遠藤
(座って待っている)


刑事
「(部屋に入ってくる)お待たせしました。」


遠藤
「あ、はい。」


刑事
「ちょっと暑いですね。(窓を開ける)」


遠藤
「だんだん暖かくなってきましたからね。」


刑事
「さてと。生活安全課の林です。」


遠藤
「遠藤です。」


刑事
「えーと、ストーカーで困っていらっしゃると・・・」


遠藤
「はい。」


刑事
「詳しく聞かせていただけますか?」


遠藤
「はい。私、商店街で靴屋をやっているのですが、
 ある日、靴作りの作業を途中で切り上げて仮眠をとったんです。」


刑事
「はい。」


遠藤
「で、起きたら目の前に完成した靴が置いてあったんです。」


刑事
「ほう。」


遠藤
「その時ははありがたいと思ったんですけど、
 翌日もその翌日も朝起きると、必ず靴が置いてあるんです。」


刑事
「あれじゃないですか?童話でありましたよね。小人の靴屋。」


遠藤
「私もそうかと思いました。
 ただ、あまりにも毎日続くのでだんだん気味が悪くなってきて。」


刑事
「確かに。」


遠藤
「で、友人に相談したら、それストーカーじゃない?って言われて・・・。
 ストーカーにもこういうタイプっているんですよね。
 つきまとう相手にプレゼントを贈り続けるタイプって。」


刑事
「確かに過去に事例はありますね。」


遠藤
「ストーカーかも?って思い始めた瞬間から、
 毎朝、無言で届けられる靴が怖くなってきて・・・」


刑事
「ふむふむ。」


遠藤
「で、夜だけなのかと思っていたんですけど、
 ある日、昼寝したときにも起きたら靴が置いてあったんです。」


刑事
「ストーカーに寝ているタイミングが把握されていると。」


遠藤
「もう怖くて・・・
 寝るとストーカーが現れるから、最近はすっかり寝不足で・・・
 今も3日ほどまともに寝てません・・・」


刑事
「被害届出します?」


遠藤
「はい。お願いします。」


刑事
「では、こちらの書類を読んでいただいて、
 問題なければ、サインと押印をお願いします。」


遠藤
「うわ、すごいいろいろ書いてある・・・(書類を読み始める)」


刑事
「すみません。いろいろ決まり事が多くて。」


遠藤
「・・・。(読み続ける)」


刑事
「・・・。」


遠藤
「・・・ZZZ。」


刑事
「遠藤さん?」


遠藤
「・・・ZZZ。」


刑事
「遠藤さん?寝てます?」



(窓から靴が投げ込まれる。)



刑事
「靴だ!」


遠藤
「はっ!(起きる)」


刑事
「誰だ!!(窓から外を見る)
 誰もいない・・・
 遠藤さん、大丈夫ですか?」


遠藤
「ちょっとウトウトしてしまいました・・・」


刑事
「寝ると靴が届くって、こんな感じなんですね!」


遠藤
「そうです。ちょっと寝落ちしただけでもストーカーは見逃さないんです。
 もう怖いです。
 絶対監視されてますよ。」


刑事
「確かにこれは怖いですね。」


遠藤
「ちょっとトイレ行ってきます。(トイレにいく)」


刑事
「(靴を拾う)でも、見た目は普通の靴なんだなぁ。
 結構、いい靴。」


遠藤
(靴を持って戻ってくる)


刑事
「あれ?その靴は?」


遠藤
「トイレの個室で寝落ちしまして。
 気づいたら足元に・・・」


刑事
「何か対策を打たないといけないですね。」


遠藤
「家の周りのパトロールをお願いします。」


刑事
「引っ越してみるとかどうですか?」


遠藤
「2か月前に引っ越ししました。
 引っ越し翌日、枕元に『引っ越し祝い』という
 のし袋 と一緒に靴が置かれてました。」


刑事
「靴屋をやめるとか。」


遠藤
「一度、帽子屋になったんですけど、
 翌日、枕元に『開業祝い』という
 のし袋 と一緒に帽子が置かれてました。」


刑事
「その時は帽子が届いたんですね。」


遠藤
「怖くなって、すぐに靴屋に戻しました。
 商店街からは、『靴屋さん、迷走してる』って言われましたよ。」


刑事
「犯人にしてみれば、お祝いしているつもりなんですかね。」


遠藤
「最近は、ひも、かかと、中敷きという感じで1つずつパーツが
 枕元に置かれるケースがあって・・・」


刑事
「最終的に全部集めると1足の靴になるという感じですか。」


遠藤
「我が家では、ディアゴスティーニパターンと呼んでます。」


刑事
「とりあえず、状況はわかりました。
 寝なければ靴は来ないんですよね。」


遠藤
「はい。寝なければ。
 ただ、一瞬の寝落ちもストーカーは見落とさないので、
 もう限界です・・・。」


刑事
「確かに。」



(窓から靴が投げ込まれる)



刑事
「靴だ!!」


遠藤
「えっ!?
 私、寝てないのに・・・?!」


刑事
「とうとうやっこさん、
 対象が寝てる、起きてるに関係なく靴を投げ込むようになったか・・・」



(窓から靴が投げ込まれる)



刑事
「また、靴だ!!」


遠藤
「え?!何?何?
 何が起きているんですか?!」



(窓から靴が投げ込まれる)



刑事
「遠藤さん、伏せて!!」


遠藤
「いや、伏せても何も変わらないと思いますよ?!」



(窓から靴が投げ込まれる)



刑事
「とりあえず、伏せて!!」


遠藤
(伏せる)



(靴の投げ込みが止まる)



刑事
「止まったか・・・」


遠藤
「どういうことなんですか?
 犯人はどういう心理状況なんですか?(ゆっくり立ち上がる)」



(窓から靴が投げ込まれる)



刑事
「また、靴だ!!

 遠藤さん、伏せて!!」


遠藤
「またですか?!(伏せる)」



(靴の投げ込みが止まる)



刑事
「止まった・・・」


遠藤
「なんですか?伏せると止まるという法則ですか?(立ち上がる)」



(窓から靴が投げ込まれる)



遠藤
「やっぱりそうだ!!(伏せる)」


刑事
「遠藤さん!!
 警察が犯人を捕まえるまで、伏せていてください!!」


遠藤
「無理ですよ!!
 靴屋の客対応とかどうすればいいんですか!!」


刑事
「あと、犯人が逮捕されるまで、絶対に寝ないでください!
 寝ると靴が届くので!」


遠藤
「3日寝てない人間を伏せたまま寝かせないって
 どんな拷問ですか!!」


刑事
「これから捜査本部を立ち上げて、本格的な捜査に入ります。
 犯人逮捕に全力を注ぎますので!(部屋を出ていく)」


遠藤
「ちょっと!!
 『伏せたまま寝るな』って指示はなんとかなりませんか?!」







あの日から10年。
警察の捜査は現在も続いている・・・







【コント・セルフ・ライナーノーツ】

小人の靴屋で何か作れないかと、

頭の中で小人の靴屋大喜利をして、

ストーカーと組み合わさったというコントです。


オチはとにかく難産でした・・・。

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