人生をアートで埋める -6ページ目

35歳のカーライフ

2月中旬にクルマを買った。トヨタのヴィッツで、色はブルーだ。恥ずかしい話だが、35歳になって初めてのクルマである。

小さい頃からクルマにはまったく興味がなく、車種や機能についてもほとんど知らない。免許だけは大学時代に取得していたのだが、クルマを実際に購入するということは考えたこともなかった。
20代から仕事でクルマを運転する機会が多く、運転自体には慣れている。今も仕事で毎日のように運転をしている。運転は好きだが、クルマそのものへの関心は湧かない。世の中には、クルマを偏愛している人々も多いようだが、ぼくにとってクルマは移動手段以外のなにものでもない。

しかし、なんとなくクルマが欲しくなり、何気なくディーラーに出向いてみたら、購入まで付き合わされてしまった。妻の後押しもあったので、とりあえず自然な流れで買うにいたった。
ぼくは小さいクルマが好きで、ヴィッツというクルマにも好感を持っていた。とにかく動けばいい、移動できればいい、多少でも荷物が乗せれればいい。そんな気分でクルマを買った。ヴィッツ以外のクルマにも何の興味もない。従って、車種に迷いはなかった。

クルマのある日々が始まった。ぼくにとっては初の経験である。なんだか嬉しくて、仕事から帰ってきたら意味もなくコンビニに行こうとクルマに乗ったりしている。ヴィッツはかわいい。愛おしくなっている。

ぼくの毎日にクルマというものが入ってきた。筋金入りのインドア派であるぼくの日常が大きく変わろうとしている。とにかく外へ、外へと出かけたくなってくる。35歳にして初めてのカーライフ。このクルマと付き合っていきたい。

佐野元春デビュー30周年

ぼくが長年敬愛している日本のシンガーソングライターの一人、佐野元春。今年2010年で彼はデビュー30周年を迎えた。様々なイベントやライブがすでに行われており、今年はいつになく話題を提供してくれそうだ。

30周年の企画の中で特に目玉といえるのが、今年の夏に発表されるというセルフカバーアルバムだろう。多くのゲストを招いて制作されるという。正直いって、最初にこのセルフカバーアルバムが出る、というニュースを知ったとき、ぼくはかなりがっかりした。早く新しいオリジナルアルバムを出してほしい。最近の中堅クラスのミュージシャンにありがちな、安易なカバーアルバムなんてやめてくれよ。そういった気分だった。しかし、これまでもシングル曲のカップリングなどで過去の楽曲の新録バージョンを披露してきているのだから、新しいバージョンのリテイク集、と捉えれば特に違和感もないと考えるようになった。

20周年イヤーだった2000年から10年の間に佐野元春はわずか2枚のアルバムしか出していない。早く新曲が聴きたい。それがどんなにつまらない楽曲だったとしても。30周年ということで過去を振り返る1年になるのだろうが、懐古的な気分に浸っていたくない。確かに佐野元春の業績を思うとき、その先進性に驚かずにはいられない。しかしだからこそ革新的でい続けてほしい。人気や売り上げなんかどうでもいい。早く新曲を。ぼくが願うのはそれだけだ。

2000年、ぼくは20周年記念の全国ツアーを名古屋で体験し、さらにそのツアーの最終公演を日本武道館まで見にいった。あの頃は東京に行くということ自体がぼくにとって大冒険だった。就職してからぼくは何度仕事で東京に行っているかわからない。冒険でもなんでもない、日常になった。ぼくという人間も変わったし、いろんな経験を積んだのだと思う。

なんにしろ、佐野元春には常に動いていてほしい。今年の彼の動向に注目したい。そして今の佐野元春を見せてほしい。

2010年

●2010年になった。年末年始は12月31日まで仕事をし、元日だけは休みがとれたが、2日からまた仕事、というスケジュールで、正月気分も中途半端にしか味わえず、慌ただしく過ぎ去っている。こんなことでいいのだろうか?1月もひたすら忙しい毎日になりそうだ。

●31日の夜はすき焼きを食べながら、NHKの「紅白歌合戦」を見た。結婚してからは2回目の年越しだ。普段はテレビの音楽番組はほとんど見ないが、「紅白歌合戦」だけは毎年楽しみにしている。あの華やかさが好きなのだ。とはいえ、今年はあまり面白くもなかった。昨年に続いてPerfumeのパフォーマンスには感動したが、あとはたいして魅力的な楽曲にも歌手にも出会わなかった(そういえば、前川清が何故出てないんだ!?)。

●元日はぼくの実家に妻と出かけた。家族そろって正月料理を食べた。ぼくはひたすらビールと日本酒を飲み、といういつもながらの1日だった。

●昨年の12月はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を再読していた。何度読んでも面白いが、同時にその作品世界の奥深さに圧倒される。今、完全にぼくの頭はドストエフスキーでいっぱいになっており、今年は彼の作品を可能な限り読もうと思っている。いわゆる5大長編作品のうち、唯一まだ読んでいない『白痴』から読もうか。20代の頃読んだのだがほとんどその内容を覚えていない『未成年』にしようか。亀山郁夫の新訳による『罪と罰』にするか。買ったままでまともに読んでいない『作家の日記』全6巻(ちくま学芸文庫)に取りかかるか…。悩むところだ。とにかく今年はドストエフスキーでいきます。

●それにしても人生というのは、もう少し楽しいものではないのか。独身の頃はあまり考えていなかったが、結婚してからいろいろ考えることが多い。せっかくの人生、もっと美しいものや、かけがえのないものについてだけ考えて生きていけないだろうか。妻と一緒にいろいろな場所に行って、いろいろなものを見たい。時間をもっと自分のために大切に使いたい。ひどい時代になってきている。一寸先は闇だ。臆病で、何か新しいことを始める勇気が出ない。そんな状況を打破していきたい。…と痛切に考える年明けです。

東京4デイズ

妻と東京に出張してきた。去年に引き続いて東京美術倶楽部で開催された東京コンテンポラリーアートフェア(TCAF 2009)にぼくが勤めているギャラリーが出展したためだ。韓国から2軒、日本からは70軒ほどのギャラリーが集結し、3日間に渡って行われたアートフェアは思ったよりも盛況だった。

11月20日(金)
朝6時半起床。すぐに準備して妻と家を出る。バスで名古屋駅まで。朝食の天むすを買って新幹線に乗り込む。10時過ぎに東京着。JRで新橋駅へ。駅を出ると前の広場で多数の古本屋が集って「古本まつり」をやっている。少しだけ覗くが何も買わず、東京美術倶楽部へ急ぐ。到着後、すぐに展示作業を行う。思ったよりもブースが狭い。出品するアーティストは5名。それぞれに気を使い、ほぼ同じようなスペースになるように配慮して展示しようとするが難航し、妻に意見を聞きながら、というか妻にほとんど丸投げして進める。柱に展示するためのパネルが付いていなかったり、空き箱置き場が狭く不便だったりと事務局の不備が目立つ。少し抗議する。4時前にほぼ終了。4時からプレス関係者やVIPを招いての内覧会が始まり、人が入り始める。テレビや雑誌などで見たことのある美術コレクターや評論家の顔もチラチラ見受けられた。うちで出品しているアーティスト達も3人ほど来て、雑談したりする。8時に終了。結局今日は特に何の商談もなかった。最後まで残っていた29歳の女性アーティストと妻と3人で新橋駅付近の居酒屋で飲む。楽しく会話。2時間ほど。その後ホテルに行き、ビール飲んで寝た。

11月21日(土)
10時頃に一人でホテルを出て、昨日見た「古本まつり」に行く。今日が最終日らしい。時間もないので慌ただしく見て回り、結局ポール・デルヴォーとジョルジュ・ルオーというぼくが大好きな画家二人の展覧会図録と、埴谷雄高の本を2冊購入。急いで東京美術倶楽部に戻る。11時開場。終日多くの来場者が訪れ、なかなかの盛況。お昼頃に、若い夫婦が立体の作品を購入。また夕方頃に、以前から顔見知りだったコレクターの方が、うちの絵を1点買ってくれた。30分ほど話し込んだが、とてもいい方で今後もいいお付き合いになるといいな、と思う。アートが好きな人と話すのはとりあえず楽しい。ということで2点売約という好スタートをきった初日だった。6時閉場後、妻とブラブラ歩いてまたもや居酒屋へ。お腹いっぱい食べて飲んで酔っぱらった。ホテルに戻り、最上階にある大浴場で疲れをとる。今日買った古本をペラペラめくりながら、ビールを飲む。至福の時だ。

11月22日(日)
朝早めに会場に入り、掛けかえ作業を行う。小さい作品を少し出し過ぎた気がしたので、セーブして展示する。天候が優れないこともあってか、昨日よりはお客さんは少ない。会場を見て回る。去年よりも面白い作品が多く出ていて、全体的になかなか充実している印象。しかし、どこも売り上げはきびしそうだ。小さくて安価なものしか売れていないようだ。結局盛り上がらないまま終わってしまった。またもや妻と繰り出し、焼き肉屋へ。今日妻がアルバイトとして稼いだお金を全部使ってしまった。おれたちは何をやっているんだろう、と妻と笑い合う。

11月23日(月)
最終日。開場前に、以前から面識のある大阪の某ギャラリーのオーナーの方と少し話をする。とても個性的なギャラリーでぼくはファンなのだ。彼のようなギャラリーをやりたいな、と心から思う。とりあえず今日はなんとか売り上げを作りたい。人と話すことに特に躊躇いのない妻にとりあえず接客してもらって、深い話になってきたらぼくがお客さんと話し始める、というパターン。妻はとにかく積極的で、感心する。欧米のお客さんたちにも英語で立派に対応。結婚してよかった、と思う瞬間である。空いている時間に、「早く私たちも自分たちのギャラリーをやろうよ」と妻がさかんに言う。アートフェアという空間は本当に独特で、魅力的だ。売れていれば、これほど楽しい仕事はない。売り上げされあれば…。昼からかなりお客さんが入り、いくつか商談もあったが、結局売れなかった。仕方がない。きびしいのは他も同じだろう。5時に閉会。撤収作業を行う。思ったよりもスムーズに進み、会場を後にする。タクシーで東京駅に向かい、新幹線で駅弁を食べる。9時頃名古屋に帰り、バスで自宅へ。
淡々とした日々だったが、有益だったと思う。楽しい仕事だった。

35歳になってからの日々

●35歳になった。感慨深く受け入れたいが、もうどうでもいい。孤高の漫画家・柳沢きみおの最高傑作だと個人的に思っている『寝物語』(双葉社)を読み返したい。35歳の男3人の物語だった。それを読んだのはぼくが高校生の頃だ。あの頃、35歳という年齢は遙か彼方のものだった。今、遙か彼方に辿り着いた。ぼくが生きている世界は遥か彼方の世界だ。

●高野寛の新しいアルバム『Rainbow Magic』を聴いた。とてもいい。全曲いい。高野寛はデビュー20周年を超えたらしいが、今回のアルバムは気合いが入っている。ジョン・レノンとヨーコ・オノを歌ったような「小さな“YES”」という曲がベストトラック。高野寛の佇まいは昔からとても好きだ。
●杉真理の『POP MUSIC』(2001)、『LOVE MIX』(2002)という2枚のアルバムがリマスターされ、ボーナストラック入り、紙ジャケ仕様で再発された。2007年のデビュー30周年記念の企画で杉真理関連のすべてのアルバムが再発されたが、これが最終のものになった。ボーナストラックには未発表曲が6曲も入っていて感激。どれもいい曲。最近CMでも話題の「ウィスキーがお好きでしょ」のセルフカバーも収録。高野寛も杉真理も、いつまでも本当に瑞々しい。

●高橋和巳の『悲の器』という作品を読んだ。彼の代表作であるにも関わらずずっと読んでいなかった。高橋和巳作品を読むこと自体がとても久しぶり。恐らく10年ぶりぐらいだろう。通勤時間に毎日20ページずつくらい読み進んでなんとか読み終えた。ものすごく面白かった。法学者が主人公で、難しい法理論が展開されたり法解釈について議論を闘わせる場面なども多いが、そういうのは読み飛ばす。本質的にこれは青春小説だ。恋愛小説でもある。主人公は50歳を超えているが、青くさい青春小説なのだ。素晴らしい。