セーラー服を着た吉高由里子の


「好きだ、バカッ」


という予告編のセリフが良くも悪くも印象的な『僕等がいた』(後篇)を見ました。


これがその「好きだ、バカッ」のシーン。

ゴーイン・バックtoちゃいな
とても吉高さん的なセリフですね。


で、前回は前篇について書いたので、後篇についても今回書いておこうと思います。


もちろん、後篇が公開されてまだ三日目というホヤホヤ作品。

おまけに前篇すら公開中なので、ネタバレになるようなことは書きません。


今回は映画紹介ってより、感想文になりそうな予感です。


さて、私は後篇鑑賞に先立ち、以下の公式ガイドブックを購入しておりました。

ゴーイン・バックtoちゃいな

このガイドブックは2月に発売。ということは、前篇の公開よりも前ですね。


私の場合、前篇を見たら意外と言ったら失礼だけど、後篇もなかなか期待できると確信を抱いたので、このガイドを買うに至りました。


しかーし、実を言えば本ガイドは、親切に主人公達の歩み(年表)まで付けてくれちゃってるもんだから、ストーリー展開をいくつかバラしちゃってるんですよ。


私はアニメ版は全て見ているんで、前篇についてのストーリーが詳しく書かれていても問題ないのです。

(アニメ版の全26話は映画では前篇分のみに該当します)


だけど、このガイドは、よーく見ると、「映画&原作」の公式ガイドと書いてあるではないか!

まぁ、原作も全部読んでしまっているようなコアなファン向けなんでしょうな。

作者・小畑友紀さんと主役の二人それぞれの対談や、原作者書き下ろしの撮影現場マンガなんかが付いていて、それはそれは嬉しいガイドなわけですが、年表を見てしまうと後篇の展開が完全にわかっちゃうんです。


映画の宣伝文句には、


「出会いの前篇から、運命の後篇へ」


なんて言っちゃってるから、

後篇についてかなり衝撃の展開が用意されているわけなのです。


予告編より。

ゴーイン・バックtoちゃいな
ゴーイン・バックtoちゃいな

その「運命」の展開については、私はアニメを観ただけの人間だから知らないはずなのに、ガイドを読んだばかりに一部を知ってしまったんですよ。

うん、別にたいした問題ではないです。一部だから。全部じゃないもの。


でも、楽しみはわずかに減った。主人公の過酷な運命の一部を知っちゃったからね。でも、まぁそれくらい別にいいけど。


というわけで、これから後篇を観る方へ。

ガイドは買ったほうがいいけど、後篇まで観てから読みましょうね。


さて、そんな些細な問題は置いておいて、映画の感想です。


一言で表すなら、私、いい年してキュンと、そしてグッときてしまいました。

前篇では高校生の頃を思い出し、自分にはわずかにしかないケド、淡い青春時代を思い出しました。

後篇では大学生の頃を思い出し、自分にも多少はある、過酷な運命と向き合いました。


こんな感想しかネタバレ回避のために書けないけれど、良い映画ではないでしょうかね?


こうした原作マンガが大ヒットした作品の場合、その漫画と比べて「原作の良さが活かされてない」とか、言ってしまう人がいますけど、それはホントはルール違反なんだよね。


だって、映画には映画の文法がありますからね。いろんな制約もありますし。


私にしても、アニメの方が優れている部分もあるな、とは確かに思わないではありませんけど、一つの映画作品として観た場合、イイ線いってるなってのが素直な感想です。


私は、いずれ原作漫画、全16巻も読もうと思ってます。

なぜかと言うと、後篇から出てきた女性キャラが気になっているのです。


キャラの名前は千見寺亜希子、演じるは比嘉愛未です。

主人公である生田斗真演じるところの矢野君に惹かれながらも、恋人がいることを知って


「親友にして欲しい」


と自ら提案するという、きわめて少女漫画的な設定の役どころでありながら、彼女にそう言わせてしまう、矢野君の普段のふるまいや、千見寺さんの性格とやらを、観察してみたい。


現実にも男女の友情はあるわけだけど、それって恋心があろうがなかろうが、そして片方が同性愛者であるといったような事情があって成立してようが、それとは関係なかろうが、なかなか魅力的なテーマであると思うのですよ。


これが比嘉愛未演じる千見寺さん。

ゴーイン・バックtoちゃいな
矢野君だけでなく、その恋人も暖かく見守ってます。


そういうキャラ設定の魅力、そして登場するキャラがとにかく暖かみがあるところが、原作を読もうと思った動機。

前半ではそうしたキャラの代表格が、高岡蒼佑が演じる竹内匡史君で、その懐の深さが十分に表現されていたけれど、後半は千見寺さんのキャラを描き切れていないと感じたんですね。

もちろん、後半は衝撃・過酷な展開なので、展開が忙しくてそうした描写ができなかったんだと思われます。


こちらが高岡蒼佑演じる竹内くん。

ゴーイン・バックtoちゃいな
まさに「男が惚れる」ようなイイ奴なんだ、こいつが。


というわけで、この作品には、まだまだ隠れた魅力がありそうに思うんです。


映画では時間的な制約から、その全てをシナリオ化できないけれど、俳優さん達(とくに高岡・比嘉の両氏)は、なんとなくその背後にある「想い」みたいなものをうまく表現していたように感じるんだな。ちと過剰にホメ過ぎ、あるいは期待しすぎかもしれないけれどね。


まぁ、もともと私は一つ年上の従姉妹の影響で、少女漫画もたくさん読んで育ったので、すげー久しぶりに少女漫画にどっぷり浸かるのも悪くないかな。


実はその従姉妹は、つい数年前にガンで亡くなってしまったので、つい最近までは彼女のことを思い出すような行動は、少々つらくてしたくなかった(ガンが主題になった映画を見るのも避けていた)のですが、いまはもう平気。


彼女を想いながら、少女漫画に独特なコマ割や台詞回しを、懐かしく、感じとってみたいな、なんて思うのです。子供の頃に、従姉妹の家の少女漫画がびっしり並んだ本棚の前で、二人で黙々と少女漫画を読みあさっていたときのように。。。


あ、話がそれちゃいましたが、とにかく『僕等がいた』は、見て損はない作品なんじゃないでしょうか。

今回は珍しく邦画。しかもアクション映画ではなく、恋愛モノです。

私・龍虎はアジア映画好き。ということは日本映画も嫌いじゃないんです。

もちろん、日本と言えばアニメや漫画。私もそれらは比較的キライじゃない。

その漫画が原作で、アニメ化もされた『僕等がいた』は、私にとって、けっこう特別な作品というわけです。


最近は、中国映画『狙った恋の落とし方。(原題:非誠勿擾」)』で、舞台に阿寒湖・斜里・美幌・厚岸・網走・釧路が選ばれて、映画自体が中国で国内観客動員数2500万人、DVD鑑賞人数を含めると1億人以上が観たっていうビッグヒット(赤ちゃんを含めても10人に1人が観たってことだよ!)になっている。

その爆発的な効果もあって、中国人の道東観光ブームがもたらされ、道内は活気付きました。


『非誠勿擾』中国版ポスターと、日本の『狙った恋の落とし方。』ポスター。

ゴーイン・バックtoちゃいな

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風景は中国語ポスターが阿寒湖の写真です。日本版は網走の能取岬灯台。

どちらも、すごく印象的なシーンで登場。道東へのノスタルジックな思いを盛り上げるように使われています。


日本で言うとドラマ『北の国から』的な感じ。観た人が一億人だから、まさに中国の国民的映画になったわけだ。

そりゃあ、中国人としてはロケ地に行ってみたくなるよね。


実際、スー・チー(舒淇)の入浴シーンもあるので、撮影に使われた鶴雅リゾートでは、中国人宿泊客が相当増えたらしい。

私も行ってきたけど、グオ・ヨウ(葛優)が、阿寒湖温泉街のスナックに飲みに行く設定があるんだけど、その撮影に使われた居酒屋さんにも中国人がいっぱいでした。

そのときは、日本人は私だけだったよ。


でも、その続編である『非誠勿擾2』では舞台が中国の観光地である海南島に変更され、日本とは関係なくなっちゃったんだよね。


『非誠勿擾Ⅱ』中国版ポスター

ゴーイン・バックtoちゃいな

ゴーイン・バックtoちゃいな

舞台は海南島ですが、この二つのポスターではすぐにはどこだかわからない。

他に、ビーチっぽいポスターもあって、そちらは海南島っぽいと言えば言える。

(ただし、人物が写っていません)


中国ではやはり、撮影に使われた海南島の某ホテルが予約でいっぱいになったとか。


さて、現在の日本で道東観光を盛り上げてくれそうなのが、今回取り上げる『僕等がいた』。

前篇のロケ地は釧路(実際には厚岸などでも撮影)。


映画会社いわく日本映画では初めてという前篇・後篇の連続公開というほどの力の入れよう。

(あれ、デスノートとかガンツって連続ではなかったんだっけ?)


しかも、原作の漫画がものすごい人気で、コミック累計数が1200万部を超えているんです。

まだ連載が完結していない2006年には26週にわたってアニメ化され、こちらもかなりの人気があります。

(私も全話観たよ)


そして、映画の公開に合わせて、原作漫画もこの三月に連載が完結したばかり。

そして異例の早さで、そのままコミックスの最終巻である16巻が3月26日にでました。


最近まで最新刊だった15巻。

ゴーイン・バックtoちゃいな

漫画ファンはもちろん、2006年にアニメ化された頃のファンも、そして新たに劇場版から観るファンも交えて、各ファンの期待を一身に浴びている映画というわけですね。


映画『僕等がいた』のポスター。

ゴーイン・バックtoちゃいな

まさに盛り上げる材料はそろいすぎているわけですよ。こりゃ期待しないほうが無理ってモノ。


今までの漫画が原作の邦画によるロケ地観光ブームってのは、あまりパッとしなかった。

「天然コケッコー」の島根県浜田市もそれほどだったし。「夕凪の街桜の国」の広島県も物語が悲しいということもあって、観光にはつながっていないよね。同じ広島だったら、小説が原作のことが多い大林宣彦監督の尾道三部作あたりのがインパクトはありました。


ですが、今回は既に大人気の漫画・アニメで、しかもその人気は国際級のもの。

その証拠に海外の言語に翻訳されたコミックスを下記に載せるので、ご覧あれ。


まずは英語版。これは13巻の翻訳。
ゴーイン・バックtoちゃいな


次にフランス語。これは8巻の翻訳。

ゴーイン・バックtoちゃいな


そしてスペイン語。9巻ですね。

ゴーイン・バックtoちゃいな


アジアに移ってハングル版。1巻!

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中国語繁体字(台湾市場向け)。10巻。

ゴーイン・バックtoちゃいな


私がネット上で発見することが出来たのは、この五言語だけど、以前に僕等がいたの原画展覧会に行ったとき、全部で八言語あるという説明書きがあったのをうっすらと覚えている。

どこの国かは忘れてしまったけれど、たぶん東南アジアのどこかの国(タイ、インドネシアあたり?)と、中国の簡体字があるんじゃないかな。

とにかく、漫画は既に国際進出済み。


アニメに関しても、動画サイトを見る限りでは、英語字幕、フランス語、スペイン語、中国語繁体字・簡体字、ハングルの字幕が付いたアニメは発見できました(吹き替えもあった)。字幕はファンによる「勝手アップ」という著作権違反の場合もあるけれど、吹き替えはおそらくは正式な版権をとっているはず。いずれにしろ、アニメも海外ではそれなりの人気があると判断できます。


よって、劇場版は現在、日本でしか公開されていないわけだけど、否が応でも海外への配給とその後の外国人観光客の釧路旅行を期待してしまうというわけですな。


ただ、後篇の主な舞台は東京になっちゃうので、そこは懸念材料です。


前篇は現在公開中で、私も既に観たけれど、なかなか良い出来。

ということは、後篇の出来が気になるのです。これが素晴らしければ、きっと海外に配給できる。


今回は公開中の映画ということで、ストーリーについては、ネタバレになるから一切書きませんが、アクション中心にアジア映画を観ている私・龍虎も、この映画は推しますよ。

というか、アニメがスゴイ好きだったので、映画にも期待してたんです。そしたら、前篇は思ったよりも吉高由里子の演技が光っていて、生田斗真、高岡蒼佑、本仮屋ユイカ、小松彩夏といった一見するとオヤと思う俳優陣がみんな熱演だったので、後篇もきっと良いと思う。


早く4月21日(後篇の公開日)にならないかなぁ。

最後に原作のキャラクターと、映画のキャストを比較。


イメージはなかなか合っていると思いますね~。
ゴーイン・バックtoちゃいな

毎度、基本的には映画を一本ずつレビューしてきた本ブログ。

今回は特別企画。


名付けて、“電眼”トニー・レオンとBL。


「電眼」はいいっすよね。「目の演技がスゴイ」とか「あの優しい瞳にイチコロ」などと評されることの多い我らがトニー・レオン(梁朝偉)さんの通り名です。

トニー・レオン(以下、トニオと略す)ファンの女子たちは、きっとあのまなざしにやられちゃっているに違いありません。


次回作「聴風者」で盲人役を演じるためか、「魅惑の電眼を放棄」とネット新聞(china.com)に伝えられた時のトニオさんのショット。
ゴーイン・バックtoちゃいな

かくいう私、龍虎(戸籍上は男)も電眼にやられちゃった一人。

いや、もちろんそのケはないすよ。あたしゃノーマルです。

ただ、単純に昔からトニオさんのファン。男だけどファン。いいじゃん、別に。


って、そういう話じゃなくって、今回はある筋の女子(腐女子?)の目線に立ち、彼女らの憧れの「ボーイズラブ(略してBL)」の視点からトニオさんを読み解く、という企画をしてみようと思い立ったわけなんです。


BL・・・ボーイズ・ラブとは?

 日本における男性の同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンルのこと。(by wikipedia)


腐女子・・・「ふじょし」とは?

 男性同士の恋愛を扱った小説や漫画などを好む女性のこと。(by wikipedia)


だそうです。


はっきり言って、私にはまったく理解できません。そのジャンルに強い思い入れもありません。

逆に置き換えたとして、男性の龍虎(私)が、女性同士の恋愛を扱った題材に興味を持つかというと、あまり関心はありません。


でも、その筋の女子たちの欲求を満たすためのマーケットは拡がる一方で、昨今では普通の本屋さんに、平然といわゆるBLもののコーナーが出来ていて、たまたま通りかかると、あやうく吹き出しそうになります。

ついでにネット上の広告でも、BL漫画のワンシーンが載っていて「続きはこちら!」みたいなものも増えてます。普通に男女の恋愛を描いた漫画かと思って、あやうくクリックしそうになります。

いやぁ、明らかに世の中「BL化する社会」になってます。


そういう流行に、かのトニオさんをからませるなんて不謹慎だって? いや、その通りっす。

でも、でも意外とトニオさん、その筋の映画に出ているのですよ。

私の頭の中のトニオさんDBをフル稼働してご紹介します。


まず、誰もが思い浮かべるのがウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス(原題:春光乍洩)」。これはわかりやすいっしょ。

なぜかアルゼンチンくんだりまで旅をするゲイのカップル、レスリー・チャン(張国栄)とトニー・レオン。

詳細なあらすじは省きますが、男同士で嫉妬したり浮気したりの繰り返し。おまけにトニオさんは奔放なレスリーにひっかきまわされ、焦らされる側。なんともはや。


映画「ブエノスアイレス」のワンシーン。
ゴーイン・バックtoちゃいな
撮影はクリストファー・ドイル。

この映画の色調は確かに美しいですよね。

もちろん、主役の二人の男子も美しいことは確か。


この映画の公開年は1997年。

レスリーが亡くなるのは2003年。

そういえば、昨日がレスリーが亡くなってちょうど九年だったのですね。

レスリーよ永遠に。。。


さて、話を戻しましょう。


トニオさんのファンは見落としているかもしれない映画が、ジャッキー映画(成龍作品)である「ゴージャス(原題:玻璃樽)」(1999)。

ジャッキーとスー・チー(舒淇)のラブロマンスのこの映画。トニオさんの役はゲイのスタイリスト&メイキャップ・アーティスト(ありがち~)で、なにかと二人にからむ役。トニオさんにしては1999年当時でも珍しい脇役でした。


スタイリストっぽいグラサン?
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髪留めしてるトニオさん。キュウリでパックしたりもしてたっけ。

ゴーイン・バックtoちゃいな


まぁ、この映画はラブコメっぽい要素もあるのですが、少女漫画によくオカマちゃんが出てくるじゃないすか。あんなノリです。吉本ばななの「キッチン」にもオカマが出てきましたよね。ああいう感じの、ヒロインにとっての都合の良い聞き役って感じ。


っていうか、「ゴージャス」のトニオはBLってより完全にオカマだね。


次は行間を読んでBL的要素を見つけよう。

けっこういろんな人が指摘しているけれど、ジョン・ウー(呉宇森)監督による三国志の映画化「レッドクリフ(赤壁)」に怪しい一幕がある。


これはトニオさん演じる周瑜(孫権勢力:後の呉の大督)がどうこうってんじゃなくて、トニオさんを見る趙雲(劉備勢力:のちの蜀の武将)の目が怪しいのだ。


周瑜にピンチを救われた趙雲はその後も恩義を感じ続けるが・・・。

それが恩義ってよりも「惚れちゃってる」感じに見えるんだよね。この辺り、男の友情を描き続けたジョン・ウー監督は、絶対に狙って演出している気がする。


これって、腐女子が見たら、ぜったい変な妄想すると思うよ。
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左がトニオさん。右が趙雲を演じるフー・ジュン(胡軍)。


フー・ジュンは『藍宇 ~情熱の嵐~(原題: 藍宇)』でもゲイを演じている。いや、だからどうというわけではないんだが。


余談だけど、ジョン・ウーはショー・ブラザーズの黄金期を支えたチャン・チェ(張徹)監督の助監督を長く務めた。チャン監督も男の友情ものが得意だった・・・というよりも男ばっかり描いていた。名作「ブラッド・ブラザーズ(刺馬)」には女性が一人しか出てこない。他の映画もみんなそんな感じでやんす。


ちなみにレッドクリフには、もう一つの男同士(?)の友情というか愛情が描かれている。

孫権の妹である尚香が、男装して、敵である曹操軍の兵士に化けてスパイ活動をしている際、ひょんなきっかけから、曹操軍に入りたての兵(素朴だけど勇敢な一兵卒)と友人になるのだ。


ちょっと遠目で見づらいけれど、左がヴィッキー・チャオ(趙薇)演じる尚香。右が友達になった孫叔才(演じているのは佟大為)。
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スパイ活動を終えて、孫権のもとに帰ろうとするときに、曹操軍に怪しまれて攻撃されるのだが、そのときもこの孫叔才は身を挺して守ってくれるのだ。

もちろん、孫叔才は尚香のことを男だと思っている。そして、スパイだなどと疑いもせず、友を信じているのだ。


その後、戦場で尚香と孫叔才は偶然再会するが、会話をする間もなく、孫叔才は矢に打たれて死んでしまう。


絶命した孫叔才。それを女戦士の格好をした尚香が抱きとめている。
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矢に倒れた孫叔才は最後まで尚香を友として見ていたろう。しかし、残された尚香は出会った当初から淡い恋心を抱いていて、彼に戦場には来て欲しくないと思っていた。

それなのに、再会と別れが瞬時に訪れる。


なんとも悲しく、余韻を残すシーンだった。私にとってはレッドクリフのなかで、もっとも印象に残った逸話。

もちろん史実ではないし、孫叔才は架空のキャラクターだ。


うーん、やはり私は、このシーンをBLとは結びつけたくはないな。


すいません、BLでまとめようとした今回の記事は、キュンとするシーンをいきなり思い出して尻すぼみになりました。トニー関連も三作だけでしたしね。


でも、また映画レビューだけでなく、テーマ記事もまた書きますので、どうぞよろしく。


ツイ・ハーク(徐克)監督、アンディ・ラウ(劉徳華)主演で、中国・香港・台湾で2010年に公開された『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件(原題:狄仁傑之通天帝國)』の日本公開がようやく決まりました。


超大作だし、アンディというネームバリューもあるから、きっと日本でも公開されるはずだと期待していたが、待った甲斐がありました!


既に日本の配給元による公式サイト も出来ています。


公式サイトよりチラシ画像を拝借。
ゴーイン・バックtoちゃいな

カリーナ・ラウ(劉嘉玲)やリー・ビンビン李冰冰)、レオン・カーフェイ (梁家輝)という日本でも知られた名前が脇を固めているので、それもプラスの条件に働いたかな。


アンディとビンビンの共演で印象深いのは、「イノセントワールド -天下無賊-(原題:天下無賊)」。その組み合わせが好きだった私には、今回も二人の共演シーンが楽しみで仕方がなかったわけです。


下は天下無賊での二人のバトルシーン(ラブシーンではありません!)
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さて、本題の『王朝の陰謀』へ。

この映画は、カリーナが則天武后の役を演じ、ビンビンがその側近役となってます。

ほんでもって、則天武后の権威を脅かすような事件(副題にある「人体発火怪奇事件」)が起こり、その謎解きをするのが、アンディ扮するディー判事(副題の「判事ディー」はここからきています)という設定。


さて、このディー判事なのですが、フルネームはディー・レンチェ(狄仁傑)。

実在の人物だそうです。


というわけで、原題の狄仁傑之通天帝國ってのは直訳すれば、朝廷のディー判事ってことでいいわけだから、珍しく中国語タイトルに割と忠実に邦題を付けていることになりますね。


ちなみに台湾では、『通天神探狄仁傑』のタイトルで公開。私的に訳すと「天帝の探偵 ディー判事」って感じかしら。なぜ、中国本土と台湾が違うタイトルにしたかは不明です。

こういうことって珍しいですね。おそらく台湾で製作された同名の作品があったのかも。ディー判事ものは人気があるようで、テレビドラマもありますし。


下は公式サイトにある海外版オリジナルポスター。
ゴーイン・バックtoちゃいな


この映画の冒頭では、則天武后を批判したディー判事は、その罪によって投獄されてしまったという設定になっています。しかし、武后も実は彼の実力を認めていて、人体発火怪奇事件の解決が困難と見るや、獄舎から八年ぶりに釈放し、事件解決に尽力を迫るという流れ。


この映画自体はフィクションだと思われますが、史実では則天武后の時代に、ディー判事は最終的に御史大夫(法務大臣)の地位にまで上り詰めたそうな。


このあたりの事情については、ロバート・ファン・フーリックというオランダ人の作家(もともとは外交官だったそうで)が、ディー判事モノとしてフィクションを交えた小説をたくさん書いておられますんで、そちらに詳しいかと思います。もちろん、本映画の原作もこの作家のものです。


下は三省堂から1989年に出た小説。ちゃんとディー判事シリーズと書いてある!
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それで、映画の完成度ですが、ツイ・ハークものとしては、ジェット・リー主演の最新作『龍門飛甲』には及ばないものの、VSFXも優れていて、アクションの見せ場も多いです。

香港アカデミー賞では監督賞、主演女優賞を獲得しています。


ツイ・ハークは当初、この『王朝の陰謀』の主演を、ジェット・リーにオファーしたということを『龍門飛甲』の完成記者会見の場で明らかにしています。

確かにそれもよかったかもしれない。でも私は、やはりアンディとビンビンの組み合わせを観たかったので、これはこれでベストと思いますよ。


さてと、5月5日の公開が待ち遠しいなぁ。


今日はもうすぐ大阪アジアン映画祭で『捜査官X(原題:武侠)』を上映。

大阪に行けなかった龍虎は無念(舞台挨拶、見たかった・・・)だが、既に4/21から新宿ピカデリー他で上映決定が決まったからイイもんね。

ということで、今日は他の映画のレビューです。


2012年の正月映画で最大の目玉であったツイ・ハーク(徐克)監督の3D映画『龍門飛甲』がそれ。

ジェット・リー(李連杰)主演、ジョウ・シュン(周迅)共演ってだけでもスゴイのだが、とにかく出演者がものすごい人数で、しかもいずれも注目俳優というから、ツイ・ハークの力の入れようも伝わってこようってもの。


下がポスター(画像はi-PK映像・音声技術研究所より)。
ゴーイン・バックtoちゃいな
いったい何人出ているのかねぇ。


とにかくポスターで名前が挙がっている人を見てみよう。


まずは、中央の男主角は我らが李連杰。

ゴーイン・バックtoちゃいな

その右隣に女主角の周迅。

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女主角の下はメイビス・ファン(范暁萱)。

ゴーイン・バックtoちゃいな
メイビスの本業は台湾歌手。


男主角の左隣・下側は、グイ・ルンメイ(桂綸鎂)。

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こちらは台湾の女優さんで、李連杰の初のアクションなし映画だった『海洋天堂』にもチョイ役で出ていたから、知っている方も多いのでは?

最近だと、ニコラス・ツェー(謝霆鋒)主演の『密告・者(原題:綫人)』でもヒロイン(?)でしたね。


そして、男主角の左隣・上側は、クリス・リー(李宇春)。

クリスの本業も歌手。でも、『孫文の義士団(原題:十月圍城)』でも壮絶なバトルシーンをこなしていたので、私はてっきり、アクションが本業かと思っていた(汗)。

ここは二人一気に紹介といきましょうか。右上で背景処理されちゃってるけれど、一番大きな位置を占めて、名前もちゃんとのっているのが、チェン・クン(陳坤)。


右がクリス、左がチェン君(誤変換だけどこのままでいいや)。

ゴーイン・バックtoちゃいな
お化粧して白いけれど、チェン君は美青年ですな。

いやクリスがダメというわけではないけれど、化粧っ気がない役が続いた(孫文の義士団でも男の子みたいな役)だったので。


そして、ポスターに名前は出ていませんが、しっかりと顔は出ているリュー・チアフィ(劉家輝)。特別出演で出ています。

ショーブラザーズのカンフー映画で一時代を作った偉大な方だけど、『少林寺三十六房』の主演って言っても、どれくらいの人がわかるかしら。たぶん40歳前後から上の世代だろうなぁ。

最近だと、『キル・ビル2』で怪しげな坊主役をやっていたっけ。


こちらもお化粧というか、宦官役なので白いリュー御大。
ゴーイン・バックtoちゃいな
今回はやられっぱなしでした。


ついでにリュー御大とチェン君にはさまれて仮面をつけて背景処理されているのはルイス・ファン(樊少皇)。


これまたついでに、左上の背景処理で一番小さい扱いなのは、ドゥ・イーハン(杜亦衡)。日本では紹介されてない人なようで、カタカナ書きは私のピンイン辞書などを駆使した推測です。あしからず。この人の名は私のバイブルである『中華電影データブック完全保存版』(キネマ旬報社、2010年刊行)にも載ってなかった。龍門飛甲の中国公式サイト (重い!)とか、いっぱい調べてやっとわかったよ。動画検索すると歌ってたり、踊ってたりする彼を見つけることができるから、本業は中国のダンスができる歌手なのかなぁ。でも太極拳の演舞をしている映像もあったよ。


ところで、 実はリュー御大とジェット・リーとは、1993年にもバトルシーンをやっています。

『ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲(原題:黄飛鴻之鐵雞鬥蜈蚣)』がそれ。

あんときはもう少し接戦でしたが、今回はいいとこない御大。


20年近くぶりのバトルの様子。

ゴーイン・バックtoちゃいな

さてさて、内容については本邦未公開だから、ネタバレになることは書けない、と言いつつも、本作『龍門飛甲』は、二度目のリメイクなのですよ。


キン・フー(胡金銓)監督の『残酷ドラゴン/血斗!竜門の宿(邦題:龍門客桟)』(1967)が1回目。

(しかし、邦題はもう少しなんとかならなかったのか!)


レイモンド・リー(李恵民)監督の『ドラゴン・イン(原題:新龍門客棧)』(1992)が2回目(最初のリメイク)。

こちらのリメイク作品でもツイ・ハークが脚本と製作で関わっています。というか、ハークのプロダクションである電影工作室のマークがしっかり入ってます。


というわけで、既にストーリーは周知の作品なんですよね。

でも、まぁ3Dにする上で見所を作るという意味もあったのか、脚本はかなり異なります。だから、やっぱりネタバレはしないでおきましょう。


で、この映画の見所は、なんといっても3Dを意識したアクションにあります。

だけれど、私は残念ながら2Dで鑑賞。もともと3D映画は疲れるので嫌いなのもあります。

ただ、映画館で見るべき作品だということだけは強調しておきたいですね。


贅沢に俳優陣を配していることもあって、それぞれの表情をアップを多用して撮っています。みんな美男美女だから、これがまず美しい。そしてアクションシーンは、剣が飛び交う演出が多いのですが、2Dでそれを見ると、あからさまにCGっぽくてなんだか剣がおもちゃにみえちゃうんですよ。だから、3Dが苦手でない人はちゃんとメガネをかけて見よう。


緊迫したシーンの両主角。

ゴーイン・バックtoちゃいな


飛ぶシーンで登場のジョウ・シュン。
ゴーイン・バックtoちゃいな

それから、クライマックスに近づいて、傷だらけのジョウ姉様。負けないで!

ゴーイン・バックtoちゃいな


顔に落書き(刺青です)を入れてるけれど、妙に色気のあるグイちゃん。
ゴーイン・バックtoちゃいな

すさまじい表情のグイちゃん。がんばれ!
ゴーイン・バックtoちゃいな

そんなことでストーリーについては触れないかわりに、美男美女たちのショットを少しご紹介して今回はおしまい。

あれ、でも美女のほうに偏ったかな。すいません。実はイケメンもたくさん出ています。


この映画は日本で公開されることを本気で願うよ。

というか、ジェット・リーもので公開されていないのは、本作と『白蛇伝説』くらいだからねぇ。

両方とも公開すべし。

以前にもブログ記事にしたが、トニー・レオン(梁朝偉)主演、ジョウ・シュン(周迅)監督の映画「五行伏妖」は、トニーが道士を演じる映画。


五行伏妖ポスターを再掲
ゴーイン・バックtoちゃいな

この映画、いろんな記事をつなぎ合わせて推測するに、


(1)2012に公開されたトニー主演「大魔術師」の撮影中に、共演のジョウ・シュンが撮影を思い立ったこと

(2)フル作品ではなく、ショートムービー的な位置づけの映画であること

(3)「大魔術師」の撮影期間中の空き時間に撮影済みであること


といった感じらしい。

もちろん、断片的な情報をつなぎあわせてみただけなので間違いはあるかもしれない。


このたび、「大魔術師」のほうを鑑賞することができたので、私なりに、「五行伏妖=Five Demon Traps」がどんな作品になりそうなのか、予想をしてみたい。


さて、日本未公開なので、大魔術師のあらすじやネタバレ情報は書けないけれど、大魔術師のなかに、トニーが道士に扮するシーンがあることくらいは予告動画でも出てくるから、書いてしまってもいいだろう。


こんなシーンである。


道士登場。マジックの扮装という設定。
ゴーイン・バックtoちゃいな
霊幻道士3でラム・チェンイン道士が持っていたほうきのような武器を持ってます。


続いて、木の剣を振り回す。
ゴーイン・バックtoちゃいな
これも霊幻道士でおなじみの武器ですな。


実はここらあたりは、大魔術師の映画の中では終盤にさしかかっている。

撮影がどの順番で行われたかは分からないが、もしもストーリー順に撮っていたとするなら、このあたりでジョウ・シュンが、「そろそろ次の仕事のこと考えなきゃ、あ、そうだあたしが監督しよう!」とかなんとか思ったのかもしれない。あくまで推測だが。


ちなみに大魔術師のジョウ・シュンと、もう一人の共演ラウ・チンワン。

ゴーイン・バックtoちゃいな
チンワンは道士の使った魔術というか薬のせいで、ちょっと夢遊状態です。

こんなシーンの撮影をこなしながら、自分の監督作を構想したんじゃないかなぁ。


それにしても、なんて可愛らしい監督でしょう。


話は戻りますが、上で再掲したポスターをよく見ると、どうも背景は大魔術師のセットのようなのです。

そして小道具である木剣ですが、これも大魔術師のもの。

道士の衣装こそ違ってますが、実はこんな格好も大魔術師のなかでしていたんですよ。


以下は道士の扮装マジックの練習をしているという設定。

ゴーイン・バックtoちゃいな
暗いシーンなので、ちょっとボケてしまってますが、木剣と帽子や衣装が五行伏妖ポスターと一緒。


こんどはちょっと明るめ。

ゴーイン・バックtoちゃいな
背景にも注目して欲しいのですが、やはり五行伏妖ポスターと同じっぽく見えるでしょ。


というわけで、大魔術師の撮影中に才女ジョウ・シュン監督がちょちょいと撮影したってのは本当らしい。


はやく見てみたいなぁ。

短編映画だとしたら、初回上映がショートフィルムフェスティバルになる可能性が高い。

日本にも来ないかなぁ。次の札幌短編映画祭あたりでどうかしら?


私(龍虎)の予想としては、衣装や大道具やらは大魔術師の使い回し。ストーリー的にはほぼ大魔術師のセットを使って展開できる小規模な内容。さらにもしかしたら共演者も同じになるかもってのが五行伏妖のだいたいの見込みです。

まったく新展開の映画じゃないかもしれませんが、大魔術師のスピンアウトだと思えば、それもまた楽しそうだ。


最後にトニー・ファンなら「お!」と思うショットを大魔術師から。

ゴーイン・バックtoちゃいな

中東風の魔法使いに扮したトニーさん。


え、これが何で「お!」っと思うかって?

「大英雄」(1993、原題:射鵰英雄傳之東成西就)でトニーが演じた役(西毒)が中東風だったじゃないですか!


この写真は「大英雄」のワンシーン。

ゴーイン・バックtoちゃいな
左は毒薬くらって唇が腫れてしまったトニー。右はジョイ・ウォン。

(こんな写真ですいません)


考えてみれば「大英雄」もウォン・カーウァイ監督の「楽園の瑕」がまったく前に進まない状況で、同じスタッフ・(ほぼ)同じキャストを使って間に合わせでつくってしまった映画。友人であり、プロデューサーでもあったジェフ・ラウが監督を買って出て、二週間くらいで作り、これが思いのほか大当たりしたわけだ。


そんでもって、現在もカーウァイの「一代宗師」の撮影が進まない状況を見て、間つなぎにジョウ・シュンが作った映画が五行伏妖ってことになるのかな。


いずれにしても、トニー映画が増えるのは歓迎です。ジョウ姐さん、ありがとう。

2009年にクランクインしながらも、監督のウォン・カーウァイ(王家衛)が相変わらずのスロー撮影で、三年目に入っても全く完成していない「一代宗師」。

主演のトニー・レオン(梁朝偉)も「いつできるかなんて知らない」という諦めにも似たコメントを今年になってから出していた(レコードチャイナ2/18記事)くらいだから、まだ全然できてないのでしょう。


レッドクリフ(2009)以来の出演映画となる予定だっただけに、ファンは待っていたんですけどね。


昨年の夏頃には、とりあえず予告編だけ各動画配信サイトで公開して、トニーのアクションシーンのよいところを見せ、期待だけ煽っちゃっていた。


でも、カーウァイを知っている人は、きっとこのシーンくらいしか撮影してないんじゃあ・・・なんて余計な心配もしてしまったわけです。だって、普通の予告編ってもっといろんなシーンを入れるし。共演のチャン・ツイィー(章子怡)の顔すら写らないし。


下は各動画配信サイトに予告として公開されたトニーのアクションシーン。


ゴーイン・バックtoちゃいな
ゴーイン・バックtoちゃいな
かなり期待させる予告編なんだな、これが。

ただ、この雨のアクションだけで構成されているところが不安。。。

この予告編の公開から、すでに半年以上経っているけれど、公開に関しては、なんの動きもなかった。

中国のサイトも見てみたけれど、動きなし。


でもまぁ、2011年末から2012年にかけて、トニー主演のこれまた大作「大魔術師」が香港・中国・台湾で公開され、とりあえずファンはこちらを鑑賞したことでしょう。

私も見に行きたかった。無念。。。


そして、この大魔術師の撮影中に、共演のジョウ・シュン(周迅)が、どうやらついでに監督として撮影したらしい「五行伏妖」も今年公開のようだし。


ついでに言えば、これまたジョウ・シュンとトニーとのコンビで「聽風者」が昨年中にクランクアップしたという。

これもじきに公開されるでしょう。ちなみに内容はインファナル・アフェアを彷彿とさせる展開だとか。

今年はトニーのあたり年ですな。


この「一代宗師」は、知っている人には超有名な実在の人物、イップ・マン(葉問)を題材にした映画。

そう。あのブルース・リー(李小龍)の師匠でもあった方ですね。ただ、実際のところは、弟子入りしてすぐにブルースが事件を起こして、アメリカ送りになっちゃうから、ほんのちょっとの間しか教えていないんですけれど。


さて、「一代宗師」がモタモタしている間に、ブルース大好きのドニー・イェン(甄子丹)はイップ・マン映画を二本も作ってしまった。

2008年の葉問と2010年の葉問2がそれ。

すでに、日本でも公開され、DVD化もされている。


以下が葉問の日本版DVD(amazonより)。


ゴーイン・バックtoちゃいな

なぜか邦題は「イップ・マン序章」に。


で、以下が葉問2(同じくamazonから)。

ゴーイン・バックtoちゃいな
こちらを「イップ・マン 葉問」として公開。


どっかで見たドニー兄さんのインタビューによれば、ドニー兄さんは葉問3も企画中だとか言っていた。

でもって、カーウァイの「一代宗師」完成後に撮影でもいいか、なんて発言もしていた。

わー、余裕こいてる。


ばんばってくれよ、カーウァイ。

ドニー兄さんはもちろん大好きだけど、葉問のイメージが固定化してしまって、トニーがやりづらくなる。

実際のイップ・マンその人は、私の資料によると、むしろトニーさんに似ている印象。

といっても、おじいちゃんになった頃の画像しかないけれど。


ということで、私としても、どうせ『2046』のように長年、待たされて公開された頃には出演者のキムタクがやたら若いなんて変な感じになってしまうんだろう、なんて諦めムード。


でも、さっき検索してみて、ビックリ!!


なんと、あのGAGAが、一代宗師を買い付けて、2012年全国ロードショーと書いちゃっているじゃありませんか!

問題のページはこちら→<ギャガのサイトへ>


注:2012年5月に再び上記のサイトを確認したところ、「2013年全国ロードショー」に訂正されてました(トホホ)。

ちなみにタイトルは「グランドマスター(仮題)」。

うん、もともとの製作側が用意した英語題をカタカナにしただけ。

許せる邦題です。


しかし、たった一枚貼られた画像はトニーではなく、チャン・ツイィー。


以下がそのスチール。

ゴーイン・バックtoちゃいな
うーん、たぶん本編の画像ではなく、イメージ画像だな。


しかし、ツイィーに何の役をさせるのかしら。まさか奥さん役?

いや、それだったらアクションしているのは変だなぁ。

敵役でしょうか?

ツイィーにそれなりの役を与える以上、ドニー版葉問もストーリーはフィクションだらけだったけど、一代宗師もフィクションなんだろうなぁ。


というわけで、ギャガさんとしても自社のページに書いちゃった以上は、年間の収益計画に入っているのでしょう。楽な商売をしているわけではないので、これ以上の完成遅れは死活問題。


繰り返しますが、カーウァイさん、あきらめずに完成させてね。


最後に、トニーファンの友人のために、懐かしの画像を。

私が彼の魅力に吸い込まれるきっかけとなったチョウ・ユンファ主演映画「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」(原題:辣手神探、1992年)より若き日のトニーの写真。

ゴーイン・バックtoちゃいな
短髪がかっこよかったなぁ。


おそらく、私はこの映画と「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー3」、そして台湾映画の「悲情城市」あたりで、トニーを意識するようになったんだよなぁ。高校生・大学生の頃だったなぁ。あー年齢がばれる(笑)。

チャン・イーモウつながりで今回も書きます。


なんと、今回はチャン・イーモウ主演作(!)です。しかも、監督はチン・シュウトン。そうです。チャイニーズ・ゴースト・ストーリーの監督で、イーモウ監督作LOVERSの武術指導のチン・シュウトンが、イーモウを主演に据えて監督を務めている映画があるんですよ。


その作品が『テラコッタ・ウォリア』(1989年、原題:秦俑)です。

残念ながら、現在のところDVD化はされていないようで、amazonを見ると、中古のVHSを購入することができるのみのようです。

おそらくは、レンタルビデオ屋さんでもレンタル期間落ちし、それが売買されているのでしょう。

以下はVHSビデオのパッケージ。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
画像はamazon。


私はこの作品を初めて見たときに、当時は公然の仲であったコン・リー(鞏俐)とイーモウが役の上で恋に落ちるという、現実世界とごちゃごちゃになった設定にもびっくりしましたが、すでに監督として有名になっていたイーモウが再び俳優をやるということにも驚いたことを覚えています。


しかし、もともとは、イーモウは俳優としてもキャリアがあって、例えば有名なところでは『古井戸(原題:老井)』(1987)などがあります。私はこの古井戸も見ていますが、勝手に相当古い映画のように考えていました。1987年というと、有名な『紅いコーリャン(原題:紅高粱)』と同じ年。


古井戸では撮影も兼ねているので、演じる方も撮影・監督業も一緒にキャリアとして積んできたた方だったんですね。


老井のパッケージ(中国語版)

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
坊主頭がイーモウ。今と変わってませんね。

監督はウー・ティエンミン(呉天明)。


さて、テラコッタ・ウォリアに話を戻しましょう。


1989年に公開されたとありますから、監督のチン・シュウトンは既にチャイニーズ・ゴースト・ストーリーを撮った後。テラコッタ・ウォリアの日本のビデオパッケージにも「チャイニーズ・ゴースト・ストーリーのスタッフが放つ」なんて書いてあります。


確かに、製作はツイ・ハークで配給はゴールデン・ハーベスト。同じと言えば同じなんですよね。

そしてチャイニーズ・ゴースト・ストーリーが好きならば、きっとこの映画も気に入るはず。同じ悲恋物語ですしね。


そして、悲恋モノでありながら、この映画は輪廻転生が物語の軸となっています。

秦の時代、始皇帝に使えていた将軍・蒙天放がイーモウ演じる役どころ。



ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
左が始皇帝。右が蒙将軍。


始皇帝は不老不死の研究に熱心だったと言われていますが、この映画では実際に配下の薬学者に研究をさせていて、完成間近というところまでたどりつき、ついにはその不老不死薬の材料を得るための蓬莱国(=日本)への派遣団を構成します。


始皇帝の信頼の厚かった蒙将軍なのですが、あるときに、その派遣団の一人であったコン・リー演じる冬兒と恋に落ちてしまいます。

純潔を守らねばならないとされた派遣団の女に手を付けたかどで、蒙将軍は処刑処分となり、兵馬俑の中に生き埋めにされてしまいます。そして冬兒の方は火あぶりの刑に処されます。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

道ならぬ恋におちる二人。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
火あぶりに処されんとする冬兒。

しかし、その処刑の最後の間際に、冬兒から口移しで完成間近であった不老不死薬を飲んでいた蒙将軍は、1930年代になってから突然に生き返ります。

そして、そこには、転生した冬兒が、売れない女優として生きていました。


すっかり冬兒だと思い込んでいる蒙将軍と、売れない女優(冬兒の生まれ変わり)との間に、実は秦の財宝の盗掘を目的としてやってきたユー・ロングァン(于榮光)演じる人気俳優をはさんでテンヤワンヤがあって、なんと売れない女優がそのドサクサに打たれて死んでしまう(乱暴な説明でスイマセン)。


テンヤワンヤの場面。
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
真ん中の女性がコン・リー。それを抱きかかえているのがロングァン。

そして何故かサングラスをしているイーモウ。


そういうわけで、1930年代のドサクサが終わって、死ぬ間際に前世の記憶、蒙将軍への愛の記憶を取り戻した冬兒。残念ながら、絶命してしまいます。

こうしてクライマックスを迎えた後、この映画も終わりかと思いきや、ラストのラストになって、再び冬兒が現代(おそらくは1980年代)に転生します。


3回目の蒙将軍と冬兒との出会いは、他でもない兵馬俑博物館。

兵馬俑博物館には私も行ったことがあるのですが、撮影は本当にそこで行われているようでした。


下の写真が劇中の兵馬俑博物館(おそらく本物と思われる)


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

そして、この博物館で発掘作業に従事する蒙将軍と、日本人観光客のなかに混じる冬兒の姿が。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
発掘作業に勤しむ蒙将軍。この間、どこでどうやって生きていたのか、それはわかりません。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
変な着物を着させられた冬兒。日本人だから着物ってのも短絡的ですが。


映画は、この二人が出会うところで幕を閉じます。

日本人に生まれ変わってしまった冬兒と猛将軍が、果たして幸せに結ばれることがあるかどうか、そんなことを観客に期待させながら、エンディング曲が流れ始めます。


非常に余韻のある、そして感動できる映画だと思います。


というわけで、チャン・イーモウつながりで、チン・シュウトン監督作品『秦俑』のレビューでした。


実は、今回、このブログ記事を書いていて、つい最近、中国でこの秦俑のリメイクが作られていたことを知りました。


以下がそのポスター。

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

上の方にTVシリーズと書いてありますので、映画ではなく中国のテレビ用のリメイクのようですね。

2010年から33集にわたって放送されたようです。原題名は『古今大战秦俑情』。


確かに映画は目まぐるしいストーリー展開だったので、テレビシリーズに出来る物語だと思いますが、その目まぐるしさが映画の魅力でもあったので、テレビになっておもしろさを出せたのかどうか、こちらは未見なのでなんとも言えないところです。


テレビでリメイクされるくらい、良い映画なので、秦俑も日本でDVD化されることが望まれます。


日本では「LOVERS」(原題:十面埋伏)というタイトルで公開された本作は、2004年公開のチャン・イーモウ(張芸謀)監督作品。


少々古い映画なので恐縮ですけれど、そろそろ中国映画のレビューを、と思って我が家のDVDライブラリーを物色したところ、どうもこの映画が一番新しいようだったのです。


純粋な香港映画は少なくなって、いまや多かれ少なかれ中国資本が入るようになっています。

そして、同じように中国映画にも香港の資本(もちろん、台湾や日本・韓国も)が入るようになって、わかりにくくなっている時代なんですよね。

とくに大作を作る場合、北京語で作って、中国大陸というビッグマーケットに配給して、製作費を回収しなければなりませんし。


まぁ、1997年に中国に返還された香港は、本来は中国の一部なのですから、全てが中国映画と言えるかもしれません。が! そこはやはり、香港映画は独特の発展をしてきたわけで、いつまでも分けて考えたい、というのが古い香港映画ファンの心情。

そんな分類もいつかは無意味になるのかもしれませんが。。。


さて、この映画のクレジットを見る限りでは中国映画となっていて、「中国資本の中国映画」と言い切っても良さそうです。

ただ、製作のビル・コン(江志強)は香港の独立系映画製作会社の社長ですが、『グリーン・ディスティニー』(2000年、原題:臥虎藏龍)の成功以来、『HERO』(2002年、原題:英雄)からこの作品に至るまで、主に米国マーケットでも売れる中国映画の製作に力を入れているようでして、グリーン・ディスティニーが中国・香港・台湾・アメリカの合作として作られたのに対し、本作の資金集めは中国で主に行ったと見てよいのかなと思います。

もっとも、しっかりとワーナー・ブラザーズのマークは入ってますが、それは配給を意識してのことでしょう。


まぁ、細かく見ていくと、花王がASIENCEのイメージ・キャラクターだった本作の主演女優・チャン・ツイィー(章子怡)とタイアップしてお金を出していたりしましたけど、そこの資金は全体からみれば微々たるものですので。。。


というわけで本ブログで初めての純粋中国映画を紹介することになります。

それに、前回のチャイニーズ・ゴースト・ストーリー2011の紹介をした際に、名前が出てきたチン・シュウトンが武術指導をしている映画という縁もあります。


とはいえ、ただ紹介だけしても、もはや古い映画だけに、それでは面白くないですよね。

そういうわけで、この映画から遡っていくつかの映画をチャン・イーモウとチン・シュウトンつながりで紹介したいと思います。今回はまずLOVERS。


このLOVERSに至るまでに、私は古くからチャン・イーモウの映画を見てきており、彼の映画のほとんどを制覇しています。

1987年の『紅いコーリャン』、1990年の『菊豆(チュイトウ)』から始まるコン・リーを主演に据えた一連の作品に、ツイィーとの初タッグとなる2000年の『初恋のきた道』まで。

その私から言わせていただくと、実はLOVERSのストーリー展開は正直言って不満の残るものでした。


謎解きの要素があるわけでもなく、アクション映画としてはラスト・バトルが盛り上がりにかけ、ストーリーが単調だからですね。これは前作HEROにも感じた点。

ただ、大作であるがゆえに冒険的なことができなかったHEROに対し、イーモウが撮る武侠映画も二本目だし、本作では予算も前作より減っており、少しはストーリーで実験的なことをしてみても良かったのではないか、と思ったのです。


LOVERSの日本公開前にDVDが出た舞台裏的な「LOVERS外伝:もう一つの愛の軌跡」を見ると、イーモウ自身もドキュメンタリー中でそういう実験的なことも考えていたようだし、仕上がりを観ると、ちょっと期待外れな感じがしました。


そして、アンディ・ラウ(劉徳華)の大ファンである私は、彼が女に捨てられる(!)という物語展開に、衝撃を受けてしまったのでしょう。そのシーンから先に漠然とした違和感を持ってしまったというか、抵抗感を持ってしまったのです。


しかし、圧倒的な映像美を魅せてくれる作品であることは間違いなく、映画冒頭のツイィーとアンディの舞を巡るバトルは、何度でも見直してしまう(20回は見ているなぁ)くらい素晴らしいもの。


このシーンです。
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
奥にいるのがアンディ、手前がツイィー。


アンディが石ころを太鼓にぶつけると、盲目の芸妓であるツイィーが舞いながら、その太鼓を華麗に袖口で叩いていくというもの。

上の写真は、アンディが一気に石ころをばらまいて、ツイィーが超速の舞にて太鼓を連打する準備をしているシーンですね。


ここからしばらくが圧巻なのです。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
ツイィーの技は本物。中国の民族舞踊を11歳から6年間も学校でやっていたという本格派です。

このシーンは、ツイィーのダブルとツイィー本人の技で構成されていると思いますが、上記の写真は正面から撮ってますのでダブルの使いようもなく、紛れもなく本人がこなしています。


しかも、この映画でツイィーは盲目という設定なので、眼で動きを追うことなく、太鼓をめがけて袖を振り投げていきます。

劇場公式パンフレットによれば、ツイィーはこの舞踏シーンの特訓だけで二ヶ月も費やしたとか。

プロ並みの舞踏の腕前を持つ身で、さらに二ヶ月の特訓。いやはやスゴイ気合いです。


そして、この映画の武術指導は、前回ご紹介したチン・シュウトン監督。

HEROに続いてのイーモウとのタッグ。今回も武術指導のみの担当です。

この舞踏バトルのシーンに限らず、竹藪バトルのシーンなど、全編にわたってアクションを完璧に我々に魅せてくれます。


というわけで、これらの名シーンを楽しむという意味でも、観る価値アリな映画であることは確かです。

振られちゃうアンディは珍しいけれど、今までとは違う一面を見せてくれたという点では、冷静に思い返して見ると、アンディの演技が楽しめる映画でもあったわけですな。

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(倩女幽魂)と言えば、1980年代末期から90年代初頭の香港映画ファンにとっては忘れないほどの強烈な印象を残した作品だろう。もちろん、私も第三作まで製作された本シリーズを夢中になって映画館で鑑賞した。


今では劇場版パンフレットをほとんど買うことのない私が、当時の全ての日本版劇場パンフレットを今でも持っている。いかにこの映画を大事に鑑賞していたかがわかるだろう。


そのリメイク作が2011年春に香港・中国で公開された。


もちろん、本邦は未公開だが、鑑賞する機会に恵まれたのでレビューすることにする。


リメイク版は通称、“A Chinese Ghost Story 2011”と呼ばれている。


あくまで通称でこう言われているに過ぎないが、リメイク版にわざわざ年を入れるところから見ても、20年以上前の作品のリメイクにも関わらず、過去版のイメージがまだ現在でも根強く残っていることを反映しているように思える。


実際、本作は1987年にリメイク元が公開された後、全アジアで大ヒット。


同じような妖艶怪奇ものの作品が乱発され、主演のジョイ・ウォンは大忙しだった。もちろん、正統な続編となる第二作が1990年に、第三作が1991年に香港で公開されている。


といっても、正確に言うと、この三作品もまた、1960年に公開されたリー・ハンシャン(李翰祥)監督作品である「倩女幽魂」のリメイクなのだ。あまりにこの三作品のヒットが記憶に残っているため、1960年版は忘れられている。もちろん、映画の出来としてもこの三作品は大元の作品を凌駕してしまっているのだ。


ところで、今回のリメイク作品だが、香港・中国での英語タイトルのクレジットは、“A Chinese Fairy Tale”となっているものと、前作と同様のGhost Storyという英語タイトルとなっているものが混在している。


下記は予告時点でのポスター。
ゴーイン・バックtoちゃいな
拡大していただかないと見えないが、“A Chinese Fairy Tale”となっている。

そして、以下は公開中の際に使用されたポスターと思われるもの。
ゴーイン・バックtoちゃいな
こちらは拡大しなくても、“A Chinese Ghost Story ”となっているのがわかる。


これらのポスターはネットで拾ったもの。


英語タイトルの違いは、香港と中国本土とで違うのかなとも思ったが、どちらも簡体字が使われているので、中国本土用と見て間違いないと思う。


今回、中国本土版と香港版の本編オープニングを両方とも確認してみた。


本土版は以下の通り。

ゴーイン・バックtoちゃいな

そして、香港版は以下の通りだった。

ゴーイン・バックtoちゃいな
つまり、一応は、本土がFairy、香港がGhostなのだが、台湾でどうだったかまでは調べていない。しかし、繁体字を使っているのに、Fairyを使っている予告編があるところを見ると、かなりの組み合わせが存在しているようだ。

まぁ、英語タイトルはどのバージョンが輸出されるかによっても変わってくるから大きな問題ではないか。


さて、リメイク元となった87年版のポスター(日本公開時)を見ておこう。私にとってはホントに懐かしい代物だ。

ゴーイン・バックtoちゃいな
各国の映画祭で大絶賛された―とあるが、私はこの映画のポスターでこれら映画祭(とくにファンタスティック映画祭)を知ったくらいだ。それ以後、夕張をはじめ、各地の映画祭に行くようになったのもこの映画のおかげ。

どれだけこの映画によって、その後の映画人生が豊かになったかわからない。(チト大げさか!)


さてと、話が横道にそれたまま、映画のレビューに入らないので、そろそろ本題の2011年版のレビューを。


結論から言うと、旧作87年版の方が、感動させるという面でも、映像美の面でも、やはり格段に優れている。


もちろん、87年版で、幽霊(スー・シン)役を務めたジョイ・ウォン(王祖賢)の魅力によるところも大きいだろう。

とはいえ、2011年版の幽霊(スー・シン)役はリウ・イーフェイ(劉亦菲)で、美女度も人気度もジョイに匹敵する。


それよりも、87年版の監督であり武術指導でもあったチン・シュウトン(程小東)が、監督としてのキャリアで一番充実していた時期に重なっていることが、作品を傑出したものにした重要なファクターであると思う。


チン・シュウトンの監督作品は、87年版チャイニーズ・ゴースト・ストーリーが確か第3回監督作品だったはず。


それ以前の二作も非常に映像美が美しく、第一作目は武侠モノの「妖刀・斬首剣」(原題:生死決)で、第二作目は現代モノであったが、ともに格闘描写が美しかった。


とりわけ第二作目のほうは、「サイキックSFX/魔界戦士」(原題:奇縁)というトンデモな題名(第一作目もひどいが)で、日本ではビデオのみ発売・レンタルされたが、当時人気絶頂だったチョウ・ユンファが主演ということもあって、それなりに多くの人に見られていたと思う。


もちろん、ユンファは格闘アクション俳優ではないが、悪役にあのジャッキーのプロジェクトAで海賊ボスを演じたディック・ウェイ(狄威)を据え、緊張感のあるアクション作品になっていた。これが可能だったのはやはりチン・シュウタンのおかげだと思うのだ。


何が言いたいかと言うと、チン・シュウトンは非アクションスターにアクションを演じさせても、それなりに魅せてくれる監督・武術指導者だということだ。


今回の2011年版の監督は、ウィルソン・イップ(葉偉信)である。彼は、イップ・マン(葉問、2010)が近作にあるほか、たくさんのアクション映画を手がけてはいる。


しかし、武術指導(アクション監督)は、イップ・マンではサモ・ハン(洪金寶)が行っているように、アクションは人に任せている。


もちろん、本2011年版でも「動作導演」は、三人の人物(馬玉成、徐忠信、藩展鴻)に任せていた。


乱暴な言い方だが、何より幻想怪奇でなければならないチャイニーズ・ゴースト・ストーリーは、チン・シュウトンというアクションの天才振り付け師によって輝いた作品だったのだと思う。


実際、出演者には何の不足もないのだ。


まずは、主役であるニン・ツォイサン(寧采臣)役だが、87年版は故レスリー・チャン(張国栄)で、2011年版はユイ・シャオチュン(余少群)。

ゴーイン・バックtoちゃいな

ゴーイン・バックtoちゃいな
上がレスリー、下がユイ。別に印象は大差ない・・・ってことはないか。でもイケメンであることと情けないチキンな役回りは同じ。

(もちろん、レスリーはやっぱ偉大。この2011版でも、本編最後に「レスリーに捧ぐ」的なメッセージが表示されるほど)


そして、準主役となるはずのイン・チェンハ(燕赤霞)役は、87年版はウー・マ(牛馬)で、2011年版はルイス・クー(古天楽)。

ゴーイン・バックtoちゃいな

ゴーイン・バックtoちゃいな
上がウー、下がルイス。言うまでもないけど、2011版では、ずいぶんとかっこよくなっちゃった。


イン・チェンハがイケメンになったのは別にいいのだ。


しかし、この作品では、イケメンにした以上は、ということなのか、本来はニン・ツアイサンの役回りのはずの幽霊であるスー・シンとの恋物語をイン・チェンハにもからめてしまった。


ルイス演じる若かりし頃のイン・チェンハと、リウ・イーフェイ演じる幽霊になりたて(?)のスー・シン。

ゴーイン・バックtoちゃいな

ちょっとラブラブしちゃっています。


というわけで、後のスー・シンが、真剣にニン・ツアイサンを愛しているように思えない作品になってしまったのである。

そうすると、人間と幽霊の悲恋物語であるはずの本作の物語構成が崩れてしまう。


そういうわけで、ルイス演じるイン・チェンハが恋に悩んだりして頼りないため、なんとインの師匠役が追加されている。


ルイス・ファン(樊少皇)が演じるサンダー(夏雪風雷)役がそれだ。

しかしなんというやっつけ的な役名だ。

ゴーイン・バックtoちゃいな
確かに頼りになる技と肉体美を魅せてくれるのだが、じゃあイン・チェンハの役目はどうなる?


そういや、ウー・マはどう見たって強そうじゃないオッサンなのに、87年版ではそれはそれは頼りになる道士を演じていた。役の上では強そうに見えたのだ。


ところがルイス・クーは恋に悩んでしまっていて、強いけれども肝心なところで色恋に負けて、道士として失格。

ついでにニン・ツアイサンの信用も得られない。

あたりまえだ。恋敵っぽくなっちゃってるんだもん。


さて、ネタばれになるので、内容への難癖はこのあたりにしておこう。


少しは今回の作品の長所も申し添えることにする。


やはり、救いは、なんといっても映像の完成度がCG技術の進歩で格段に向上しているところだ。

87年版では、出てくる妖怪がそれはそれはチープに見えたことも事実。


例えば、木の妖怪でボスキャラであるロウロウの舌攻撃などは、細いときはカンピョウか!って感じで、太いときは布団か!って突っ込みを入れそうになった。


(とはいえ、ロウロウの不気味さは、男性俳優に演じさせた効果で、87年版のほうが上だ。)


しかし、2011年版では映像がチープな場面は一切ない。

ロウロウとの闘いも主にCGパワーになってしまうが、素晴らしい仕上がりだ。


それでも、やはりラストバトルは(ウー・マのオッサンが演舞しているにも関わらず!)87年版のほうが、断然はらはらどきどきさせられる。これはやはり、チン・シュウトンのカメラワークと振り付け指導の力なのだ。


そして、最後にジョイ・ウォンのはかない演技をうまく出していたこと。

87年版はネタバレになってもいいと思うので書いてしまうが、ジョイ演じるスー・シンを助けたかったニン・ツアイサンとイン・チェンハは、彼女の救出を成功させることができず、最後に彼女は蒸発して消えてしまう。


それだけでも切ない終わり方だが、87年版のエンドロールの最後にさしかかったエンディング映像で、ジョイ・ウォンが扉の向こうに消え去る本編内の映像が、再び挿入されるところは妙に余韻を残したものだ。


最後に本記事もそのジョイが消えてしまうシーンでしめることにする。
ゴーイン・バックtoちゃいな

ゴーイン・バックtoちゃいな

ゴーイン・バックtoちゃいな

あ-、やっぱ切ない。旧作も見直してみようかな。


というわけで87年版のほうに軍配が上がるチャイニーズ・ゴースト・ストーリーだが、2011年版を初めて見る人には、おすすめできる作品であると思う。そのあとに87年版を見直してみるのも面白い発見があると思う。