チャン・イーモウつながりで今回も書きます。


なんと、今回はチャン・イーモウ主演作(!)です。しかも、監督はチン・シュウトン。そうです。チャイニーズ・ゴースト・ストーリーの監督で、イーモウ監督作LOVERSの武術指導のチン・シュウトンが、イーモウを主演に据えて監督を務めている映画があるんですよ。


その作品が『テラコッタ・ウォリア』(1989年、原題:秦俑)です。

残念ながら、現在のところDVD化はされていないようで、amazonを見ると、中古のVHSを購入することができるのみのようです。

おそらくは、レンタルビデオ屋さんでもレンタル期間落ちし、それが売買されているのでしょう。

以下はVHSビデオのパッケージ。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
画像はamazon。


私はこの作品を初めて見たときに、当時は公然の仲であったコン・リー(鞏俐)とイーモウが役の上で恋に落ちるという、現実世界とごちゃごちゃになった設定にもびっくりしましたが、すでに監督として有名になっていたイーモウが再び俳優をやるということにも驚いたことを覚えています。


しかし、もともとは、イーモウは俳優としてもキャリアがあって、例えば有名なところでは『古井戸(原題:老井)』(1987)などがあります。私はこの古井戸も見ていますが、勝手に相当古い映画のように考えていました。1987年というと、有名な『紅いコーリャン(原題:紅高粱)』と同じ年。


古井戸では撮影も兼ねているので、演じる方も撮影・監督業も一緒にキャリアとして積んできたた方だったんですね。


老井のパッケージ(中国語版)

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
坊主頭がイーモウ。今と変わってませんね。

監督はウー・ティエンミン(呉天明)。


さて、テラコッタ・ウォリアに話を戻しましょう。


1989年に公開されたとありますから、監督のチン・シュウトンは既にチャイニーズ・ゴースト・ストーリーを撮った後。テラコッタ・ウォリアの日本のビデオパッケージにも「チャイニーズ・ゴースト・ストーリーのスタッフが放つ」なんて書いてあります。


確かに、製作はツイ・ハークで配給はゴールデン・ハーベスト。同じと言えば同じなんですよね。

そしてチャイニーズ・ゴースト・ストーリーが好きならば、きっとこの映画も気に入るはず。同じ悲恋物語ですしね。


そして、悲恋モノでありながら、この映画は輪廻転生が物語の軸となっています。

秦の時代、始皇帝に使えていた将軍・蒙天放がイーモウ演じる役どころ。



ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
左が始皇帝。右が蒙将軍。


始皇帝は不老不死の研究に熱心だったと言われていますが、この映画では実際に配下の薬学者に研究をさせていて、完成間近というところまでたどりつき、ついにはその不老不死薬の材料を得るための蓬莱国(=日本)への派遣団を構成します。


始皇帝の信頼の厚かった蒙将軍なのですが、あるときに、その派遣団の一人であったコン・リー演じる冬兒と恋に落ちてしまいます。

純潔を守らねばならないとされた派遣団の女に手を付けたかどで、蒙将軍は処刑処分となり、兵馬俑の中に生き埋めにされてしまいます。そして冬兒の方は火あぶりの刑に処されます。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

道ならぬ恋におちる二人。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
火あぶりに処されんとする冬兒。

しかし、その処刑の最後の間際に、冬兒から口移しで完成間近であった不老不死薬を飲んでいた蒙将軍は、1930年代になってから突然に生き返ります。

そして、そこには、転生した冬兒が、売れない女優として生きていました。


すっかり冬兒だと思い込んでいる蒙将軍と、売れない女優(冬兒の生まれ変わり)との間に、実は秦の財宝の盗掘を目的としてやってきたユー・ロングァン(于榮光)演じる人気俳優をはさんでテンヤワンヤがあって、なんと売れない女優がそのドサクサに打たれて死んでしまう(乱暴な説明でスイマセン)。


テンヤワンヤの場面。
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
真ん中の女性がコン・リー。それを抱きかかえているのがロングァン。

そして何故かサングラスをしているイーモウ。


そういうわけで、1930年代のドサクサが終わって、死ぬ間際に前世の記憶、蒙将軍への愛の記憶を取り戻した冬兒。残念ながら、絶命してしまいます。

こうしてクライマックスを迎えた後、この映画も終わりかと思いきや、ラストのラストになって、再び冬兒が現代(おそらくは1980年代)に転生します。


3回目の蒙将軍と冬兒との出会いは、他でもない兵馬俑博物館。

兵馬俑博物館には私も行ったことがあるのですが、撮影は本当にそこで行われているようでした。


下の写真が劇中の兵馬俑博物館(おそらく本物と思われる)


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

そして、この博物館で発掘作業に従事する蒙将軍と、日本人観光客のなかに混じる冬兒の姿が。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
発掘作業に勤しむ蒙将軍。この間、どこでどうやって生きていたのか、それはわかりません。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
変な着物を着させられた冬兒。日本人だから着物ってのも短絡的ですが。


映画は、この二人が出会うところで幕を閉じます。

日本人に生まれ変わってしまった冬兒と猛将軍が、果たして幸せに結ばれることがあるかどうか、そんなことを観客に期待させながら、エンディング曲が流れ始めます。


非常に余韻のある、そして感動できる映画だと思います。


というわけで、チャン・イーモウつながりで、チン・シュウトン監督作品『秦俑』のレビューでした。


実は、今回、このブログ記事を書いていて、つい最近、中国でこの秦俑のリメイクが作られていたことを知りました。


以下がそのポスター。

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

上の方にTVシリーズと書いてありますので、映画ではなく中国のテレビ用のリメイクのようですね。

2010年から33集にわたって放送されたようです。原題名は『古今大战秦俑情』。


確かに映画は目まぐるしいストーリー展開だったので、テレビシリーズに出来る物語だと思いますが、その目まぐるしさが映画の魅力でもあったので、テレビになっておもしろさを出せたのかどうか、こちらは未見なのでなんとも言えないところです。


テレビでリメイクされるくらい、良い映画なので、秦俑も日本でDVD化されることが望まれます。