「仕事をなし崩しで処理する」と聞いて、どんな印象を持ちますか?
- 惰性でいい加減に処理してしまう
- やるべきこともなかったことにして進める
といった、ネガティブなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
実はこの「なし崩し」の意味は誤りです。
本来の意味が答えられるでしょうか?
「なし崩し」とは、「少しずつ片づけること」「徐々に変えていくこと」を表す言葉です。
もともとは、借金を少しずつ返して減らしていくことを指していました。
2018年に発表された文化庁による「国語に関する世論調査」では、
「少しずつ返していく」という意味に捉えている人は19.5%に留まっており、
「なかったことにする」と捉える人は65.6%に及んでいました。
半数以上の人が、本来の意味とは異なる捉え方をしているのですね。
では、なぜこのような意味の取り違えが起きているのでしょうか。
理由として、2つが考えられます。
1つめの理由に「なし」という言葉が含まれていることが挙げられます。
「なし」と聞くと「無し」を連想しやすいため、そもそもなかったことにする、無視してしまうという意味に捉える人が多くなったと考えられます。
もう1つの理由として、「崩し」という言葉がネガティブなイメージを与えやすいことが挙げられます。
もともとは「借金を少しずつ減らす」という意味でしたが、たとえば「預金を崩す」などと日常生活で使うことがあるため、「崩す」=なくなっていく、といった印象を持っている人が少なくないのでしょう。
「無し」と「なくなっていく」という2つの言葉が組み合わされているのですから、「なし崩し」という言葉自体にネガティブなイメージを持つ人が多くなるのも必然かもしれません。
ちなみに「なし崩し」の本来の意味には「徐々に変えていく」という意味もあることから、はっきりと気づかれないように少しずつ変えていき、うやむやにしてしまうといった意味にもなります。
こうした狡猾なやり口をする人のことは「ずるい」「いい加減だ」と感じる人もいるはずです。
その結果、「なし崩し」なやり方をする人=いい加減、という印象を持たれるようになり、いつしか「なし崩し」そのものがいい加減な行為を指す言葉として認知されていった可能性もあります。
もともと「少しずつ進める・片付ける」という意味で使われる言葉ですから、少なくとも「悪い意味を表すばかりの言葉ではない」と考えておいたほうがよさそうですね。