先人の偉業と遺産に学ぶ1日 | おから味噌主宰松田由己のブログ

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お料理は野菜中心に、バランスのとれた食生活を心がけています。
子供との会話ネタ、自分の心の声なども書き綴ります。
社会情勢や政治ネタもたまにアリ。

今年もギリギリで行けました!

 

谷中にある「全生庵」の幽霊画展

 

毎年、8月末まで開催されています

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「日本画が好きなのですか?」

 

と、問われれば

 

イエス。

 

 

しかし

何でも好きなわけではなく

 

作家や作画にもよりますが

 

どちらかというと

 

幽玄・幽美なものが

好きなのだと思います。

 

 

これはお寺の敷地内、本堂のお隣の

あまり広いとは言えないスペースで展示されるのですが

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残念ながら、お見せ出来るのはここまで!!

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展示物にガラスケースはなく

 

なんとそのままの展示なのです

 

 

掛け軸の色や

表具や紙の材質も

 

じっくりと

ガラスの反射がなく

 

楽しませていただけます

何といってもそれが魅力!!

 

 

毎年展示品は少し変わり

 

昨年、私が感銘を受けた作品は今年はなく…

変わりに違うものがまた、いくつかありました。

 

昨年に引き続き

今年のヒットはこちらかな

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月岡芳年 宿場女郎図

 

これは実は「幽霊」ではありません

 

でも、肩も手首も痩せこけて

艶のなくなった女郎には

 

明らかに「病魔」の影が見える

 

薬も医師も、ままならぬ時代

まして彼女は、女郎…

 

とても切なさを感じる

 

 

そしてこちらは怖いよ^^;

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伊藤晴雨 怪談乳房榎図

 

これは

妻に裏切られ

妻の不貞相手に殺された男が

 

滝壺の中から怨念と共に浮かびあがる

 

ただ

腕には

やすやすと眠る

幼い我が子を抱いている

 

 

妻と男は果てしなく憎いだろう

恐ろしい形相だが

死んでなお

我が子を案ずる気持ちは

化けて出ても

変わらないのだ

 

 

怖い、けど

切ない

 

 

あとはこちら

中島光村 月に柳図

 

大きな月夜に

柳の木が1本

はらりと葉が落ちて…

 

 

え?

 

 

よく見ると…

 

月は眼に

柳は髪に…?

 

 

これはすごいですよね

作者の意図的なだまし絵なのか

それとも見る人の妄想なのか…

 

真意は不明だそうです

 

最後はこちら

菊池容斎 蚊帳の前に坐る幽霊

 

 

幽霊画を見ていると

 

蚊帳の前に

行燈の向こうに

というシチュエーションが大変多くある

 

この画の幽玄なところは

 

よく見ると

 

蚊帳の「向こう」の方がくっきりと見えて

蚊帳ではなく、行燈の明かりがあるところがボケている

 

普通は、逆だ

 

きっと作者は

蚊帳の中にこそ

あちらの世界を感じたのかもしれない

 

 

これも実際に

鉛筆のラインまでをも間近に見ることができる

 

幽霊画ファンの方には

何とも嬉しいお話なのです

 

また来年も

絶対に行こうっと

 

そして今回は

贅沢にもう1件!!!

 

明日で展示終了と言うまさにギリギリのタイミングはこちら

上記の幽霊画でも出てきましたが

大好きなのです、月岡芳年氏

 

そしてもう一人

小泉八雲氏の作品展示がありまして

これも同時に観覧可能しかも

 

入場無料…

 

お金取られても入りますが

 

本当にいいのですか?のレベル^^;

 

ちなみに外は灼熱地獄で

 

駅から駅へ

 

本当によく歩いては

 

幽霊画で身体を冷やすという 笑

 

 

月岡氏の浮世絵は

確か昨年、何かの浮世絵展示で

いくつか同じ作品を見ていますが

 

他の作者とはけた外れに違う

表現力があり

 

切ない感じや

悲しい感じが

 

表情ではなく

しぐさや雰囲気で

よく伝わってくる

 

 

娯楽のない時代

このひとの描く絵巻は

それはそれは面白かったと思う

 

当時のベストセラー作家だったのも

うなずける

 

為朝の武威痘鬼神を退くの図

 

これは、源為朝が、当時の疫病の神を退治しようとしている画

 

両手を上げているのが疫病の神

 

そして後ろにいるのは

子供を背負ってその場から逃げる女性なのだが

背負われている子供の肌が…

 

おしりが

 

なんと疱瘡で赤くなっている

 

当時は疫病、流行り病は

死を予感させる重大なことだった

 

子供に疱瘡ができたら

母も

家族も

それは恐ろしい思いをしたのであろうなと

 

そんなことを想像させる1枚

 

そしてこちらは

以前お豆腐の関係のお仕事をさせていただいていた事があり

その時に、生徒さんにこの下りのお話をさせていただいた

 

土地柄的な要素も含まれるので

少し曖昧な解釈で良いのかもしれないが

私は大変興味があり

実は、勉強した

 

自分がよくわからないことを

他人に教えるのが嫌なので

このモデルとなった浄瑠璃も

読んで内容も把握した

 

その画を描いていたのが月岡氏であった

とても嬉しい出来事

 

葛の葉きつね童子にわかるるの図

 

陰陽師、が絡んで来るのですが

 

簡単に言うと

「狐の恩返し」的なお話で

 

女性に化けた狐が

命を助けられた恩人の息子と結婚して

子供を授かる

 

が、正体がばれてしまった

子供は母を追って

着物の裾を掴むが

 

母は行かなくてはならない

 

障子に映る姿は狐の姿で

もう

振り向けない

 

愛しいわが子を置いて

行かなくてはならない

 

 

きっと狐は

泣いているだろうなと

 

これも切ない1枚

 

月岡氏の作品は全部で100点以上は展示されていて

 

四谷怪談、これはただ単に

ホラーや祟り、などというものではないのだ

 

念入りに作られて

当時の民衆にヒットするように練られた逸話なのである

見たい

見たいみたい、いつか絶対に舞台を観に行く

 

無くなることはないのだから

健康でさえあれば

今年、来年でなくても

いつかきっと、観に行こう

 

 

そして

こちら

小泉八雲 ラフカディオ・ハーン 怪談

 

 

彼もまた
大好きな作家で

 

まさかこれを外国人が書いたとは…と思うほどの描写力

 

ちょうど先日、図書館から借りて来て

息子らに読んであげたばかりだった

 

「耳なし芳一」

「ろくろ首」

 

耳なし芳一を書いたのは

異人さんだった、と私が知ったのは

恥ずかしいことに

大人になってからでしたが

 

本当にびっくりした

 

子供たちには大うけの「コワい話」で

 

八雲シリーズは大人気

 

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幽霊画とか

 

怪談とか

 

地獄絵とか

 

 

風景画よりも

私がそちらに惹かれる理由は何だろう

 

 

おそらく

 

昔はもっと

 

「生活する」ということは大変で

 

食べるものがない

疫病にかかった

怪我をした

お咎めを受けて切られた

 

そのようなことで

日常生活にもっと「死」があふれていたのではないかと思う

 

産まれる時も自宅

死ぬ時も自宅

 

産後に感染症に罹ったとか

 

病院などなかったわけだし

冷蔵庫も車もなかったのだから

 

餓死したり

行き倒れたりして

 

道端で死んでいたり

骸骨になっていることも

そう、珍しくなかったのではないだろうか

 

「化学」など考えもつかなかった

日々生きることが全てだった

 

そんな時代

 

何か悪いことが起こると

悪霊や妖怪の仕業にしたり

 

納得いかない理不尽に対しては

恨めしげな幽霊で表現したり

 

 

八百万の神々と言うほど

たくさんの神様がいる日本だからこそ

 

そこに信仰心なども相深まって

 

見えない世界を幽玄に表現する

 

日本人独特の芸術文化が

根付いたのだろうなと想像する

 

高橋由一 幽冥無実の図

 

 

幽冥無実、実は「有名無実」のもじりである

 

有名無実、とは

 

名前や外見ばかりで

中身が伴わないことをいう

 

 

この画は

女性がうたたねをしている後ろに

 

すっと

 

切ない表情の男性が

煙のように立ち上っている

 

しかし

女性は気づかない

 

 

私も有名無実にならないように

 

頑張ろう

 

 

そしてまたこうして

 

先人の残した素晴らしき芸術品から

 

多くを学ばせていただこう

 

 

四谷怪談のプロットには

驚きでした^^;

 

 

素晴らしき芸術の1日

足が棒のよう

 

 

ありがとうございました!!