第7話「捕らえられた植物神たち」

 

その頃、人間界では新型ウィルスの猛威が広がっていた。

人々は感染対策として、外出時に必ずマスクをすることを余儀なくされた。

学校など次々と閉鎖され、多くの人々が自宅待機を余儀なくされた。

家族も離ればなれになり、孤独に苛まれながら生活していた。

食料や日用品などの物資が不足し始め、人々が買い占めるためにスーパーやコンビニなどで行列ができてしまっていた。

店側もパニック状態となり、品薄が相次いでいた。

そして人々の間で日用品の奪い合いや口論が起きたり、日常的に争いが絶えなくなっていた。


こういう時ほど団結しないといけないが、人類は分裂する方向へ向かっていった・・・。

***
一方その頃。

(くそ…!テレパシーが通じねえ!)

敵の組織に拐われた、調査隊の1人である植物神アドニスは仲間にテレパシーで助けを求めることを試みていた。
しかし、仲間の返事が返ってくることはなかった。

(何でだ!?植物神同士なら絶対に通じるはずなのに……!!どうしてだ!?くそっ!)

彼は焦りを感じていた。このままでは自分も殺されてしまうかもしれないと思ったからだ。



何とかしなければ……そう思い、彼は頭をフル回転させていた。

(落ち着け……落ち着くんだ……俺……こんな時だからこそ冷静にならないと……)

彼は深呼吸すると目を閉じて精神を集中させた。
(よし……これでどうだ?)

彼は意識を集中させて、自分の周りにバリアのようなものを張った。
こうすることで外部からの干渉を遮断できるのだ。

その状態で再度テレパシーを試みてみた。
***

同じ頃、ヒュアキントスは捕らえられた植物神達を案じていた。

(テレパシーも通じない…大丈夫なのかな…)


そんな時だった。

《おい、ヒュア!聞こえるか?》
突然頭の中に声が聞こえたのだ。

それは紛れもなく、捕まってしまった植物神アドニスの声だった。

ヒュアキントスは慌てて返事をした。

《あっ、その声はアドニス!?大丈夫なの?怪我とかしてない?》 

《ああ、大丈夫だぜ。今、俺は牢屋にいるけど特に酷いことはされてないみたいだ。他の奴らも無事だ》 
《良かった…ねえ、君は今どこにいるの!?》


《はっきりとはわかんねぇけど、捕らえられた時に見えた敵の姿は…どうも堕天使の奴らだったんだよな
《えっ?それって天界の裏切り者って言われてる天使のこと?》
《そうだ。あいつらのことはよく知ってるからな。間違いねぇと思う》

 



《そうか…それじゃ敵は魔界の者ってことだよね?
《おそらくそうだろうな。俺も奴らの顔は見たことがあるし、間違いないだろうよ》 


《アドニス、すぐに調べて助けに行くよ!それまで待っててね!》 
《すまねぇ、頼むわ》 

そう言うとテレパシーは途切れたのだった。

***
同じ頃、インド神界の最高神であるシヴァは身を隠し潜伏していることを未だ不満に感じていた。

頭では理解出来ても心がついていかないのだ。

(みんなが大変な時なのにじっとしてられるかよ!)

 



その時だった。

「やあ、シヴァ様。退屈そうだね?」
陽気な軽い調子である神が現れた。

それはインド神界の、愛の神クリシュナだった。

彼は人間から神になった神で、非常に美男で陽キャラな軽い性格の神だった。


ちなみに人間だった頃、妻は1万人以上いたという伝説を持つらしい。

「おっ、お前は……!」
「久しぶりじゃないか~元気してた?」
「まあ、それなりに……」

「そっかぁ。ところでシヴァ様はこれからどうするつもりなんだい?」
「どうって?」

 

(愛の神クリシュナ)


「このまま大人しくしてるつもりなのかい?」
「いや、そういうわけには…。だが俺は身を隠さなきゃならねえんだ」

「ふーん…もし外に出たいなら僕が力を貸してあげようか?」

その言葉にシヴァは思わず反応した。
「どういうことだ!?」
「僕のスキル『分身』を使えば簡単だよ⭐︎」

分身の能力は天界でも特殊能力でほとんどの者は使えない。

ゼウスやオーディンすらも分身はできない。

 

だがこのクリシュナは分身においては彼の右に出る者はいないほどだった。

「僕が分身を使い、影武者になってあげるよ」
「そんなこと出来るのか!?」
「もちろんさ♪僕を誰だと思ってるんだい?僕は愛の神様だよ♪」


そう言ってウインクをした。

見た目はチャラそうなイケメンなのだが、何故か憎めない存在なのだ。

それに今は他に頼れる者もいなかったため、彼の言葉を信じることにしたのだった。

 

 

第8話に続く・・・

 

※注意事項

この物語は架空の物語であり、新型コロナウィルスや実在する団体等とは無関係です。

 

小説は本来、白黒表記のみですが、掲載媒体がブログなので、あえてブログに寄せて文字装飾をしてます。読みやすさの方を優先してます。

 

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