第4話「シヴァの憂いと新種の植物」
「くそ…!みんなが忙しく動き回ってるっていうのに、呑気に隠れてないといけないなんて…!」
そう悔しそうに呟く者がいた。インドの最高神の1柱であるシヴァだった。
最高神達は襲撃される危機が高いためしばらくの間、表に出ることを禁止されていたのだ。
シヴァは聡明な神だが熱血で情に厚い神でもある。
天界の神々が忙しく動き回っているのに自分だけ何もせず隠れていることが歯がゆかったのだ。
(破壊と創造の神シヴァ)
そんなシヴァを見て、妻であるパールバティーが声をかけてきた。
「あなた…お気持ちはわかりますがあなたが危険な目に遭うことは許されません。
ですからどうかご理解ください」
そう言うとシヴァは黙ってしまった。だが表情は納得していないように見えた。
「シヴァよ。彼女の言う通りだ。身を隠していても我々は最高神として指揮を取らねばならん。動くことは部下達に任せて我々はここで待機し指揮を取るしかないのだ」
そう諭したのは同じく最高神のヴィシュヌ神だった。
シヴァは渋々頷いた。
(言うことはわかるけど……やっぱりじっとしてるだけっていうのは性に合わないんだよな……)
そう思いながらも、仕方なく従うことにした。
***
アポロンとヒュアキントスは、互いに多忙な日々を過ごすこととなった。
特にアポロンは、ゼウスの代役と併せて医神としても目まぐるしく働いていた。
(アポロン様…ゼウス様の代役を立派に務めて、本当にすごい方なんだな)
改めて尊敬の念を抱いた。それと同時に少しでも負担を軽くできるよう頑張ろうと思うのだった。
アポロンは、ゼウスの代役を務めることを女神アテナと2人がかりで行うことになったようだ。
今は医神としての仕事も重要だからだ。女神アテナもゼウスの代役として適任だと判断したのもあった。
(知恵の女神アテナ)
ヒュアキントスも植物神として忙しい日々を送っていた。
植物というのは、神だけでなく精霊達の協力が不可欠だ。
なので精霊達と連携を取らなければならないが、精霊は神より気難しくネガティブな性質も持っている種族だ。だから一筋縄ではいかないのだ。
精霊達の機嫌を上手く取りながらまとめなくてはならない。
なのでとても神経を使う仕事なのだ。
それでも何とか頑張っていた。なぜなら自分の使命を全うしたかったからだ。
一方、天界でも新たな動きが出始めていた。
それは、植物神達による新種の植物の発見だった。
天界には様々な植物が存在する。その中には新種の植物もあるという。
それを発見したら、植物神達が協力して新種の植物を保護することになっていた。
新種の植物の中には、神や人間に悪影響を及ぼすものも存在するという研究結果も出ているという。
それを未然に防ぐ為にも、新種を発見し保護することが重要なのだ。
その為、新種が発見された場合は直ちに植物神達に報告するように義務付けられていた。
そして驚くべきことが起きていた。
なんと、人間界と天界どちらも新種の植物が調査隊により発見されたのだ。
人間界で発見された方は、見た目は赤い綺麗な花だが毒を持つ植物だそうだ。
その植物が自生している場所の近くで、新型ウィルスにかかった人間が多くいたという。
そして天界で発見されたのは、一見普通の植物だがかぶれを起こす軽度の毒性を持つ花だった。
この2つの植物の共通点は、免疫力を下げる作用があるということだった。
(おかしいな…免疫力を下げる植物が同時に発見されるなんて。これって…新型ウィルスに関係あるかもしれない…)
ヒュアキントスはその2種類の花を見ながらそう思っていた。
第5話に続く・・・
※この小説は架空の物語であり、新型コロナウィルス等とは無関係です。
小説は本来、白黒表記のみですが、掲載媒体がブログなので、あえてブログに寄せて文字装飾をしてます。読みやすさの方を優先してます。
文章およびイラストの無断転載禁止です。