何でも投機のせいにするのは陰謀論だが、やっとまともな説明が出たのでご紹介したい。日本国際学園大学の荒幡教授の説明で、全体を記述したものとしては(今までと違い)かなり良く書けている。
荒幡氏によると米不足の原因は
①減反政策・・・昨年より△10万トン
②インバウンド、精米ロス・・・9万トン
③パンなどの値上り・・・米への消費シフト
筆者のいう投機などの影響については
「実は収穫から半年くらいたった春の時点で、お米は不足していて値段がどんどん上がっていました。
お米は秋に収穫した時点で、『1俵(約60㎏)1万6000円で買う』などと契約している業者がいます。その場合は値上がりしませんが、そのときに在庫を多く持たず必要な分だけ買う当用買いの業者は、『どうも品薄らしい』という情報を得ると焦って『少し高くても買うか』となってしまいます。すると売る側もまた売値を上げて、どんどん価格が上がってしまう(荒幡)。」
自主流通米の売価がJAの概算金との競り合いになっている事情は書けていると思うが、根底にあるのは時期柄による在庫不足という考え方のようだ。
疑問点としては、以下の点の説明は上の説明でも不十分なように思う。
①「1俵(約60㎏)1万6,000円で買う」はなぜその価格なのか。
②店頭でインタビューすると口を揃えて「大阪から業者が買い出しに」というのはどういう事情か。
②-2 筆者が愛用している「日本晴」など廉価な米から消えていった理由は?
③不足は事実としても、堂島先物取引を認可しなければ価格はこれほど上がらなかったのでは?
筆者が観察したのは長野と滋賀だが、時間差があり、長野の方は滋賀より2週間ほど遅れて現象が生じていた。東京は長野より早く不足したと思うが、滋賀の方はディスカウントストア→小売スーパーと傾向がハッキリ見て取れたのに対し、長野の方はややあいまいであった。そういうわけで、在庫切れの前に長野で仕入れたが、そもそも店頭で不足していなければ余分に買ったりしないのである。
※ 長野では米は潤沢だったので、7月末の帰省の際に姉に「来月はもっと不足するから今のうちに買っておいた方が良いよ」と忠告したが、その時は笑い話だったが、彼女は忠告が至言であったことに今ごろ気づいているに違いない。
論調としては説得力の薄いインバウンドよりも減反政策など農水省の失政を槍玉に挙げる声が大きくなっていることから、主としてJAがこの方向に持っていきたいことは分かるが、そもそも農協が自主流通米と競り合って概算金を上げなければ価格は落ち着いたのである。農家としては少しでも高く売りたいことは当然だが、サンマのように高値の花になってしまっては消費はさらに落ち込むし、山口さんじゃないが本当にパスタ国になりかねない。農協の肩を持ちすぎるのも考えものなのである。なお、米の流通中、農協が占める割合は50%弱である。
政治が介入して調整すべき事案だったと考える。が、自民党は代表選挙の最中で、首相はレームダック、旗を振る者もいないことから、無責任のツケを払わされるのは国民という構図は相変わらずなのだろう。価格決定のメカニズムから高止まりは供給回復後も続くと思うが、一昨年あたりからツケ回しされている物価高、そろそろガラガラポンにしたいと思っているのは筆者だけではないだろう。
なお、衆院議員の任期の続く間、自民党は首相の首をすげ替えて、支持を失いつつ延命を続けるものと考えられる。米は下がらないだろう。