第11話 「人類家畜化計画」

 

 

ドクター・ケイオスは言った。


それは悪魔の囁きにも等しいものだった。
彼曰く、全ての生命は種子から始まりやがて芽が出て成長する。

しかし人間は違った。人間には発達した脳があり思考する能力があるのだ。

よって人間の行動は計算され尽くしたものとなる。例えば戦争を起こすにしても、戦略を立て綿密に計画を立てることによって戦争を勝利に導くことができる。

また政治を行う際にも民衆を動かすためには緻密な計画が必要不可欠なのである。

そこでドクター・ケイオスは考えたのだ。人類の持つ知能を利用すればより効率的な戦争ができるのではないかと……。

人類が持つ頭脳を最大限活用することで、より良い世界を創造することができるのではないかと考えたのだ。


そのために人類を家畜化しようと考えついたのだ。
人類は愚かで醜い存在であり、我々に管理されるべきだと……。


だがこれは人類にとって、あまりにも過酷なものであった…。

人類を管理するということは即ち、人類の歴史そのものを終わらせることに等しいのだから……。


人類の管理とはどういうことか…。
人類は、人類同士で争い、殺し合いを繰り返してきた歴史を持つ種族だ。

そんな愚かな人類を管理しようと考えると、人類同士を殺し合わせるしかないと考えたのだ。

だがそれではただの虐殺に過ぎない……。

ならば人類を「選別」すればいい。
新世界に相応しい人間とそうでない人間を。


選ばれた人類だけが生き残るのだ……。

これがドクター・ケイオスの考え方だった。

だがそんな思想は到底許されるものではない……。


シヴァは思った……。
(こいつは狂ってる……)

 


 

そう思ったのはシヴァだけではなかったようだ……。

 


(なんて酷いことを考えてるんだ……!)

そう憤ったのは他でもない、植物神ヒュアキントスだった。


(こんな奴らの思い通りになんかさせてたまるかよ!)
シヴァ達は怒りに震えていた。だが今は冷静にならなければならない。

「捕虜を返してもらう」
ミカエルがそう言った時、バエルは答えた。

「おやミカエル。久方ぶりだな。今日の目的はそれか?お迎えに来ていただいたのなら解放してあげよう。こちらも無益な戦いは避けたいからな」

そう言ってバエルが指を鳴らすと、奥の扉から捕虜の植物神達が連れてこられたのだった。

「全員いる…!」
ヒュアキントスは安堵した。

(おかしいな…ずいぶん素直じゃねえか?)
シヴァは疑問に思った。

「今日のところは引き上げるとしよう」
そう言ってバエルとドクター・ケイオスは姿を消したのだった。

(なんだ……?やけにあっさり引き下がったな?)
シヴァがそう思っていると、ミカエルが皆に向かって言った。



どうやらミカエルも同じことを思っていたようだった。
 
おそらく罠であろうことは容易に想像できたが、ここで深追いするのは危険と判断し、この場を離れることにしたのだった。
***

その頃、魔界軍の悪魔の城の一室で、バエルが魔王ルシファーに報告していた。

ルシファーは美しい青年の姿をしているが堕天使だ。

 


(堕天使ルシファー)

堕天使の中でも最も邪悪な存在と言われている者がいた。
それこそが堕天使の王ルシファーなのである。

彼は魔界を支配するべく暗躍し、現在は堕天使軍の総大将となっていたのだった。

「天界の捕虜はもう用済みなので返しました」

それを聞いたルシファーは満足げに頷いた。

「天界から人質を取る必要もないからな。すでに人類全て我らの人質なのだからな…!」


そう言って高らかに笑ったのだったーーー

 

 

第12話に続く・・・
 

※注意事項

この物語は架空の物語であり、新型コロナウィルスや実在する団体等とは無関係です。

 

小説は本来、白黒表記のみですが、掲載媒体がブログなので、あえてブログに寄せて文字装飾をしてます。読みやすさの方を優先してます。

 

文章およびイラストの無断転載禁止です。