽器は1回/週のサイクルで磨きますが、このように弦を外した状態の時は、特に念入りにやります。特にブリッジ周りやPU周りが複雑なベースの場合や、多弦の場合は、弦を張った状態だと手入れが出来ない部分があるためです。で、ボディ・ネックを磨き終わったあとに、指板のオレンジオイルをふき取ります。中古楽器の場合は、時間をかけて、フレットの溝にたまったカスを取り除きます。

次は、ネジ類の増し締めです。中古の場合はもちろんですが、新品の場合も、結構いい加減にボルトを止めているものもありますので、ちゃんと増し締めして上げます。ボルトオンネックのボルトが緩んでいたこともあります。ペグのネジが緩んでいたりしたこともあります。弦の振動をカッチリと受け止めるためにも、以外とこの作業は重要だと思っています。これが終わったら、もう一度楽器全体をクロスで丁寧に(気持ちを込めることが大事かも・・・)拭いて磨いてあげます。

で、一通り終わったらを張ります。弦の素材やテンションの違いで楽器の状態が結構変わってくるので、最初からセッティングをきちんと決めるためにも、基本的には、新品購入でも、デフォルトの弦は使わず、普段使用している新品弦を張ります。弦を張るときは、弦の素材やベースのスケールにもよりますが、大体ペグポストを2巻きして、3巻き目がネックに向かう感じに弦を切ります。もちろん、弦にネジれを起こさないように、最初にポストに手でぐるぐると巻くようなことはせず、先端を引っ掛けたあと、面倒臭がらずにペグを何度も回して締めていきます。とりあえず、規定チューニングの状態で、ペグポスト、ナット、ブリッジ等、弦が曲げられたりする部分は、軽く指で押して、形を作ってあげます。で、そのあと軽く弾き込んで余分なたるみを取ったあと、もう一度チューニングをあわせます。

ここで、普段使用する弦を張った状態で、とりあえずネックを1回調整します。好みのネックの状態は基本真っ直ぐで僅かに順ゾリ。順ゾリ具合は本当に僅かで、1フレットと最終フレットを押さえた状態で、12フレットと弦の間に名刺が1枚挟まる程度です。ワーウィックの場合は意図的にもうちょっと順ゾリを強めた方がよい場合もあるので、この辺は臨機応変ですが、だいたいこんな感じです。で、トラスを回しても、回した後の状態が安定するまでは1日くらい寝かせておかないとセッティングが出ないので、これはとりあえず、仮で設定します。で、次は一回目のオクターブチューニングですが、続きはまた今度。

to be continued・・・

楽器の素材としての「接着剤」

ちょっと仕事で忙しくてバタバタしており、申し訳なくも、全く記事の更新が出来ませんでした。今日は、自分がずっと以前から気になっていたにも拘わらず、あまり思い至らすことがなかった「接着剤」について考えてみたいと思います。

自分が使っている楽器はすべからく接着剤が使われています。皆さんの使われている楽器なんかもそうだと思います。スルーネックのサムベースはそれこそ体全体の木材が接着剤でくっついていますし、IBANEZのベースのボルトオンネックの3ピースメイプルの接着材でくっついてるし、NS Designのアップライトも接着剤でくっついています。ネックと指板の接合にも接着剤が使用されています。それこそ、セットネックに至っては、物によってはボディとネックの間に接着剤の幕があると表現してもよいものもあると思います。

ここのあたりが、自分は以前から気になっていて、スルーネックと言っても、それこそボディ全体が一本の木材から削りだされていない限り、必ず接着剤が使われているはず。そうだとすると、スルーとボルトオンの違いは「接着剤で接着」するか、「ネジで圧着するか」の違いしかない、ということになります。サウンドに多大なる影響を及ぼす構造の違いとしてスルーネックとかボルトオンとか言ってる割には、接着剤に関してはとても無頓着であることが、とても気になっていた訳です。ということで、調べる、というほどのことは出来ませんが、ちょっとだけこの辺を考えてみたいと思った次第です。

楽器用の接着材として、古来から有名で今でもクラシック系の楽器用として慎重されているのが「膠=ニカワ」ですね。元々は絵画を創作する際に、顔料を固定させるために使われた接着剤であるそうです。ニカワの主成分は、良くご存知のコラーゲンで、一般にはゼラチンとも言われています。動物や魚の皮や骨に多く含まれる成分です。にこごりのような物を湯煎して溶かしながら使用すそうです。楽器用として今での使われているのは、塗膜が薄くて、木材への浸透性が優れていて接着力が高いため。また、湯煎をすれば溶けるように、楽器の微妙な変化に対する追随性と言うこともあるのかも知れません。(故に、ちゃんとしたヴァイオリン等は湿度変化に弱い、ということなのでしょう。) 一方、欠点もあるようです。乾燥が速く、とっとと作業を終わらせないとすぐに固まってしまうこと、あとはニオイだそうです。(動物のタンパク質由来だから、容易に想像できます。) 

これを改善したのが、米FRANKLIN社の「タイトボンド」だと言われています。音に対する影響や接着力等のメリットを維持したまま、デメリットを解消したものだそうです。即ち、湯煎をせずとも常温で作業できる、硬化時間が選択できる(数十min~数h)、そして、臭くない。成分は脂肪族樹脂ということで詳しいことは分かりませんが、ニカワと同様に水溶性で作業性がとても良い、とのことです。これは、楽器用のスタンダードとして使用されることが多いみたいですね。自分は、このタイトボンドが白いドロっとした液状であるため、いわゆる「木工用ボンド」と混同しましたが、全く別物です。木工用ボンドの主成分は「酢酸ビニール」で、固まっても弾力性がありますが、タイトボンドは硬化するとカチカチになってサンドベーパーをかけることができます。音響特性は、ニカワと同様、と言われており、影響がないわけではないが、むしろ好ましい方向への影響を与えると言われています。(ただ、これに関しては自分が明確なデータを目にした訳でないので、単なる受け売りであること、ご容赦ください。)

そして、次に楽器用として現在幅広く使用されている「エポキシ接着剤」です。現在は、ソリッドのみならず、ハイエンドのアコースティック楽器に至るまで幅広く使用されている模様です。接着力が強く、硬化の前後での容積変化が少ない(これは楽器用としてはとても重要なポイントだと思います)、溶剤・薬品はもとよりニカワ・タイトボンドと違い水に対しても耐性を持っていて、硬化すると不溶不融の性質を持つ樹脂になると言われます。最近では、エレキベースのフレットレスの指板に塗布されるケースも多いですよね。

以上、主に3つの接着剤が楽器用として使われているようですが、自分の楽器に使われているものが何であるかは、正直言って分かりません・・・ ただ、水に溶けることはないので、おそらくはエポキシ系が使われているものだとは思います。

最後に音に対する影響についてですが、これもちゃんとしたデータがある訳ではなく、全く分かりません。(一番大事な部分なのにスミマセン。)ただ1つ言えるのは、自分の考えとして「樹脂」というのは、音響的にはむしろ良い方向への影響を与えると思っていることです。

「樹脂」とは「樹木のアブラ」と書きます。代表的で分かりやすいものが「松脂=マツヤニ」で、即ち木材は、本来的にその内部に樹脂、或いは最終的に樹脂に変化する素材を保持していると考える訳です。自分はオイル、ラッカー、ウレタンの3つの代表的なフィニッシュを施した楽器を持っていますが、いずれも、そのフィニッシュの目的は「材の安定と保護」だと考えます。いろんなデータと自分の主観を織り交ぜて考えると、木材の中にある「樹脂」を主とした成分が、経年と共に熟成・硬化し、これが楽器の素材としての木材を成長させ、響きを良くするものだと考えます。ちゃんとメンテされ大事にされたヴィンテージ物の楽器が良い音を出し、ネック等の状態も安定する所以はこの辺りにあるものと思います。そのように考えると、最初から樹脂を基材として楽器を作ったNed Steinberger氏の行動は、当初は奇抜と評されながらも、実はとても理に適っているのかも知れません。改めて彼の天才ぶりに感服する次第です。

歪み系エフェクターを使うときの「ゲイン」コントロール

自分は元来Jazz/Fusion系がオリジンであったこともあり、完全クリーントーンが基本だったため、以前はいわゆる歪み系エフェクト類にはほとんど興味を持っていませんでした。でも、現在はメインがハードロックバンドなので、歪み系は味付けとして結構使っています。

現在は、FULLTONE BASS DRIVE(シルバー筐体の現行品)を使っていますが、その前は同じくBASS DRIVE(青い筐体の旧型)、Guyatone FLIP BB-1 Bass Driver、proco RATⅡ、SANS AMP CLASSIC、BOSS OD-1(名器! でもベースに使うと・・・)、YAMAHA REX50(デジタルマルチ)等々を使ってまいりました。この中で以前ご紹介をしたのはFULLTONE BASS DRIVEだけですが、それぞれに個性があり、良いところもあれば悪いところもあります。

ただ、実はベースで歪み系エフェクトを使って、その性能を最大限引き出そうとするときに、ギタリストは当たり前のように分かっているのに、ベーシストは、ベーシストであるが故にあまり注意を払っていない点があるような気がします。実は自分も恥ずかしながら、そのポイントをあまり重視していませんでしたが、それは、歪み系エフェクトの前段での「ゲイン」のコントロールです。

一口に「ゲイン」といっても、いろいろと意味がありますが、ここではベース本体、あるいは本体の一部とみなせる機器からから出力される信号レベルのコントロール、と定義します。多くの歪み系エフェクトには、それ自体にゲインノブが付いているものが多いですが、楽器本体から出力される信号のゲインコントロールと、エフェクターに入力された信号に対するゲインコントロールでは、やはりその性格が全く異なり、結果として出音のキャラクターも大きく異なります。

話を戻して、なぜ自分がゲインの存在をこれほどまでに意識するようになったかを説明します。それはつい最近、以前使っていたTUNEのベースからWARWICKのサムベースに持ち替えたときのことです。通常はアンプ直でつないでいたので、両方のサウンドの違いは大体耳が覚えていました。で、しばらくして、エフェクトボードを引っぱり出してきて、つないでみる。すると、楽器本来のサウンドの違いとは明らかに異なる質の差異があります。そのときはプリセット状態でサムベースの方がTUNEよりもゲインが高かったのですが(サムベースはゲインコントロールが基盤についているのである程度は調整できます)、その歪みの音がなんとも艶っぽくて、スバラシイものでした。歪んでいるのに粒立ちが良くて、なんでこうも違うんだろう・・・ そっか、入力信号のレベルが全然違うから、同じdriveレヴェルでもdrive感が全然違うのか、という訳です。

そこで「じゃ、もっとゲインを強制的に稼いだらどうなるんだろう」って思って、ナチュラルブースターの代表格的な存在であるMXR microampを買ってきて、試してみました。読者の皆さんにはアホかと思われるかも知れませんが、ナルホド、ギタリストってブースターをこうやって使っているんだ! って、いまさらながら思った次第です。そうすると、今度はブースターに懲りたくなります。要は、クリーンゲインブースターは、歪みのみならず、他の全てのエフェクターは素より、最終的にはアンプに入力される信号レベルを決定することになるため、サウンド全体のハリ感に多大なる影響を与えるもの。だから、それこそ、ゲインブースターは「楽器の一部」であると思うに至りました。

これがまた面白くて、ブースターにもいろいろと性格があります。mxrを手始めに、ちょっと変わったところでは今はなきlane poorや、hao、JT、fulltone、xotic等。さすがにpete cornishまでは行きませんでしたが、聴感上、限りなく原音に忠実にレベルのみを上げてくれるもの、意図的にチューブっぽさを付加するもの、ゲインブーストに留まらず、他の機能も付加されたもの、いろいろとあります。使い勝手とサウンドを考慮して、現在自分はxotic RC-Boosterを使用しています。

こうなると「ゲイン」のコントロール如何で、相当幅広くサウンドのニュアンスを操れることが理解でき、歪みのみならず、アンプからの出音やDIに出力する信号のサウンドメイク、いろんなところでゲインを活用するようになります。

いろいろと書き連ねましたが、歪み系エフェクトのみならず、エフェクト全般、ひいてはアンプに対する入力負荷=ゲインの差から来る音圧感の違いで、出音はガラっと変わってきます。特に歪み系エフェクトについてはゲインの違いによって、サウンドキャラクターの違いが如実に現れてきます。歪み系エフェクターを選ぶ際は、それ単体のみならず、そのペダルを使うことを想定している楽器の出力レベル、あるいは、その楽器のゲインが不足する場合、どのブースターを使ってゲインを稼ぐかを考える必要があり、楽器+ゲイン+エフェクトの組み合わせで、初めてサウンドキャラが分かる、ということだと思います。ちなみにあのfulltoneでさえも、巻き数の少ないシングルコイルのパッシブやアクティブ使用を前提としたPUのパッシブ使用等、低ゲインのベースをそのまま突っ込むと、実はかなりショボイ音になり、いくらエフェクター側のvolumeやdriveツマミを操作しても、基本キャラクターは変わりません。長くなりましたが、そんな視点をもちつつ歪み系エフェクターを選んでいくと、また違う発見があると思います。

kazのヒーロー(その4) : Gino Vannelli

今日は久しぶりにアーティスト紹介をさせていただきます。今回のヒーローは、Gino Vannelli ジノ・ヴァネリです。年代によって、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、基本的にはあまり表にハデには出てこないアーティストです。でも、その楽曲の壮大な展開、複雑極まるテクニカルなコード進行、満ち溢れる音楽的アイデア、斬新さと古典の共存、どのように形容して良いかわかりませんが、80~90年代の日本の歌謡界のみならず、世界中のあらゆる音楽シーンが、彼のアイデアを拝借した楽曲で満ち溢れていたことは、厳然たる事実だと言えると思います。学生時代、学校にも行かず某音楽事務所に引きこもってひたすらアレンジの勉強をしていた自分も、ことアレンジに関しては彼から絶大な影響を受けました。

それだけ影響を受けていながら、自分は彼(正確にはVannelli3兄弟)の素性をほとんど知りません。おそらくご存知の方はほとんどいないと思いますが、それだけ謎の多いアーティストであることも確かです。あれだけの才能があれば(私見ですが)、それこそQuincyなどと肩を並べる偉大なるプロデューサーになったであろうと思うのですが・・・ まあ、それだけのアーティストであるが故に、我が道を行きたいという思いも強かったのではないかと推察します。

ということでわかっている範囲で。作編曲をやり歌い手であるGino Vannelli、そしてそれを完璧にサポートする兄弟、Joe VannelliRoss Vannelli、この3兄弟がいつも一体となって作品を作っています。アルバムのライナーを見ると、彼らがイタリア系のカナディアンであることがわかります。やはり根っこはイタリアンということなのでしょうか、モノスゴイ、ファミリーのコンビネーションです。

Gino Vannelliは、とにかく抜群の歌唱力と表現力。ロウロウと歌い上げるスタイルです。毛深さも手伝って、エネルギーに満ち溢れた歌唱。そして、プロデューサーのJoe VannelliとRoss Vannelliは、とにかく凝りに凝った作品に仕上げていきます。これも何かの作品のライナーにありましたが、基本的に彼らのサウンドは、ギター・ベースを使わない物が結構ある。70年代、まだシンセサイザーが1台で和音を出すことができず、単音しか出せなかった頃に、シンセサイザーに徹底的にこだわり、トラックを重ねてモノシンセで壮大なシンセサウンドを作り出す凝りぶりです。AORの皮をかぶったハイパーテクノ、とでも言いましょうか。

そして作品そのものは、その昔、いわゆるAORとしてカテゴライズされていましたが、自分的にはどちらかと言うと、プログレ~フュージョンの要素の方が強い気がします。そしてこのような複雑そうな音楽的要素を、最後はポップに仕上げたり、オーケストラを使って仕上げたりします。そもそも、特定のジャンルに分類するというのが難しい作品群だと言えます。80年代、松・聖・とかカシ・・アとか、そうそうたる面々が、彼らのアイデアからインスパイアされた作品を作っている感じが色濃いです。(彼等の作品を聴けばお分かりいただけると思います。)Musician of Musiciansといわれる所以です。

で、オススメですが、2枚をあげます。

○NIGHTWALKER(81年)

タイトルナンバー"NIGHTWALKER"と、キメがバリバリに入ったインストフュージョンも真っ青の"SANTA-ROSA"あたりが印象的で、これらの曲は、その昔にバンドでカバーしたことがあります。"Put The Weight On My Shoulders"も、名曲。

○BIG DREAMERS NEVER SLEEP 87年

"Wild Horses"、"King For A Day"あたりが特に聴き応えがあります。"King For A Day"のシーケンスパター ンは、本当にオリジナリティにあふれ、自分も様々な場面で参考にさせてもらいました。

もちろん、その前後にもたくさんのアルバムがあるし、ご紹介したアルバムは、全て名曲揃いで駄作は全くありません。で、その彼は90年代に、ところどころで3年くらい、何の情報も得られない状態になることがありました。なので、最近は作品を出していないのかな、と思って調べたら、なんと、2年前に"canto"という作品をリリースしてました。恥ずかしながら、全然知らなかった。皆さんにオススメすると同時に、自分も早く聴かないと・・・

コンプレッサー : The Squeeze Box by retrospec

またまた、久しぶりにコンプレッサーのご紹介です。今回はThe Squeeze Box by retrospecをご紹介します。

だいぶ前にもお話をしましたが、自分は大のコンプ・ファン(マニアというにはおこがましい)で、昔から、特にコンパクトタイプのコンプレッサーには目がありません。試奏して、ちょっとでもいいなと思うとすぐに買ってしまう、という行動パタン。でもこの行動も、最近は収まってます。フルチューブアンプと、名器と言われるこのコンプレッサーに出会ったことが大きいと言えます。

The Squeeze Boxは、97-98頃に惜しまれながら倒産してしまった米retrospecのコンプレッサーです。B'zのTAKさんの使用でつとに有名だと思いますが、ベーシスト(低音楽器全般、という意味で)でもTony Levinが愛用していますね(ツアーには必ず2台以上持っていくそうです)。

中を開けると至ってシンプルで、正直言って、もうちょっと筐体を小さくしてくれたら助かるのに、って思うくらい、中はスカスカです。Groove Tubesの12AX7管が2本入っていて、12AX7の割には、電源を入れると明るめに光を発します。あとは、いかにも昔ながらの部品という佇まいのコンデンサが並んでいます。

コントロールは左から、out - eq - comp/lim - threshの4つ。ミニスイッチは電源on/off - eq in/out - threshold level(-20,-10,0)の3つ、入出力はin/outのフォンに、outは3pin XLRがついています。電源はAC117vで、正規輸入品もトランス改造無しで販売されていたようです。したがい、自分は100→120のアップトランスを併用しています。

次に使用感です。すごくいい感じでかかります。チューブというのは、別にガラス管の中で物理的に圧縮をしている訳ではないのですが、なんだか、本当にガラス管の中でエアを圧縮するかのごとく、音を圧縮しているような印象です。まさに、これぞチューブという感じのパッツン感。一般論として、このコンプはとてもナチュラルと評されることが多いですが、必ずしもそうではありません。もちろん可変範囲がとても広いので、ナチュラルにかけることもできる、とても守備範囲の広いコンプ/リミッターといえます。でも、コイツの一番オイシイ部分は、やはりある程度の圧縮をかけたところにあると自分は思っています。そういう意味で、ナチュラルに使うよりは、ちょっと深めにかける使い方の方が、このペダルは活きてきます。そういったことで、自分は以下のような使い分けをしています。

○ナチュラルコンプ : アンプ(AGUILAR DB359)のみで充分
○強めのコンプ   : The Squeeze Box


また、自分は法・経営系の完全なる文系で、回路を見ても性格にはわかりませんが、回路の模様を見る限りは前段のコンプレッションと、後段のゲインリダクションの両方にチューブが使われているようです。ゲインリダクションには別のオプト方式を採用しているものが一般には多いと思いますが、この辺が、このコンプの独特のキャラクターの源泉かも知れません。その代わり、やはり外来ノイズにはちょっと弱いようです。今、自分はトランスしか使っていませんが、もっとちゃんとしたフィルター付の原電を併用すれば状況はもっと改善されるような気がします。

今でもそうかも知れませんが、発売当時の売価は5万円程度でしたが、一時期は10万円近くもして、「幻のコンプ」とも言われていました。最近も、やはり見かけることがほとんどありませんが、それでも、価格はだいぶこなれてきていると思います(発売当時の売価と同水準と思います)。見かけたら、是非、試してみてください。きっと惹かれると思います。

弦について : その2

前回はサウンドに影響を与える弦のあらゆるファクターについてお話をしましたが、今回は、それに関して、自分が弦を選択する際に重視することをご参考までにお話したいと思います。

①セッティングの安定

ベースは元々弦が太くてテンションが高く、6弦になるとなおさらです。従って、ゲージや素材をころころと変えると、その度にネック、弦高、オクターブチューニング等、あらゆる部分をリセッティングしなければならなくなります。なので、一度セッティングが決まると、よっぽど使ってみたい弦が出てこない限り、極力同じ弦を使い続けることにしています。

また、実は(これは自分もつい最近まで知らなかったのですが)ダダリオのライトゲージEXL170-6(32-45-65-80-100-130)の組み合わせは、実はとても理に適っているのです。最初はライトの組み合わせなら4弦セットで40-60-80-100だろう、と思っていたのですが、実はこのライトゲージのセッティングだと1~6弦の6本の弦のテンションがほぼ同じになります。要は、ネックの縦方向に均一に負荷がかかるので、よっぽどいい加減に作った楽器でない限り、ネジレとかが発生せず、セッティングが安定する、ということです。

ということで、楽器とのトータルバランスを考慮して、自分はダダリオのEXL170-6を使っています。

②サウンドの安定

たまに当たり外れもありますが、ある程度のレベルの弦なら、セットの中で1弦はokで4弦はダメ、みたいなばらつきもないし、死ぬときは、みんな一緒に死んでくれるので、この点からも、自分は一定レベル以上の弦を使うようにしています。安い弦をこまめに、ということもアリなのでしょうが、張った瞬間に死んだり、テンションがマチマチだったりと、いいことがありません。この点からも、ダダリオはどれを使ってもハズレがなく、扱いやすいです。DRも好きですけどね。

③入手のしやすさ

楽器とのトータルバランスを考慮して同じ弦を使い続けたいとなると、入手容易性も大きなポイントになってきます。ということで、本当はDRを使いたいのですが、どこでも入手可能、ということでダダリオに・・・

④価格

一定レベルを満たした上で低価格、ということでダダリオ・・・

別にダダリオの回し者でも何でもありませんが、こんなんで、結局はダダリオEXL170-6です。本当は、どこでも入手可能で同じレベルの価格ならDR Lo-Riderを使いたいと思っています。DRは、硬さがなく、ムチがしなるような独特のテンション感があって自分は好きなのですが、いかんせん高いし、特に6弦となると、どこでも入手可能というわけでもない。また、(自分がヘタクソで弾き方が悪いと思いますが)DRはいつも張って一週間くらいで1間を切ってしまう。なので、最近はもっぱらダダリオです。いろんな条件をトータルで相応のレベルで満たしていると思います。

ちなみに交換頻度ですが、基本的にライブの都度にしてます。なので、3ヶ月以上使う場合もあれば、1ヶ月も経たないうちに交換することもあります。結構ハデにスラップをやるので、1ステージ使っただけで、高音弦が切れる確率が高くなるので、これを回避するという観点からそうしています。

それにしてもベースの消耗品=弦って、高いですよね。なんとかならないものかのいつも思ってます。