#3のコントですが、独立しているので、

#1、#2を読んでいなくても楽しめます。

 

ちなみに、#1はこちら

#2はこちら

 


 

むかしむかし、あるところに住んでいたおじいさん。
ある日の帰り道に、ワナにかかったツルを助けてあげました。


少女
「おじいさん、おばあさん。
 あのときのツルです。
 今から恩返しに行きますよ。
 はぁ・・・、緊張する・・・。
 おじいさん、おばあさんは反物、喜んでくれるかなぁ・・・。」

ディレクター
「あのー、すみません。」

少女
「はい。」

ディレクター
「今、この辺りを取材しておりまして、
 お時間よろしければ、取材にご協力いただけますか?」

少女
「取材・・・?

 まぁ、少しだけなら・・・。」

ディレクター
「ありがとうございます。
 (カメラに)回して。
 まず、お名前をお願いします。」

少女
「あのときのツル・・・じゃなくて、娘さんです。」

ディレクター
「『娘さん』さん。
 どちらにお住まいで?」

少女
「渡り鳥なので・・・じゃなくて、北の方です。」

ディレクター
「北の方、なるほど。
 それではメインの質問です。」

少女
「はい。」

ディレクター
「YOUは何しに日本へ?」

少女
「テレ東?!
 テレ東のクルーですか?」

ディレクター
「何しに日本へ?」

少女
「えーと・・・、恩返しに。」

ディレクター
「恩返し。何の恩返しに?」

少女
「あの、えーと、ややこしい話になるんですけど、
 あたし、ツルなんです。」

ディレクター
「はい。」

少女
「リアクション薄っ!」

ディレクター
「裏方が大きなリアクションをすると、演者が光りませんから。」

少女
「あ、まぁ、確かに・・・。」

ディレクター
「あなたはツルです。そして?」

少女
「で、ツルのときにかかってしまったワナから解放してくれたおじいさんに恩返しをしようと。」

ディレクター
「お、いいですね。
 どんな恩返しを予定されてますか?」

少女
「一応、反物を織ろうかと・・・。」

ディレクター
「なるほど、いいですね。感動系だ。
 もしよろしければ、ご一緒してもいいですか?」

少女
「えぇ、まぁ、いいですけど・・・。」

ディレクター
「では参りましょう。」


(おじいさんの家の前)


少女
「ここがおじいさんの家の前ですね。」

ディレクター
「なるほど。
 ちょっとカメラが入っていいか出演交渉しますね。」

少女
「出演交渉?」

ディレクター
「(扉を叩く)すみませーん!すみませーん!」

少女
「え、え、え、え?」

おじいさん
「(中から出てくる)はい?」

ディレクター
「夜分遅くすみません。
 『YOUは何しに日本へ?』という番組の撮影クルーなのですが、

 撮影許可を頂きたくて。」

おじいさん
「撮影許可?」

ディレクター
「このあと、こちらの娘さんさんが恩返しにやってきます。」

おじいさん
「恩返し?」

ディレクター
「あ、こちらの娘さんさん、実はツルなんです。」

少女
「あっさり正体を言った!」

ディレクター
「で、これからワナから解放してくれたお礼に反物を折るそうなので、
 訪ねてくるところから、別れのシーンまでの一部始終を撮影させていただきたいなと。」

おじいさん
「・・・。」

少女
「うん。いきなりそんなことを言われても、リアクションに困りますよね。」

おじいさん
「・・・いいですよ。」

ディレクター
「ありがとうございます!」

少女
「許可出た?!
 これから何が起こるか把握した?!」

ディレクター
「では、我々は娘さんさんの背後から撮影します。
 我々のことはいないものと思っていただいて構いませんので・・・。」

少女
「いないものと思えるかなぁ。」

ディレクター
「ではおじいさんはもう一度中に入っていただいて・・・。」

おじいさん
「はいはい。」

ディレクター
「娘さんさんはこちらからやってきましょうか。」

少女
「あぁ、はい。
 あと、あたし、『娘さん』です。
 『娘さんさん』ではないです。」

ディレクター
「全員、準備OKかな?
 はい、アクション!」

少女
「やりにくいなぁ・・・。
 (扉を叩く)すみません・・・。すみません・・・。」

おじいさん
「(扉を開ける)はい。」

少女
「夜分遅くすみません・・・。
 道に迷ってしまいまして、もしよろしければ、今晩泊めていただけないでしょうか?」

おじいさん
「あれ?段取りと違くないですか?」

少女
「はい・・・?」

おじいさん
「『田舎に泊まろう』ですか?」

ディレクター
「はーい!一旦止めまーす!一旦止めまーす!」

おじいさん
「『YOUは何しに・・・』じゃないの?」

ディレクター
「『YOUは何しに・・・』ですよ。
 (娘さんに)あれ、恩返しに行くんじゃなかったの?」

少女
「恩返しにはいきますけど、ツルであることは隠していきたいんです。」

ディレクター
「あ、そういう体(てい)ですか!
 すみませーん!一旦仕切り直しまーす!」

おじいさん
「どういうこと?」

ディレクター
「すみません。娘さんさんがツルであることは内緒の体でお願いします。」

おじいさん
「内緒の体でね。」

ディレクター
「その代わり、正体がわかったときはハデなヤツお願いします。」

おじいさん
「リアクション?」

ディレクター
「リアクション!」

おじいさん
「了解です!」

ディレクター
「ありがとうございまーす!
 はいー、では内緒の体でTAKE2行きまーす!」

少女
「慣れてるの?
 このおじいさんはテレビ慣れしてるの?
 打ち合わせ、思った以上にスムーズだったけど。」

ディレクター
「では、娘さんさんはこちらから。」

少女
「『娘さん』です。」

ディレクター
「用意・・・アクション!」

少女
「やりにくいなぁ・・・。
 (扉を叩く)すみません・・・。すみません・・・。」

おじいさん
「(扉を開ける)はい。」

少女
「夜分遅くすみません・・・。
 道に迷ってしまいまして、もしよろしければ、今晩泊めていただけないでしょうか?」

おじいさん
「あぁ、どうぞ。」

少女
「ありがとうございます。」

おじいさん
「ばあさん、こちらの娘さまさま、道に迷ってしまったそうだ。」

少女
「『娘さん』です。『娘さまさま』じゃないです。」

おばあさん
「あああ、ああ!
 そそそそ、そうですか!
 そそそ、そらー、大変だー。」

少女
「緊張!おばあさんの緊張がすごい!」

おばあさん
「ででで、では、娘さんさん娘さん、
 ごごご、ご飯でも、たたた食べますか?」

少女
「大丈夫ですか?尋常じゃない緊張っぷりですけど。
 あと、『娘さん』です。『娘さんさん娘さん』じゃないです。」

おばあさん
「ででででは、じじじ準備を、ししししますね。」

少女
「いや、無理はしないでください。」

おばあさん
「ぼぼぼ僕は、おにおにおにぎりが、たたた食べたいんだな。」

少女
「緊張を通り過ぎて別人格になってますけど。」

おじいさん
「ばあさん、無理せんでいいよ。今日は休みなさい。」

少女
「あ、おじいさん。」

おじいさん
「はい?」

少女
「あたしはこれから、隣の部屋にこもります。
 くれぐれも部屋の中を覗かないでください。」

おじいさん
「ほぅ。隣の部屋で。わかった。」

少女
「では、失礼します。(扉を閉める)」

おじいさん
「あぁ。」

少女
「さてと、ようやく1人になれた・・・。元の姿に戻って反物を・・・。」


(部屋の隅にロッカーが置かれている)


少女
「何このロッカー。」


(部屋の反対側には観葉植物が置かれている)


少女
「なんかすごく不自然なんだけど。この観葉植物。
 ・・・まさか!」


(観葉植物の根元を探る)


少女
「小型CCDが出てきた!
 ということは・・・?(ロッカーを開ける)」


(ロッカーからカメラマンが出てくる)


少女
「(おじいさんたちの部屋に行き)めちゃくちゃカメラ仕掛けてあるんですけど!」

おじいさんディレクター
「(小型モニターを見ている)あ・・・。」

少女
「あ・・・。」

ディレクター
「あ、我々はいないものだと思ってもらっていいので・・・。」

少女
「無理無理!この存在感だもの!」

ディレクター
「では、反物を渡して別れのシーンを。」

少女
「何であなたが進行するのよ!
 反物、まだ織ってないし!」

ディレクター
「反物はこちらで用意しました。」

少女
「なんなの?
 テレ東、なんなの?」

ディレクター
「では、アクション!」

少女
「やりにくいなぁ・・・。
 おじいさん、おばあさん、ワナから解放してくれて、ありがとうございます。
 わたしはあのときのツルです。」

おじいさん
「えぇーーーーーーっっ!」

少女
「リアクションデカイな・・・。事前に知ってたでしょ?」

おばあさん
「おおおおおおお・・・おにおにおにおにぎりが・・・!」

少女
「おばあさん、大丈夫?
 緊張が限界に来てるみたいけど。」

おじいさん
「ばあさん、今日は休みなさい。」

少女
「こちら、お礼の反物です。」

おじいさん
「わぁ、これは立派な・・・。
 おいくら支払えば・・・。」

少女
「いえ、売り物ではないので・・・。」

おじいさん
「あぁ、わかった。」

少女
「なんでしょう?」

おじいさん
「『アド街を見た』。」

少女
「・・・。」

おじいさん
「・・・。」

少女
「・・・。」

おじいさん
「・・・。」

少女
「・・・いや、安くならないですよ。」

おじいさん
「ならないの?!」

少女
「アド街とのパイプないので。

 そもそも、テレ東とのパイプないですから。
 それにこれ、売り物じゃないです。
 こちら、差し上げます。」

おじいさん
「いやぁ、なんか申し訳ない。」

少女
「それでは、ありがとうございました!(ツルの姿になり、飛び立っていく)」

おじいさん
「さよーならー!(手を振る)」

ディレクター
「出演料は後日振り込みますのでー!(手を振る)」

おばあさん
「おおおおおおお・・・おにおにおにぎり!(手を振る)」

ツル
「(空を飛びながら)まったく、テレ東のせいで恩返しがむちゃくちゃになったわ。
 あー、ノドが渇いた・・・。
 散々ツッコんだからかな・・・。
 たしか、この辺りに公園があったはず・・・。」



(ツル、公園に降り立つ)


ツル
「あれ?確かにこの辺に水飲み場があったはずだけど・・・。」

ディレクター2
「すみません。
 今、ロケ中で、この辺りの池の水ぜんぶ抜いちゃってるんです。」

ツル
「テレ東ーっっ!!」

 

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

元々、雪女の元に「YOUは何しに日本へ?」のクルーがやってくるという設定を思いついたところから始まったのですが、

そこから先が広がらず、ツルのおんがえしとリンクさせる形になりました。

そして、テレ東の番組をどんどんくっつけていく設定にして、オチまでそこに持っていきました。

 

【上演メモ】

人数:5人

ツル

ディレクター

おじいさん

おばあさん

ディレクター2

 

所要時間:5分~6分
所要時間:★★★☆☆
備考:ツルに姿を変えるシーンがあるので、ここは工夫が必要です。

あえてツルの帽子をかぶるくらいのチープな演出にしてもいいかもしれませんね。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ランプの魔人
【コント】黄門さまのおさばき#2
【コント】おじいさん&おばあさん#2
【コント】避難訓練
【コント】ストーカー

 

【お知らせ】

過去に公開したコント「いきものサミット」を映像化していただきました。

静止画と音声で演じていただいています。

こちらからどうぞ。

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

(内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。ご了承ください。)

 

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(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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