今月に入ってから朝鮮日報のウクライナ関連記事がシニカルになっており、やれゼレンスキーの演説はつまらないだの、兵力不足のウクライナが街角で強制徴兵だのと全般的にロシアに有利な内容になっている。強制徴兵は動画は視聴したが、数秒の短いカットで青年が警官に羽交い締めにされているとしか見ようのないものだった。ロシアの間違いではないのか。
だいたい変なニュースが流れる時には別の所で何かあるものである。朝鮮日報や中央日報は大韓民国の保守系新聞で、北朝鮮とは関係がないが、少し邪推すると北朝鮮から送られた数個大隊がそぞろに交戦を始め、死傷者が出ていることがあるかもしれない。
ゼレンスキーが暴露した問題の大隊の仮称は「ブリヤート大隊」、一説によると三千人ほどの規模で、この規模は普通は旅団なので、ロシアのミニ師団「大隊戦術群」に倣った呼び名だろう。派遣されている場所も分かっており、ウクライナが侵攻したクルスクでウクライナ軍を迎撃に出撃している。死傷者は今後も増えると思われる。こんなことをしているのは、ロシアが兵力不足のせいである。
韓国の外交は日本のそれより難しい。半島を通じロシア・中国と地続きのこの国は対ロ関係には常に警戒の目を向けており、つい先日も一度は決めたウクライナ援助を凍結したばかりだ。変数の一つには日本もあり、保守層は日本財界と緊密に結びついている。
韓国としては、近年態度を硬化させている金正恩がロシアのプーチンに似た論法を使っていることも気になる所である。曰く、尹錫悦の韓国政府は極右であり、国民は西側プロパガンダに洗脳という言い草はそのままウクライナである。こういったプロパガンダが一巡した後に、2022年に何が起こったかを見れば、韓国政府もうかうかとしてはいられない。38度線からソウルまでは30キロくらいの距離しかないからだ。これは先日陥落したアウディウカからポフロフスクの距離にほぼ等しい。ウクライナで実見した朝鮮人民軍がドローン戦術など新戦法を用いる可能性もあればなおさらだ。カンナム地区に爆弾を落とされた場合の被害はヘルソンなどの比ではない。
※ さらに追完として、北朝鮮がこれまでロシアに供与した砲弾は300万発、「ブリヤート大隊」は1万人の師団規模の部隊で、ウクライナ軍との交戦は確認されていないが、これほどの物量と規模となると、北朝鮮が今すぐ韓国に攻め入る事態は考えにくい。なので、上記と異なり、タカ派化している金正恩(実際には妹の金与正)の発言は正面の弱化を隠蔽する示威の可能性が高い。
※ プーチンが朝鮮人民軍に依存する理由は国内の動員回避という見方もある。
ロシアの側から見れば、以前の首脳会談で呼応して台湾に攻め入るはずの中国がロシア軍の苦戦を見て二の足を踏んでいるので、台湾はありそうにないとし、別のホットスポットを探しているようにも見える。ロケット技術も気前よく提供し、製造した砲弾を言い値で買っているのも、この地域に緊張を作り出し、欧米諸国、特に米国の関心を逸らすことがある。現在戦争が行われているイスラエルはウクライナとごく近く、同じ部隊がどちらにも対応しうるため、分散は十分でないと考えているのだろう。
南北統一については、韓国はそれをしうるポテンシャルをすでに持っているが、専ら彼らの政治的都合で実現できないでいるというものである。緩衝地帯(北朝鮮)の消失はロシアと中国には脅威となるため、干渉が避けられないこともある。そして近年のアメリカは何をやるにしても非常に頼りない。
ウクライナ情勢については大統領選が終わらない限り動かないと見ている。ハリスがやや不利になっているが、元々この人物はことウクライナ戦争に関しては傍観的な態度を取っていた。サリバンも引き続き雇用されると思われ、今以上の進展は期待できないが、変わってみないと分からないこともある。
ウクライナは三年も戦争をやっているので、識者さんは戦い方の変化に気づいているか怪しい所もある。現在は両軍合わせて数十万機のドローンが用いられており、これは両軍の兵士の数よりも多い。ドローンはより強力な兵器の前には譲ることもあるが、ストームシャドーミサイルやATCAMSが切り札となると考えるのはもはや古い考えである。欧米諸国のこと外交におけるドローンの認識は極めて低い。支援として有効なのは高価なミサイルではなく、百万機のドローン生産工場なのだが、彼らはロシアの土俵で戦略を考えており、欧米諸国がロシアに大きく勝る点、経済力と生産力を活かした試みは未だ行われていない。