「煮詰まる」はつらい状況ではない!? | 伝わる・喜ばれる文章講座

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「議論が煮詰まってきた」

 

こう聞いて、どのような印象を持つでしょうか?

 

1.議論がすっかり行き詰まって結論が出そうにない

2.議論が進んで結論が出る手前の段階まで来ている

 

どちらの意味で「煮詰まる」という言葉を使っていますか?

 

「煮詰まる」の正しい意味は「2」です。

 

平成19年度に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」では、1の意味で捉えていた人が37.3%、2の意味で捉えていた人が56.7%となっていました。

 

年代別に見ると、1(=誤用)と答えた人の割合だ最も高かったのは10代で76.3%、2(=本来の意味)と答えた人の割合が最も高かったのは50代で77.3%という結果が出ています。

 

若い世代に誤用が目立つのですね。

 

「結論が出そうにない」と「結論が出る手前」では、意味が正反対になってしまいます。

なぜこのような誤りが増えているのでしょうか。

 

原因として考えられるのが「詰まる」という言葉のニュアンスです。

「行き詰まる」といった言葉と似ているため、議論が進まない・結論が出そうにないといった意味で捉えている可能性があります。

 

「煮詰まる」という言葉は、もともと料理などで使われてきました。

煮物を作るとき、加熱していくうちに水分が蒸発していき、味が具材にしっかりと入っていきますよね。

しっかりと煮えていれば、料理はおいしくなっているはずなのです。

ところが、料理があまり得意でない人は、煮物を焦がしてしまったり、加熱しすぎて味がおかしくなってしまったりといった経験をすることがあります。

そのため、「煮詰まる」という言葉に良い印象を持っていない場合もあるでしょう。

 

最近の辞書の中には、例文で挙げた「1」と「2」の両方の意味を掲載しているものも出てきています。

しかし、前に述べたように「1」と「2」では意味が正反対ですから、どちらの意味で使われているのか紛らわしいのです。

 

もし今後、誰かが「議論が煮詰まった」と言っている場面に遭遇したら、それまで議論してきた様子や経緯を踏まえて、どちらの意味で使っているのか見極める必要があるでしょう。