真アゲハ ~第21話 TOY Doll1~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



茉莉花「お疲れ様でしたー」

初夏を感じ始めた夜
愛知県警察署から『屍人対策課』の茉莉花が出てきた

茉莉花「珍しく明日は非番になったから、今日は1人で飲みますか!前から気になっていた栄にある仙台牛タン専門店に行ってみようかしら!」

予定よりも仕事が早く片付き、明日も休みと言うだけでルンルン気分な茉莉花は、栄へ行くため、地下鉄入り口まで向かおうとする
しかし

?「…鬼頭茉莉花だな?」

茉莉花「え?」

誰かに名前を呼ばれ、茉莉花は振り返る
しかし目の前に現れたのは光り物だった

茉莉花「っ!」

咄嗟の反応で真横に避けるが、頬を切ってしまう
そのまま後ろへ避ける

茉莉花「誰!?」

炎「チッ、思ったより反応が良いな」

茉莉花が後ろに避けた事で、犯人の顔が分かった
ネクロハンターの炎だ
右手には中国剣を構えていた

炎「貴様がネクロだと知って、オーバーネクロになる前に不意打ちを狙ったんだが…流石は警察と言った所か」

茉莉花「名前を呼んでくれたのに不意打ちなんてある?…と言うより、私を狙って来たってことは、警察としてじゃなく、ネクロとしてかしら?ネクロハンターさん?」

炎「ほぉ、俺を知っているのか。ようやく名前が売れてきたらしいな。なら俺の目的は分かってるな?鬼頭茉莉花、貴様の首を貰う」

茉莉花「貴方ねぇ、私の職業は知ってるでしょ?警察官よ?警察官を襲うって大罪なんだけど、分かってる?」

炎「フンッ、死人が警察官とは…冗談は顔だけにしておけ!」

炎が中国剣を両手で持ち、茉莉花に襲いかかる
その時だった

多々良「スリル!スリル!本日の星占いは9位!忘れ物を届けると思わぬ奴との出会ーい!」

炎「なっ…!?」

なんと炎の前に『屍人対策課』の多々良が現れたのだ
予想もしなかった乱入に、炎は驚くが、茉莉花にとっては最高のタイミングの助っ人だ

茉莉花「え!?た、多々良先輩!?どうしてここに!?」

多々良「よぉ茉莉花ぁ、忘れ物だよぉ。警察手帳は忘れるなぁ」

茉莉花「え?あ、ありがとうございます…っ」

自分の持ち物を確認したが、茉莉花の鞄には警察手帳が無かった
届けてくれた多々良から警察手帳を受け取る
多々良は、炎を見る

多々良「初めまして、私が警察学校組幻の6人目です。本物です」

炎「何言ってんだ貴様は」

多々良「うちの茉莉花を狙ってきたって事は、お前中国ハンターくんかぁ?輝人から話は聞いてるよぉ」

炎「ほう、斑目輝人の知り合いか。ならそこをどけ、でないと貴様も斬る」

多々良「ヤダね!…だが、俺らはアビリティを悪用したネクロを追っているんだよ。つまり君とやっていることは同じだ」

すると多々良が、冷静に語りだした

多々良「良かったら、少しネクロの情報を提供しようか?王ドラくん」

炎「なんだと…?(王ドラとは…?)」

多々良「その情報提供だけれども、こう言うのはどうだ?我々が指名手配しているネクロを…3にーん!」

ズガンッ!

炎「っう!?」

話している途中で多々良は、拳銃を持って打ってきた
炎はすぐ避けるが、腕をかすってしまう

炎「なんだ貴様は…!死にたいのか!」

多々良「死ぬのはお断り!その代わりお前の頸動脈を噛み切らせてもらう!」

そう言い、多々良は拳銃をしまい、右手で警棒を取り出し、左手で乾電池を小刻みに振るう
多々良は忘れてしまっているが、これは以前“謎の商人”クロノスからもらった特製の警棒だ
『噛付(Bite)!』と鳴ると、警棒の先端に牙が出てきた

炎(!警棒に牙が…!?)

多々良「バッドガーイ!カモ貝!ハイ貝!アサリ貝!」

炎「なんだそれは」

多々良が警棒を捌き攻撃をするも、炎に簡単に避けられてしまう
避けた炎は、そのお返しにと、中国剣の乱れ突きを入れる

多々良「いでぇ!いででぇっ!はえぇっ!刺さったぁっ!エグったぁ!」

茉莉花「多々良先輩!」

多々良の身体の肉が削れる
ふざけていたが見たところ、芯は外れている

炎(チッ!人間のくせにやるな…だがいつまでも相手をしている訳がない!)

多々良「とても痛ぁい…(×_×)」

連続攻撃で多々良が緩んだ隙に、炎は多々良の背後を取る
両手に中国剣を構え、多々良の背中に剣を向け、飛びかかる

茉莉花「多々良先輩!」

しかし

多々良「背後霊は射殺ー!」

ズガンッ!

炎「ぐぅっ!?」

なんと多々良が、後ろを見ずに、炎に向けて発砲したのだ
突然だったため、炎は避けられずに脇腹に弾丸が入ってしまう
警棒を持っている右腕の下から背後を覗くように拳銃が向けられ、銃口から煙が出る

炎「貴様っ…!後ろに目でも付いてるのか!?」

多々良「私の目は540度見えま~す!」

炎「1周半してどうするんだ!」

攻守が逆転し、一気に加速した多々良が炎を襲う

多々良「かっこ良くジャンプして空中から噛み付きまぁす!同期の松田くんのお墨付きでしたぁ!」

高く飛び上がり、炎に警棒の鋭い牙が向けられる
しかし、欲をかいた多々良は着地と同時に

…ガッ!

多々良「あっ!ありぃぃぃぃい!?」

運が悪い事に、転がっていた空き缶に足をとられてしまう

多々良(確か星占いでゴミに注意って…!)

炎「腹丸出しのアホは死ね!」

多々良「いでぇぇぇぇえっ!」

茉莉花「多々良先輩!」

多々良の腹に深傷を負わせた
炎は終わったと思い、茉莉花の方を見る

炎「…自分の血を見たくないなら目を閉じろ」

茉莉花「う…っ」

犬渕「コラァ!何やってるんだぁ!」

そこに響く犬渕の声
警察署が近かったため、すぐ警察が駆けつけてきた

炎「チッ!またか…!」

警察に捕まるのはごめんだと思ったのか、炎は逃げて行った

茉莉花「ハァ…ハァ……ッ」