(2022年ドラッカー学会会報誌への投稿原稿)
8.すでに起こった未来 「未来について言えることは,二つしかない.第一に未来は分からない,第二に未来は現在とは違う」「我々は未来を語る前に今の現実を知らなければならない.なぜなら常に現実からスタートすることが不可欠だからである」.
権威ある専門家でさえ,すでに起こった現実を無視した未来予測はことごとく外れた.ドラッカーが重要視した人口動態の現実から,すでに起こった未来を見た.
図7に人口動態速報の死亡数データをグラフ化した. 2018年からパンデミック初年2020年までは各月の増減に顕著な差はないが,例年の変動はこの程度であった.
図7 人口動態速報2018年~2022年6月死亡数の推移
厚労省データ(2022年8月現在)より筆者作成
ところが,昨年2021年は4月頃から死亡が異常に増え,前年比6万7千人(4.9%)増と,戦後最多の増加となった.この年のコロナ死は1万7千人であるから増加の主たる原因ではない.東日本大震災の2011年でさえ前年比5万6千人(4.7%)増であり,いかに異常かがわかる.
更に今年2月3月は2箇月で3万5千人を超える前代未聞の増加を見た.その内訳は主に70代以上の高齢者で,老衰,誤嚥性肺炎,心疾患などが増加していた.
2月3月に顕著にあったことして,2月に高齢者の5割が,3月に2.5割が3回目のワクチン接種している.早急に因果関係を調査しなければ同じ未来がまた起きるやもしれない.
しかし,たった2箇月で東日本大震災2回分に相当する死亡増だというのに,国も主要メディアも,なぜかほとんどこれを取り上げない.「経済より命」をあれほど主張していたというのに….
未来を考える上で重要な出生数の減少は更に深刻だ.1973年(210万人)以降,減少し続けていたが,昨年は前年比3万人減の81万人(23) .2022年は速報値で上半期2万人減の38万人と減少に歯止めがかからない(24) .
2021年は少子高齢化が一気に20年進んだと言われたが,2022年はそれ以上になるだろう.
急激な円安,国際競争力の低下,賃金低下で若者は婚姻を控え,合計特殊出生率は間もなく1.3を割り込むだろう.
総人口の推移(図8)は急下降しており,変曲点は未だ見えない.
イーロンマスク氏は、日本は消滅すると言ったが,このまま行けばそれはほぼ確実だろう.過剰な感染対策がもたらした負債はあまりにも大きい.
しかし,ドラッカーは,日本は知覚する能力に優れ,危機にこそ強いと語っていた.地霊人傑,この未曽有の危機を乗り越え,未来を創る国民であることを信じたい.
2022年9月投稿
[注] 参考資料 (1)豊橋技術科学大学, Press Release, 2020/10/15
(2)Via:Myndi G Holbrokk, et al., “Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1." The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE, 2020
(3)2020年7月7日「コロナは空気感染する」専門家239人,WHOに書簡 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
(4)2020年7月10日 飲食店などで「エアロゾル」感染も,WHOが新指針: 日本経済新聞 (Nikkei.com)
(5)2021年8月30日「アクリル板」実は感染対策に逆効果だという衝撃 | The New York Times | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
(6)2020 年3月9日 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)
(7)2021年4月30日 「3密」でなくても集団感染のおそれ | 新型コロナウイルス | NHKニュース
(8)2022年4月18日 過去3年のコロナ対策費77兆円に見る5つの問題点 | マネー潮流 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
(9)2022年8月18日コロナ影響,自殺8000人増: 日本経済新聞 (Nikkei.com)
(10)2021年4月5日Science Brief: SARS-CoV-2 and Surface (Fomite) Transmission for Indoor Community Environments (CDC)
(11)2021年5月3日「お札のウイルス1週間生存」西村大臣,手洗い呼びかけ [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
(12)2020年10月12日 科学誌バイオロジー・ジャーナル
(13)2020年2月26日「図.1人の感染者が生み出した二次感染者数(2020年2月26日時点の国内発声110例の分析結果)」新型コロナウイルス感染症の感染性(IASR Vol. 42, p30-32: 2021年2月号)
(14)2020年5月8日 ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
(15)2021年12月8日新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞 | 理化学研究所 (riken.jp)
(16)2021年11月 RSウイルス感染症を知っていますか?/衛研ニュースNo.207|神奈川県衛生研究所 (pref.kanagawa.jp)
(17)2022年2月1日「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第6報)」の空気感染(エアロゾル感染)に関わる記述への公開質問状(東北大学大学院理学研究科本堂毅ら)
(18)2022年4月15日 子どものマスク,ワクチン接種を推奨せず… 「コロナ終結宣言」スウェーデンに学ぶ教訓 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
(19)2022年3月8日 再送-米フロリダ州,健康な子どもへのコロナワクチン接種推奨しない方針 | Reuters
(20)2022年2月25日 Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children 5-11 and 12-17 years in New York after the Emergence of the Omicron Variant | medRxiv
(21)2022年5月6日「2人の食費が1日300円…人生で一番苦しい」コロナ第6波がひとり親世帯を直撃 平均月収13万円余に:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
(22)2022年8月22日 ワクチン後遺症 ファイザー社の有害事象報告書と国内の症例報告(サンテレビ) - Yahoo!ニュース
(23)2022年9月16日2021年人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)
(24)2022年8月31日 人口動態統計速報(令和4年6月分)(厚生労働省)
[主な参考文献] 上田惇生著, 『ドラッカー入門』ダイヤモンド社, 2006
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『「経済人」の終わり 』ダイヤモンド社, 2007
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『傍観者の時代』ダイヤモンド社, 2008
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『経営者の条件 』 ダイヤモンド社, 200 6
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『マネジメント 課題,責任,実践』 (上・中・下)ダイヤモンド社, 2008
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『産業人の未来』ダイヤモンド社, 2008 P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『断絶の時代』ダイヤモンド社, 1999
P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 『企業とは何か』ダイヤモンド社, 2005
P. F. ドラッカー著, 上田惇生+佐々 木実智男+林正+田代正美訳, 『すでに起こった未来』ダイヤモンド社, 1994