教頭
「あ、田辺先生。」


田辺
「どうしました、教頭先生。」


教頭
「先日、田辺先生に提出してもらった、
 来週実施予定の避難訓練の件なのですが・・・」


田辺
「あぁ、すみません。
 時間がなかったので、小さい頃に地元の小学校で実施した
 避難訓練を元に書きました。
 だから、細かい部分とか調整が必要かもしれないです。」


教頭
「細かいところよりももっと大きな部分で聞きたいことがあるんです。」


田辺
「なんでしょう。」


教頭
「まず、1ページ目。今回の想定。」


田辺
「はい。」


教頭
「普通、避難訓練というのは、地震が発生したとか、
 家庭科室で火災が発生した場合を想定して行うんです。」


田辺
「そうですね。」


教頭
「田辺先生が書いたのは、
 『理科室で透明人間が発生したときの避難訓練』。
 これどういうことですか?」


田辺
「小さい頃やりませんでした?
 地震、火事、透明人間の避難訓練。」


教頭
「地震、火事はありましたが、透明人間はないです。」


田辺
「あれぇ?
 僕の地元だけなのかなぁ。」


教頭
「田辺先生、実家はどこなんですか?」


田辺
「それは今、関係ないでしょ?」


教頭
「大アリなんですけど。
 まぁ、いいや。実施要項に従うと、
 10時00分、理科室で透明人間発生。」


田辺
「はい。」


教頭
「10時01分、私が放送でアナウンス。
 『訓練。透明人間発生。訓練。透明人間発生。
 第1理科室で訓練透明人間が発生しました。』
 訓練透明人間ってなんですか?」


田辺
「避難訓練用の透明人間です。
 火災のときにも言うでしょう?訓練火災が発生しましたって。
 "訓練"ってつけないと、『あれ?本物が発生したのかな』って
 パニックになりますよ。」


教頭
「私が既にパニックなんですけど。
 まぁ、いいや。で、私のアナウンスで
 『指示があるまで机の下に隠れていてください。』
 これは何ですか?
 地震じゃないんだから、机の下に隠れなくてもいいでしょう?」


田辺
「透明人間を甘く見ちゃいけませんよ。
 透明人間に見つかったら、一瞬で首を絞められますよ?」


教頭
「何で?」


田辺
「透明人間に見つからないようにするためにも
 全員、一旦、机の下に隠れるんです。」


教頭
「でも、透明人間が机の下をのぞき込んだら一発でバレますよ。」


田辺
「透明人間はそこまで賢くないんで。」


教頭
「田辺先生の頭の中には、
 ハッキリした透明人間の人物像みたいなものができてるのかな。」


田辺
「で、次です。」


教頭
「10時04分。避難開始。
 私のアナウンスで
 『透明人間が疲れ始めました。今が避難のチャンスです。
  ハンカチを口にあて、すみやかに避難しましょう。』
 ハンカチを口に当てるのは何故ですか?」


田辺
「ハンカチを口に当てないと、
 透明人間がニラを口に押し込みますよ?」


教頭
「何で?何でニラを?」


田辺
「ニラを口に入れられる隙間を作らないように
 ハンカチを口に当てるんです。」


教頭
「うん。だから、なんで、透明人間はニラを?」


田辺
「教頭先生。透明人間に理屈は通用しないんです。」


教頭
「うん。透明人間の議論をしてる時点で、
 すでに理屈うんぬんは崩壊してるんだけどね。」


田辺
「あ、そうそう。避難の前に、窓にカギをかける指示を出すのを
 忘れないでください。」


教頭
「窓にカギ?(実施要項を見る)
 あぁ、書いてあった。
 『学級委員は窓にカギがかかっているのを確認した上で避難してください。』
 なぜ、窓にカギを?」


田辺
「透明人間を校舎に閉じ込めるためです。
 窓を開けっぱなしにしておくと、窓から透明人間が逃げてしまいます。
 外に逃げ出したら、町中がパニックになりますから。」


教頭
「なるほど。」


田辺
「はい。」


教頭
「・・・カギって内側についてるから、
 カギをかけても、簡単に開けて逃げちゃうんじゃないの?」


田辺
「大丈夫です。
 透明人間はそこまで賢くないんで。」


教頭
「田辺先生の描く透明人間像はバカなんだね。」


田辺
「教頭先生のアナウンスはまだ続きます。」


教頭
「『生徒全員は"おはし"の合言葉を守って、急いで避難してください。』
 "おはし"。
 あぁ。『押さない』『走らない』『しゃべらない』か。」


田辺
「違います。
 『おしゃべりしない』『話さない』『しゃべらない』です。」


教頭
「・・・それ全部一緒なんじゃ・・・?」


田辺
「はい。次です。」


教頭
「無視?」


田辺
「避難と同時に消防に連絡です。」


教頭
「この場合も消防に連絡するの?
 連絡された消防も対処に困らないかな。」


田辺
「じゃあどこに連絡します?
 日暮里ボウリング場に連絡しますか?」


教頭
「日暮里ボウリング場に連絡しても、
 日暮里ボウリング場の人に『それは大変ですね』って言われるだけだけどさ・・・。
 わかったよ。消防に連絡するよ。」


田辺
「消防の人はカラーボールを持って本校にかけつけます。
 そして、校舎中でカラーボールをまき散らします。」


教頭
「校舎の中、ペンキだらけになっちゃうじゃない!」


田辺
「運よく透明人間に当たれば御の字です。
 あとは一蹴りして確保です。」


教頭
「確保の前の一蹴りはいらないんじゃないかな・・・。
 カラーボールが透明人間に当たらなかったら?」


田辺
「校舎中がスプラトゥーン状態になります。」


教頭
「ダメだよ!誰が掃除するの?」


田辺
「大丈夫です。今回は訓練なので、カラーボールは投げません。
 避難後、署長から一言もらって終了です。」


教頭
「とりあえず、要領はわかったけどさ・・・。
 この訓練は役に立つことあるの?」


田辺
「教頭。冬場は空気が乾燥していて、透明人間が発生しやすいんです。
 『起こらない』じゃなくて、『起こるかも』の気持ちでいないと!」


教頭

「・・・わ、わかったよ。」



ピーンポーンパーンポーン!



校内アナウンス
「透明人間発生!透明人間発生!
 校長室で校長先生が透明人間になりました!
 みなさん、すぐに机の下に隠れてください!!」


教頭
「校長先生が透明人間に?!」


田辺
「ほら来た!本当に来た!急いで机の下に隠れないと!!」


教頭
「いや、校長先生が透明人間になったのなら、
 校長先生に落ち着くように説得した方が・・・モゴッ!!(口にニラを詰め込まれる)」


田辺
「透明人間だ!!
 透明人間が出たぞーーーー!!(走って逃げる)」












【コント・セルフ・ライナーノーツ】

先日、会社で避難訓練があったもので・・・。


どんなことが起こるかわからない世の中。

いろんな想定の避難訓練があってもいいかもしれないですね。






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