こんにちは。
このブログの管理人は,ふだんは,内科併設の精神科病院で常勤の作業療法士として,
精神科と内科の患者様に運動療法を提供しています。
したがいまして,フルタイムの仕事を抱えており,その他にも,
心理療法の専門的セミナーなど各種参加していて,
忙しさにかまけて,なかなかアップできず,もうしわけありません。
このブログは,アート&ウッドチップス・ワークの研究会ですが,
ひろく心理精神的苦痛に苦しむ人への支援・治療に関連することとして,
精神科での運動療法の臨床実践のこと,心理療法の専門的なこと,精神疾患のことなど
個人情報や企業内情報に抵触しない範囲で,お伝えすることも考えています。
さて,休眠から覚めてアップした前回では,
アートセラピーは心理療法のひとつであることを確認しました。
つまり,アートセラピーとは,「心のケア」を行う「療法」なので,
心理療法の一つの方法と考えられるということでした。
さらに踏み込んで言えば,「心のトリートメント」(治療)とはどう違うのか,
という問題もあるでしょうが,ここではこれ以上踏み込みません。
ともかく,アートセラピーの上の目的を実践するためには,その方法が必要になりますが,
「アート」セラピーという方法の面から考えれば,
アートを使う一定の知識と技術が必要ですし,
その方法を実践するアート「セラピスト」のトレーニングには,
心理療法のトレーニングが不可欠になると考えられます。
なぜなら,繰り返しになりますが,
アートセラピーは,心理療法のひとつの方法だからです。
つまり,心理療法もアートセラピーも,人の心のセラピー(治療)に携(たずさ)わるからです。
さて,そこで,今回は,さらに,理論と実践の中身をもう一段分類したいと思います。
歴史的に振り返れば,
アートセラピーにも歴史があり,
心理療法にも歴史があります。
原点に戻って考える上では,それぞれの歴史を考える必要があるのではないでしょうか。
その上で,
理論と実践を考える上で,
理論においては,
アートセラピーの理論
心理療法の理論
実践においては,
アートセラピー実践
心理療法の実践
このように,分けて考えることで,より深く,明確に考えることができるのではないでしょうか。
ここで,よく混乱のもとになるのが,アートセラピーを,
心理療法における心理検査(風景構成法,バウムテスト,家族画など)と
混同して考えてしまう考え方があります。
違います。アートセラピーは,心理検査ではありません。
つまり,アートセラピーの目的は,心理査定ではありません。
ただし,心理検査は,クライエントの心の状態を知り(心理査定),
心理療法/支援に生かされるものです。
また,心理検査の実施と結果の伝達において,
クライエントとセラピストの相互の交流が生まれ,
共感・受容のきっかけになることも考えられます。
しかし,この両者(アートセラピーと心理検査)を混同して考えてしまうのは,
それぞれの歴史を踏まえて,
理論と実践を考えていないことから生じる誤解ではないかと思われます。
アートセラピーは,心理療法の一種なのですが,こうした混同を避けるためには,
一度,原点に戻って,両者を分けて,
理論と実践を考える必要があるのではないかと思います。
参考文献
関則雄(2016).臨床アートセラピー 理論と実践.日本評論社.