#6のコントですが、独立しているので、

#1~#5を読んでいなくても楽しめます。

 

ちなみに、#1はこちら

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#5はこちら

 


 

(取調室)



「(座っている)」

刑事
「(ゆっくり歩きながら)お前がやったんじゃないのか?」


「違います。」

刑事
「いい加減しゃべったらどうなんだ?」


「だから違いますって。」

刑事
「お前がやったんだろ?!」


「やってません!
 何度言ったらわかるんですか!」

刑事
「・・・そこまで言うなら当日のアリバイを聞こうか。」


「アリバイ?」

刑事
「犯行時刻は16日の20時から21時の間。
 その時間、お前はどこにいた?」


「16日の20時・・・。
 あぁ、その時間なら部屋で反物(たんもの)を織ってました。」

刑事
「それを証明できる人は?」


「部屋の前におじいさんとおばあさんがいたので、
 お二人なら私のアリバイを証明してくれるハズです。」

刑事
「・・・わかった。
 2人に連絡を取ってみよう。」


(20分後)


おじいさん
「(取調室に入ってくる)あの・・・。」


「あ、おじいさん。」

おばあさん
「(取調室に入ってくる)一体なにごとですか?」


「おばあさんも。」

刑事
「ご足労いただき申し訳ありません。
 実は殺人事件の捜査をしておりまして。」

おじいさん
「殺人事件・・・。」

おばあさん
「それはまた物騒な。」

刑事
「で、この女性を重要参考人としてお話をうかがっているのですが・・・。」

おじいさん
「あぁ、娘さん。」


「その節はどうも。」

刑事
「事件は16日の20時から21時の間に起きたのですが、
 そのとき、彼女はお二人の家で反物を織っていたと言っています。
 間違いありませんか?」

おじいさん
「あぁ、確かにその時間、この娘さんは反物を織ってました。」

刑事
「アリバイ成立か・・・。」


「よかった。帰ってもいいですか?」

おじいさん
「・・・あ。」

刑事
「なんです?」

おじいさん
「そういえば、反物を織りに部屋に入る時、
 ワシらに『絶対に部屋の中は覗かないでください』って言っておったな。」


「え?」

刑事
「間違いありませんか?!」

おじいさん
「なぁ?」

おばあさん
「えぇ、確かに。
 何でそんなことを念押ししたのか不思議だったのですが・・・。」

刑事
「部屋にいるフリをして、その隙に現場に向かったのか!」


「いやこれは、あの・・・違うんです。」

刑事
「何が違うんだ。」


「いや、あの、確かに『部屋の中は覗くな』とは言いましたが、それはそういう意味じゃなくて・・・。」

刑事
「どう考えてもアリバイ作りだろ。」


「いや、確かにそう捉えられても仕方ないんですけど・・・。
 どう説明したらいいか・・・。」

おじいさん
「ずーっと不思議だったのじゃが、これで筋が通った。」

おばあさん
「わたしたちはアリバイ工作に利用されたんですね。」


「いや違います!
 そういうことじゃないんです!
 あ、そうそう。21時に部屋から出てきた時には反物できてましたよね。」

おじいさん
「あぁ、確かにできあがってた。」


「犯行に向かっていたら反物を織ることはできません。
 アリバイ成立じゃないですか?」

刑事
「むぅ、確かに。」


「よかった。
 では帰ってもいいですか?」

おじいさん
「あ。」

刑事
「何です?」

おじいさん
「でも、反物はあらかじめ用意されたものだったとしたら・・・。」

刑事
「確かにそれなら犯行は可能だ!」


「いや、なんであたしを犯人にしようとしてるんですか!」

おばあさん
「確か反物を織ると言い出したのは娘さんの方からです。」


「ホント余計なこと思い出さないで!」

刑事
「アリバイは崩れた!
 ありがとうございます!」

おじいさんおばあさん
「なんてことないです!」


「あ!あれだ!
 シルエット!シルエット!」

刑事
「シルエット?」


「ふすまの向こうに反物を織ってるあたしのシルエット見えましたよね!」

おじいさん
「確かに見えた。」


「よかった。
 アリバイ成立!帰りますね。」

おじいさん
「でもシルエットくらいなら・・・。」

おばあさん
「いくらでも偽装工作できますからね。」


「なんでおじいさんたち、アリバイを崩そう崩そうとするんですか!」

刑事
「アリバイ成立とは言えないな。」


「ちょっと待ってください!
 あ、おじいさんたちずっと部屋の前にいたんですよね。」

おじいさん
「あぁ。」


「外に出るには部屋を出ておじいさんたちの前を通らなければなりません。
 でも、おじいさんたちはあたしを見ていない。
 これでアリバイ成立では?」

刑事
「確かに。」

おじいさん
「しかし、デカ長。」

刑事
「なんだ、シバカリ。」


「なんかもうニックネームで呼び合ってるし。」

おじいさん
「屋根裏や床下から外に出ることも可能です。」

刑事
「アリバイは崩れたな。
 でかしたぞ!」

おじいさん
「ありがとうございます!」


「今、目の前にいるおじいさんおばあさんは完全に敵だとわかった。」

おじいさん
「逮捕状取りますか?」

刑事
「あぁ、頼む。」


「待ってください!
 わかりました、言います言います!
 ツルです!あの時のツルです!」

刑事
「あの時のツル・・・?」


「数日前罠にかかっていたあたしを助けてくれましたよね!
 あたしはその恩返しのために部屋にこもって反物を織っていたんです!」

刑事
「罠にかかっていたツルを助けたんですか?」

おじいさん
「えぇ。
 確かに助けました。」


「そう!
 『覗かないでください』と言って部屋にこもったのは正体を知られたくなかったからです!
 アリバイ工作ではありません!」

刑事
「・・・そういうことだったのか。」


「わかっていただけましたか?」

おじいさん
「しかし、デカ長。」

刑事
「なんだ、シバカリ。」

おじいさん
「(タブレットを刑事に見せながら)この地図を見てください。
 ワシらの家から犯行現場までは大きく迂回しなければならないので、車を使っても片道1時間はかかります。
 しかし、ツルになって空を飛べば犯行現場まで20分もあればいけるでしょう。」

おばあさん
「移動に往復40分。
 20分あれば犯行は十分可能ね。」

おじいさん
「そしてあらかじめ織っておいた反物をワシらに渡し、完璧なアリバイを作った。」


「いや待って待って!
 証拠!証拠はあるんですか?
 私があの部屋で反物を織っていなかった証拠は!」

おじいさん
「・・・あります。」


「え?」

おじいさん
「娘さん知らなかったかもしれませんが、
 あの日、ワシらの家一帯で停電があったんです。
 豪雪で電線がやられちゃったみたいで。」


「え・・・。」

おじいさん
「当然、部屋は真っ暗でした。
 その状況で反物を織ったのですか?」


「み・・・、見えたんです!
 外の月明かりが差し込んでたのでかろうじて・・・!」

おじいさん
「月明かりの中、反物を織ったと?」


「そ、そうです!」

おじいさん
「なるほど・・・。
 デカ長。」

刑事
「ん?」

おじいさん
「(タブレットを刑事に見せながら)ワシの家の反物の織り機はこれなんです。」

刑事
「(タブレットの織り機を見て)なるほどな。
 でかしたぞ、シバカリ!」


「・・・どういうことですか?」

刑事
「停電の間は月明かりに照らされて反物を織っていたと?」


「そうです。」

刑事
「それは無理だ。」


「何故です?」

刑事
「シバカリ。」

おじいさん
「(娘にタブレットを見せながら)ウチの反物の織り機、電動なんです。」


「っ!!」

刑事
「本当にシバカリの家の織り機で反物を織っていたのなら、織り機が電動であることを知らないはずがない。
 あなたはシバカリの織り機を使わなかったんだ!」


「そんな・・・(崩れ落ちる)。」

おじいさん
「見事にワナにかかったな。」


「・・・ワナを外してくれたおじいさんのワナにかかるなんて。」

刑事
「ワナにかかりやすい体質なんだな。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

「絶対にこのフスマを開けないでください」というセリフがアリバイ工作に見える、という発想から広げたコント。

昔話はまだまだコントの題材が眠っていそうです。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】断捨離
【コント】全校朝会
【コント】やまびこ
【コント】自由研究#2
【コント】おむすびころりん

 

 

 

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