耳ざわりのいい←間違っています!正しい表現がわかりますか? | 伝わる・喜ばれる文章講座

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聞こえの良い言葉を耳にしたときなどに「耳ざわりのいい言葉だね」などと言ったことはありませんか?

 

実はこの言い回しは間違っています。

 

どこが間違っているのか、説明できますか?

 

 

「耳ざわり」は、漢字で表すと「耳障り」です。

 

「障り」は「さしさわり」「さまたげ」という意味ですので、「耳障り」は聞いていて気にさわることを表します。

 

 

聞こえが良いという意味で使うのであれば、「耳当たりのよい」が正しい言い方です。

 

では、なぜ「耳ざわりのいい」が正しい言い方のように思えてしまうのでしょうか。

 

 

「さわり」という言葉を漢字で表記すると「触り」をまず連想する人が多いでしょう。

 

耳に触る、つまり耳に触れるという意味で、心地よい響きのある言葉、といった意味で捉える人が増えたと考えられます。

 

 

これに対して「差し障りのない」といった言い回しはやや堅い表現で、日常会話であまり使わないのではないでしょうか。

 

そのため、「さわり」と言えば「障り」よりも「触り」を思い浮かべる人が多くなり、「耳ざわり」も「耳触り」と解釈されるようになったと推測できます。

 

 

「耳障り」はそもそも良くない意味の言葉ですので、これに「良い」を付けると矛盾してしまいます。

 

「今日は天気がいい」と言うことはあっても、「今日は悪天候がいい」とは言わないのと同じです。

 

 

似たような誤りに「安くつく」があります。

 

「高くつく」は正しい表現で、安く手に入れたつもりが後日の出費でかえって高くなってしまうことを表します。

 

「つく」のは出費がつくという意味ですので、追加でお金がかかるというイメージです。

 

「安くつく」と言うと、何が「つく」のかが分かりません。

 

正しくは「安く上がる」です。

 

「安上がり」という言葉とセットで覚えておくと、間違えにくくなるはずです。

 

 

このように、言葉は時代とともに記号化していきます。

 

「耳障り」が「耳触り」へと変わっていったように、音に惑わされず本来の意味を知っておきたいですね。