「私たちのチームはパスワークが圧倒的に弱い」
こんな言い方を耳にしたことはありませんか?
この「圧倒的」の使い方は間違っているのですが、なぜ間違いなのか分かるでしょうか。
「圧倒的」は「相手を圧倒するほど力量や規模が多く、非常に勝っている」という意味です。
「倒(=倒す)」という漢字が使われているので、考えてみるとたしかに「相手よりも勝っている」という意味が適切だと分かります。
つまり、「弱い」のように劣っていることを使う場合に「圧倒的」は使えないのです。
「圧倒的」を劣っている場合にも使ってしまう誤りは、なぜ起きてしまうのでしょうか。
理由の1つとして、「圧倒的」を「程度の差が甚だしい」という意味に捉えていることが挙げられます。
「圧倒的な勝利」と言う場合、周囲に大きく差をつけて勝ったという意味になります。
力量の差が甚だしいことが原因として考えられますので、「圧倒的」=「埋めようのない大きな差がある」と捉えるようになったと考えられます。
同様に、「圧倒される」のような表現も、対象となるモノや出来事が優れている場合にしか使いません。
「あまりにも技術が低くて圧倒された」とは言わないのです。
誤解を生んでいる原因として、別の理由も考えられます。
「あっとう」という語感は、「あっと驚く」と似ているところがありますので、差が大きいことに驚いてしまった場合に使う人が増えているのかもしれません。
圧倒的と似た意味を持つ表現として、
- 歯が立たない
- 相手にならない
などが挙げられます。
「全くかなわない」と言うのであれば、これらの表現を使うのが適切です。
勝っている側のことを指す場合に「圧倒的」「圧倒する」を使います。
負けている場合には使えない、と覚えておくようにしましょう。