ニューヨークの美術館がアートセラピーを提供,メンタルヘルスの改善に貢献。 | アート&ウッドチップス研究会

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2020年6月15日付けニューヨークタイムズ紙の記事で,アートセラピーの効果を示す内容が紹介されていました。原文はこちら

 

 


記事では,一人のペルー出身の75歳の男性クライエント,ワルター・エンリケ氏によるアートセラピーの体験が語られています。
アートセラピーが,コロナ・ウイルスのパンデミックがもたらしたひどい孤立感と孤独を癒すのに役立っているとのことです。
そのアートセラピーは,クイーンズ・ミュージアムthe Queens Museumというニューヨークの美術館が,メンタルヘルス改善のために提供しているものです。彼は,そのプログラムに参加しているのです。

彼は,コロナ・ウィルス・パンデミックで多くの友人や隣人を失ってしまいました。その精神的ダメージはとても大きく,それは,彼が,ペルーで警察官をしていた時,ゲリラと政府軍の武力衝突で7万人もの人が殺された現場に直面する体験もしているので,そのトラウマが残っている影響もあるのかもしれません。

エンリケ氏は話します。

「俺たちはもう以前のように出かけたり人生を楽しめなくなっている」
「だけど,アートが助けになって,過去の体験を記録して,ポジティブな体験をよみがえらせて苦しみや悲しみを乗り越えさせてくれる」

そのアートセラピー・プログラムは,毎週木曜日に,オンラインで提供されています。
エンリケ氏はその時間,ニューヨーク州リッチモンド・ヒルにある娘のアパートで,コンピューターに向かいます。
彼は,コンピューター画面を通じて,アートセラピストから促されて,母親や友人,病気を表す悪魔を表現します。自然と,ゴヤ(スペインの画家)風の表現になるようです。そうして,紙の上に表現されると,恐ろしさが軽減されるのです。(いっけん,これは不思議な現象です。なぜなら,紙の上に表現されたら,目の前に現れて,よけい怖さが倍増するのでは? と思えなくもないからです。これは,トラウマの強度という問題が関係してくると思います。その問題がクリアされ,安全な場所で行えば,心の中にうっ積した恐怖を吐き出して,気持ちを楽にする効果があると考えられます。そして,もっと重要なのは,次で行われる,他者との共有(シェアリング)です。)
参加者は,Zoomで,アート作品と,あわせて書いた詩を共有します。そして,パンデミック前と後の人生について語り合います。
エンリケ氏のアート作品はこちら(上記リンクの記事内で紹介されているもの)

エンリケ氏は話します。「このアートセラピープログラムの前は,とても孤独だった。だけど今は,アートを創るのを学べるのさ」と語り,プログラムで,自身の子どもの頃の生き生きとした感じを得られるといいます。

心理学者の知見も紹介されています。つまり,アートセラピーは,気分の改善や苦痛の軽減に,以前から効果が認められるものではあったが,これまで,美術館がアートセラピーに理解を示すことはほとんどなかったと。
しかし,このパンデミックの災禍だけでなく,警官の暴力と殺人,人種差別などが引き起こした精神的なダメージは極めて大きく,こうしたアートセラピーへの必要性が認められ,美術館のプログラムが提供されるようになったとのことです。

原文はこちら。

 

 


さて,日本では,どうでしょうか。