パパ・パパゲーノ -37ページ目

三上

 苗字では「みかみ」ですが、今日の話題のタイトルとしては「さんじょう」と読みます。


 文章を練るのに最適の三つの場所、すなわち、馬上・枕上・厠上


 馬上(ばじょう)は馬に乗っている状態。しかし、これからいくさにおもむく早駆けの馬ではありえません。ゆったりと並足で歩む馬の上で、「推す」がいいか、「敲く」がいいか、などと、昔の(中国の)詩人たちは思案したものでしょう。「推敲(すいこう)」という熟語ができたエピソードではたしか歩きながら考えていたのだったと思いますけれど。

 現代では、さしずめ、車の中、ということになりそうですが、スピードが出ている車で、運転しながら文章を練るヒマはないでしょう。だいいち危ない。通勤電車の車中ならありえます。


 枕上(ちんじょう)は、文字通り、「枕の上」、寝入る前の時間ですかね。あるいは、起きがけで、ベッドからまだ出たくはない、しばしの時間か。


 厠上(しじょう)は、トイレタイムですね。昔の(中国の)トイレのかたちがどんなものであったか知りませんが、冬場は寒かったはずです。子どものころ、トイレには土間を10メートルくらいも歩いて行ってましたが、冬は寒くて大変でしたから。そんなところで、文章なんぞ練っていたら痔になるのがオチではないかしら。


 「三上」は、欧陽脩(おうようしゅう)という詩人の文章(?)に出てくる言葉だそうです。今でも、アイデアの湧く場所として、この三つをあげる人があります。机上でできればいいのでしょうが、気分を変えるために場所も変えてみるのでしょう。


ペンギン        ペンギン        ペンギン        ペンギン        ペンギン

謹賀新年


パパ・パパゲーノ


あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


今年の年賀状にはこの写真を印刷しました。アッシジの聖フランチェスコ教会の入り口のアプローチ石畳です。(右の写真の左側歩道の手すりから撮影しました。)


年賀状のハガキは年々種類が増えて、額面50円で、購買価格60円という、インクジェット専用ハガキがあったので、それにしました。インクの消費量が減るのでかえって安上がりかもしれません。


「ホフマン物語」を聞きながらこの日記を書いています。ことしはどんな音楽を聞くことになるか楽しみです。


音譜        音譜        音譜        音譜        音譜

今年のベストテン

 心に残った本や映画、風景、音楽など、今年のベストテンをランダムに書いてみます。


①池田信夫 blog :左のブックマークにありますが、この人のブログは断然面白い。膨大なコメントが付いているようです。見当はずれも多いらしくて、ときどき癇癪を起しているのも、興味津々です。ここで教えてもらって読んだ本はハズレがなかった。ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(日経BP社)、アーサー・シュレーディンガー『生命とは何か』(岩波文庫)、高橋洋一『さらば財務省!』(講談社)、それに何より池田信夫『ハイエク:知識社会の自由主義』(PHP新書)。


②小谷野敦「駒場学派の歴史」:これも、ブックマーク中のブログの記事。東京大学教養学科(目黒区駒場にあるので「駒場学派」と呼ぶらしい)の歴史を書いています。小谷野さんご自身がそこのご出身です。連載がすでに13回を数えます。1回分が長いので読みでがあります。小谷野さんのブログも、読者が多いようです。


③サヴァリッシュのピアノ伴奏:マーガレット・プライス の「シューベルト歌曲集」は、選曲の妙と言い、歌唱の粋と言い、文句なしの名盤でした。伴奏が、N響の指揮者を何年かつとめた、あのサヴァリッシュでした。歌手を引き立てる技が絶妙です。シューベルトのピアノ5重奏曲『鱒』を見つけたので聞いています。この曲では主役のはずですが、やはり、心なしか、弦楽の響きを引き出しながら楽しそうに弾いている感じがあります。


④エディタ・グルベローヴァがエリザベッタ(エリザベス女王)を歌った『ロベルト・デヴェリュー 』:演奏会形式のオペラ。今年もエディタを生で聞くことができて幸せでした。


内田光子 のピアノ:モーツァルトのソナタ全集。シューベルトの即興曲集。今年(CDで)初めて聞いたピアニストたち(マリア・ピレス、ラドゥ・ループー、エリック・ハイドシエク、他)も、それぞれ味わいに違いがあって良かったけれど、内田光子の情感の深さは他を圧倒しました。


⑥BOSE 社製のヘッドフォンとCDプレーヤー:ヘッドフォンは、さながら持ち運び用コンサート・ホールというおもむきです。プレーヤー(室内用)は、大英和辞典くらいのサイズなのに音質の上等なことは抜群です。日本の音響機器にもすぐれたものが少なくないようですが、BOSE の宣伝上手につい乗せられます。買ってソンした気にさせないところが偉い。


ナタリー・ポートマン :『ブーリン家の姉妹』の野心満々のアン・ブーリンもよかったけれど、『宮廷画家ゴヤは見た』の、イネスとアリシアの二役は、強く長く印象に残る熱演でした。


⑧リメーク版『12人の怒れる男 』:今年見た映画では、脱帽するしかない断トツのナンバー・ワンでした。ニキータ・ミハルコフ監督の作品はこれからも目が離せません。


⑨福岡伸一:今年も『できそこないの男たち 』という傑作を世に出しました。出世作『生物と無生物のあいだ』で強調した「動的平衡」という考え方を、最近は週刊誌のコラムでも繰り返していらっしゃいます。


⑩民宿「こまくさ 」:秋田県南部・小安(おやす)温泉にある宿屋。温泉好きにはたまりません。この正月も1月3日からお湯に浸かってきます。


新幹線        新幹線        新幹線        新幹線        新幹線


クルマ無用

 所帯を持って子どもが生まれて、苦しくはないけれど、そう楽でもない生活を続けていたころですが、テレビで、トヨタやニッサンやホンダがしきりにコマーシャルを流していました。ヒャクマンエンとか、それ以上もするクルマを誰が買うのだろう、と不思議に眺めていたものでした。あるとき、おお、「ひょっとして、俺も購買予備軍なのか」、と気がつきました。


 われながらニブイことですが、望めば車を買えるほどになった時でさえ、買おうと思ったことはありません。だいいち、運転免許を持っていないし、教習所へ通う時間(の余裕)もなかったし。


 運転ができないことで不自由したことはありません。よく海外へ旅行する方が、レンタ・カーを借りて移動するのがいかに快適か、を力説してくれました。その時はたしかにちょっと羨ましかった。ギリシャのペロポネソス半島なんて、車でなければ行けないよ、とおっしゃった先輩もいました。歩いて行けるじゃないか、と強がってみましたが、日にちに余裕のある旅ででもなければ無理な話です。


 昔は「自家用車」という言葉には、まぶしいほどの響きがありました。金持ちの証明みたいなもんでした。今や、自分用の車を持つ人がいるんですもんね。


 トヨタが赤字になった、と新聞の一面に出ていましたが、私にとっては記事自体がどこ吹く風か、というものです。今にも失業者が街に溢れるかのような書きぶりですが、そうだろうかと思うばかりです。


カメ        カメ        カメ        カメ         カメ

正常値と異常値

 養老孟司先生の『かけがえのないもの』(新潮文庫)にこんな話が出てきました。
 
 血圧の平均を測ると、最高血圧が120くらいのところに行く。つまり上の血圧の数値の人数のピークがそのあたりに来るということです。それ以上の値が出た人は「高血圧」ということになって、降圧剤を投与されたりすることになる。 


 大学のセンター試験の成績も、たくさんの受験生の平均値(標準偏差)は、真ん中あたりにピークが来ます。しかし、そのへんの点数しか取れなかった受験生は医学部に進学するのはまず無理だ、ということになります。ところが、数値だけを見れば、これは、血圧が200とか300だというのと同じことではないか、とおっしゃるのです。
 
 そういう人が医者になって、血圧180の人を「あなたは高血圧です」と言っていることになる。「先生が医者になっているほうがおかしい」と言ってやるべきではないか。
 
 このことを述べた節の見出しは、
 
 アタマは平均を外れろ、身体は平均に寄れ
 
となっています。


 この本は、先生が前から書いていらっしゃる、人間はどうしても「脳中心の社会を作りたがる」、それを「都市化」と呼ぶのですが、その話で一貫しています。この見出しは本書の端的な要約になっています。
 

クローバー        クローバー        クローバー        クローバー        クローバー