Pichon / Creil et Montereau
実家でお茶、その8。
ティーセットはPichonです。
ピションは南仏のUzèsという町で1802年に創業した窯です。
なんと200年以上経った今も現役!
(仏語の公式サイトがこちらに→http://www.ceramique-pichon.com/)
細かな縁のビーズ模様と貫入の入り方、
飴色のとろりとした質感がやさしくて、
両手でカップを包むとしみじみほっと息がつけます。
本来はティーカップは右手で優雅に持つのが正解なのですが
小さい頃に言われつけたからか、飲みものの器を手にすると
お湯のみを持つように左手を添える方がしっくりくる体質が抜けません…すみませぬ;
くるみとホワイトチョコのクッキーがのっているのは
クレイユ&モントローのパニエ皿です。
panier=フランス語でかごの意
バスケットのような編んだ模様が中心まで、
縁はスカラップがくりぬかれたような透かしになっています。
丸いお皿に見えますが微妙に楕円になっていて
楕円+透かし好きにはほんとに壺なお皿でした。
光が当たると縁の影が
お花のように食卓に落ちるのもいいなと思いました。
作られたのは19世紀、
かつてはろうそくの光で影が揺れていたのかな。
数年前に、食卓の向こうの窓にステンドグラスがつきました。
口の広いカップだと、そそいだ紅茶に
金平糖のように模様が映り込むのがいとをかし。
フランスのものは
シンプルな形でもどこかかわいらしさと親しみやすさがあって
おおらかというか、全面的に肯定してくれる感じが安らかだなぁと思います。
<6月1日追記>
バターで作る/オイルで作る クッキーと型なしタルトの本 (生活シリーズ)
レシピはこちらの「基本の溶かしバタークッキー」です。
数日前のコールポートの時はレシピ通り、
この記事の写真のはくるみを10g減らし、
粗く砕いたホワイトチョコを板チョコ半枚ぶんぐらい足しています。
簡単に作れておいしいです。実家にいるあいだ、何度も焼いておりました。
Susie Cooper Tiger lily
実家でお茶、その7。
スージー・クーパーのタイガーリリー(おにゆり)です。
ふちのところが、ティーセットとミルク入れは内側にグリーンのぼかし、
ソーサーは外側に以下同文、
ポットと椿がいけてある砂糖入れは葉っぱ模様になっています。
シダ模様や臙脂のぼかしのもあるようです
ポットとミルク入れはケストレルシェイプという
ころんとした形です。
厚手で安心感があって、
アースンウェア(陶器)のあたたかみがいと嬉し。
スージー・クーパーは1940年に
ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツから
女性で初めてRoyal Designer For Industryに選出
=英王室公認のロイヤルデザイナーとして認められました。
ただこの時期は第二次世界大戦の真っ只中で、
9月からThe Britz(ドイツ語で稲妻の意)といわれる
ナチスドイツによるロンドン大空襲が始まります
(翌41年の5月まで続き、バーミンガムやリバプール、シェフィールド、ポーツマス、プリマスなど
ロンドン以外の多くの都市も標的になりました。
当時ナチスドイツは、イギリス海峡の制空権を握ってイギリス本土に上陸する作戦を立ててた)。
ロンドンにあったスージーのショールームも被害を受けました。
こうした社会状況の影響が大きいと思われますが
この年、ロイヤルデザイナーの称号を得たにもかかわらず
スージーは新しいデザインを発表していません。
ナチスドイツの計画は失敗に終わります。
41年6月にはナチスドイツは対イギリスをあきらめて方向転換、東側のソ連に侵攻を開始しました。
そして、空襲が落ち着いて、スージーが
最初にデザインしたのがこのタイガーリリーです。
こちらの本には
「スージーにとって名誉と誇りに満ちた作品でした(p.103)」と書かれています。
あざやかだけどきつくない赤のおにゆりのデザイン、
いわゆるスージー・クーパーらしい穏やかな雰囲気の中にも
毅然としたものがより感じられる気がします。
「元気を出して、どんな場合にでも、弱ってしまってはならない(林芙美子)」ではないけれど
不安で心配のつきない日々が続くなかでも
お茶を飲むときにはほっとできるように、
そして静かな前向きな気持ちを抱いて
自分のするべきことに戻れるようにという願いが詰まっているのかなと思いました。
レーズン入りのスコーンを作ったので
ぶどうつながりで、ウェッジウッドの古いお皿をトチーが出してくれました。
1900年頃のもので、ぶどうの模様がぐるり。
レリーフの水際だったくっきり加減にひたすら脱帽です。ぱか←帽子off音
おいしいベリージャムがあったので添えていただきませう
ティーナイフの柄はベークライトです。
側面の黒が効いていて、洒落ているなぁと思いました。
<参考文献>
バターで作る/オイルで作る スコーンとビスケットの本 (生活シリーズ)
レシピはこちらから。
「基本のパイ風スコーン」のレシピにレーズンを入れました
Limoges
実家でお茶、その6。
1896-1920年頃のリモージュのコーヒーセットです。
ゴールドレイズという手法が使われていて、
金を盛り上げるようにして図柄が描かれています。
地の色は薄い象牙色(カップの内側の真っ白と違うの、わかるでしょうか?)。
かなりのゴールド率ですが派手ばでしくなく、
すっとした形も流れるような花の描き方も
ポットや砂糖壺のつまみや持ち手のカーブも、
どこかお茶室を思わせる東洋的な雰囲気がするのが不思議でした。
底が深めの砂糖壺用に
同じ頃に作られたスプーンをトチーが出してくれました。
本当はジャムスプーンです
1897年にシェフィールドのJames Dixon & Sonsで作られたものです。
ボウルのベリー(かな?)が並んだような打ち出しと
アイボリーの柄のつぶつぶしたビーズパターンが壺でした。
カップとソーサーのみの6客セットなので
使ってないソーサーにレースペーパーを敷いて
お菓子皿にしています
お菓子はあるもので作った厚焼きクッキーなのですが(一応チョコをかけてみました
そのあたりがずいぶんと助けてもらえるセットだなぁと思いながら
コーヒーを飲んでおりました。
Royal Worcester
実家でお茶、その5。
ロイヤルウースターのティーセットです。
ひとつひとつ、描かれているばらが微妙に違っていて、
それぞれ少しずつ印象が変わるのが楽しいです。
左は黄色と白のばら、右はピンクと黄色のばらが
メインの組み合わせになっています。
カップの内側のつぼみも左は右下向きに、右は左上向きに描かれていて
細かいところまで見比べるとほんとにおもしろい。
カップの持ち手も枝のようで、ばらの剪定を思い出しました。
お菓子は再びベイクウェルタルト。
(ショワジールロワの次の日のお茶でした)
先日のコールポートもそうでしたが、
イギリスのお茶道具は金彩+華やかな模様でも
素朴なお菓子を合わせられるところが、ほんとに安らかだなぁと思います。
ポットとミルクピッチャーは1907年、バーミンガムの T E Beardsmore で作られたものです。
スプーンは1781年、ロンドンのRichard Crossley。
ゴールドギルドされていて、カップの金彩に合わせてトチーが出してくれました。
ブライトカットに、鹿のクレスト(紋章)が彫られています。
注連縄みたいなところから鹿の首が出ていて
角が二本()こういう感じで出ているの、わかるでしょうか;
しっかり重さがあって、立派なおうちの方が作らせたんだなぁとしみじみ思いました。
ポットスタンドになっているサルバはシルバープレートで、
1884-98年製、ロンドンの Silber&Freming のものです。
メーカーのマークがおもしろくて
アニヤ・ハインドマーチのマークに似てる気が。
ずっと前にこちらの記事でも書いたことがあります
Spode Blue Willow
実家でお茶、その4。
スポードのブルーウィローのセットです。
1875-90年頃のもので
カップとソーサー、お菓子皿のぐるりが⌒⌒⌒⌒こういうスカラップになっています。
お菓子入れになっているのはスロップボウル(湯こぼし)です。
お菓子は抹茶といちごのスノーボール、
インフルエンザ明けの姪っ子チビ子ちゃんのリクエストで焼きました。
ウィロー柄は細めの鳥さん+
左下の橋の上に三人+その上の小舟に船頭さんがいるバージョン。
右上の木の葉がまるまるっと描かれてて、
なんだか『うさこちゃんとどうぶつえん』の白鳥の絵を思い出しました。
縁の金彩が効いているのと
スカラップがリズミカルなのとで
落ち着いているのですがあかるさもあります。
スポードで青×白というと
ブルーイタリアンのイメージが強いですが
ウィローもいいなぁとしみじみ。
しっかりしていて、古いけれど気楽に使いやすいのもありがたいです。