腐女子の品格
  • 15Jun
    • 蘇州夜曲 森川久美 後編

      この街には不幸な夢が多すぎる───中国美青年黄(ワン)の言葉通り本郷が出会った人々は虚しい夢を追いかけては破滅してくばかり。そんな不幸な街だって男一匹俺流を貫く本郷でしたが、まさかの行方不明に・・・本当は好きなくせに素直になれない黄は本郷の行方を探して旧知の小此木大佐と接触します。大佐によると、最近上海では武器・弾薬・阿片が以前の数倍出回り官憲の目を盗んでは内地へアメリカへと秘かに運び出されてるんだって。そして中国内のおびただしい数の労働者が失踪し、世界各地で科学者がさらわれてるんだって。どうやら彼らが連れ去られた先は上海から揚子江を遡った上流らしい、と。オケー?理解した?さてさて、小此木大佐が黄に語ったように本郷が連れて行かれたのは揚子江の上流の切り立った岩山の中にぽっかりと開いた洞窟でした。なんとこの地下に武器製造の秘密基地があって本郷は愕然としてしまいます。そんでついに因縁の影村月心の登場でございます。ようこそ本郷君影村月心は日本軍の情報将校で新聞記者の本郷が内地で追っていた人物です。いつの時代でもよくある話、相手が大物過ぎて上部から調査打ち切りを命じられ怒った本郷は腹いせに別の記事をでっち上げた。それが「海を渡る恋」日本軍人と清朝最後の姫の恋愛悲話(ロマンチックじゃねーか)私はかわいいものを見るとついいじめてやりたくなる性分でねヤバいヤバいよ本郷さん月心こんな基地を作っていったい何を企んでいるのーこの基地は月心がシンジケートと組んで作り上げた阿片・銃器の大製造工場だったのです。そして、その目的は───この亜細亜に私の帝国を築き上げることだ!!イカれてますなー「君は私の捕虜だ。そして君は一生この工場でその好奇心の報いを受けるのだ」サディスティック月心にそう告げられ本郷は連れて行かれてしまいます。工場にはたくさんの人間が働かされておりまさに地獄のような有り様でちょっとでも休もうものなら容赦なく鞭が飛んでくるのです。その非道さに耐えかねてここから逃げ出そうとする者は即射殺されてしまいます。本郷はその仲間から以前たった一人だけ逃げられた奴がいたんだと聞かされます。それが揚(ヤン)、同じ人間同士としてあなたと友達になれそうな気がすると本郷に言ってくれた青年でした。革命軍の工作員だった揚は、揚子江上流で日本人による陰謀が行われているという情報を探る為に入り込みこの計画を知らせる為に脱走したと言うんです。本郷はこれまでの出来事が繋がったのを感じました。でも揚は、本郷の目の前で殺されちゃったんですよね・・・・またまた大勢の新しい男たちが連行されてきました。本郷はその中によく知った顔を見つけます。黄でした。黄は本郷を逃がす為に潜入して来たのです。ところが本郷さんたら逃げるんじゃなくて俺たちの手でこの基地を爆破しようと言い出しちゃう。黄・・・・・あぜんそりゃこの基地で作ってるのは武器と火薬です。そりゃそうなんだけどいかにも無謀な計画に黄は無茶だと反対します。二人では無茶でも仲間がいればやれるという本郷の強い言葉に周囲の男たちも動かされます。ここにいたってどーせ命はないんだやってやろーじゃねーか!!憂いを帯びた黄の顔がたまりませんな。長い前髪が垂れてくるのもせくしーですね。影村月心を父に清朝の姫を母に持った影村詮(あきら)は15歳で日本を捨て中国へと渡りました。この時代、1930年代中国は内戦状態にありました。南京には蒋介石の国民党政府があり、毛沢東の共産党は都会から追いやられていました。東北地方には満州国が建国され日本に占領された状況は中国人に屈辱感を与え抗日運動の気運は高まって行ったのです。しかし蒋介石はまずは国内の敵である共産党を打ち破りそれから外敵である日本と戦う事を主張します。そんな複雑な中国情勢の中で、黄と名乗るようになった彼は革命軍へ身を投じ抗日運動へ命を捧げようとしたのです。祖国を他国の支配から解放し飢えや貧困に苦しまないですむ国を作る為に、若い黄はその命を共に燃やす仲間を夢見ていました。が、ある時アジトが日本の憲兵隊に襲われ日本から来た黄は仲間から疑われ窮地に立たされてしまいます。上海に来ていた小此木大佐に呼び止められ街角で立ち話したのを偶然見られていた事も一因でした。小此木大佐は昔父親の親友で中国という国を愛し幼い黄を可愛がってくれた人でした。仲間から日本のスパイだと疑われ逃亡して以来、黄の心は孤独に凍りついたままなのです。それでも本郷の為に工場の爆破計画を練る黄を、再びあの時と同じ状況が襲います。かつての仲間が工場にいて黄を裏切り者のスパイだと糾弾したのです。行き場のないやるせなさに黄は深く傷つきます。久しぶりの親子の対面は苦いものとなり、もうどうでもいい的な心持ちになってしまうのです。まあ黄の気持ちもわかるんだけど、父親が日本の軍人ていう出自からして信用されないのはしょうがない気もしますが。ここでチャイナクイーンが登場。黄の事をただのチンピラじゃないと思ってたけど月心の息子だったとはね、と驚きます。月心と組んでこんな工場作ってあんたの目的はなんなんだい?実は彼女はロシア革命で祖国を逃れてきたんですよね。彼女もまた故郷を失い街をさすらい誰かを何かを求めてさ迷う姿は黄と同じ境遇なんです。まったく上海って街と来たら・・・でもなんと言うか、酒場の歌姫がチャイナクイーンだったとか、久々の親子対面で月心が黄に口づけしてきたり、チャイナクイーンが宙吊りにされた本郷を鞭打ちしたりと、ベタな展開やご都合主義がなにやら昔の香港映画みたいです。非情になりきれず本郷を逃がそうとしてチャイナクイーンは月心に射殺されてしまうのです。幾度も苦い思いを噛みしめたからこそ黄は彼女の境遇に同情し、月心へ反旗を翻します。工場内は銃撃戦となり炎が燃え盛ります。その中で本郷が月心を見事に撃ち抜き諸悪の根源であるラスボスの死でこの戦いは勝利します。降り注ぐ銃弾の中を人々は逃げ切りますが、黄は逃げ遅れてしまいます。黄は足を撃たれていたのです。そこへ王子様じゃない本郷が登場。炎が火薬庫に回ればここは一気にふっ飛んでしまいます。早く逃げろと叫ぶ黄に肩を貸す本郷。おまえをおいていけるかどどーん!火柱となって岩山がふっ飛びます。間一髪二人は川へ飛び込んで助かりました。イヤー良かった。気を失った黄に本郷が呼びかけます。目を開ける黄。・・・心中、しそこないましたね。生きる意味も見失ってしまった黄は本気でそう思ったのかもしれません。すべてが終わり二人は再び上海の街へ。本郷はまだ杖をついている黄と会いました。本郷は黄に聞いてみます。「一緒に日本へ帰らないか?」と。 でも黄は祖国を見捨てるわけにいかない、この街で生きていきますよ、と答えるのです。黄は今までとは別人のように明るい表情を見せ雑踏の中へ消えて行きました。 一本気な熱血漢の本郷と他人を寄せ付けない黄。でも成熟した大人の男性である本郷と違い黄はまだ若いのだもの。本郷の存在が黄の心に再び生きる意味を見いださせたのかも知れません。本郷も晴れ晴れとした気持ちで黄が消えて行った街の雑踏を見つめながら煙草に火をつけました。二人の物語にはまだ続編があるのですが今日の所はこれにて終了でございます。Solong 上海

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  • 07Jun
    • 風と木の詩その32 第六章陽炎④

      さて美少年愛好クラブの会合にのこのこ顔を出してしまったセルジュですが、もちろんこれは誰かの罠です。「珍しい黒い果実」だなどとセルジュの肌の色を揶揄して貶めようとする悪意を持った第三者。こういう卑怯者はどうせ面と向かって言えないんだから無視するに限りますが、小さい時からこんな事ばかりでセルジュには同情しますね。ほんとイヤだなぁ。でもセルジュが来たってんで盛り上がっちゃう上級生たち。B級生とA級生は現代風に言えば中一と高三くらいの体格差がありますからセルジュを悪戯にからかってめっちゃ嬉しそうです。でもこんな場面でもセルジュの事だから負けやしません。いつでも顔をあげて堂々としているのがセルジュの矜持です。膝蹴りが見事に決まっちゃうこれはレオ効いたでしょう・・・セルジュはケンカなんてどこで覚えたんですかね。格闘術なんて貴族のたしなみであるのでしょうか。しかしそれがかえって逆効果になってしまったみたいで、レオは抵抗されるのが新鮮味があっていいなとかちょっと燃えてきます。もう、セルジュを捕まえろーつって大騒ぎ。ジルベールは静観・・・面白半分でやってるんでしょうけど悪ふざけが過ぎます。こういう盛り上がった雰囲気だと悪ノリして度が過ぎちゃう事が往々にしてありまさーね。セルジュはかわいそうにこの時左の肩を痛めてしまいます。セルジュが転んだ所をここぞとばかりに殴りかかる下級生たちでもよく見ると積極的にボカボカ殴ってるのはリリアスだけ。かまわないから裸にしちまえ!とかヤバイ事を言い出すので、レオたち上級生はちょっとまごつきます。この美少年愛好クラブの面々はどちらかと言えば小物臭いノリでそんなに悪い奴らじゃないような気がします。その証拠にレオは大人ぶって下級生を止めようとします。特にリリアスが興奮してるので力ずくでやめさせます。リリアスの温室事件覚えてる?顛末は「風と木の詩その5第二章青春②」をご覧くださいリリアスはとうていジルベールの足元にも及ばないんだが、本人は勝手にライバル視してるんですよ。ジルベールは真に孤高の人だけどリリアスは周囲からチヤホヤされてお姫様扱いされたいっていうね、どこにでもいそうなあざとい女子みたいなヤツなんですよね。だからジルベールが目の上のたんこぶなんで、セルジュにちょっかい出そうとして拒否られた事が悔しくてたまらないのね。「ジルベールとじゃなきゃ嫌だとさ」ジルベールはそれを聞いて少し反応を見せはしますが、黙って成り行きを見守ってるだけですね。この人数に勝てるわけないしちょっと一緒にふざけてくれりゃいいんだからもう観念しろ、とレオに言われてもセルジュは逆に何を観念しろって言うのかと言い返します。なかなかここまで言えないあんなに悪乗りしてた場の空気がセルジュの言葉でしらけてしまいます。でも、みんな頭を冷やすにはいいでしょう。セルジュが部屋を出て行こうとし、この馬鹿げた騒動も終わりかと思いきや今まで黙って見ているだけだったジルベールがゆらりと立ち上がります。「待てよ!」「帰しゃしない。おぼっちゃん気どりの正義感ぶった欺瞞ヤロー」こわなんとまあ、意地の悪い嫌な奴でしょうか。ジルベールが出てきたら、なんかガラッと狂気的で凄惨な雰囲気に変わった気がする。ジルベールは一匹狼のイメージでしたがこれじゃまるで影の裏番長、若き日のオーギュみたいです。セルジュを正義感ぶった欺瞞ヤローだと罵るジルベール。今ジルベールが見ている世界の中ではセルジュはまるで敵のように見えてるんですよね。そしてその敵の正体を暴いて証拠を突きつけてやろうと、何が何でもセルジュを悪人にしたいんだね。ともかく、セルジュは大変な危機に陥ってしまいます。一方、こちらは土砂降りの雨の夜を過ごす二人。ジュールの部屋ですロスマリネ様は今日はジュールの部屋に入り浸り。オーギュストが怖かったから一人でいたくないのでしょう。窓の外を見つめていると何か物音がしたような気がしますが、誰かが騒いでるんだろうと心に止めませんでした。(セルジュがピンチだから早く気付いたげてー)そして、ジュールと言ったら印象的なのが「お茶」でございます。茶の歴史は世界史と密接に繋がっていますが紅茶と言えばイギリスで、フランスの茶文化はやっぱコーヒーじゃないですか。しかしながら耽美な美少年はたいてい紅茶派って事になってるんで、この作品もまた然りです。以前ジルベールを部屋に招いてお茶を入れてくれた事もありましたっけ。寄宿舎でさえ高級感溢れるティーセットで優雅な茶を愉しむジュールってなんか特別感がありますよね。そんなジュールがロスマリネとティータイムです。けれど、こちらはこちらで何やら重苦しい雰囲気が流れております。きみと、あの男が死ねば忘れられるあの男というのはもちろんオーギュストです。三年前に何があったのか。ジュールは家が没落し子供の頃からロスマリネ家で養育されました。だから二人は兄弟のように育ったんですが、ロスマリネは苦労知らずのお坊っちゃんでジュールを家来かなんかだと勘違いしてるような所もありました。何でも自分の思い通りになるとは限らないって事を早く学んで欲しいもんです。ゴクリで、ジルベールの煽動で再びセルジュに襲いかかろうとする奴ら。ブロウなんか面白がって鞭を持ち出して来て振り回したりして、暴力がエスカレートし非常に危険な現場となってきます。必死で逃げ回ったセルジュもとうとう椅子でぶん殴られて気を失ってしまうのです。倒れたセルジュを囲み何をしようと言うのか!セルジュ只今ズボンを脱がされております・・・↓ホウって!感心してる?男性がこういう顔をする時は、アレですか?大きさ?えーと、わかんない。とにかく敬意を表したっていう事で(笑)そんで、どんなにいたぶられてもひるまず果敢に抵抗しようとするセルジュにレオがまず根負けします。潔く負けを認め謝罪するレオ散々やりたい放題で何なん?と思うけど、とりあえずはレオの一声で美少年愛好クラブの面々は解散となり引き揚げて行きます。しかしジルベールだけはその場に残ります。セルジュを見つめ一人何を思う雨が上がり夜空には月が浮かび、シンと静まり返った部屋の窓辺でジルベールは立ち尽くしていました。窓から入る月の明かりが倒れたままのセルジュの裸体を照らします。ジルベールは、いつかのオーギュストの事を思い出していました。───セルジュきみは十分美しいきみはその美を誇るべきだそう言って、セルジュを誉めたオーギュスト。そして、ジルベールは突然着ている物を脱ぎ捨てると裸になります。朦朧とした意識の中でセルジュはその姿を天使かなんかと思うのでした。ところがところが、落ちてた鞭を拾い上げたジルベールがセルジュを打ってくるわけです。なぜか素っ裸で鞭を奪い合い争う二人の姿。セルジュも、こうなるともうどうしたらいいのかわかんないですよ。夢中で鞭を取り上げジルベールを打ち返して、怯んだ隙に外へ飛び出しました。(とりあえずズボンだけははく)そこへジュールが現れて・・・さすが参謀、尋常でない様子にすぐ何があったのかを悟ります。

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  • 01Jun
    • 風と木の詩その31 第六章陽炎③

      その日、オーギュストが学院を訪問して来た事を知るとジルベールはセルジュの前から走り去ってしまいました。ジルベールが焦がれるように待ち続ける人、オーギュスト・ボウ。その切ない気持ちに気付きながら、セルジュは皮肉にもオーギュストの計らいで従妹のアンジェリンと再会する事となります。顔の傷が・・・アンジェリンはセルジュに会えた喜びで無邪気に抱きついてきますが、その顔には火傷の跡がはっきりわかります。こういう戸外の陽光の下では顔の傷跡なんかは残酷なほどよく見えてしまうんですよね。セルジュはショックでアンジェリンが懸命に話しかけるのに上の空になってしまいます。けれどアンジェリンは健気にも、セルジュが自分の事を気に病んでいるとオーギュストから聞いて仲直りしなくちゃいけないと思ったとか、自分はもう平気とか言うんです。たった一人で子爵家で生きるセルジュの孤独を慰めてくれたアンジェリンは、セルジュにとって天使のような存在でした。そのアンジェリンの顔に残る傷跡はセルジュを苦しめ、アンジェリンがどんなに望んでも二人はもう元のようには戻れないんです。セルジュはただ涙をこぼし「僕は一生君に仕えるよ」と言うばかりでした。それを見ていたオーギュストは、セルジュは思った通り優しすぎて目の前の不幸を見ぬ振りが出来ないな~と考えています。そしてジルベールを扱うにはちと人間修行が足りないなと、冷静に観察してるのでした。まあ、おっしゃる通りだと思いますね。それにしてもこの二人、まるで仲人のような立ち位置で二人を見守っています。あとは若いお二人で、みたいな叔母は明らかにオーギュストにカマかけてますな。セルジュをあきらめてオーギュストに乗り換えようとしてるのかなー。この人は自分が娘を不幸にしているのに一向に気付いていませんな。まるで密談してるみたいな二人ですが、オーギュストが「私も一時は身を固めようと思って見合いもしましたが(したんだ)、まだしばらくは独り身でいます」と言った時、不意に笑い声が響きます。こういう時のジルベールの笑い声はよく響くんだろうな~この子はほんといつの間にか近くに来てますね。しかも男連れだし。エキセントリックなジルベールに困惑しながら「立ち聞きしてたんじゃないです。密会してただけです」とか弁解するけど、ジルベールに利用されたんですよね。その一部始終を聞いて笑いが止まらないロスマリネ「あなたが女の子に興味を示すなんて冗談でしょう・・・」確かにアンジェリンはまだ11歳ですからオーギュストにはその趣味はないですよね。でもオーギュストは存外アンジェリンは気に入ったようです。そしてロスマリネは「それはセルジュへのけん制というわけですね。そんなにあの悪魔っ子が大切ですか?」と軽口をたたきます。またまた笑いが止まらないロスマリネジルベールが無垢だと聞いてそんな不釣り合いな言葉があるかと笑ってしまいます。完全に馬鹿にしてますね。無垢とは一般的には身も心も汚れていないという事です。学院の不特定多数の同性と肉体関係を持つジルベールの(これはロスマリネが最も忌み嫌っている所ですが)どこが無垢なんだと、ロスマリネは笑うわけです。しかしオーギュストは「何もおかしくなどない。誰もが無垢の意味を知らないだけだ」と冷たく言い放ちます。ではオーギュストの言う無垢の意味は何でしょう。オーギュストはジルベールを最初に育てようと思った時、しつけや教育を一切しませんでした。親の束縛もなく社会の規律も知らずただ真っ直ぐに伸びる植物のようにジルベールは育ちましたが、それはある意味オーギュストの実験だったように思います。その自由過ぎる魂と類まれな美貌は人を虜にし、そのせいでボナールに無理矢理犯されてしまいます。人は性で汚れると考えるオーギュストは、ジルベールがその力に負けない為に抱きその関係にジルベールは支配されています。でも性行為に嫌悪感を持つオーギュストと違ってジルベールはオーギュストとの性に溺れてしまいました。オーギュストはジルベールを抱かなくなり、ジルベールは愛に飢えその胸を焦がし時に狂わんばかりにオーギュストを求めます。ジルベールがこの世で唯一求めているのはオーギュストだけなんです。それがオーギュストにとっては無垢な姿なんだろうと思います。そしてそれを守る為ならば自分は何だってすると、恐ろしい重圧感で言いロスマリネをタジタジとさせます。しかも、笑ったお仕置きなのかオーギュストの矛先はロスマリネに向かいます。「そもそもは君がセルジュをジルベールから引き離さなかったのが間違いだ」「君はジルベールの事になど触れたくないのだろうが恐れが利益を生む事に期待はできないよ」お、おうじが!やめたげてーオーギュスト何もしてないよ。髪を触ってるだけですよ。楽しそうに。ところがロスマリネはパニックにでもなったようにガクブルで、必死でジュールの名を呼びます。さすが参謀、隣室に控えてるんですね。ジュールが迅速にしかし静かに部屋に入ってきます。オーギュストはロスマリネの呼んだジュールの正式の名を覚えておこう、なんて言いました。一方、セルジュは父が亡くなった時の事を回想していました。父がいないと泣くセルジュを慰めた優しくて気丈な母。セルジュの心に浮かぶ情景はいつもアルルでの幼い日々です。両親はセルジュを愛してくれました。その記憶がセルジュを支えているとも言えます。そこへパスカルがやって来ました。二人はあれこれと語らいます。春になれば花は咲くのに人はどうして素直になれないのだろうセルジュは自分がジルベールに抱いている気持ちをパスカルは理解してくれるだろうかと考えていました。「人を愛する事に素直になったらどんなだろう?」それは、時と場合によるんじゃないかな。セルジュはパスカルと会話する事で何かをつかもうとしていました。さて、もう出番はないかと思っていたら再び登場しました「リリアス・フローリアン」謎の美少年愛好クラブwwwリリアスは以前セルジュにちょっかいを出そうとして温室に呼び出して、セルジュが怪我をした事件がありました。美少年愛好クラブとは初めて聞きますが、上級生たちが可愛い下級生を呼んでお茶会をしたりとかはよくあるパターンですが、これはちょっとガラが悪い集まりかな。雨の夜に集まってパーティーなんて不穏な感じしかしません。しかも、今日は特別な客が来てるって。マックス・ブロウとそのパートナーのジルベール・コクトーだぜ!最近うまくいってない二人ブロウは面白くない。ジルベールが自分の思い通りにならないからです。レオンハルトがよくある事だから気にすんなよ。美少年は気位が高いから美しいんだよ。なんて言ってブロウを慰めます。リリアスはジルベールを敵視してますから、あいかわらず可愛くないねって機嫌が悪い。まあ思い思いに飲んだり、ゲームに興じたり、騒いだりして過ごします。するとそこへ、誰かが訪ねてきます。は・・・つジルベールが出ると、なんとセルジュでした。セルジュは下級生に言付けを頼まれたと言って、誰かの手紙を持ってきたのでした。なんか悪意しかない。

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  • 25May
    • 蘇州夜曲 森川久美 中編

      阿片はケシの実から取れる麻薬の一種で吸引すると陶酔感に浸れ、常用すれば中毒となり精神も肉体もボロボロに冒され最後には廃人となってしまいます。イギリスにより大量の阿片が持ち込まれた中国では、阿片吸引の習慣は社会のあらゆる階層に広まりました。阿片窟は阿片の販売と吸引ができる施設で、客は横になって阿片パイプを使って吸引します。横になるのはオイルランプで阿片を気化させて吸引するのに長い阿片パイプを支え易いからと麻薬成分で立ってられないからのようです。横になって阿片を吸う人の姿は古い写真でも目にしますが、国力の低下による風紀の乱れや人々の堕落を象徴しているようでやるせない心持ちになります。阿片はいくら取り締まっても切りが無く、それもそのはず外国は阿片を中国に売る事で、政府の役人たちもまた阿片を扱う事で大儲けしているのだと黄(ワン)は言います。上海の光と影。「この上海では恐ろしい国際陰謀が・・・」あの時、揚(ヤン)は最後に何を伝えようとしたのか?本郷はその影の部分、アンダーグラウンドへと近づこうとしているのですがこれはとても命懸けの危険な事ですよ。黄を連れて阿片窟を調べ回っていた本郷は偶然日本人画家の松村が倒れているのを見つけます。租界の酒場で観光客相手に自分の絵を売っていた男です。本郷は彼の家まで連れて行ってやりますが、狭い部屋には妻と幼い娘がいてひどい暮らしをしているのでした。内地で新進画家としてもてはやされたものの描けなくなった松村は、借金がかさみそれでも昔の夢が忘れられず妻子を連れて上海に来たのです。フランスへ行って勉強し直すのだと言ったって旅費は工面出来ず、かと言って日本に帰るわけにもいかず、という妻の話に同情した本郷は「何か力になれる事があれば」と優しく言います。本郷さんいい人だねぇ。しかしそんな本郷に黄は「関わり合いにならない方がいいですよ」と言うんです。黄は松村が阿片中毒だと見抜いていました。黄にシンジケートに繋がる中国人ボス・銭大人(チェンターレン)が接触して来ます。阿片窟で黄が西洋人とケンカしてたのを見てたと言って、黄に誰か男を一人探してほしいと依頼してきます。黄はまだ二十歳になるかならぬかで、女性的な容貌の綺麗な青年なんですがカンフーを使うしガチで強いんです。本郷は「なんて街だ!」とこの街に驚いたり憤ったりしますが、一番わからないのはこの黄の正体なんです。こいつは一体何者なんだと一緒にいればいるほど謎が深まるわけです。「今日はこれで四軒目だ。足が棒ですよ」と訴える黄に「何の為に一日二十元払ってるんだ!」と怒る本郷(笑)やれやれと黄は煙草を一本所望します。「お前さん、やっぱり日本人だろう?」日本の煙草は久し振りだと言う黄に、本郷は自分の疑問をストレートに言ってみます。黄は「前に住んでた事があるだけですよ」とはぐらかします。あきらめの影がさすような寂しげな微笑に本郷はそれ以上何も言いませんでした。本郷と黄のコンビネーションが面白くなってきます。「大人(ターレン)。二週間も歩き回って手がかりひとつなくて、こんなバカバカしい事いつまで続ける気ですか?」「上手くいきゃ特ダネもんだ!」「特ダネ・・・って、あまり出世しそうなタイプに見えないけど」「ほっとけ!自分で悟ってるよ」「じゃあ、何だって。あんたにとっちゃ他人事だろうに」「好きじゃないんだよ。このままにしとく事が」この二人はたまたま知り合い、まだ上海に来たばかりで現地に暗い本郷にとっては黄はとても頼りになるガイドです。黄はこの風変りな日本人にちょっと興味が出てきてるんですよね。租界で外国人が優雅な生活を謳歌している裏にはあからさまな中国人蔑視がありました。本郷はジャーナリストの正義感からなのか弱者である中国人の側に立とうとします。黄はそこを気に入ったんだと思うけど、同時にそんな本郷の義侠心なんてすぐに潰えてしまうに違いないってわかってるんです。わかってるんだけど、黄はまだ若いから何かを信じたいんでしょうね。やあ、この間はすまなかった。と以前、梨華(リーフォア)に絡んだ日本の軍人が本郷に声をかけてきました。彼は海軍中尉の鬼怒川だと名乗ります。軍人は嫌いだと本郷が言うと面白い男だと怒りもしません。そんなに悪い人じゃないのかも。本郷は彼から影村月心の消息と一緒に、驚く情報をもらいます。革命抗日分子でコードネーム「黄龍(ワンロン)」という若くて凄腕のテロリストが今、仲間たちから裏切り者と呼ばれている───その男は黄に似ていると聞かされます。松村の妻がウチの人が三日も帰ってこないと言って来たので、本郷はもしやと思い阿片窟へ行くと松村はもう重度の中毒症状でろくに話もできませんでした。どこでこんな金をと問い詰めると、黄に紹介され密輸の運転手をしていた事がわかります。松村がこんなになったのはお前のせいだと思わず黄をぶん殴る本郷。ところが逆ギレした黄に「日本を食い詰めて上海まで流れてきて、みじめな生活を送る人間のクズなんかどうなったって知るものか。日本人なんて大嫌いだ!」と言われてしまいます。なんかもうむなしくなっちゃう本郷。降り出した雨の中を傘もささず黄は一人海を見ていました。心中に去来する思いは、松村の幼い娘とだぶる自分が子供の頃の情景です。たぎる怒りよりも無力感が悲しみとなって、黄の心を深く重く締め付けました。そこへ、さりげなく本郷が・・・黙って傘をさしかけてくれました。本郷さんは大人♡黄の謎はまだ明らかになりませんが、二人は再び行動を共にし銭大人の取引の現場へと踏み込みます。そこにはチャイナクイーンの姿も(このネーミングがww)取引現場は銃撃戦となり本郷は撃たれてしまいます。松村も口封じで殺され、チャイナクイーンには逃げられ何の収穫もなかった本郷またまたむなしくなっちゃう。後日、銭大人を黄はこっそり殺害してしまいます。そんな事はおくびにも出さずに黄が本郷と酒を飲んでいると、店が銭大人の配下に囲まれているのに気付きます。黄は何も告げずにこっそり店を抜け出します。いくら黄が強くても多勢に無勢、危うい所を本郷が助けに来ます。怪我を負った黄を本郷は自分の部屋へ連れて帰ります。内心、こいつをぶん殴ったなんて冷や汗物だぜ、とか思いながら。そんな本郷に影村月心の陰謀が刻々と近づいていました。殺人の濡れ衣を着せられた本郷は租界から逃げ中国人街の苦力(クーリー)たちの間に身を潜めます。苦力は港の荷送をする中国人労働者です。 ところがそこで潜伏していた本郷は怪しい男にナイフを突き付けられます。一方、本郷を助けようとする黄は鬼怒川中尉に会いに行きます。すると、そこへ上官の小此木大佐が現れ黄は動揺します。二人は顔見知りだったのです。そして、小此木大佐が黄に話した事とは・・・───それらの謎はこの揚子江上流にあるなんか上海が大変な事になってるらしい。

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  • 18May
    • 蘇州夜曲 森川久美 前編

      昭和初年。広大な中国大陸をうしろにひかえ国際都市として繁栄する上海。そこは各国スパイが暗躍し犯罪シンジケートがしのぎを削る、東洋の魔都であった。「蘇州夜曲」は1980年「LaLa」に連載された作品です。さて、「上海日報社」に内地から一人の男がやって参りました。彼の名は本郷義明と申します。お上にたてついて内地の一流新聞の記者をクビになったという噂の本郷に、三流新聞の僻みなのか社員は冷たく当たります。静かに窓辺で一人煙草をくゆらす本郷の姿に昭和の男のダンディズムを感じますね。この時代は1934年頃ですが、昔はフリーダムに喫煙してましたから、今では信じられないけど会社の中でもフツーに吸ってます。そう言えばダンディズムとはやせ我慢でもありましたっけ。本郷はその夜、憂さを晴らすように四馬路(スマロ)へ行ってしたたかに酒を飲みます。当時、上海には英米仏や日本の租界がありました。租界は中国の弱体化につけ込んで各国が強制的に借り上げた居留地で、中国の統治権が及ばない独立地域です。四馬路(スマロ)はその歓楽街でした。とは言え、稼いだ金は全部飲んじまってるのです。上海は冒険者の楽園と謳われましたから、ビッグビジネスか人生を諦めるかの両極端の世界なんでしょうな。中国人の美しいボーイが飲み過ぎの本郷に声をかけます。「およしなさい、大人(ターレン)」 大人(ターレン)は世代が上の人への敬称「ほっとけ!新天地に乾杯してるんだ!」本郷酔ってるかと思えば急に真顔になり「俺はある男を探してる、俺を日本にいられなくさせた奴だ」とつぶやくのです。その言葉をさえぎるようにボーイは本郷に言います。「気をつけなさい、大人(ターレン)。この裏街はチャイナクイーンの縄張りだ。上海の夜を支配するシンジケートですよ」その時突然、ステージでショーが始まります。「上海リリィ」と男たちが騒ぎだした彼女は、金髪の白人歌手です。その艶やかさに本郷は見惚れてしまいます。租界を有した事で世界への窓口となった上海はあらゆるモダンな物に溢れ、誰でも外国文化を堪能する事ができたのです。当時上海の人口三百万のうち外国人は六万人です。中国の法律の及ばない租界には、各国の中国侵略の全線基地として、各国スパイ、犯罪シンジケート、そしてこの国から外国勢力を追い出そうとする革命分子の三つの勢力が拮抗していました。租界には、茶館、伎館、阿片窟が集中しテロ、阿片、賭博、人身売買が日常茶飯事でした。そんなわけで、さぞや事件の記事が書けるだろうと勢い込んだ本郷でしたが、編集長から命じられたのは蘇州の観光案内記事でした。蘇州行きの列車の中で、馬鹿にしやがってと独りごちる本郷でしたが偶然にも「上海リリィ」と乗り合わせ彼女に蘇州を案内してもらう事になります。蘇州は上海の西に位置する都市で、古典庭園で知られる水の都です。これは唐代の詩人「張継」の有名な「楓橋夜泊(ふうきょうやはく)」です。「寒山寺」の鐘の音は、この作品のタイトルともなった李香蘭が歌唱した「蘇州夜曲」でも歌われています。李香蘭は、日中戦争のさなかに日本人でありながら中国の歌姫として一世を風靡した人です。父親が満鉄の社員で中国生まれの彼女は美貌で中国語に堪能でした。軍事力だけでなく文化的な支配をも実現しようと設立された満映は、日中の架け橋となるような大女優を作り出そうとしたわけです。軍部の狙い通り李香蘭は日中で大人気となり次々と映画に出演し歌は大ヒットしました。しかし中国の人は李香蘭は中国人だと思っていました。日本の敗戦を上海で迎えた彼女は、中国人として祖国を裏切り日本に協力した容疑で中華民国の軍事裁判にかけられてしまいます。日本人である事が証明され国外追放処分となり帰国できましたが、こんな人生もあるんですね。水の蘇州の花散る春を惜しむか 柳がすすり泣く(蘇州夜曲より)異国情緒の中で二人はいいムードになります。本郷は彼女に再び会いたくてあの店に行ってみます。いつぞやの美形のボーイがいてあの女には近づかない方がいいと言われてしまいます。彼の名は黄子満(ワンツーマン)と申します。リリィも現れて「もう来ないで」と言われてしまいます。なんかわけわからん本郷ですが、意外にも純情一途な男で「俺はあんたが好きなんだ」と言い出します。すったもんだしてると店の中で騒ぎが・・・目の見えない中国娘に因縁をつける日本の軍人さん。可愛い子だったので「酒をつげ」と絡む軍人を、本郷は見過ごせずケンカを売ってしまいます。軍人なんて大嫌いだと叫ぶ本郷。ケンカが始まってしまい支配人が慌てて娘に言う事を聞かせようとするのを見て、今度は支配人とケンカに。「この娘は百元で買ったんだ。口を出すな」と言われ、カッとなって百元を叩きつけ娘の手を引っ張って店を飛び出します。本郷は熱い男だった・・・この娘は梨華(リーフォア)と言い恋人と一緒に村を出て上海に来たものの、彼は革命運動に入り行方不明になってしまったと言うのです。本郷は行く所のない娘を自分の泊まる外国人専用のホテルに連れ帰りますが、それが原因でホテルを追い出されてしまいます。「犬と中国人は入るべからず」租界の公園で掲げられていた看板はあまりにも有名です。租界では外国人は優雅な生活を送っていましたが、その裏には中国人に対する露骨な差別があったのです。ホテルを激おこで出て行く本郷はある男とすれ違います。本郷が探していた男、影村月心です。一体二人にはどんな因縁があると言うのでしょう。一方、黄の店に梨華を探して恋人の揚(ヤン)がやって来ます。揚は何者かに追われていました。本郷の事を誤解してしまい悪徳日本人めとアパートに飛び込んで来るのですが、梨華の説明で誤解が解けます。たとえ敵であっても同じ人間同士としてあなたと友達になれそうな気がする、そう言ってくれた揚。二人は握手を交わしますが、握った揚の手が傷だらけなのに本郷は驚きます。「あなたに是非聞いていただきたい。私が追われているわけを。今この上海では恐ろしい陰謀が・・・」そこまで話した時です。突如踏み込んで来た工部局警察を装ったチャイナクイーンの配下に揚は射殺されてしまいます。工部局は租界の自治行政機関です。そしてチャイナクイーンの正体はリリイだったのです。本郷が黄のヤサを訪ねて来ました。梨華はやっと会えた揚を突然失い自殺未遂を起こしていました。あの連中を見つけ出し警察に突き出すから力を貸してくれ、と頼む本郷の言葉に黄は苦笑してしまいます。警察なんてシンジケートの手先だ、あんたはこの街を知らなすぎる、と言うのです。「もういい!お前なんかに頼るか!」カッカして出て行こうとする本郷がなんだか可笑しくて、黄は一日二十元でつき合ってやる事にします。本郷は阿片がシンジケートの手で街中にばら撒かれる事を知り、黄を連れて阿片窟をあたる事にします。しかし黄は中に入りたがらず本郷だけを行かせ外で待っています。すると外国人の男三人が、黄の美貌に目をつけてつき合えとしつこく絡んで来るのです。黄は北派少林拳を使います。あっという間に大の男三人をのしてしまいます。どうやら本郷が黄に協力を求めたのは正解だったようです。

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  • 11May
    • 風と木の詩その30 第六章陽炎②

      青春の時がゆっくりと、だが確実に過ぎ去って行きます。そんな止める事のできない時間の流れの中で、激しく熱くピアノに身をゆだねるセルジュの姿がありました。セルジュのピアノは彼の思いのはけ口。己の叫びを音にして、彼の心の動きがまさに響いてくるようだ。ルーシュ教授は「こんなに無茶に弾き続けたら指を壊す」と心配するルイ・レネにそう言い、弾かせなかったらセルジュの精神が乱れてしまうと考えていました。悩めるセルジュよ。一方、物憂い雨の日の事───セルジュは通りがかった温室の中で上級生のレオと逢引するジルベールを見てしまいます。セルジュを邪険に突き放し、今この時の欲望に身を委ねようとするジルベール。その妖しく切ない美しさを、官能的な匂いを充満させながら燃え上がっていく姿を、セルジュは魅入られたように見つめていました。笑わないでやって覗き見しようと思ったわけじゃないんです。だけど目が釘付けになって、見つかるまでつい見つめちゃったの。レオとジルベールにからかわれて「キスくらいしてやるよ」って嬲られると、セルジュは言葉もなくその場を逃げ去りました。そして向かった先は・・・・ワッツの部屋でした「剣を一手お願いします!!」おおっ、男の子よ!誰にも相談できずにくすぶってる思春期の感情は、取り合えず身体を思い切り動かして吹っ飛ばそうではないか。恥ずかし気もなく、真っすぐにもがくセルジュよ。まあワッツはこんな時はきっと話が分かる大人だと思うけど、相手をさせられて大変ですね。そんな中、カールに代わって下級生係を命じられたセルジュ。この学院は小さい子は八歳ですから、親元を離れて身の回りの事は自分でできるようにならなくちゃだからね。大きい人が面倒見てあげたりして共同生活の中で自主が育っていくんですよね。下級生はにぎやかで楽しそうだ。子供だから思春期のお悩みなんてまだないし。さて、そんなセルジュの元に特別な面会人が来ているとの知らせが───オーギュスト・ボウ!名刺ですね。名刺は人を訪ねて行って不在だった時、自分の名前を書いたカードを残して来たのが始まりだそうです。18世紀になると名刺はヨーロッパの社交界でも盛んになりました。銅版画を入れた美しいものが流行ったそうです。このセルジュにオーギュストの名刺を持って来た少年は、ロスマリネの側小姓みたいな子ですが、確か竹宮作品のスターシステム的なヤツで他の作品にも出てたんですよね。なんだったかなー。ちょっと思い出せないんですけど。この子がねー、ロスマリネの手先だからセルジュが部屋を出て行った後、オーギュストの名刺を落としていくのね。わざとらしくジルベールの目に触れるように。ジルベールはそれを見てオーギュストが学院に来てる事を知るわけです。何とも回りくどい事で・・・実に、いい人を装ったオーギュストでございます。オーギュストの用件とは、従妹のアンジェリンと叔母が一緒に来ているから、明日こちらに連れてくるというものでした。セルジュはある程度予想してはいたものの動揺を隠せません。アンジェリンには会えない・・・・あれは自分の罪だと思っているセルジュには、彼女が自分に会いたがるはずがないと思い込んでいましたのです。しかしオーギュストは「彼女は本当は君に出て行ってほしくなかったのだ。君に出て行けと言ったのは、それは女性の誇りというものだよ」と言い聞かすのでした。なるほどね。セルジュはまだ未熟だから出て行けと言うアンジェリンの言葉を鵜呑みにしてしまいましたが、オーギュストは人の心の機微をよくわかっています。しかしながら、親切そうに見えるオーギュストの振る舞いもジルベールを苦しめている人と思うとセルジュは複雑でした。それになにか真実が水面下に隠れているようにセルジュには感じられたのです。翌日は全学ミサの日でした。この日のミサは生徒総監が聖書の朗読を代行しました。オーギュストはロスマリネを褒めますが、ロスマリネは心の中ではオーギュストを背徳者だと罵っています。「今に見ているがいい。お前たち二人など聖堂に入れなくしてやる!」立ち去るオーギュストの後ろ姿の次に、ジルベールを目の端に捉えてロスマリネはジリジリするような思いでいました。ロスマリネは外見の美しさに対して内面の美しくないギャップが妙味です。ジルベールもまたオーギュストの姿を見つめていました。そのジルベールをセルジュは見ています。それぞれの思いが交錯する聖堂で、ジルベールは新しいゲームでも思いついたようにセルジュに声をかけます。「君の隣で今日一日授業を受けていいだろう?」って。ミサの間ずっと、ジルベールは瞬きもせずにオーギュストを見つめていました。その姿がセルジュの心に影を落とします。セルジュのモヤモヤはイライラへと変わり、なんのつもりか知らないけどもう心配してやるものかって腹が立ってくるのでした。で、セルジュが朗読するのが倉田百三の「愛と認識との出発」です。倉田百三は「出家とその弟子」を描いた作家で、大正10年に岩波書店から刊行された「愛と認識との出発」はベストセラーになり、若い人たち特に倉田の出身校である旧制一高の生徒に愛読されました。若い人たちが悩むのは当たり前の事である。特に知的な若い人たちが最も悩むのは性の問題である。フランスが舞台なのにわざわざ日本文学を出して来たのは、こんな内容がセルジュにマッチしてるからなのかな。それを体現するかのように、隣に座ったジルベールがセルジュに触れようと手を伸ばしてきます。どこまでセルジュを嬲ろうと言うのか。でもセルジュも負けてません。何しろ今は腹を立てていますから。いきなりセルジュがジルベールに手を上げたので皆ビックリしてしまいます。でもこの場に居合わせた人は面白いよねー。学院一の美少年に堂々と手を上げたんだから。上手くすれば女の代用品になるのにもったいないと下衆な考えを持つ者もいたりして。ジルベールが教科書とまったく違う朗読をするので、先生が怒りだしてしまいます。この先生はすぐ逆上するタイプの上、最初からジルベールが気に入らないみたいです。黒板消しでバンバンやって。もうクラス中が大騒ぎです。さっきまで怒っていたセルジュも先生を止めようと必死になります。こんな時でもジルベールは決して逃げない事がわかってるからです。カールが咄嗟に石板で先生を殴ろうとすると、パスカルが同じ事を考えて先生の頭に命中させました。男の子って無茶をしますよね。結果、立たされる。でも4人はなんだか楽しそうです。それに引き換えセルジュとジルベールときたら、目が痛むジルベールを心配して目を見せろと言っても、誰がお前なんかにと見せません。あまりしつこく言うと、怒ってセルジュを突き飛ばしてくるし。やれやれと思いながらも、どうしてジルベールはここを離れないのだろうかと考えてみます。その時、またセルジュに特別な面会人が来ているからすぐ院長室に来るようにとの知らせが。オーギュストです。そうか、これを待ってたんだ。ジルベールが走り去ります。行けばいい。そんなに会いたければ行けばいい。オーギュストを求めながら、心を通わす手段が見つからないまま涙を光らせていたジルベール。セルジュはあの時の光景を思い出していました。地上に落ちて来た堕天使さながらの二人の姿だけが、真夏の陽炎のように揺らめいていた日。

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  • 27Apr
    • アマネギムナジウム①巻 古屋兎丸 球体関節人形って知ってる?

      球体関節人形ってご存知ですか?自分は今までそんなに興味なかったので、ネットで見た事くらいはあるけど詳しくは知らなかったんです。球体関節人形の特徴は関節部が球体によって形成されてるので、自在なポーズを取らせる事ができるんです。そしてなによりも驚くのは、極めて人間に近い精巧さとその美しさです。肌の質感とか表情とか、瞳から毛髪から、もうね生きてるみたい。それだけに、大変高価な物でございますよ。しかしこの球体関節人形というのは倒錯的な色合いが強く、普通の愛玩用の人形とは一線を画しますよね。なんか見てはいけない物を見てしまったような気持ちになるWその妖しい美しさに人は取り憑かれてしまうのでしょうか?「私にとってこの子たちは人形じゃありません。生きてる子供と一緒なんです」などとのたまう人形作家の宮方天音(27歳)です。銀座で人形展をしてまして、人形作家というのはどんな風に暮らしてるのかと思いましたら、これがなかなか人形だけで生活するというのは難しいようです。実は天音は門前仲町にある築80年の一軒家(風呂もない)に住み、地味な派遣社員をしながら人形作家をしていたのであります。母親からは二言めには早くいい人を見つけて結婚せよと催促されますが、結婚どころか彼氏いない歴27年の筋金入りなのです。美人ではあるのですが、なんというか「オタク的な人」だから人とつるむのが苦手だし社内では浮いております。でもまあいいんでしょう、本人はそれで。一生独身で友達もいなくても、お人形に囲まれてひっそりと死んでいければそれで満足だと思ってたんです。そんなある日の事、贔屓の画材屋の店主であり天音の人形の師である徳ちゃんから、店を閉めるからと人形用の粘土をもらい受けるわけです。人形を作るのはお金がかかるんですね。天音が派遣でいくらもらってるのかは知らないけど、いつもとても貧乏してて会社に持って行くお弁当が日の丸弁当だったりします。日の丸弁当とは、弁当箱に白米を敷き詰め中央に梅干しを一個のせただけのものです。天音はお昼になると会社の外の公園かなんかで一人、夢をおかずに梅干し弁当を食らっておるのです。その夢と言うのは、中学生の頃に大学ノートに描いて「アマネギムナジウム」と名付けた、まあいわゆる厨二病ノートですな。萩尾望都先生の名作「トーマの心臓」に出会って感動した中学生の天音は、自分も自分だけのギムナジウムを作ろうと思ったのです。ちなみにここで言うギムナジウムの世界観は、ドイツの全寮制男子校でございます。天音は次の展覧会に向けて、この厨二病ノートに描いたギムナジウムの7人の少年の人形を粘土で作り上げるのです。その粘土には秘密があると言う徳ちゃんの言葉を思い出し、天音が人形たちにキスをすると何という事でしょう。光が放たれ命を持たないはずの人形たちが動き出したのです。ギ・ギ・・ギってなんか怖いWいや~この子たち動くだけじゃなくちゃんと喋れます。しかも天音がノートに描いた設定通りなんです。築80年の門仲のボロ家を、ドイツケルン郊外にある200年の歴史を誇る名門校「アマネギムナジウム」だと言い、今は1970年だと言い出します。ドイツについて何も知らない中学生が適当につけた設定を堂々と語ってくるわけなんです。なにより彼らは、自分が人形だとは思ってなくて本当に人間だと思ってるんです。この球体関節人形って本当にリアルに出来てますので、動きだしてもおかしくないような気がするんですよね。しかし喜んだのも束の間、この後天音の作ったとんでも設定のせいでこの子たちは大変な事になってしまうんです。と、まあこんなお話ですが秀逸なのは天音のキャラなんです。球体関節人形作りってとても手間と時間がかかる作業なんですね。創作をしない人から見ると作業に励んでる様子は鬼気迫る物があります。(BGMはいつも森田童子)咳が止まらなくなって病院に行けば・・・もう命がけですね。昼間は会社に行かねばなりませんから寝る間もないんです。会社へ行っても早く帰りたいとしか思ってないから、やっぱ職場の人からは変わってるなあと思われますよね。でも他人から「キモイ」とか「変な子」とか言われるのは慣れてるから平気なんです。自分の事を取柄がなくてド底辺で不幸フェイスで人形しか友達がいないって、まったく自己評価が低いんです。だから職場の正社員の男性の笹井さんが、どう見ても天音に気があって話しかけてくるのに全然気付かない。話しかけられた時の挙動不審振りとか、自分の好きな事を話す時だけ急に能弁になる所とか絶妙です。画材を買いすぎて給料日までの10日を3千円で過ごさねばならず銭湯代もない天音に、笹井さんはパンをくれるのです。セロリしか入ってないって、もはや弁当じゃないじゃん。可笑しいんだけど、好きな物を極める熱い生きざまにちょっと感動する自分。こうして作り上げた人形たちなんですが、展覧会では大好評で人形コレクターのおばちゃんから「この子たちまとめてお迎えするわ」って言われるんです。買うんじゃなくてお迎えするって言うのね。覚えておこう。もちろん天音は売りませんでしたが、1体30万で7体だから210万円でしょ。金が動くねえ。動き出した少年たちを築80年のボロ家で留守番させるのは心配なので、天音は2階すべてを人形用のギムナジウムに改造します。足りない資金は母親に婚活すると言って、お見合い紹介所の登録金として20万騙し取ったり。笹井さんの力も借りて、スゴイ熱意と頑張りで作り上げます。人形への愛が天音を突き動かすのです。しかも天音自信も彼らの世界へ入る術を見つけます。素晴らしい奇跡に歓喜する天音ですが、そこは少年たちの愛と葛藤が交錯する聖域だったのです。閉じられた世界の中で、彼女がつけた迂闊な「設定」は少年たちを苦悩させる事になってしまうのです。

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  • 21Apr
    • 風と木の詩その29 第六章陽炎①

      さて、物語の舞台は再びラコンブラード学院に戻って来ましたが、前どんな話だったか覚えてる?セルジュに興味を抱いたオーギュスト・ボウに夕食に招待されしょうがなく行ったら、嫉妬したジルベールがぷんすかで「おまえなんか憎んでやる!」とか言ったんじゃなかったっけ(テキトー)クリスマス休暇にセルジュを家に招待してくれたパスカルは、スケート中に氷が割れる事故で弟のミシェルが危篤になってしまって、その後学校をずっと休んでましたのよ。本日は我らがパスカルが飄々として学院に戻って参りました。セルジュとカール、それから以前はジルベールが原因でちょっとギクシャクしちゃったけどクルトやネカーも大騒ぎで出迎えて少し照れくさそうなパスカルです。けれどセルジュは心を痛めていました。パスカルの妹のパトリシアから手紙を受け取っていたからです。ミシェルは亡くなってしまったんだねミシェルはパスカルの腹違いの弟で、父親が浮気して出来た子供でした。幸せそうに見えたパスカルの家にも悩みがある事を知ったセルジュ。「人間て生んだ方に責任があると思うか?それとも生まれた人間に責任があるのか?」パスカルがセルジュに問い掛けた言葉を思い出します。子供が死ぬのは悲しいなぁ・・・パスカルはショックで部屋に閉じこもってたんですと。兄は強いようでこのうえなく優しい人だから、兄を助けて欲しいとパットの手紙にはありました。でもね、お悔みの言葉なんて言わなくたってこのハグでセルジュの気持ちは伝わってるよね。そうして、セルジュは実はパスカルの他にも懸念があったのです。それはオーギュスト・ボウがたびたびセルジュに手紙を寄越す事でした。シオン・ノーレの香り・・・・ジルベールに気兼ねしてオーギュストからの手紙をセルジュは部屋の外で開封しました。だってジルベールの方がこの手紙を待ってるんじゃないかと思うと、彼の前では読めなかったのです。これと言った内容でもないのになんで自分に手紙を送ってくるのか、セルジュはオーギュストの真意を計り兼ねていました。きっと上質なレターセットに美しい字で書いてくるよね。シオン・ノーレ吹きかけてWWW手紙を読み終えて部屋に入ろうとドアを開けると、ジルベールはいなくて閉めきった部屋のこもった臭いがムッとします・・・・いや、思春期の男の子のこもった臭いがムッとします・・・・いや、まさかこの部屋で?ジルベール??セルジュは思わずジルベールのあれやこれやを妄想してしまうのです。部屋の空気を入れ替えて落ち着こうセルジュはとても誠実で潔癖な少年ですから、ブロウみたいにジルベールを性的な相手にしようなんて考えた事は一度もありません。そんな目でジルベールを見るのはとても無礼で侮辱的だと思ってるんじゃないかな。だけどセルジュも健康的な思春期の男の子ですから、性的欲求が生じたり衝動的になったりしちゃうんですよね。ただセルジュにはジルベールの性的な魅力はまだわかってないでしょうね。セックスを喚起させるような雰囲気とか様子に当惑してるだけだから。まあそれが色気とかセックスアピールってものなんですけど。セルジュ可愛いなー。一方、ジルベールはと言うとセルジュの気も知らずに、ロスマリネの下っ端を片っぱしから誘惑していました。総監室の隣の客間に忍び込んでは白昼堂々と関係を持つジルベールに、不穏な空気を察したロスマリネは現場を押さえようと躍起になっていたのです。しかし勘が鋭いジルベールは部屋の外のロスマリネの配下の気配にすぐに気付き部屋を後にします。部屋を出た途端セルジュと遭遇するまだ怒ってるのね~ところが次の瞬間、ジルベールはセルジュがオーギュストからの手紙を持っているのに気付き突然奪い取ります。また手紙が来たのね。驚いたセルジュが「それは君あての手紙じゃない」と叫んでもまったく聞かず封筒を乱暴に破り捨て夢中で読み始めるのです。その必死な様子にセルジュはしばし言葉を飲み込んだままジルベールを見つめています。が、ジルベールはもうセルジュの存在など忘れてしまったように手紙から香るシオンノーレにオーギュストを思うのでした。まるで子供のようなジルベールの行動に怒る気もせず「気がすんだかい?」と、セルジュは手紙を返すように促します。まったく子供みたいだねこの手紙は僕の物だ。僕の所へだけ来る手紙だ。震えるようにつぶやくジルベールの心をセルジュはまだ知りません。ジルベールは手紙を投げつけセルジュを思い切り突き飛ばすと走り去ってしまうのです。はてさて困ったものです。それよりも、手紙の内容が目に入ったセルジュは愕然としてしまいます。オーギュストはマルセイユでセルジュの従妹のアンジェリンと会ったと報告して来たのです。セルジュは今も自分がアンジェリンを傷付けたのだと自責の念に苦悩しています。しかし手紙には、マルセイユに療養に来たアンジェリンは随分と元気になったし傷も癒えているとありました。その内容からしてアンジェリンが怪我を負ったいきさつをオーギュストは既に知っているようでした。それはきっとあの叔母がある事ない事吹聴したに違いない。親切そうに書いてあるオーギュストからの手紙を見て、セルジュはこの人には知られたくなかったと思うのでした。その頃総監室では・・・ロスマリネはイライラしていました。短気だからね~ジルベールの現場を押さえて厳罰に処してやろうと思ってるのに、ジルベールの逃げ足が速くてちっとも上手くいかないからです。しかもジュールがジルベールの狙いはロスマリネだと言い出します。ジルベールは、ロスマリネは不感症だろうと言ったくらいでこんな事までは言っていません。ジュールは素知らぬ顔でわざわざロスマリネを動揺させるような事を言っているのです。思い通りにロスマリネはカッとしてしまい、いつも持ってる総監のステッキね、あれでジュールをぶん殴ります。でもぶたれたジュールよりロスマリネの方が顔色が悪いのです。ジュールはロスマリネに二度と言わないと謝罪しながら手を差し伸べますが「あの事は君の落ち度じゃないのだから」と付け加えます。ロスマリネはジュールの手を払いのけます。あの事?ジュールの方が上手な感じが半端ない。この二人の関係性は端から見ると強固な結びつきのように見えますが、単純なロスマリネと違いジュールはもっと複雑な思いをロスマリネに持っているんですよね。そして、セルジュは自分の感情を持て余して悩んでいました。セルジュは朝っぱらから乗馬こんな早くから誰だと寮内ではブーイングが・・・セルジュが馬で出て行く姿を見て、あんな色情狂と同室では身が持たないだろうと誰かが言い出します。でももうそろそろ限界だろうと面白がって噂する生徒たち。ジルベールと同室だというだけでなく、セルジュ自身も魅力的だから今や学院内ではとても目立つ存在になっています。セルジュはそんな事は気にしませんが、ファンがいればアンチもいるのです。ひどい事を言う者もいますが、とにかくみんな二人が気になるんですよね。悩めるセルジュカインとアベルはアダムとイブがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟です。兄のカインは土地を耕す人になり、弟のアベルは羊を飼う人になりました。ある時二人は神様に供え物をします。カインは自分が作った作物を、アベルは羊の子を持って行くのですが、なんでか神はアベルのは気にいるけどカインのは気にいらないのです。それに腹を立てた事をきっかけにカインはアベルを殺してしまいます。これは人類最初の殺人だと言われています。カインは土地を追放されますが、自分は殺されてしまうと恐れると神様はカインを殺した者には7倍の復讐があると伝え、誰にも殺されない為にカインに刻印をしました。これが聖書のカインとアベルの顛末ですが、この刻印が実際どんな物だったのか気になる所です。でもそれがどんな物なのか具体的な記述はないのです。聖書は人間は皆このカインの末裔なのであり生まれながらに罪深い心を持っていると諭してるわけですよ。昨夜、二人にはこんな事がありました。外から帰って来たジルベールが、またオーギュストの手紙を見つけたのです。ジルベールはセルジュに宛てたその手紙を乱暴に破り捨てながら、嘘だ、こんなの嘘に決まってる、オーギュどうしてあんたはこんな・・・・とわけのわからない事を口走っておりました。セルジュが見つめておりますと、ジルベールはこんな、こんな、と取り乱すように繰り返しながら涙を浮かべているのです。その様子がなんだかいじらしくてセルジュは思わずジルベールを抱きしめてしまいました。しっかりと・・・・ジルベールはとても驚いた顔をしますが、すぐに自分を取り戻しジルベールらしくセルジュに平手打ちを食わせます。思いっきり決まったね「恥じるがいい!人の弱みに付け込んで抱く気かい」そう言って嘲笑うと部屋からいなくなってしまいました。でもセルジュは恥だなんて思いませんでした。ジルベールが愛おしい────はっきりと熱い思いがセルジュの中に込み上げてきたのです。でも、何の為に?ジルベールは精一杯意地を張って必死の演技をしている。セルジュにはそうとしか思えなかったんです。

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  • 11Apr
    • 仮面ライダーブレイド 剣崎と始 15年後の時間軸

      仮面ライダージオウ第29話にて白ウォズによってアナザーブレイドにされてしまった天音ちゃん。そうとは知らずアナザーブレイドと戦うジオウの前に相川始が姿を現す。「その子に手を出すな」始はカリスに変身しジオウに襲いかかる。圧倒的強さを見せるカリスだったがある気配を察知する。剣崎一真であった。始!力を使ったな?!俺はお前の為に自分の力を封印したつもりだったのに、お前が封印を破った!どうしてだ?!始!ブレイドを知らない人を置き去りにして突如始まるブレイド劇場。ブレイドとカリスは呆然とするジオウの前で戦い始める。(自分はカリスのピチピチのスーツが好きです)剣崎一真と相川始。それは、会いたくても会えなかった二人の15年振りの邂逅であった・・・・さて、時間軸を15年前の2004年に戻しましょう。人類基盤史研究所(通称BOARD)は不死の生命体・アンデッドを研究する機関でした。しかし3年前にある理由からアンデッドの封印が解かれ人間を襲うようになっていたのです。BOARDではアンデッドを「ラウズカード」に封印すべく「ライダーシステム」を開発。その任に当たっていたのが剣崎一真(椿隆之)「仮面ライダーブレイド」と先輩の橘さん(現雛型あきこの旦那)「仮面ライダーギャレン」でした。つまり仮面ライダーのお仕事はアンデッドをカードに封印する事(ここポイントね)ブレイドたちはカードに封印したアンデッドの力と融合して変身し戦います。 剣崎一真剣崎一真は22歳の天涯孤独な青年です。ちょっと短気で不器用なので友達を作るのが苦手だし、人を信じては裏切られてしまうビミョーに不幸体質。冒頭いきなりBOARDが壊滅して拠り所をなくしてしまうわ、アパートを追い出されるわ、先輩の橘に裏切られるわでさんざんな主人公笑でも子供の時火事で両親を亡くした過去を持つ彼は、人を守りたいという思いが人一倍強かったのです。相川始剣崎は戦いの中で相川始(森本亮治)と出会います。始は喫茶店「ハカランダ」を営む栗原親子の所に居候する無口な青年でした。ハカランダちなみに撮影に使われたのは、東松山市の「キッチンカフェクランボン」現在も営業中。剣崎は謎のライダーであるカリスは始なのではないかと疑っていました。カリスは栗原親子が危機に陥ると現れアンデッドから守る為に戦ったからです。天音ちゃん栗原家の娘の天音ちゃんは始をとても慕っていました。小学生女子らしくちょっと生意気なおませで明るい少女です。彼女は雪山で遭難して亡くなった父親の面影を始に見ているようでした。それとも初恋だったのかもしれません。始が居候するようになったのは、雪山で天音の父の死に立ち会ったからです。(実は自分の戦いに巻き込まれて死んだ)自分の命よりも妻と娘の身を案ずる姿が引っ掛かかり、栗原家を訪れた始はそこに居候するようになったのでした。始めて会った時とても悲しそうな目をしてたから、という理由で始を受け入れてしまう天音ちゃんママは人がいいしとにかく二人は始に優しい。栗原家で初めて触れる人間の優しさに戸惑いながら、始の中では何かが変わっていきました。しかし栗原親子以外には心を開かず人間を軽蔑する始は、その無愛想な態度もあって剣崎と対立してしまいます。始は人間ではなく仮面ライダーの敵アンデッドです。アンデッドは地球上の様々な生物の祖であり、一万年に一度行われるバトルファイトで自らの種の繁栄を賭け覇権を争います。その為アンデッドは最後の一人になるまで戦い続けねばならない宿命にあるのです(ここ大事)これはギラファノコギリクワガタと虎のアンデッドさん。ブレイドの怪人はデザインがカッコいいです。上級アンデッド(怪人の幹部)は強さだけでなく知性もあって人間態にもなれるので、怪人側のドラマにも比重が置かれています。そして始は、こいつがバトルファイトに勝ち残ったら全ての生命が滅亡してしまうと言う伝説のアンデッド「ジョーカー」が擬態した姿だったのです。剣崎は一向に打ち解けない始と幾度も戦う事になります。が、ジョーカーなのに天音を必死で守ろうとする姿に心を動かされるようになります。ある時、崖下に落ちた瀕死の始を助け山小屋で介抱してやるのです。優しい・・・最初は圧倒的な強さを見せるカリスと違い、戦い慣れてないブレイドは弱くてカリスにやられっぱなし。だが元来アンデッドとの融合率が高い剣崎は、精神的な成長もありどんどん強くなります。二人は時に対立し時に共闘しながら次第にわかりあうようになるのです。一方、始は苦しんでいました。自分の中に沸き上がるジョーカーの衝動を必死で抑え込もうとしていました。(だいぶ端折ってます)剣崎には始が人間として生きたいと思い始めている事が痛いほどわかるのでした。剣崎は始を信じようとし、その為に橘と衝突してもその強い意志を曲げませんでした。その心に始は答え、二人は共に助け合い、友情を深めていったのです。ちなみに始が小柄に見えるのは剣崎がデカ過ぎるから(185センチ)主演の演技がアレなのでネット上で揶揄されたりもしましたが、剣崎の不器用ながらも真っ直ぐ生きようとする純粋なキャラと相まって、自分はこの作品の中の椿氏の美しさを愛してやみませぬ。けれど、始以外のアンデッドは全て倒され世界は破滅へのカウントダウンが始まってしまいます。始を封印しなければ人類は滅亡してしまう。でも、始はもう友であり共に戦った仲間でした。始は自分を封印する事ができる剣崎を待っていました。いつか剣崎が始を介抱してくれたあの思い出の山小屋で。 戦うより仕方ない自分の運命に抗う術がなく始は叫びます。戦え!剣崎!俺とお前は戦う事でしかわかりあえない!二人は激しくぶつかり合いますが、始は必殺技を出さずわざと剣崎に封印されようとします。大勢の命を助ける為に一人の命が犠牲になるのは仕方のない事なのか?これはヒーロー物の永遠のテーマじゃないでしょうか。 剣崎は世界も友も両方救おうとしました。 キングフォーム(ブレイドの最強にして危険が伴うフォーム)で戦い続ける事でアンデッドと融合し過ぎて自分自身がアンデッドになる事によって。アンデッドが二人になった事で世界の破滅は停止しますが、再びバトルファイトが開始されます。アンデッドは戦う事が宿命なので、二人は一緒にいると戦わねばならなくなってしまったのです。剣崎の異変に気付き駆け寄ろうとする始を「来るな!」と拒絶した剣崎は始にこう言います。お前は人間たちの中で生き続けろ俺たちは二度と会うことはない触れ合う事もないそれでいいんだ始と戦う事を拒否し剣崎は始の前から姿を消してしまうのです。俺は運命と戦う!そして勝って見せる!という言葉を残して。剣崎の始への献身や自己犠牲は、クウガの五代雄介に通じる物があると自分は思います。たとえ運命が決められているとしても、運命と戦う勇気と強さを持てとこの物語は教えてくれるのです。しかしながら、自分は剣崎の行く末を、彼の孤独を思いました。それと同時に、残された始の悲しみもいかばかりかと思いやったのです。仮面ライダー史上これほど衝動的で切ないラストを自分は知りません。───全ての戦いは終わり平和になった世界。始はハカランダを手伝いながら栗原親子の元で暮らしています。色づいた銀杏並木を歩く始はベンチに座る剣崎の姿を見つけます。「始・・・」と優しく笑う剣崎に近寄ろうとした途端それは幻だったと知るのです。剣崎はたった一人で遠くへ行ってしまった。そして今もどこかで戦っている。それは伝説となり数多の後日談が作られ、剣崎一真は平成仮面ライダーの中でも稀有な存在となった。始はきっと待っているだろう。何年、何十年たっても、不死のアンデッドとなった二人は互いを思いながらも、再び戦う事を恐れ二度と会う事はないのだ。そして、2019年の時間軸・・・ジオウ世界で再会した二人。本日の自分はちょっぴり感傷的です。

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  • 04Apr
    • きのう何食べた?15巻 よしながふみ

      「きのう何食べた?」はシロさんこと筧史朗とケンジこと矢吹賢二の若くないゲイ・カップルが一緒にご飯を食べる物語。登場人物は実際の時間経過と同じに年をとっていく設定なので、連載開始時は43歳と41歳だったシロさんとケンジもいまや50歳越えであります。二人は2LDKのアパートに一緒に暮らしていて、料理はいつもシロさんが作ってくれます。弁護士のシロさんはスーツの似合う素敵なおじ様で年より若く見えるし、よもやゲイとはわかりませぬ。しかしシロさんは安い食材を購入する為スーパーのチラシをチェックしたり(底値とかちゃんと知ってる)家計簿もつけてるし日々の努力は主婦そのものです。シロさんがいつも作るのは野菜たっぷりカロリー控え目の、豪華ではないけど慈味深い物ばかり。食費を安く抑えるのは老後に備えて貯金する為、毎日の食事を自分で作る事にこだわるのは太らない為です。理にかなってるけど、ケチだし几帳面過ぎる。一方、美容師をしてるケンジは明るくておおらかでゲイっぽい雰囲気を持ってます。以前は使われてる方が気楽だから店なんて持ちたくないと言ってたけど、いまや押し付けられたとは言え店長にまでなっております。ところがケンジは計算もパソコンも苦手なのです。閉店後のレジ締めとか売り上げの集計をメールしたりの店長業務に四苦八苦しておりまして。必然的に帰るのが遅くなっちゃうから、この所シロさんと一緒にご飯が食べられないのです。それはシロさんを理想の恋人冴羽リョウと信じるケンジにとって大問題。でもシロさんはいたってクールに「俺はお前の淋しさ以上にお前の突き出た腹が心配だ」とか言うわけです。仕事が忙しいから夜遅く食事したり、昼もコンビニ食でちゃちゃっと済ませてたケンジ。以前はまったく太らない体質だったのにね、中年太りかー(笑)とは言っても、シロさん翌朝の通勤電車の中で「ケンジの定休日以外は二人別々の食卓かー。つまんねえなあ」と思ってましたのよ。この漫画の見所はシロさんが披露するお料理シーンですので、いわゆる料理漫画なんです。それと共に、毎回登場する二人でご飯を食べるシーンがいいんですよね。若くもないし美しくもない二人が、今日あった出来事をお互いに話しながら大切な人と一緒にご飯を食べる幸せ。いつも心が癒されます。それでその晩はシロさんは「油淋鶏」を作るのですが、鶏肉をジュージュー揚げてる時にケンジ突然の帰宅。この後のシロさんのうれしそうな顔ときたら。いつも颯爽としてるシロさんの実は可愛いとことか知ってるケンジは、とても細やかな事に気付く人ですからこれはケンジの愛なんだろうと思いました。二人は久々に大満足の夕食となりました。「油淋鶏」が美味しそう。しかしながら倹約家のシロさん、食費は月3万円で遣り繰りしてるのです。シロさんが自分のセクシャリティーを思い悩んでたのは高校生頃だったっけ。自分は一生結婚はしないだろうから、結婚してないと不利になるサラリーマンじゃなく弁護士を目指そうと真面目に人生設計を考えたシロさん。シロさんの生き方は、人としてもゲイとしても一本筋が通っていてブレがないので安心して見てられます。けれどマイノリティ故に考えさせられる事も多いのです。ある日シロさんの所に、実家の父親から連絡があります。シロさんはひとり息子です。息子がゲイだと知った時、母親はショックのあまり新興宗教に入ってしまったり筧家は大騒動でした。両親は弁護士になった息子を誇りに思ってるし大事に思ってる反面、接し方がわからなくなっちゃって。あとゲイに対する知識もなんかへんだし、息子を受け入れてるように振る舞うけど本当は受け入れられなかったんですよね。ゲイである事は自分だけの問題じゃなくて、親の問題でもあるわけです。そりや親だったら普通に結婚して欲しいし孫の顔が見たいと思ってますもん。だからシロさんは親とは距離を置いた事もあったし、長い間には色々あったんです。 さて両親の話というのは、家を処分して二人で老人ホームに入るのでシロさんには何も財産を残してやれずすまないって事でした。シロさんは快く賛成します。「お父さんとお母さんに孫の顔を見せられなかった事今はもう二人に悪いとは思ってないんだ」自分らしくでいいのだと思う。  自分らしく生きる結果が子供を持たない事ならば、それはそれでいいんですよ。シロさんの両親も年を取りましたね。でも、親子でもわかりあえない事はいっぱいあるからこの親子は幸せな方だと思います。 ここまで来るにはずいぶんと時間がかかったけど、時の流れが親子関係をいい方へ導いてくれたようです。親が老人ホームへの入居を考える年になったり、史朗の名前をちょっともらった赤子が小学生になったりと、なんかしみじみと感じます。年を重ねてくると何も変わらないように思えるけど、人生色々な事があるんですよねー。年相応に贅肉がついてきたり、老眼を自覚したり、頭が薄くなったりと、なんか見事に年をとっていく二人。このままおじいちゃんのゲイ・カップルになってくのかー。自分らしい人生を生きながら、優しく寄り添ってるような二人が好きです。愛してるなんて陳腐な事は言わなくても、そこには確かなものがあると思うのです。ドラマも楽しみ。

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  • 29Mar
    • 風と木の詩その28 第六章の前にこれまでのおさらい

      こんにちは、akです。気まぐれ更新の風と木の詩ですが、現在はこの物語はちょうど折り返し地点の辺りまで参りました。さて、次なる第六章では舞台は再びラコンブラード学院に戻ります。その前にちょっとこれまでを振り返ってみませう。これまでのざっくりおさらい風と木の詩の舞台は19世紀末のフランスでございます。14歳の少年セルジュ・バトゥールが父の母校でもあるラコンブラード学院に編入してきます。ラコンブラード学院は、アルル地方の人里離れた山の中に建つ名門男子校で、生徒総数1745名のうち約三分の二は寮生です。寮はA棟、B棟、C棟の三つの建物から成り、A棟はA級生(16歳から19歳)B棟C棟はB級生(12歳から15歳)及びC級生(8歳から11歳)が混合されています。つまり小学生位のお子ちゃまから、上は大学入学前の青春真っただ中の多感な少年たちが、うれし恥ずかし共同生活を送っているのです。セルジュとジルベールの衝撃的な出会いセルジュは貴族ですが褐色の肌を持っています。彼は貴族の父がジプシーの血を引くパリの高級娼婦の母と駆け落ちして出来た子供なのです。彼はその肌のせいで差別や偏見を受けますが、とても真っ直ぐで強い心の持ち主ですからへっちゃらです。身分を超えて愛し合った両親と、母と同じ褐色の肌はセルジュの誇りでもあるのです。セルジュは寮でジルベール・コクトーとルームメイトになります。ジルベールは金髪で少女のような容姿を持つ類い稀な美貌の少年でした。しかしジルベールは学院内で不特定多数と同性愛行為にふけり、まるで娼婦のような生活を送っている問題児だったのです。お堅いB棟監督生のカールは、糞真面目にジルベールをまともにしてやろうなどと考えますが逆にジルベールの妖艶な魅力に落ちそうになります。変わり者の万年落第生のパスカルは「ジルベールは自分の身体で人を測る。彼を捕まえて説得するには彼の皮膚を通りぬける以外方法はない」と言うのです。ジルベールはセルジュが邪魔なので、乱暴者の上級生ドレンを使って部屋から追い出そうと画策しますがセルジュの毅然とした態度の前に失敗します。セルジュは腹を立てながらもジルベールが気になるのでした。ゲスな上級生ブロウの事など好きでもないくせに、彼に身を任せるジルベールの気持ちがセルジュにはわかりません。そしてまるで自分を痛めつけようとするかのように、暴力を受けるのをわかっていながらわざと相手を怒らせるような事を言ったりもします。ジルベールの細い身体はいつも傷だらけなのです。自虐的な行動を繰り返し孤立するジルベールを気にかけセルジュは何度も友達になろうと誘います。でもセルジュがいくら真正面からジルベールと向き合おうとしても相手にしようとはしません。それどころか、とんでもないエロモードで誘惑してくるのです。これは恋なのだろうか?セルジュは強い正義感を持っている少年です。それはまるで、自分に課しているかのようにも思え、時々空気を読めないのは彼が信念の人だからなんです。セルジュはジルベールにどんなに翻弄されても誠実であろうとし、彼を裏切るような事は決してしませんでした。また彼を汚い物のように言って排斥しようとする態度にも否定的でした。その為ジルベールをかばって友人と取っ組み合いのケンカになった事もあります。皆どうしてそこまでするのか不思議でしたし、セルジュ自身も予想外の混乱した自分の感情に当惑していました。その切なさも、戸惑いも、溢れる思いも男女のそれと何ら変わりませぬ。人はそれを恋と呼ぶのだwwwセルジュがジルベールを放っとけなかったのは、セルジュ自信が孤独だった事もありますです。セルジュはジルベールの中に自分と同じ孤独と誇りを見出すようになり、彼の心をもっと深く知りたいと願うようになります。学院に君臨する生徒総監白い王子ロスマリネ思春期の多感な時期を親元から離れて寮生活を送る少年たち。そこはとても閉鎖的で抑圧され色んな物が渦巻いています。友情や憧れ、嫉妬、羨望、性への目覚め、少年たちの青春が息ずいています。生徒に関する一切の権限を持つ生徒総監を務めるのが、白い王子の二つ名を持つロスマリネです。その髪に触れてみたい(自分だけ?)ロスマリネ様は、学院の風紀を乱すジルベールに容赦ない鉄拳制裁を加えます。プライドが高く異常なほどの潔癖症の彼とジルベールは実は親戚関係です。なのに何かにつけてジルベールに対して激しい嫌悪感を見せます。その理由は、謎の人物オーギュスト・ボウにあるようでした。ジルベールの心を占める最愛の人オーギュジルベールの叔父オーギュスト・ボウは表向きはパリで高名な詩人ですが、裏ではロスマリネを操る学院の影のドンです。ジルベールを学院に隔離した張本人なのですが、精神的にも肉体的にもオーギュストに支配されているジルベールは彼に会いたくてたまらないのです。クリスマス休暇にオーギュストに会える事を願い、彼からの手紙をひたすら待ち続けたジルベール。でも意地悪なオーギュストは会いに来てくれませんでした。憎しみで人が殺せたら───殺したいほど憎んでいると言いながら愛しているのです。その狂おしいほどの愛憎半ばする感情をセルジュは知らず、パスカルの招待でクリスマス休暇を彼の家で過ごします。変人だけど頼れる友人パスカルパスカルの家は子沢山で女の子ばかりなので、紳士的で誠実な態度で振る舞うセルジュは大歓迎されます。パスカルは変わり者ですが、博識で好奇心旺盛なインテリです。ジルベールの事で悩むセルジュにいつも的確なアドバイスをしてくれます。パスカルといいカールといいセルジュは友人に恵まれています。パスカルの妹パットとも出会いました。抱いて!今夜ぼくと寝て!お願いだセルジュクリスマス休暇が終わり学院に戻ったセルジュを待っていたのは、別人のように儚げなジルベールでした。まるで抜け殻のように虚ろなジルベールの様子にセルジュは戸惑いますが、ジルベールに自分を抱いて寝て欲しいと懇願されます。セルジュは困惑しながらもジルベールを受け入れ、二人は一晩中裸で抱き合って眠ります。(眠っただけよ)セルジュに受け入れられたジルベールはまた普段通りに戻りますが、これが問題なのよね。どうしてジルベールの心はこんなにも不安定なのか?そして、ジルベールの変化に気づいたあのお方オーギュストがついにセルジュの前に現れます。しかしオーギュストはジルベールの嫉妬を煽るように、わざと彼を無視してセルジュばかり誉めたり意味深長な態度を取ります。オーギュストの関心がセルジュに向けられるのを恨み憎んだジルベールはセルジュに宣戦布告してくるのです。一方的に憎まれたり、妖しげな叔父と甥の関係を見せられたり、ジルベールに翻弄されるセルジュ。寮で同室になっただけなのに~それは愛なのか?虐待なのか?ジルベールの過去編では、10年前に遡りマルセイユの「海の天使城」を舞台に若く麗しいオーギュストと5歳のジルベールが登場しました。新進気鋭の詩人で才能も美貌も持ち合わせ「薔薇色の人生」だと人からは羨望されるオーギュスト。けれど彼の人生は誰にも話せない過去のトラウマによる、憎悪や孤独や自己嫌悪が混沌として虚無的な物となっていました。彼は実はジルベールの叔父ではなく実の父親なのですが、もちろんジルベールは知りません。オーギュストは倒錯した愛情でジルベールを性的な虜にし心まで離れられなくしていました。ジルベールの自由奔放で破滅的な妖しい魅力は、親も知らず躾も教育も受けず野生動物のように自堕落に気まぐれに育てられたからなのです。ジルベールを愛し誇りを忘れるなと教えてくれた人オーギュストのライバルみたいにしてボナールが登場した時は、小児性愛者の変態野郎だと思いました。実際彼はまだ幼かったジルベールを誘拐して無理矢理淫らな行為に及びました。幼児姦とか見たくなかった。そんなボナールがジルベールに深い情愛を示したのは皮肉です。ボナールはジルベールに「お前を守る武器は誇りだけだ。忘れるな」と諭します。ボナール宅で暮らし段々健康的になっていくジルべールが好きでした。オーギュストからの呪縛を解いてやろうと、決闘に持ち込むシーンもカッコ良かったですね。アスランの青春 娼婦との恋セルジュの父であるアスラン・バトゥールはパリの高級娼婦パイヴァと恋に落ちます。身分違いの恋に父からも友人からも反対されますが、アスランは将来を捨てて彼女と駆け落ちする道を選びます。「椿姫」をオマージュした二人の恋物語は劇的で、これはこれで一つの作品として発表しても良かったんじゃないかと思うほどです。二人はチロルで貧しいながらも幸せな家庭を築きセルジュを授かります。しかしアスランは病に倒れて短い人生を終え、パイヴァもまたセルジュをバトゥール家に託し亡くなってしまいます。慣れない貴族の生活や、独りぼっちの寂しさや、伯母のイジメにあいながらも、父のピアノを弾く事を慰めに成長していくセルジュ。彼の孤独を癒してくれた従姉妹のアンジェリンは、事故で顔に火傷を負ってしまいセルジュは責任を感じて彼女と婚約しようとします。けれど誇り高い彼女はそれを許さず、この家から出ていって欲しいと言われ、セルジュはラコンブラード学院へと旅立ちました。────そうアンジェリンへの愛は肉親への愛誰にでもある自然の感情────でもジルベールへの思いはどこまでも不自然で不安定で、それでいて確かなものでした────それは陽炎のようにゆらめきたつ恋の炎だったかもしれない第六章 陽炎始まり始まり学院は静けさに包まれ、どこかの教室からは聖書の授業の声が漏れてきます。その頃ジルベールは、総監室の隣の客間に入り込み上級生のレオと同性愛行為に耽っていました。レオはジルベールが最近美形揃いの総監側近を片っ端から誘惑している、という噂を聞いていました。授業が終わったらしく外が賑やかになってくると、レオは身支度を始めジルベールに貸しを作りたくないからと紙幣を放ります。ジルベールに金など無用の長物でしかありません。ジルベールはその金に火をつけ、丁度窓の下を通りかかったジュールに向かって投げ捨てました。ジュールの麗しきご尊顔をば「ガキっぽい悪戯はよせ、ロスマリネ」ジュールにいたずらを仕掛けてくる者など、この学院の中でロスマリネしかおりませぬ。ジュールはついロスマリネだと思い込みラフな言葉を使ってしまいます。ところが上にいたのはジルベール、しかもほとんど裸で「やあ、きみか・・・降りておいで」ジルベールはジュールを気に入っているようにも見えます。ジュールはA棟監督生でジルベールの嫌いなロスマリネの幼なじみで参謀役で裏番長です。ジルベールは、元気な男の子みたいに階段を音をさせて駆け降りてきました。エロさがだだもれいつもの事ですが、ジルベールがちゃんと服を着ている所はあまり見た事がありません。ジュールが服をちゃんとしてって注意しますが、ジルベールは鼻で笑っちゃうのね。チラ見せの乳首とかジルベールだから許されるけど、普通こんな人いたら頭へんなのかと思いますよ。世間を賑わすジルベールだから、ちょっとジュールと立ち話した位で「ジルベールがジュールを口説いてるぞー」とかヒソヒソ言われちゃう。ジュールは、ジルベールはロスマリネから何か聞き出したいのだろうと見抜いていました。ほんとならロスマリネを誘惑したい所だけどそれは無理だから、片腕の自分に近づいてくるのだなって見破っています。ジルベールは一体何を知りたがってるのか。そこはねー、ジュールとジルベールの腹の探りあいでジュールも食えないのね。自分はロスマリネの事が嫌いだなんて言ってくるから、ジルベールはジュールの真意を図りかねているのかもしれません。ジュールはジルベールにせまられても全然動じず、さすがのジルベールの手練手管もジュールの方が一枚上手で、誘惑されませんな。ロスマリネとずっと一緒にいるから美形は見慣れてるのかも笑

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  • 16Mar
    • 風と木の詩その27 第五章セルジュ⑥

      まるで導かれるようにアスランのピアノの前に立ったセルジュ。そのピアノを弾く事によってセルジュの深い悲しみは次第に癒されたのです。子爵家の後見人の肩書を得た伯母は、派手な社交パーティーを開催するようになりました。サロンの評判というのは女主人の才気や知性といった魅力がものを言いますが、この伯母さまではねー。社交界の話題にはそれほどならないでしょうね。ある時、セルジュが弾くピアノの優しい音に惹かれた客が口々に褒め称えるのを見た伯母は、この子のピアノ人を呼べるわねと思いついちゃう。まったく、なんでこんな人がアスランの姉なのか呆れるわーこのメイドさんはセルジュがかわいそうでならないんです。執事のクロードを筆頭におばあさまがセルジュの為に選んだ使用人たちは、これまでずっとこのリザベート伯母からセルジュを守ってきました。それはやっぱり義憤に駆られてるのもあるし、この人たちの人柄が良い事もあるし、セルジュが成長すればきっといい当主になるだろうとか色々な思いがあるんだけど、みんなセルジュが好きなんですよね、きっと。海の天使城で、ジルベールがほったらかしにされて部屋なんか物が散らかって汚かったのとは対照的です。けなげなセルジュ困惑する使用人たちに対してランジール医師は、これからも一緒に暮らしていかねばならない相手だから打ち解ける事も大事だが、本人次第ですなと難しい顔です。しかしセルジュは自ら伯母のパーティーでピアノを弾く事を申し出ます。この伯母にはさんざんな目に遭って嫌な体験をしてるのにね。伯母の思惑はともかく手を差し伸べてくれたのだから答えたいといういじらしさ、心根の良さ、泣かせるのね。伯母の目論見は成功しますまだ5歳の子供の素晴らしい演奏に客は喜び「ブラボー!天才だ!!」と賞賛されたのです。これはね~、ちょっとバトゥール家のサロンに行ってみたくなるね。社交界への野心にセルジュを利用する伯母と父譲りの豊かな才能を見せるセルジュ。伯母の期待に応えた事で二人は上手くいくのかなと思うけど、そうはいかないのです。子供に暴力はいかんセルジュの肌の色をよく言わない人もいるのです。ピアノの才能と肌の色は関係ないのに、おおいに関係してると考えてる人間もこの時代だから大勢いるわけです。伯母はセルジュが褒められた時は鼻高々なんだけど、肌の色を侮辱されたりすると自分が恥をかいたと怒り出して、セルジュに当たり散らすのね。思えばセルジュはこの後もジルベールのわがままに随分と翻弄されるんですが、この頃からもうこんな苦労をしてたんだねー。伯母のようにすぐ感情を露にする人は、いい大人なのにちょっと幼稚に見えてしまいます。子供は身近な大人の影響を受けますから、これをいちいち気に病んでたら、同じように感情的な人間になってしまった事でしょう。セルジュがそうならなかったのは、セルジュにはピアノがあったからです。セルジュにとってピアノは、俗世の嫌な出来事も悲しみも忘れさせてくれます。ピアノを弾くとネガティブな感情から身を守り、心をフラットに保つ事が出来たのです。けれども決して精神的な逃避ではありません。それは両親の深い愛に包まれ育ったセルジュの、今はまだ行き場のない豊かな愛情が、ピアノから溢れてくるかのようでした。その愛は今はまだ漠然としていて、行き着く先を求めていました─────ルイ・レネは噂を聞いてセルジュに会いに来ましたやがてセルジュは7歳になりました。気まぐれな世間は一時はセルジュの才能に夢中になりましたが、もお飽きちゃって・・・話題にもならなくなりました。セルジュにとってはその方がいいのだけど、伯母は相変わらずで・・・ある時、夜会に今をときめくピアニストのアンドール・マレエを招待します。その取り巻きの中になんと、アスランの親友だったルイ・レネの姿がありました。伯母は有名ピアニストにセルジュを弟子入りさせて世間をあっと言わせたかったのです。なんか卑しいのよねぇと冷笑する人たちは、セルジュの肌の色まで同様に蔑みました。けれどセルジュはそんな声には耳を貸さず、ピアノを演奏する時の心は常にとてもクリアでした。ルイ・レネにはセルジュの演奏の素晴らしさがわかりました。純粋にいい演奏が出来たと喜ぶセルジュと伯母の温度差アンドールはセルジュの才能を認めはしましたが、弟子にする事は拒みました。弟子入りなんて伯母が勝手にした事でセルジュはもちろん知らなかったのです。が、さっき美しいピアノを奏でた人が肌の色を問題にしたと知ってショックを受けてしまいます。セルジュは今まで肌の色で差別されたって、卑屈になる事もことさら構える事もしなかったんですよ。けどこの時は悔しくて一人で泣いてしまいます。そこへ、こっそりとルイ・レネがやって来てセルジュを慰めてくれるのです。君の考えが正しい。世間は正しくない事がまかり通るんだから気にするな。と慰めてくれたルイ・レネルイ・レネはアスランの忘れ形見であるセルジュを前にして、万感胸に迫るものがありました。彼の過ぎ去った青春の輝きの中には、いつも共にアスランの姿があったのです。もちろんセルジュは何も知らないんだけど、アスランのピアノのライバルであり親友でもあったルイ・レネ。コンセルヴァトワールへ入学する位優秀で、プロのピアニストを目指していたはずですが、どうやらパッとしなかったみたい。母校で教師になるらしい。厳しいのお。子供というのは、こうやって影ながら大人が見守ってあげられるといいんですよね。アスランが駆け落ちの時も携えてきた大事な鍵盤がセルジュが9歳になる頃には、かつての使用人たちもやめてしまっていてセルジュは寂しそうです。リザベート伯母の威勢に押されちゃったのね。この家もセルジュが初めてやって来た時とは、すっかり様変わりしてしまいました。伯母の使用人たちに取って代わられ、亡くなったおばあさまの遺品などもどんどん燃やされてしまいます。そのごみの山の中にセルジュは練習用の鍵盤を見つけます。母がセルジュの為に送ってくれた荷物の箱それは貴族の家には貧しい品かもしれないが、母の愛がこもっていたそして、アスランの日記帳も。もしも世の親たちが子らに最も価値ある物を残すとしたら────親たちの試行錯誤の記録こそ何物にも勝る宝になるだろうそれを信じて我が息子セルジュに短い私の青春を送る───可能な限りの愛をこめて───アスランはどんなにか息子と共に生きたかった事でしょう。共に生きて息子に教えるはずだった事を日記帳に書き残したのです。そこにはアスランの青春が、短いけれど懸命に生きた人生がありました。喜びも悲しみも希望も絶望も何もかも包み隠さず書かれた、息子への愛に溢れた日記帳。セルジュは父の愛を感じながらそれを読み、大きくなっていったんだね。セルジュとアンジェリンの出会いとは言え両親も祖母も亡くなり伯母からは疎まれて神経をすり減らすような生活の中で、セルジュは一人心細くなかったでしょうか。そんなセルジュの心を癒すように突然天使のような少女が現れます。アンジェリンという5歳の彼女はあろう事か、あのリザベート伯母の娘なのです!えーっ?!今までは母親と離れて暮らしていたけど、今日からここで一緒に暮らせるのと無邪気に話しかけるアンジェリン。伯母はどうやら家族も子爵家に呼び寄せたようです。あの伯母にこの子?!まだあどけない可愛らしい様子に、セルジュは人の世の不思議さを感じずにはいられませんでした。天真爛漫なアンジェリンと過ごした日々アンジェリンはとても快活で、一緒にいるだけで元気がもらえるような生き生きした少女です。子供は成長と共に同じ世代の子供と一緒に過ごす時間が必要になって来ます。セルジュはアンジェリンによって、忘れてた子供らしい楽しい時を持つ事ができたのです。しかし月日が巡り二人が思春期に入る頃になると、アンジェリンはセルジュに恋心を抱くようになります。セルジュは12歳、アンジェリンは9歳ですそれはとても激しく一途な恋情でした。女の子の方が早く大人になりますもんね。この頃になるとセルジュの周囲には、彼を中心として若者が集まるようになりつつあります。いずれは正式な子爵となる彼の人脈に連なりたいんだろうけど、セルジュに狙いをつける女子とかもいて、アンジェリンは気が気じゃなかったのです。伯母はホラ、財産目的だからアンジェリンがセルジュのフィアンセにでもなれば願ったり叶ったりじゃない。でもアンジェリンの場合は真に純粋な恋心なのですが、一途に思い詰め過ぎて発作的にボートから水に飛び込んでしまったのです。う~む、お騒がせな。セルジュは彼女の激しさにビックリ仰天しながらも、すぐに飛び込み救出しました。激怒した伯母は、アンジェリンが水に落ちたのはセルジュがキスしようとして船のバランスが崩れたからだろう。少し早いけど結婚すると言うなら許してあげる(内心シメシメと思ってるって)とか言うわけです。セルジュは嘘はつけませんから、アンジェリンの事はただの妹として愛していると答えるんですが、そんな言葉では伯母は許しません。伯母が一番悪いと思うなセルジュに折檻する母親を止めに入ったアンジェリンは、暖炉の炎が髪に燃え移り大騒動になってしまいます。アンジェリンは顔に火傷を負ってしまいますこんな少女が顔面に火傷を負うなんて悲惨過ぎます。セルジュは責任をとってアンジェリンの婚約者になろうとします。けれども、この誇り高い少女はそれを認めませんでした。母に責められて私を愛するというのか。そんな誇りを捨てた人間は嫌い。そして憐れまれるのは死んでもいや。セルジュを愛するアンジェリンは、心ではセルジュに側にいて欲しいと願いながら真逆の事を言います。一緒に暮らしたらあなたを怨んでしまう。だから出て行って。セルジュはバトゥール家を出て寮に入る選択をしました人を怨んで生きるのは確かにつらい事です。セルジュは自分の無力さを痛感し、アンジェリンの望み通り屋敷を出ていく決心をしました。こうして、セルジュは父が学んだラコンブラード学院へと旅立ったのです。セルジュの生い立ち編はこれにて終わりです。この中で重要なキーアイテムは「ピアノ」と「父の日記帳」です。この二つは亡き父からの最大の贈り物でした。しかしながらセルジュは、同時に父からの負の遺産も引き継いでしまったように思うのです。アスランと高級娼婦だったパイヴァとの、身分を越えた恋は実に劇的で美しく、それはセルジュにとっての誇りでもあります。けれどもアスランには望まぬ死が訪れます。それはまだ23歳の若者にとって無念以外の何物でもなく、死を目前にして再会したバトゥール子爵を前にしてそれは語られます。アスランは心の中ではずっと葛藤していたと思うのです。自分が手に入れた幸福と、自分がした事は本当に正しかったんだろうかという思いの間で。自分が駆け落ちしたせいで両親や子爵家がどんなに大変だったか、どんなに迷惑をかけたか、どんなに悲しませたか。セルジュを見てると、そういう父の罪の意識や後ろめたさをそっくり引き継いじゃったように思うんです。さてセルジュとジルベールの過去編が見終わったので、物語は再びラコンブラード学院へと戻ります。

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  • 03Mar
    • 風と木の詩その26 第五章セルジュ⑤

      父が亡くなり、祖父も去ると、セルジュは母と二人きりになりました。やがて冬が訪れる頃になると、母はよく寝込むようになっていました。セルジュにはお腹に赤ちゃんがいると嘘をついていましたが、結核に感染していたのです。アスランのお父さんも亡くなってしまったバトゥール家からは、セルジュを正式に子爵家の後継者に迎えたいという手紙が届いていました。アスランの主治医だった先生は、この子を手放す気なのかって暗澹とした顔つきになります。 この先生もずっとアスランを見守って来たものね。そりゃできる事ならば、アスランと暮らしたこの家でずっとセルジュと一緒に暮らしたいですよ。母親だもの。パイヴァはこれまでは、アスランにバトゥール家からの追手がかからなかった事が幸いして、身分の差などという物は感じずにすんだのではないでしょうか。アスランに一途に愛されて、パイヴァは一人の女性として幸福だったと思わずにはいられません。そしてパイヴァはやっぱりとても強い人だと思うのです。ただ愛されるだけではなく、アスランの事を母なる海のように深く豊かな情愛で受け止めてくれました。なんか、今のパイヴァには女としてのやりきった感があるんですよね。もうやりきったな人生、終わりにしてもいいかな~みたいなね。そうして春になり、セルジュは一人パリへと発ったわけです。今まで着た事もないような高価な服を着せられお迎えの馬車に乗ってね。晴れがましく出発するんだけど、心の中ではもう母とは二度と会えないだろうって子供ながらにわかっているんですよね。ママンと別れたくないとか、まだ自分の気持ちを上手く言葉に表せないほどセルジュは幼くただ泣くだけでした。パイヴァはどんな気持ちで見送ったのでしょう。これが、母親とは最後になりました。1871年の夏。セルジュは4歳でした。セルジュは一人でバトゥール家にやって来ましたそんなセルジュを歓待してくれたのはアスランのお母さん、セルジュにとってはおばあさまです。セルジュはバトゥール家の屋敷をお城だと思ったり、案内された自分の部屋が僕の家よりずっと広いと無邪気に驚くので召使いたちから失笑されます。数年前にこの家の子息が娼婦と駆け落ちする不祥事を起こして、今その子供がやって来たのだもの、下々の者からしたら噂話に花が咲いちゃうよね。しかもその子供はジプシー系の母親の血を継いで肌が浅黒いものですから、彼らの好奇心をますますそそってしまいます。でもおばあさまは優しく、おまえはもうこの家の主人になるのですよと言ってくれたのです。今までとはまったく違う生活に戸惑いますその日の夕食、セルジュは案内された食堂の広さときらびやかさに目がくらんでしまいます。おばあさまはセルジュと夕食を取る事をうれしそうにしていますが、何しろ長いテーブルの向こうとこっちでとても離れてるのです。セルジュは親子3人でにぎやかに食事をしていた事を思い出します。そしておばあさまに自分たちはこんな小さな机で食べてたんだ、僕のすぐ隣に父さまがいて、とか楽しそうに話してるうちに、ふと言うんですよ。「さびしくありませんでしたか、おばあさま」って。この子はね~、自分だって寂しいだろうにまず人の事を考えるんですよ。優しい所はお父さんによく似ています感激したのはおばあさまだけじゃありません。バトゥール家の使用人たちもセルジュに接してみると、素直さや礼儀正しさだけでなく、小さいのに他者への思いやりや優しさを持っている事に驚嘆してしまいます。おばあさまはセルジュがこんなにいい子なのは母親の教育が良かったんだと、同じ女性としてパイヴァの事を感心したりもします。けれどまだ小さいですからね。心の中では母に会いたくてたまらないわけですよ。しかし、セルジュには貴族として覚えなければならない事が山ほどありました。ちょっと時間に遅れただけなのに・・・厳しい昔のヨーロッパでは、こういう子供に鞭打ちの刑を与えるシーンをよく見ますよね。しつけなんだろうけど、なんとも厳しい。ヨーロッパでは子供の事を自然に近い存在だから、人間以下の動物ぐらいに見てたようです。だからしつけてまっとうな人間に育てるために、体罰は一般的だったみたいです。子供には人権なんてなかった時代。日本では子供はもっと大事にしたと思うんですけど。子供観の違いですかねー。まだ4歳なのにかわいそうですが、セルジュが厳しくお勉強させられてるのには理由がありました。来たよー突然やって来たのはアスランの姉リザベートです。この年、1871年パリには普仏戦争の講和に反対した市民が蜂起して世界最初の労働者政権パリ・コミューンが成立しました。この政権は72日間しか続かず、政府軍と大戦闘の後崩壊しました。パリは戦火に包まれ、中心部の商店街や民家の他市庁等の公共の建物も焼失したのです。リザベートは他家へ嫁いだのですが、案内も請わずに図々しく入ってきます。それを迎えたのはバトゥール家の執事執事のクロードは丁寧な口調ながらリザベートをたしなめます。リザベートの魂胆はわかっているのです。子爵家の跡継ぎが現れたと知って慌てて偵察に来たんですのよ。他家へ嫁いだ人間に我が物顔でいいように振る舞われたんじゃたまらないけど、このおばさんも厚かましいから負けてないのよ。クロードは、今はまだセルジュに会わせるわけにはいかないぞと思っていました。セルジュを非の打ち所がない小公子みたいに仕立てあげないと、あら探しされてどんな難癖をつけてくるかわかりません。すべては来月のセルジュの正式な御披露目が勝負だとクロードもおばあさまも考えてました。これまでいろんな執事が登場しましたよね。海の天使城の老執事とか、オーギュのパリの屋敷のレベックとかね。やっぱり、有能な執事は主人への忠誠心を持っていますよね。このクロードも頼りになりそうな人です。さて、執事から体よくサンルームに追い払われたリザベートは一気に悪口三昧です。所詮はこの家の財産が目当てなのですが、ゆくゆくはおばあさまが亡くなったらセルジュの後見役におさまり子爵家を牛耳ろうという腹なんです。上品ぶって気取ってはいますが、パイヴァを悪し様に言う様子はひどいものです。ところが、なんでかセルジュが奥にいたのね。そして自分の母親がめちゃめちゃ悪く言われてるのを聞いてしまいます。((( ;゚Д゚)))さすがは商売女の息子だわ。早々に立ち聞きするとはたいしたものじゃないのセルジュには、自分の母親がなぜそんなに悪く言われなければならないのかわからないのです。こんな子供に全くもって言語道断な話ですが、おまえとあの女が子爵家を没落させたのだと責めてセルジュを小突き回すのね。しかもこの意地悪なおばさんが、アスランの姉だと知りセルジュはショックを受けます。おまけに目を怪我するほどの馬鹿力でセルジュを平手打ちしたのです。でもセルジュはその事を誰にも言いませんでした。優しい父と母に愛されて、それが当たり前だったセルジュの世界。この世に自分を憎み害を加えようとする人がいるなんてショックで口もきけないよね。セルジュは自分の中で何かが壊れていくのを感じました。その日からセルジュは変わりました。変わろうとしたのかもしれません。人一倍努力して立派な子爵家の跡取りになるように懸命に勉強しました。素直で可愛いい子供らしさは影を潜め、優等生に成りきるように努めているようでした。いよいよその日が───貴族というのも大変ですなあ。ここにやって来た人たちはみんな鵜の目鷹の目で好意的な人はいません。社交界での評判はともかく広大な子爵家の土地はあんな黒い肌の物になるのか、惜しがるのはリザベートだけじゃないだろうとひそひそと話しています。そんな険悪ムードの中でおばあさまの話が始まります。セルジュは息子アスランの忘れ形見であり、夫が死ぬ前にはっきりと地位財産のすべてを譲ると遺言した者である事。異論もあるだろうが、それがかなわぬ時は土地財産を小作人に分け与え寄付するようにと言い残している事など。みんなそれを聞くと不承不承に認めないわけにはいきませんでした。セルジュも見事に礼儀を心得た堂々とした態度で振る舞いましたので、おばあさまはこれで肩の荷が下りたと一安心します。ところが大変な事態がしかしながら、心労でおばあさまが倒れてしまうのです。実は、この日バトゥール家にはパイヴァの死の知らせが届いていました。クロードの助言でセルジュには隠していたのです。おばあさまは何も言わず一人死んでいったパイヴァの事が哀れでなりませんでした。こうなる事はわかっていたのに、セルジュを独占していた自分を責めていました。この混乱に乗じて、リザベートは人を使いセルジュを屋根裏に閉じ込めてしまうのです。その晩はひどい嵐になってしまうよくわかんないんだけど、おばあちゃんが昏睡状態でこのまま遺言もなく亡くなってしまうと、自動的にリザベートがセルジュの後見役になれるみたいなのね。だからセルジュに余計な事を遺言されないようにセルジュを拉致したのかな。やる事がゲスいのよ。一度は昏睡状態に陥っていたおばあさまは目を開けセルジュの名を呼びます。が、セルジュの行方は誰にもわからず、おばあさまはセルジュの身を案じながら亡くなってしまいます。一方、セルジュは真っ暗な屋根裏にひとりぼっちで恐ろしい嵐に怯えていました。人が死ぬってどんな事かセルジュは知っていました。父のように逝ってしまえば、その姿を見る事も声を聞く事も出来ない、その人はもういなくなってしまうのです。そういった人間の悲しみという物をセルジュは既に知っていました。残酷な言葉翌日セルジュが哀れなやつれた姿で見つかると、リザベートは追い打ちをかけるように母親の死を告げてしまいます。セルジュはあまりの衝撃に倒れてしまいます。リザベートはまんまとセルジュの後見役を手に入れました。子供には親の存在が必要です。セルジュの胸の中は両親の事ばかりが思い出されました。三人で暮らしたチロルの山へ帰りたくて、行けるはずもないのに病床を抜け出しフラフラとさ迷いました。セルジュを偶然助けたのは、パリで高名な名医アントワヌ・ランジーヌでした。ランジーヌ医師はセルジュは心臓が弱っており、心理的負担がかかり過ぎて痛みや呼吸困難を起こしているから、この子の悩みをできるだけ取り除いてやるようにと言います。この医師の人となりを感じたクロードは、今は子爵家の名誉よりもセルジュには一人でも多くの支えが必要だと考え、助力を乞う事にします。ランジーヌ医師はセルジュの主治医になってくれました社交界の大物には弱い俗物さが露呈して、セルジュに何も言えなくなったリザベート。子爵家の後見人という肩書きを得た叔母は、かつて華やかだったサロンを再びと三日に開けず社交パーティーを繰り広げるようになりました。それに比して、クロード初め使用人たちは一丸となってセルジュの為に動きました。ランジーヌ医師の指示で、屋敷の最も奥の部屋はセルジュの為に選ばれ、その一角だけは隔絶された静かな空間となるようにしたのです。みんなセルジュの為に細心の注意を払い、規則正しく生活させ心を乱す事がないように懸命に努めました。少しずつ元気を取り戻してゆくセルジュに、クロードはアスランの思い出話を聞かせるようになりました。柱の傷や好きだった日だまりや愛馬の事など。ここには父の遺した物が尽きる事なくありました。そしていつしか当然の運命のようにセルジュは父のピアノへと招かれたのです。

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  • 16Feb
    • 風と木の詩その25 第五章セルジュ④

      ───あれから二年の歳月が立ちました。アスランは父親になっていましたアスランはパイヴァと共にチロルの山村で暮らしていました。かつて、病気と闘うアスランの命をよみがえらせてくれた山々に見守られ、息子のセルジュを授かっていました。アスランはもうすぐ21歳。山の斜面に小屋を建て羊を飼い、庭先の小さな畑で自給自足の野菜を作り暮らしていました。パイヴァとは正式に結婚し息子を授かった今、すべての出来事はセルジュが生まれて来る為だったのではないかと、アスランには思えるのでした。苦労知らずの貴族の息子だった彼が、現金収入を得る為に羊飼いや鍛冶屋の見習いをやっているなんて。苦労したねぇアスラン。けれどアスランは意外にも楽しそうで幸せそうでした。父親から何もかも与えられるだけだったあの頃よりも、自分の力で無から築き上げた城だったからです。パイヴァもまた過去の顔をすっかり脱ぎ捨て、しっかり者のお母さんになってました。アスランはいい人と結ばれました。豪華なドレスで着飾り贅沢に暮らしていた彼女が、貧しい暮らしに文句も言わずアスランを支えてくれたのです。まだ若いのに、二人ともりっぱな父親と母親です。セルジュに受け継がれたアスランの才能これは指のレッスン用の音の出ないキーボードのようです。あの駆け落ち騒動の中、荷物にこんな物を忘れなかったアスランやっぱりピアノが好きなんですね。 今ではすっかりセルジュの遊び道具になっていますが、アスランの才能を色濃く受け継いでいるのがわかります。カエルの子はカエルね、と言ってパイヴァは微笑みました。この日アスランはパイヴァとセルジュを連れて、町へ降りました。駆け落ち者の二人を優しく受け入れてくれた、山懐に抱かれた小さな町の人々。アスラン一家が町へ降りてくると、今では家族のように接してくれるのです。そしてこの人々は、アスランを待っていてくれる聴衆でもありました。町での買い出しが済むとアスランは町の人の為にカフェでピアノを弾きましたアスランはピアノの上に小さなセルジュを座らせ演奏しました。この町の人たちは素朴で暖かい人柄で音楽好きなんです。 アスランが町に降りてくると、ピアノのあるカフェに集まりアスランの演奏を聞くのを楽しみにしていました。アスランは自分の為に集まってくれる聴衆が、息子のセルジュと共に自慢でした。そして、自分はシューベルトのように幸せだと思いました。31歳の若さで亡くなったシューベルトは、生前大衆の前での演奏会というものはほとんどやらず、彼の聴衆は専ら気のおけない友人たちでした。       いつも彼の音楽に耳を傾ける優しい聴衆を持っていたシューベルトこそ、最も幸せな音楽家だったとアスランは自分を重ねていました。この頃アスランは確かに幸せでした。あの日記帳は今でも手元にあり、いつかセルジュに贈ろうと考えていました。 そうして冬になったら、家を飛び出し音信不通だった両親へ手紙を書こうか、とも考えていました。1870年1月 セルジュ2歳10カ月雪が積もり町へ降りる事が無理になってきました。アスランはセルジュの為に、冬までにはピアノが欲しかったのです。でも昔は何気なく弾いていたピアノが、今の生活ではすぐに手に入れる事は困難でした。今日も寒い中を材木運びの仕事に行かねばなりません。あのアスランが、肉体労働に従事しているなんてワッツが知ったら何て言うでしょう。アスランは無理の出来ない身体なのに。パイヴァもアスランが働き過ぎだと心配していました。でもアスランは若いから若さを過信してたのね。それから頑張り過ぎてしまうから。アスランはいずれはセルジュを、ラコンブラード学院へ入れてやりたいと思っていたのです。アスランが青春を送った、素晴らしい友人や素晴らしい先生と出会ったあの学院へ。ピアノも買ってやりたいし、やっぱりお金が必要でした。胸の痛みと共に喀血するアスランその日、薪運びの仕事まで引き受けて無理をしたアスランは、ついに血を吐いてしまいます。結核の再発でした。アスランが薪運びをしていた屋敷の夫人はとても優しそうな人でした。体調の悪そうなアスランをわざわざ見に来てくれたのです。雪を避ける為に入った納屋の中で、子供用に作らせたピアノが置いてあるのを見つけたアスランは思わず「譲って下さい」という言葉が口をついてしまいます。僕はもうこの冬限り働けないかもしれない図々しいと思いながらも、病気が再発してはもう働けないと思うアスランは、必死で頭を下げました。 するとその夫人は事も無げにピアノを譲ってくれると言い、その代わりに自分と娘の為に一曲弾いて欲しいと頼むのでした。夫人はアスランの事を知っていて、町で人気のピアノ弾きだと思っていたのです。しかしながら、自分のピアノをお金と交換する事は決してしなかったアスランの表情は、曇ってしまいます。夫人には小さな娘がいて、アスランが自分たちの為にピアノを弾いてくれると聞き大喜びです。ピアノまで駆けていく少女の後ろ姿にセルジュが重なるアスランはピアノを弾く為にその屋敷の中へ入りますが、豪華な内装がかつて自分が暮らしていた屋敷を思い出させるのでした。子供の頃の自分とセルジュとが、広い庭を走ってゆく幻影をアスランは見た様な気がしました。アスランはセルジュの為に我慢してピアノを弾いたのですが、親子はとても喜んでいました。でも「持つ者」が優しく無邪気に「持たざる者」を傷つけている事を夫人は知りません。アスランもかつては「持つ者」でした。あんな贅沢な暮らしをアスランも昔はしていました。アスランを探すパイヴァ喀血するという事はもう大変な状態だよね。アスランはやっとの思いでセルジュのピアノを荷馬車に積み、冬籠りの為の食糧やらセルジュの為の楽譜やら必要な物を買い込みました。これらはすべて与えられた物ではなく、紛れもなくアスランが己れの力で得た物なのです。セルジュ、セルジュ、待っておいで、って心の中でつぶやきながら。必死で、雪の中を戻る途中力尽きて倒れてしまいます。主のいない荷馬車だけが戻ってきたので、パイヴァは泣きながら探しました。───季節が変わり、サナトリウム(結核の療養所)を一人の男性が訪ねてきました。ここにアスラン・バトゥールと言う者がおりますまいか?アスランのお父さんでした。 お父さんはどうして知ったのかしら。パイヴァの驚きようを見ると彼女が知らせたわけではないようだし。お父さんはこの時とても後悔していました。探そうと思えば探せたのに、自分を捨てた息子がどうしても許せなくて意地になって追わなかった事を。こうして病気が再発した息子に会う為に来て、自分はなんてつまらない意地を張ってたんだろうって思っていたのです。そして自分が声をかけた女性が、看護婦ではなくあの娼婦だったと知り驚きます。病気になった息子なんてとっくに捨てて、逃げたものだと思っていたからです。ようやく親子は再会しました五年振りかな。アスランは23歳になっていました。驚くほど昔と変わらぬ素直さで「お父さん」て呼ぶアスラン。でもその姿は痩せて肌は青白く、昔のアスランしか知らないお父さんはつらかったでしょうね。もうこれは長くないなって感じたろうし、なんでもっと早く会わなかったのかと自分を責めたと思います。子供に先立たれる親のつらさは今も昔も変わりないですよ。「お母さんは元気ですか」とアスランが聞くと、社交界に顔を出さなくなってずいぶん老け込んだけど、だがそれで良かったよと答えました。社交界なんてくだらない、親兄弟の大切さより世間体を重んじる虚飾の世界だとわかったって、お父さんは静かにアスランに話したのです。でもそれだけで自分の駆け落ちのせいでどれだけ家族が迷惑を被ったか、どれだけバトゥール家が窮状に陥ったかがアスランにはわかりました。アスランは次にこう言います。 「ぼくは謝らなければいけないのでしょう?」アスランのこの一言でお父さんはハッとします。この一言がこの親子のこれまでの関係性を如実に表しているんですよね。でももう今のアスランは謝る事は出来ません。これは自分で選んだ道。謝る事は自分の選択が間違っていたと認める事になるからです。アスランの後悔が語られますアスランは自分の短い人生を振り返ります。ピアニストになりたかった夢を捨ててしまった自分。誰かが傷つくのが嫌で自分の意志を通す事が出来なかった自分。自分は臆病な卑怯者だと、自分で捨ててしまった青春を取り戻したくて、あがき続ける無力なバカ者だと、アスランは言いだします。ここにきて、アスランの人生が後悔だらけなんだと突きつけられるようで、とても胸が苦しい場面です。うーん。でもアスランはまだ23歳です。この若さで妻や幼い子供を残して死んでゆく無念を思えばね。とてもじゃないけど満足感や幸福な気持ちなんて持てるはずありませんよね。才能や財力や地位があっても、それを持つ者の内に「力」がなければなんにもならない、自分にはそれが欠けてたってアスランは言うのね。息子にそんな事言われて泣いてしまうお父さんこの親子はわかりあえなかったけど、お互い愛していたんですよね。まあ親子も相性というのがありますから。ここでアスランの言う「力」は、自分自身の為に生きようとする力でしょう。そうして自分にはなかったその力を与えてくれたのが、パイヴァだったんだとそんな事を言います。アスランは決して、娼婦に騙されて駆け落ちなんてやらかしたわけではなかったんだと、お父さんは知るのです。その後アスランは危篤に陥り、子供は病室へ入れてもらえず、セルジュは一人で廊下にいました。そこで、同じサナトリウムの死を前にした患者なんでしょうね。セルジュに近づいてきておめえの親父死ぬぜ、とか言ってくるのね。ヨレヨレのおっさんなんだけどとても恐くてセルジュに「俺が死んだらおめえに乗り移ってやる」とか不吉な瘴気を出してるわけですよ。セルジュはその男を死神だと思って怯えてしまうんです。アスランは亡くなり寂しい葬儀が執り行われました。短かったけど一生懸命に生きたアスランの人生「あの人は最後まで自分が建てたお城に帰りたがっていました」とパイヴァに聞かされ、お父さんもアスランの小屋へと行く事にします。そこは不便な隣人もいない山の中の粗末な小屋でしたが、お父さんはアスランの魂が宿っているかのように感じました。堪り兼ねたお父さんは、パイヴァ共々セルジュをバトゥール家に迎えたいと切り出します。でもあまりに突然の話で、また自分のような女が子爵家に入るなど恐れ多いとパイヴァははね付けてしまいます。ところがセルジュの様子がおかしく、高熱を出して寝込んでしまうのです。あの時のお医者さんセルジュはあの日の死神の姿にうなされていました。こういう幼い子供が人の死に直面すると、その動揺とか衝撃とかは計り知れないものがあると思います。まだ幼いからわからないだろうと大人は考えがちですが、幼いなりに死を理解してる気がします。あの死神が突然後ろから現れてお父さんを連れていってしまったと、すごく恐くて、トラウマになってるよね。アスランのお医者さんが、お父さんは死神に会っても逃げずに戦ったんだ、だから君も生きなくちゃ駄目なんだと話して励まします。その経験はセルジュの内面に強烈な影響を与えました。やがてアスランのお父さんはパリへ去り、パイヴァはセルジュを手離す決心をしていました。

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  • 09Feb
    • 風と木の詩その24 第五章セルジュ③

      娼婦であるパイヴァと恋に落ちたアスラン。アスランはこの時18歳。父親のバトゥール子爵からパリの屋敷を譲られたばかりで、来年は大学に入学し、いずれは父の跡を継ぐ、その前途は洋々たるものでした。パイヴァは17歳でしたが、社交界の大物をパトロンに持ち大輪の花を咲かせた高級娼婦でした。社交界の大物ガルジェレ侯爵二人の仲は社交界でも噂になり、彼女のパトロンであるガルジェレ侯爵の知る所となります。遊びならともかく、娼婦に真剣に恋をするアスランに危惧を抱いたワッツとルイ・レネは忠告しようとします。しかし彼女を忘れろと言う親友の言葉にも耳を貸さず、飲めない酒を飲んで二人に絡んだ翌朝、ルイ・レネからは苦言を呈されるのです。坊やだからさ「まわりにはいつも恵まれた環境しかなかったからと言って、世間もそうだと思うのは甘過ぎる」アスランを甘やかすワッツと違い、耳の痛い事も言って戒めようとするルイ・レネ。確かに純粋と言えば言葉はいいけど、あまりにも世間を知らな過ぎですよね。恋愛の経験もない世間知らずなお坊っちゃんが、商売女に熱を上げて愛だの恋だの言ってる姿はちょっとあきれてしまいます。アスランのような地位も財産もない平凡な庶民のルイ・レネは、ピアニストになるために必死に努力してるのです。ルイ・レネがたしなめた後、ワッツは優しくゆっくり寝てけよ、と言って大学へ出かけます。しかしワッツの部屋は寒く、アスランは自分がいかに恵まれていたのか気付かされます。今まで見えなかったものが見えてくるアスランは二人の親友から言われた事を冷静になって反芻してみました。きみの行動には考えが無さすぎる。両親や親族は世間の笑い者になり知人は離れて行くだろう。しかも相手のパトロンである侯爵を怒らせたら、子爵家を潰すくらいわけないんだぞ(えーそうなの?)きみの生活の保障はすべて父上の力なのに。一方、パイヴァは侯爵から釘を刺されていました。こわなるほど、あんな若僧に女を奪われたら自分の面子は丸つぶれですよね。それに彼女には莫大なお金を使ってますから、自分の所有物だと思ってるんですよね。自分の目を盗んで浮気したって別に構わないという言葉にも、愛情は感じられません。しょせんはパイヴァは娼婦だから淫らな女なんだという蔑視を抱いておられます。そしてこんな事を言うのです。「あの若者もいつも通りくじけ去ってしまうのが関の山だ。おまえもそう思うだろう?」って。つまり今までも何度もパイヴァに本気で恋をした男がいたけれど、侯爵の存在の大きさについえてしまったのだと、そう言うことですか。実はパイヴァは決して高級娼婦としての享楽的な生活を謳歌していたわけではなく、むしろこの世界から自分を連れ出してくれる人を待ち続けていたのです。パイヴァの持っている苦悩。自分を娼婦というモノとしてしか見ない男への虚しさを抱えながら、それでも誰かを信じたいと願っていました。けれど言い寄って来る男の気持ちなんてその時だけで、長くは続かない事を彼女は経験的に知っていました。「それでもあの人は来るだろうか?」もしそうだとしたら、アスランが自分の為に払わなければならない代価の大きさもパイヴァにはわかっていました。あー、悩めるアスランよ。そこへアスランのお父さんがやって来ます。もちろん悪い噂を知り、娼婦と別れさせようと来たのです。父の怒りは当然でしょうアスランのお父さんはいつも厳しく高圧的ですが、アスランが可愛くないわけではなく、美しくて優秀な息子を誇りに思っていました。だからこそ道を踏み外しそうな息子を元に戻そうと必死になって、怒鳴ったりぶったりおまえの権利を取り上げるぞと脅したりしてしまいますが、アスランには通じません。彼女と結婚するとまで言い出してお父さんを落胆させてしまいます。でも決して恋に有頂天になって何も見えなくなってしまったわけではないのです。アスランは本当はピアニストになりたかったし、夢をあきらめたくはなかったんです。けれどその夢は子爵家の跡継ぎにはふさわしくないとお父さんに大反対され、結果的にはあきらめた形になりました。その事でお父さんを恨んでいるわけではないのですが、父の期待に背きたくないとか自分の義務だなどと考えていた自分自身に違和感を覚えているんではないでしょうか。そのうえアスランは結核にかかり闘病生活を送った事で、普通の若者にはあり得ない生死にかかわるような体験をしました。もしかしたら心のどこかで、自分はいつ死ぬかわからないと感じていたかもしれません。今度こそは後悔するような事はしたくなかったんではないでしょうか。両親も友だちも世間も正しいだけど僕も同じように正しいんだ親友からも父親からも反対され絶体絶命のアスランは、その苦しい胸のうちを理解してくれる人もない中でこう考えました。僕は僕自身に正直な行動をとる───今までは周りの人を気づかう優しかったアスランにとって、自分がやりたい事をやるという事がこんなにもつらいとは思っても見ませんでした。そうしてアスランたら何をするかと思えば、侯爵と話したいとパイヴァの所へ堂々と乗り込んじゃったわけです。堂々と略奪宣言きみぃ、言葉を間違えとらんかね。奪い取るんじゃなくて、下さいって言うべきじゃないかね。侯爵ムッとしちゃうのね。そしたら「あなたは彼女と結婚されてないのだから、僕にはその権利がありますよね」とか言っちゃうわけ。いやいや、侯爵はさ彼女の生活をすべて面倒みてるんだよ。でもアスランは愛情は力や物質とは比べられない。愛情には愛情でしか戦えない、とか言うわけですよ。これはつまりアスランの、侯爵と自分がパイヴァへの愛情を賭けて戦おう宣言なんです。でも侯爵にしたら、パイヴァがこれだけの贅沢三昧な生活を捨ててまで、こんな若僧を選ぶなんて考えられないから屁でもないのね。もう笑い出しちゃう。そんでパイヴァが君を選ばなかったら、君は何もかも失うんだよ、って言われるの。まあ若干身体が震えておるようでしたが。アスラン頑張りました。二人が話す部屋の前で心配そうに待ってたパイヴァ決してまわりの力に負けないで侯爵の言う通り、パイヴァがアスランを選ばなければ奪い取るも何もないんですよね。でもパイヴァが自分自身で侯爵を選ぶと決めたらそれはそれでいいんです。アスランが不本意なのは、自分の為にパイヴァが身を引いてしまう事でしょう。何があっても自分の幸福だけを願い続けて会えない日々、パイヴァはアスランの言葉を噛みしめます。ここはお互いの意志の疎通を取りたい所ですけど、満足な連絡方法もない時代ですから。相手を信じるよりほかありません。アスランから毎朝2輪の椿の花が届きますおわかりと思いますが、この物語は「椿姫」のオマージュとなっております。アスランが恋に落ちた時もオペラ座に「椿姫」を見に行ったんでしたね。「椿姫」は説明する必要ないくらい有名ですが、フランスの作家デュマの小説で、1853年ヴェルディによってオペラ化されました。パリの高級娼婦ビィオレッタが、青年アルフレードの純粋でひたむきな愛情にあい真実の愛に目覚めるが、アルフレードの父親から彼と別れる事を懇願されます。愛と犠牲のはざまで、最後は一文無しになり胸を病んで死んで行くめちゃめちゃ哀れな娼婦の話。椿の花は、19世紀のフランスでも椿姫のヒットでわかるように女性のアクセサリーとしてもてはやされ高価な物でした。アスランは椿の花に、二人の恋を椿姫のような悲劇にはしないと願っていました。そうは言っても彼女と結婚する為にはどうしたら良いのか、まだこの時点ではわからずにいました。おまけに病弱なアスランの身体は疲れやすく無理はできません。以前はワッツとよく顔を出した下町を通るとひどい言われよう 憧れの貴公子じゃなかったっけ?お母さんまでひどい悪口を言われてるので抗議しようとしますが、アスランはパイヴァの事を思い耐えます。そんな中、お父さんとお母さんからアスランに手紙が届きました。もう読まなくても内容はわかってるし、屋敷の使用人までアスランに対して冷たい態度を取るしで、アスランの憔悴ぶりがちょっと見てられません。その手紙には一週間やるからキッパリ女と別れろ、できないならパリから連れ戻すという父親の強い決意が書いてありました。お父さん僕は一生あなたの大事な息子でいるべきなのでしょうかそれとも一人の男としてあなたから独立すべきなのでしょうかアスランの答えはもう決まっているのです。ただ、どうやって独立を証明したらいいのか、その方法が見つからなかったのです。追い詰められたアスランはとんでもない事を思いつくアスランはパイヴァと駆け落ちしようと決心しました。まったくねえ、純粋培養と言われたお坊っちゃんなのにやる事は大胆不敵なので驚くよね。狂おしいほど人を愛する心が、アスランに何もかもを乗り越えさせてしまったのです。侯爵も、両親も、友人も。もちろんそれが皆にどれだけ迷惑をかける事かもわかっています。神に懺悔するアスラン自分の幸せは、その犠牲の上に成り立つのだと承知した上で自分自身の為に生きる道を選択したのです。二人は命懸けで侯爵のもとを脱出し、スイスへと落ちて行きました。愛の為だけに生きる事の激しさを感じさせるこの結末に、残された人たちはただあっけに取られてしまいます。しかしアスランの高潔な人柄を知っている親友の二人は、彼は進んで未来に戦いを挑んだのだと認め合いました。でも自分は懐疑的です。アスランは本当に幸せになれるのかな。

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  • 26Jan
    • 風と木の詩その23 第五章セルジュ②

      1865年10月。18歳のアスランはパリの屋敷を正式に相続しました。かわいいだんな様だね~この若すぎる当主に周囲からは不安の声もありました。でもアスランのお父さんは、優秀だけどいい子過ぎて世間ずれもしてない息子に、早くしっかりして欲しかったんじゃないですかね。けどその思いとは裏腹に、死を脱する代わりに音楽を失ってしまったアスランの心は、ずっと何かを求めるようにうずいていました。今まではひたすら勉強に打ち込む事で誤魔化していましたが、こうして父から自由を与えられると今度は何をしたらいいのかわからなくなってしまったのです。自由で金もある生活は退屈だなどと言い出すアスランに、ワッツは贅沢者めと怒りだします。そして社交術は俺に任せろとばかり、ワッツはルイ・レネとアスランを連れてオペラへと出かけました。サロンや晩餐会だけでなく、オペラを観賞したり競馬観戦に行く事なども社交界の一種です。でもアスランやルイ・レネと違い、音楽には興味ないワッツはすぐに飽きてしまいます。ある時、アスランはルイ・レネをピアノコンサートに誘いますが、自分は聞き手じゃなく演奏者になりたいから遊んでばかりいられないと断られてしまうのです。アスランが病気になるまでは二人はライバルだったアスランはルイ・レネに「謝ったりするな」と言って部屋を後にしますが、自分自身へ憤りを感じていました。かつて、アスランが抱いていた希望や夢。できる事なら変わらずあの頃へ戻りたかったけれど、療養所にいる間についてしまった自分とルイ・レネの差。それぞれの道はもう隔たりがあって、音楽を聞くにも目的のあるルイ・レネと、目的のない自分の違いに今さらながら気づいたのです。ルイ・レネは音楽の道を行く。でも僕だって、この世界に自分が歩いて行く道をきっと見つけてみせる!きっと。って強く念じながら、街を疾走するアスランを追いかけるワッツ「生きてることに自信があるかい?」そう言った時のアスランの顔見てみ。こんな表情で見られたらワッツもかなわないよ。冷静で思慮深いルイ・レネと比べて、直情的なワッツはいつもアスランに甘いんです。「もちろん!ない」ワッツの返事もいい。だからアスランはそれを聞いて、思わず泣き出しちゃう。「バカー、こんなとこで泣くなー!誤解される!」昼日中に、往来で18にもなる男子が泣くとかある?アスランは阿呆ではない。アスランは少年のように純真なのです。音楽に未練がないと言ったら嘘になるけど、それを感じさせないくらいアスランは明るく振る舞っていました。でも生きているだけでいいと思っていた時期は過ぎ、生きる事の意味を再び求めていたのです。笑顔が似合うアスランワッツはアスランに、人生は楽しい物だと教えたかったんじゃないかな。無頼漢ぶったワッツに連れ歩かれるうち、下町あたりでは憧れの貴公子として見られるようになったりもします。子爵様の御曹司だし、美形だし、まっ当然だよね。そして、そんな時にアスランは運命の人と出会ったのです──────それは、ワッツと出かけたパリのオペラ座。ヴェルディの椿姫の幕間に、彼女はすべるように階段を降りてきました。ズキッ♡胸を貫いた恋の痛み。一目惚れでした。ふふっ。自分は一目惚れとかした事、一度もありません。相手がどんな人かも知らないのに顔を見ただけで好きになっちゃうの?アスランは席に戻ってから、さっきの女性がどこかにいるはずと夢中で探します。すると幸運にも向かい側のボックス席に彼女の姿が。アスランのテンションMAX。ところが、アスランが熱く見つめる中へんなじいさんに連れられ、彼女は退出してしまうのです。アスランが生きたこの時代、フランスはナポレオン三世の第二帝政時代です。日本は幕末です。近代的なブルジョワ都市として発展したパリでは、デパートが開店し、オートクチュールも始まり、ルイヴィトンもオープンしました。この時代の女性のファッションを特徴付けるのは、「クリノリンスタイル」です。「風と共に去りぬ」の映画の前半でスカーレット・オハラが着てたヤツね。コルセットでぎゅうぎゅうウエストを絞る有名なシーン「風と共に去りぬ」は1860年代の南北戦争前後のアメリカ南部が舞台ですが、この黒人のメイドさんが好きでした。スカーレットは、この後ふんわりとしたシフォンの軽やかなドレスを着てて綺麗でしたねェ。クリノリンスタイルのドレスは、ウエスト周りはすっきりしながら裾が非常に広がっています。この円すい形のシルエットのスカートを膨らませる為に、中にクリノリンというペティコートを着けました。【Wikipediaより】スカートの中はこんなの見た目はいかにもお姫様みたいで華やかだけど、これって動きづらくなかったんでしょうか。すごく場所を取りますよね。椅子とかどうやって座ったんだろ。以上余談ですが、この後大変な事実が発覚するのです。彼女に会いたさに思い詰めたアスランは、パリの上流階級の人間が集まるあらゆる場所へ行ってみます。見かねたワッツがアスランの為に調べてくれたのですが、彼は暗い顔でお前にはふさわしくないからあきらめろ、と言うのです。彼女は淑女なんかじゃない!彼女はパイヴァという名の高級娼婦で、一緒にいたじいさんは彼女のパトロンのガルジェレ侯爵でしたのよ。娼婦と言っても、この時代のフランスでは一概にひとまとめにはできません。娼婦のランクは「クルティザンヌ」という高級娼婦が最上級に位置し、その下に娼婦として届け出がしてある公娼や非合法の娼婦などがいました。高級娼婦っていうのは、客を取るわけじゃなく愛人としてお金持ちのパトロンを持ち、社交界へも顔を出します。パイヴァはこの「クルティザンヌ」なわけです。フランスでは庶民であろうと、美貌と財力とエスプリがあれば貴婦人として扱われます。貧しくたってクルティザンヌになれば、豪華なドレスを身にまとい、高級なワインを開けて贅沢三昧。そして最終目的はサロンを開催する事です。自分が女主人となって社交界の人たちを招くわけですから、知的な会話、フランス人のいわゆるエスプリに富んだ会話っつーものが不可欠なわけですから美貌だけじゃ駄目なんですよね。しかしながら娼婦という境遇にある人が、堂々と表舞台に登場してくるのを許容するフランス人て、さすがアムールの国だわ。ワッツはアスランの為に彼女の事はあきらめるよう忠告しますが、アスランは耳を貸しませんでした。ある日、アスランは偶然にも下町で娼婦たちが集まっている場に遭遇します。その中心には彼女、パイヴァが。アスランは娼婦たちと言葉を交わしますが、偏見を持たないアスランは、彼女たちと世の中で淑女と呼ばれる娘たちとに違いがあるようには感じませんでした。アスランは姉から数多くの娘を紹介されましたが、人形のように化粧をして媚びを売る姿からは、おしゃれしたりおしゃべりするだけの怠け者にしか見えず、真の淑女なんているのだろうかと幻滅していたのです。アスランは溢れ出す思いに何も考えられず、その場でパイヴァに愛を告白してしまいます。普通なら嬉しいと思うけど、なぜかうかぬ表情でもパイヴァは節度ある態度で断ります。アスランのようにしつけのちゃんとした家の子息が娼婦相手に身分を明かして談笑したりするもんじゃない、とか言ってくれるからパイヴァの好感度上がる。ところがアスランときたら、もーねー止まらないんですよ。パイヴァという人は、ジプシーの混血で両親は既になく14歳でパリに流れて来ました。パイヴァの思い出は、女手一つで育ててくれて結核で亡くなった母親との暮らしが、貧しくても幸せだった事。 しかし恐らく漂泊しながら舞踊などで生計をたてる事は、つらく厳しい物だったと思います。恵まれた環境のアスランなどには計り知れない苦労をしてきてるのです。でもアスランが惚れるだけあって、クルティザンヌとなって大出世してもきれいな心を持ってたのです。ジプシーの混血である彼女の肌は褐色なわけですよ。これはかなり目立つ存在です。彼女の肌の色を馬鹿にする人もいるでしょうが、アスランの目にはエキゾチックな東洋の女神みたいに見えちゃうわけね。で、次に会えた時にはあなたのその肌の色が素敵で、とかグイグイいっちゃうのね。口説こうとか、もうちょい段取り踏んでとか、なんの斟酌もないのよ。子供がお母さんあのねあのね、って止めどなく喋るみたいな。 笑わないでやってその道のプロのパイヴァからしたら、おぼこいアスランが微笑ましいんですよね。遊びなれてないアスランをかばうように連れてて、周囲の人たちは彼女が商売で相手してるようには見えないと噂します。パイヴァに捧げられた純愛思えば栄華を極めたようなクルティザンヌだって、若いうちはいいけど誰だって年は取るからね。一生安泰ってわけにはいかないんですよね。パイヴァのいう悲しい事って、人としてではなく娼婦というモノとしてしか見られない悲しさではないでしょうか。パイヴァは、性愛をこえて人間性を認めあう美しい愛がある事をアスランから教えられたのだと思います。娼婦に自分を大切にしろとか大真面目に言う子ですがこれは困った事になったもんです。お父さんはアスランに男だから社会勉強も大事だって、寛容な態度でいてくれたのに。その後、くれぐれも道を踏み外すような事はするなよって釘をさされたのを忘れちゃったの?ばれたら勘当されちゃうかも。二人の仲はすっかり噂になってしまい、ついにパトロンであるガルジェレ侯爵の耳にも入ってしまったのです。

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  • 19Jan
    • 風と木の詩その22 第五章セルジュ①

      さて、今回からセルジュ編です。風と木の詩の主人公はジルベールだと思われてますが、主人公はセルジュです。セルジュは貴族なのに浅黒い肌を持つ、正義感の強い真っ直ぐな心の少年でした。セルジュはどんな幼少期を過ごしたのでしょうか?その前にセルジュの父アスランの事を知らなければなりません。作中で一番好感度が高い(おそらく)、誰からも支持されるであろう(多分)、正統派貴公子アスランの物語から始まります。アスラン・バトゥール 18歳1865年6月。アスラン・バトゥールは18歳の誕生日を迎えました。バトゥール家は、パリから程近いリアールに領地を持つ子爵家で、アスランはその跡取り息子です。親戚一同が集まり盛大なパーティーが開かれていたこのパーティーの主役はアスランでした。バカロレア試験に合格したアスランを、バトゥール家の栄誉だと褒め称えた父親によって、正式に長男として独立する事が告げられたのです。一族からの称賛や羨望、普段は厳しい父親の誇らしげな様子に、アスラン自信も誇らしく感じます。けれどもアスランの心の中はそれだけではなかったのです。人前では明るく振る舞いながら、部屋に戻って一人になるとため息が出てしまいました。今年の秋には、パリにあるバトゥール家の屋敷がアスランの為に明け渡され正式に独立する事となります。当主ともなれば社交界のお付き合いも大事。知的で洗練された会話や振る舞いが求められる社交術も身につけなければなりません。アスランにはちょっと気が重くなる事でしたが、それは自分の義務なのだと考え直します。古書店で見つけて気に入って購入した日記帳それよりも、アスランはこの日記帳にこれからの自分のすべてを書き残そうと考えていました。この日記帳は、この後セルジュに遺され幼くして父親を亡くしたセルジュの大切な宝物となります。若くして亡くなる人は何か予兆のような物を感じているのでしょうか。時間を無駄にしてはいけない。後悔する事がないように書き記そう。 そう思うのには理由がありました。それは3年前の事でした────ラコンブラード学院名物の陣取り合戦中の出来事異変は突然やって来ました。激しく咳き込んだアスランは血を吐いたのです。無邪気に遊びに興じていたワッツ(現ラコンブラード学院の舎監の先生)やルイ・レネ(同じく音楽の先生)は仰天してしまいますが、アスランは喀血した事でピアノを弾くのを止められるんじゃないかと、そればかりをひたすら恐れていたのです。アスランのピアノの才能は高く評価されていましたラコンブラード学院のルーシュ教授(今でも音楽の教授)からは、パリの音楽院に行けると言われ、アスランは有頂天でした。ところがピアノにかまけて学業が疎かになってしまい、優秀だった成績が低下。それが父親の知る所となってしまいます。アスランは音楽の道へ進みたいと訴えますが、お前は子爵家の跡取りなんだぞと、大反対にあってしまうのです。アスランは本当にいい子なんだなァー、と思ったのは頑固親父に反論しなかった事ではなく、父親に背くまいとして必死に勉強時間を増やした事です。そのうえルーシュ教授の期待にも応えようと今まで以上にピアノにも向かいました。無理をし過ぎちゃったんだね。元々そんなに丈夫な方じゃなかったのかも知れない。そしてワッツやルイ・レネとの友情も大切にするアスランは、陣取り合戦なんつー乱暴な遊びにまで付き合ってたんです。でも結核は当時まだ死病です。「お前が無理してるのはわかってた。でもなんで身体の不調をほっといたんだよ!」って、ワッツは怒っちゃう。「父さんに怒鳴られて、自分が今まで何気なくやって来た一つ一つがどんなに自分にとって大切な事だったか気づいたんだ。その中のどれが欠けても僕は僕らしくなくなるんだよ」と、悲観するどころか明るい顔をして語るアスランを見て、熱い男ワッツはなんか泣けてきちゃうの。まだ若いのにアスランほど生死に悟りきった人は珍しいですよね。それとも、若過ぎてまだ自分が死ぬ事への実感がなかったのかも知れません。一方冷静なルイ・レネはワッツにこう言います。「アスランは病気をちっともハンデだと思ってない。それどころか健康な者には感じられない物を感じとろうとしている」いつも自分の事より他人を気にかける優しさを持ってるアスラン。こんな美しい稀有な心映えを持つ人物は、きっと人生からも愛されてるに違いありません。「だからきっと、アスランは帰ってくる。それを信じてスイスの療養所へ送り出してやろうよ」 チロルの山村にある療養所に一人やって来たアスランアスランは俗世のすべてから切り離され、超然として静かなチロルの山村にいました。あらゆる時代のあるゆる人を蝕んできた結核ですが、なんでか今ではカッコいいイメージのある病。まだ有効な治療薬のなかった時代ですから、結核療養所に入所しても薬があるわけでもなく、単なる患者の隔離なんですよね。ただ安静にして病気の進行を抑える事しかないんです。医師は、治そうと焦ったりせずゆったりした気持ちで山の美しさを眺めて過ごすのが一番だなどと言います。アスランが心配な父親は、もっと確かな治療法はないのかと怒り出してしまいます。するとこの医師は「安静とは何かわかるかね?」とアスランに尋ねてきます。そりゃあそうだよねまだ若い君のことだ。どこへ行ってもこころを乱す出来事はあるだろう。治るまでの間だけでもいい。喜びも悲しみも、押し包んでしまえるようになりなさい。とアスランを導いたのです。その言葉は、心のどこかでもう治る事はないと覚悟していたアスランに希望を与えました。アスランからの手紙を読む二人二人はアスランより3歳年上ですが、善き先輩で善き友でした。貴族のお坊っちゃんだけど、純粋で素直な人柄のアスランを二人は愛しました。そんなある日の事、ワッツの所へ届いたアスランの手紙には小さな草の実が同封してありました。その手紙には、両親も友人も呼ばず一人で療養する事がなぜ大切か今日始めて理解したよ、とありました。やっぱ健康な人と会うと心が乱れるんだよ。親切で療養所まで乗せてやろうとした地元の荷馬車のおじさんに、病人扱いされてイラっときたアスランは、つい「かまわないでください!」と言ってしまったんです。すぐにあやまって乗せてもらったけど、アスランはみじめな気持ちになっていました。帰りたい!思わず叫ぶアスラン丈の高い草の中をどこまでもまっすぐ走って行くつもりで、泣きながら衝動的に走り出したアスラン。でも途中で足をとられて転んでしまい我に帰ります。そこは秋の寂しい草原で牛がのんびり草を食べていました。そんな光景を見るうちに、なんだか自分が馬鹿らしくなって一人で笑ってしまったのです。その草原で見つけた小さな草の実たち。草の中に隠れて気づかなかったけど、たくさんの実がきっと春になったら草原の中から顔を出し、初夏には花が咲き乱れるに違いない。この草原一面を花が覆い尽くす光景を、アスランは見たような気がしました。花が咲き、花が散り、秋には実がなり、枯れて、また花が咲き、自然の営みは人知れず繰り返し、それは人には抵抗し得ない摂理です。自分は何を焦っていたのか。大自然の前では小さな存在でしかないのに。そしてその夏、ワッツのもとへたくさんの押し花が送られてきましたアスランが思った通り、その夏草原は一面の花に包まれていました。その花の中で、きっと次の年も生きるとアスランは誓ったのです。ワッツとルイ・レネの卒業は近づいて来ました。ワッツはパリの大学へ、ルイ・レネは憧れのコンセルヴァトワールへ。進む道は違っても二人のアスランへの友情は変わりませんでした。そうして療養して1年が過ぎる頃、ついにアスランが帰って来たのです。しかしこの病気は完治というわけにはいかず、無理をすれば再発してしまいます。もう以前のようにはピアノが弾けないアスランは、音楽家への道は諦めざるを得ませんでした。アスランは学院へ戻りました。ピアノへの道が閉ざされても相変わらずがんばり屋の彼は、勉学に励みました。そんな彼は、学院の中では目立つ存在でその人柄もあり人気もありましたが、上級生の中にはよく思わぬ者もいたのです(出たよ〰️)上級生から呼び出されリンチを受けるアスラン成績優秀で早くも来年のバカロレアを受けるアスランを、嫉妬した上級生が呼び出したのです。暴力には慣れてないアスラン。でも勇気を振り絞り、自分がすべてを急ぐのには理由があるのだと言います。しかし人間の悪意に晒されるような経験は、この時が始めてじゃないでしょうか。 そんなアスランを助けてくれたのが───おおっ!!オーギュ出た影の大番長オーギュストでした!!オーギュストはアスランとは同年齢で、この時すでに学院を牛耳り、取り巻きを引き連れては肩で風を切って歩くような存在でした。もちろん美少年で、年に似合わぬ堂々とした態度と迫力で、上級生をアゴで使っていますwww成績もアスランとしのぎを削るほど優秀でしたが、人間の出来はまったく違うと影で噂されていました。すれ違う二人この後二人のそれぞれの子供があんな事になるなんて、この時は知る由もありませんが、こういう邂逅もあったかも知れませんね。アスランは勉強の甲斐あって18歳でバカロレアに合格し、お父さんから褒められ、19歳の大学入学まで1年間は好きにしていいとお墨付きをもらいます。期限付きではありますが思いがけず自由を手に入れたアスランは、街をぶらついて偶然入った古書店で、あの日記帳を見つけるのです。何か記念に買って帰ろうとして、手に取ったら日記帳でした結核という病にかかり、チロルの山中で療養した日々はまだ若いアスランに死生感を養わせました。人は過ぎて行く時間に対して無頓着です。それは時間は無限にあると思っているから。アスランは、同じ時はもう二度とないのだと言う事を身を持って感じていました。若くしてそんな事を感じていたアスランが、私は切ない気がします。でもアスランはいつも明るく優しいアスランの家で小間使いとして働くリデルは、主人思いで秘かにアスランを慕っています。誰からも愛されるアスラン。いよいよパリへ行き、バトゥール家の長男として独り立ちする事となります。アスランをパリで待っていたもの。それは、自分の運命を変えるような女性との出会い。恋でした───

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  • 12Jan
    • クウガについて書いとこう

      仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVERも見たし平成も終わるからクウガについて書いとこう!遅ればせながら明けましておめでとうございます。今年から「AK」改め「ak」に変えてみました。小文字になっただけですけど。年末年始の忙しさにまぎれて更新を忘れてましたが、今年もよろしくお願いいたします。さて、わたくしも乗り遅れまじと「平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER」を見て参りました。仮面ライダークウガから始まって現在放映中の仮面ライダージオウまで、平成を戦い抜いた仮面ライダーの歴史も終わるんですね。平ジェネのシリーズは、ストーリーがしっかりしてて見応えがあるんですが、今回のはねー。少し設定が複雑過ぎてよくわかんなかったな。でもまあ面白かったと思います。感動するシーンもあったし、平成ライダー大集合シーンも、佐藤健氏出演シーンも良かったです。でもスーパータイムジャッカーのティードは、なんであそこまで仮面ライダーの世界を消そうとしたかったんだろう?動機がよくわかんなかった。そして、あれだけクウガクウガ持ち上げるんなら、オダギリジョーさん出たら良かったのにね。そんなわけでクウガです。「仮面ライダークウガ」は平成仮面ライダーの第1作目です。主演はオダギリジョーさん。ざっくりあらすじ西暦2000年。長野県山中の九郎ヶ岳で謎の古代遺跡が発見されます。ところが石棺の蓋を開けた事で目覚めた謎の存在により、調査団は全滅させられてしまうのです。この調査にあたった長野県警刑事の一条薫は、自称冒険家という青年五代雄介と出会います。友人の沢渡桜子が古代文字の解析を行っていた事から遺跡を訪れた五代は、そこで見た遺物のベルトらしき物(石でできてるんだよ)から超古代のイメージを見てしまう。そして怪人の襲撃を受けると、とっさにベルトを装着して戦士クウガとなったんであります。五代は、彼が最も愛する人々の笑顔を守る為に怪人(グロンギ)と戦う事を決意するんです。五代雄介五代雄介(オダギリジョー)は両親は既になく、おっとりさんな保育士の妹みのりがいるだけです。兄妹の親代わりは喫茶ポレポレのマスター(きたろう)です。毎度ベタなギャグを連発しては、ほのぼのムードを醸し出す、きたろうさんの出るシーン好き。五代はここに居候してて店が忙しい時は手伝ったりします。世界中を冒険して回る五代は、今は日本にいるけど、ある日ふらりと旅に出ていなくなってしまいそうな、そんな感じの青年です。おおらかでちょっと能天気かなって位に明るいけど、掴み所がないって言うか変わってる。そしてなんか飄々として見える彼が、実は強靭な意志と泣きたくなるほど優しい心を持っている事が、観ているうちにわかってくるんです。グロンギ五代雄介が戦う敵は怪人集団「グロンギ」です。グロンギはかつてのショッカーなどと違い世界征服などは狙ってません。大量殺戮を目的とする戦闘種族で、独自の言語「グロンギ語」を用いコミュニケーションを行い、殺人ゲーム「ゲゲル」に興じます。ゲゲルは、決められた期間内に決められた人数の人間の殺害を達成出来るかどうかという、とんでもないゲームです。グロンギは冷酷で残忍で心の底から人殺しを楽しんでいるのです。彼らには階級がありこれが非常に重要で、ゲゲルに成功すれば上の階級に上がれるし、上は下を見下してます。こちらはグロンギのゴ・ガメゴ・レの人間態純烈の酒井さんご出演。なんかギャンブラーな雰囲気(笑)それが怪人に変身するとこんな感じです。警察からは未確認生命体第35号と呼ばれています。見た通りのカメの怪人。頭に「ゴ」が付くのは最も強い集団です。この鉄球をビルの屋上から投擲して人間を殺すという恐ろしいゲゲルを始めちゃう。このゲームを仕切ってるのは「バラのタトゥーの女」と呼ばれるグロンギで、なんとも謎めいた美女です。物語は五代雄介と、現代の日本に復活したグロンギを「未確認生命体」と呼称する警察組織が共闘する展開で進行します。未確認生命体には番号が付けられていて、クウガは「未確認生命体第4号」と呼称されています。作品にリアリティーを持たせる為に、仮面ライダーという言葉は出てこないのです。また実在の地名や時間経過の正確性にもこだわってて、大人が見てもきっと満足できるドラマでございますよ。一条さんクウガには2号ライダーはいません。その代わり、一条さんという最強のバディが登場します。一条薫(葛山信吾)は、「警視庁未確認生命体関連事件合同特別捜査本部」が立ち上がると、長野県警から出向してきた刑事です。一条さんはポレポレのマスターが「コート着たイケメンさん」と呼ぶなど、かなりカッコいい。五代があんな感じなんで対照的です。ぜってー、女にモテそう。だがしかし、この男は堅い!仕事一筋だし、真面目すぎるし、隙もないし、感情を表に出さない。なんか殉職したお父さんに憧れて刑事になったんだけど、殉職した日が自分の誕生日だったんですよね。それでそれ以降は、誕生日プレゼントは誰からも受け取らない事に決めてるんだよね。知らずに誕生日プレゼントを渡そうとした婦警さんもいたけど、受け取らなかったし、頑固で不器用なのね。一条さんは最初は五代を軽薄そうな奴だと思ってたし、一般市民を戦いに巻き込みたくないという警察官の鏡みたいな人だから、五代を認めようとしなかったのね。でも五代の中に自分と通じる物を見出だしてからは、彼の一番の理解者になっちゃうんです。警視庁の秘密兵器のバイクとか、お前が使えって勝手にあげちゃうし。それはこの戦いには五代雄介が必要だし、彼が使ってこそ意味があるってわかってるからなんです。クウガと言ったら素人の自分が見てても、スゴいなあと思うのがバイクアクション。なんか降りて戦った方が早くね?と思うほど(笑)テクニカルなバイクシーンが見られます。警察の中には五代に対して懐疑的な見方をしてる人もいます。クウガが酒井さんのガメゴを倒した後の大爆発で、一般人に甚大な被害が出てしまった事もあります。するとマスコミに追及された警察は、責任逃れにあれは第4号の単独行動だと言って、クウガのせいにしちゃうんです。おのれ警察五代くんがあんなに戦ってるのに何なのよっ!それを一条さんがクウガの警察での立場を確固たるものにしようと尽力したり、常にクウガが戦いやすいようにと心を砕くんです。一条さんにはわかってるんですよ。この強大な敵と対峙できるのは五代雄介だけだと言う事を────クウガに変身する五代と違い、一条さんは生身の人間なのに全然ひるまない。そんなに撃ったらクウガに当たるんじゃね?と心配になる位バンバンバンバン援護射撃して、しかも相当な腕前なんです。五代を見守り、身体を気づかったり、無事に戻ってくればホッと安堵した表情を見せる。だが無口な一条さんは気安く言葉をかけたりはしません。二人は心が通じあってるから言葉なんていらないのだ。一条さんが五代を支え、その力は最後まで強くて確かで揺るがない。その力に支えられ五代は覚醒してゆくんです。クウガの面白さは、五代雄介が様々の形態のクウガに超変身したり、覚醒して進化してゆく事でもあります。五代の戸惑いや成長や心の高まりとシンクロしながら、クウガは姿を変えてゆきます。でも一条さんは五代に対してひとつの屈託がありました。それはこの戦いに彼を巻き込んでしまった事です。ラスボスであるン・ダグバ・ゼバとの最終決戦に向けて、二人は吹雪の中で向かい合います。こんな寄り道はさせたくなかった。君には冒険だけしていて欲しかった。一条さんは思わず自分の心情を吐露してしまうんです。クウガとン・ダグバ・ゼバの戦いは最後には変身が解け素手での殴りあいとなります。笑いながら楽しげに相手を殴るダグバと、涙を流しながら相手を殴る五代の姿は対照的です。きっと五代はこれまでも、マスクの下では泣きながら戦ってたに違いない。そう思うと、一条さんでなくとも胸が痛むのです。グロンギの無慈悲なゲームのせいで理不尽にも命を奪われた人たちの悲しみの為に、みんなの笑顔を守る為に五代雄介は戦いました。その心の優しさを戦う強さへと変える為に、彼は泣きながら歯を食いしばって戦ったのです。昨今の仮面ライダーのバトルシーンは、CGのせいもあってきれいで華やかです。それは時代の流れで悪い事ではないのですが、クウガがなんか地味に見えてしまう。クウガは「革新」とか「原点」とか色々言われるけど、私は「いぶし銀」だと思ってます。

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  • 09Dec
    • 新撰組 鬼の副長土方歳三

      いえー!ドリフターズ第6巻発売になりましたな。ドリフターズ 平野耕太ざっくりあらすじ島津豊久、織田信長、那須与一の3名はそれぞれの時代から突然、異世界へ飛ばされてしまいます。そこはドラゴンやエルフがいるファンタジー世界でした。そこで知り合った3名は、武士としての本能とあとは成り行きで、国盗り合戦を始めてしまうのです。これまであまりメジャーとは言えない島津豊久が主人公。典型的な薩摩人として描かれてます。信長は謀略家、与一は美少年、他歴史上の人物多数出演。ざっくり過ぎたけどネタバレは避けたいので、内容については語りませんが、土方歳三については語りたい。新撰組土方歳三いうまでもなく土方歳三は、幕末最強の剣客集団新撰組の副長です。徳川幕府が消え行く中で、この反時代的な組織に迷う事なく人生を賭けて、その生涯を明快に生きたお人です。土方の生涯は短いです。江戸から京の都へ登ったのは1863年(文久3年)で、亡くなったのは1869年(明治2年)35歳位です。新撰組が京都で活躍した時期はそれほど長くないのです。土方は徹底的にやったね。幕府がなくなり新撰組が消滅したって、近藤先生が流山で処刑されたって、総司が病気で死んだってやった。宇都宮会津最後は蝦夷まで転戦し徹底的にやったのだ。すごい漢だ。北海道は寒いよー。そこまで行く根性がエライと思う。自分の人生が落ち目になっても、自分の本領を発揮する事ができる強さを持ってますよ。こちらドリフターズの土方。上の有名な写真を忠実に真似た、オールバックに洋服姿。土方は合理的な考えの持ち主で、鳥羽伏見の戦いで敗戦した後は、洋式兵法を取り入れ着物はやめて洋装にしました。漂流者(ドリフターズ)VS廃棄物(エンズ)さてこの漫画は漂流者(ドリフターズ)と廃棄物(エンズ)の戦いが繰り広げられます。3名に代表される漂流者(ドリフターズ)一同が伸び伸びやってるのに比して、廃棄物(エンズ)の皆さんは恨み言ばっか言ってますな。人類を滅亡させようとしている廃棄物(エンズ)は、かつては悔しい思いをして非業の最後を遂げたりして、根っこの部分はとても悲しいのです。禍々しくて強スペック。土方なぜ廃棄物なんだろか薩奸死すべし!島津が憎い。実際、幕軍にいた人たちは、長州はまだ許せるけど薩摩は絶対許せねーと思ってたんですよね。だから西南戦争が起こった時、意趣返しに鹿児島まで行ったんですよ。ドリフターズで描かれてる土方は普段は無口だけど、豊久の前では薩摩憎しの感情が噴出してしまいます。霧のような新撰組隊士を操り、集団で豊久に斬りつけてきます。新撰組の戦法は、必ず敵よりも多い人数で取り囲み集団で襲撃したのです。歴史は新撰組を生んだけど、新撰組が歴史的に果たした役割はない、とかいう人がいます。でも歴史にどんな寄与をしたかなんて問題じゃない。歴史は人の生きざまと死にざまで出来てるんだから、人の情熱とゆうものがすばらしいんだ。土方は激しく時流に抵抗しました。葛藤はあったろうけど、ブレはない。これからだぜ。戦う地がある限り戦い続けるぜ。たった一人でも飛んでやるぜ。(歳三心の声)そんな、思い切りよく爽快に生きたと思ってたのに、なんでか廃棄物(エンズ)!!切腹も許されず斬首された近藤勇。結核で戦線離脱するしかなく血を吐いて死んでいった沖田総司。こっちの方が、よっぽど廃棄物(エンズ)になりそうなのに。ゴールデンカムイの土方ゴールデンカムイに登場する土方歳三は、函館で戦死せず落ち延びて、長らく監獄へ幽閉されていたという設定です。70代のおじいちゃんになっていますが、まだ戦っています。右に持った愛刀の和泉守兼定で斬ってからの、左手でウインチェスター銃をズドンっていう。クルンて回す技なに?映画で見たかも。土方は志半ばで潰えた蝦夷共和国をもう一度作ろうとしてるのか。永倉新八からは死地を求めてるんじゃないのか、とか言われてたけど。とにかくカッコいいっす。きっと生きてたらこんな感じに違いない。司馬遼太郎燃えよ剣新撰組が人気者になったのは、1960年代に発表された司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」がきっかけだそうです。特にあの、沖田総司ね。純粋無垢で明るくて屈託のない笑顔とか、透明感のある美形だけど子供好きとか、病弱だけど天才剣士みたいな。沖田といえば高確率なこの造形は、燃えよ剣で司馬遼太郎が作ったものなんです。沖田は飄々とした明るい若者で、いっつも土方に軽口を叩いてて、泣く子も黙る鬼の副長を平気でからかったりします。土方は「黙れ総司」とか怒ったりしながらも、こいつにはかなわねーって感じで沖田には甘いのです。この土方×沖田が燃えよ剣だけに萌えます。70年代には少女漫画になりました。天まであがれ木原敏江キラッキラッ。盟友の近藤と土方より、なぜか土方と沖田の関係だけに特化した青春物語。結核の沖田を置いて(置いてったわけではないんだが)出陣する土方に、自分も連れていってと泣いてすがる沖田。脚色を加え過ぎだと思うが、二人の心情はきっとこうだったろうと思うと、これはこれで泣けます。少女漫画の世界では、早くも土方×沖田に萌えのネタを発見していたのです。ずたぼろになった豊久を殺そうとした土方に「そいつを斬ったらもう本物の武士はいなくなって、戦う相手がいなくなるよ」という沖田の声が聞こえてきます。戦いたくてこんなとこまで流れてきたのにそれでいいのか、と。その時、豊久を攻撃しようとした廃棄物(エンズ)軍を、手をだすんじゃねえ!とばかり滅する土方。まじで?味方なのにー。豊久だけでなく新撰組隊士たちも仰天です。そっかー。ヒラコー先生。歳さんの未練は、人を憎んだり呪ったりじゃなく、もっと戦いたかったんだね。オッケー、もう戦って、戦って、豊久と気が済むまで戦って、悲しみの大地に燃えつきてほしい。あれ、そういう話?じじどんもそろそろ何かしろよ。げんじばんざい。

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  • 07Dec
    • 風と木の詩その21 第四章ジルベール⑨

      三階の窓から身を投げたジルベールは、ボナールが危険を覚悟で受け止めたのと、下に枯れ葉の山があった幸運でなんとか命をとりとめはしました。しかしながらジルベールはショック症状で意識を失ったまま戻らず、ボナールも怪我を負ってしまったのです。ボナールはジルベールが飛び降り自殺をした原因は、オーギュストに違いないと確信し、このまま放ってはおけないと思いました。オーギュストは、いったいどういう育て方をしたのか?!オーギュストへの怒りとジルベールへの愛がボナールを駆り立てます。なんとしてもオーギュストから引き離して、ジルベールを自由にしてやりたいと考えたのです。二人に対決の時が訪れるジルベールが飛び降り自殺しようとした事を聞かされたオーギュストは、狼狽します。おまえのせいだとボナールから責められますが、そんな事よりもジルベールの怪我の状態を知りたいオーギュストは「聞く権利くらいあるだろう。わたしは叔父だ」と言いますが・・・隠されていたものを暴くボナール父親だと自覚しながら自分の息子を愛した。おそらくは何度も何度も。慣れきって忘れられなくなるまで。うーん、字面にするとすごいショッキングですねえ。ボナールがオーギュストを糾弾するこの場面は、今まで秘密裏に行われていた事が白日の下に晒されて、ちょっと心が踊ります。オッケーボナール。ナイスだよボナール。しかしオーギュストは、たいした想像力だな、なぞと言って一笑に付してしまうのです。この期に及んでまだしらを切るオーギュストを挑発するように、ボナールは実に的確な発言をします。なぜジルベールをもっと大事にしてやらないのか。なぜ少しも愛してないような振りをするのか。それはオーギュストがジルベールに嫉妬しているからだ。ジルベールの持っている自由はオーギュストにはないものだ。だから嫉妬してがんじがらめに縛りつけるのだ。ボナールは相手を怒らせようとして、ここまでぶちまけているわけですが、オーギュストは顔面蒼白になりながらも平静を保って見せます。そして「受け取りたまえ」と白い手袋をテーブルに置くのです。こ、これは!決闘の申し込みです白い手袋を拾ってオーギュストの顔をたたくボナール「申し込むのは俺のほうだぜ」決闘の申し込みは、白い手袋を相手の顔に投げつけるか、相手の足元に投げつけます。相手が手袋を拾えば決闘の申し込みを受けた事になるんです。おそらくボナールは、オーギュストを挑発して怒らせた所で、決闘を申し込むつもりだったのだと思います。それを感じ取ったオーギュストが先に言ってしまったわけですが、挑発とわかっていてのってきたオーギュストにボナールはもっと警戒すべきだったのです。決闘当日。早朝4時半。あたりは霧が巻いて雨も降りだします。ルノーは心配で引き留めたいあまり、ボナールの腕の怪我の包帯を結び直そうとします。ボナールはそれを遮り、自分が出かけたらすぐに馬車の用意をする事、もし8時までに帰らなかった時はジルベールを連れトレアの森の別荘へ行くように託します。泣き出すルノーを慰めながら、ボナールはこう思っていました。勝ち負けは問題じゃない。ジルベールをオーギュストからもぎ取って、空に放してやるんだ────ボナールが出かけてすぐに、やっと目を覚ましたジルベールが姿を見せ、ボナールはどこへ行ったのかとルノーに尋ねます。ルノーは取り乱して、先生が死んだらどうしよう、なんでもっと早く目を覚まさないのかと、ジルベールに泣きながら訴えたのです。決闘は6時。ヴァンセンヌの森。決闘は通常、決闘者2名の他、その決闘をジャッジする人とそれぞれの介添人の5名で行われます。あと大勢の見物人が集まります。フランスでは20世紀初めまで、決闘はしばしば行われ、その結果が新聞に掲載されたそうです。武器は決闘専用拳銃と言う物があるらしいです。(同じ拳銃が二つ綺麗な飾りが施された箱に入っている)ジルベールは屋敷を飛び出し、ルノーも後を追います。ところが屋敷の外で、待ち構えていた何者かによって二人は手荒く馬車に連れ込まれてしまうのです。馬車に乗っていたのは、オーギュストの執事レベックでした。レベックはオーギュストの指示で、ジルベールを迎えに来ていたのです。ボナール邸の裏木戸に馬車を止めて待てば、きっとジルベールは出てくる。必ずヴァンセンヌの森まで連れてこいと。 弾は一発、背中合わせに立って十歩歩いて撃つジルベールを乗せた馬車は森に着き、雨の中を決闘は始まっていました。この決闘シーンは緊張感溢れる、作中でも1、2を争うカッコいいシーンです。レベック、忘れるな後ろからだわたしは北かあるいは東を背にして立つ後ろから来い絶対にわたしの前からは来るなその時ボナールの視界に飛び込んだのは、オーギュストの後ろから来るジルベールを乗せた馬車でした。オーギュストの策略オーギュと叫びながらジルベールが後ろから駆けてくるから、ボナールは撃てなかったのです。これは汚い。ボナールは撃たれ、泣き叫ぶジルベールをオーギュストは連れ去ります。オーギュストのもとに戻ったジルベール。その晩二人は愛し合います。激しく、サディスティックに。翌朝ジルベールは、オーギュストが狂ったように自分を愛してくれたと、幸福を感じるのでした。けれど、つかのまの夢は消えてしまいます。ジルベールはオーギュストに伴われ、ペルーの屋敷へと連れていかれます。今度ご両親がパリへお住みになるから、きっとぼっちゃまをお引き取りになるのね。微笑みながら語るメイドの言葉に、オーギュストから離されるかもしれないと、ジルベールは不安で一杯になります。ペルーはジルベールを見て思わず生つばを飲むオーギュストからは何も説明されずに、突然会わされた両親という存在にジルベールは戸惑います。ペルー夫妻はといえば、ジルベールの美しさに驚きを隠せません。特に性癖がヤバいペルーは、吸い寄せられるようににじり寄り、顔をよくお見せなどという始末。仰天したアンヌ・マリーは、あなたこっちを見て!マルスを見て!!そんな子に手をかけないで!!と叫ばねばなりませんでした。その小さなマルス坊やが、ママン、ママンと言ってるのを見たジルベールは、不意に幼い頃を思い出します。母を知らないジルベールは、これがママンなのかとアンヌ・マリーに近寄りますが、いきなり平手打ちされてしまいます。近寄らないで!この悪魔!!あなたを引き取るつもりなどないわ。産むつもりなんかなかった!と、ヒステリックに泣き喚くのです。オーギュストはペルーと取り引きしました。1 ジルベールをラコンブラード学院へ入学させ、オーギュストが行動のすべてを観察指導する。2 ジルベールの入学にあたってこの小切手の額面通り学院に寄付をする。3 マルセイユの海の天使城をオーギュストが生きている間だけ住居として貸し与える。それと引き換えに、オーギュストとジルベールはパリから永遠に去り、今後のペルー夫妻の幸福を絶対妨げないと約束したのです。この寄付金というのが、かなり巨額だったらしくペルーはビックリしてました。オーギュストは、ジルベールを守る為には学院から出さず、どこまでも閉じ込めて、自分が学院を牛耳るしかないと考えていたのです。そして、「アデュー(さようなら)ペルー」と言いペルーに口づけます。オーギュストは自分のトラウマと決別できたのかな。オーギュストと離れて学校にやられると知ったジルベール。行きたくないと訴えますが、それを聞くようなオーギュストではありません。ジルベールはあきらめるしかありませんでした。オーギュストはロスマリネを呼び出し、生徒総監の座と引き換えに、こちらとも取り引きをします。ジルベールの学院での行動をすべて報告する事。そして、ジルベールがどんな騒ぎを起こしても、後始末をする事。こうして、オーギュストがすべての手筈を整え、ジルベールはラコンブラード学院へと行く事となるのです。オーギュストに髪を切れと言われても、自分はこのままが好きだと言って切らなかったジルベール。旅立ちの朝、オーギュストに髪を切ってと頼みます。涙も、別れの言葉もなく、二人は別れました。その胸に去来するのは何だったのでしょうか。ジルベールの生い立ちが明らかになった過去編はこれで終わりです。長かった〰️同性愛だけでなく、多様なタブーがてんこ盛りで衝撃的でした。それでもこの作品は胸に迫るような切なさと美しさを持っています。その美しさは、暗さを持った美しさや道徳に反しているが美しいという特徴的な物です。これがこの時代が生んだ耽美の世界です。こういう雰囲気の物はそれまでの少女漫画にはありませんでした。竹宮恵子も萩尾望都も前を走る少女漫画家はいませんから、まったく斬新だったわけですよ。なんかサブカルの歴史みたいになっちゃいましたが、次はセルジュの過去編です。これがまたなげーんだ。 

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漫画ばっかり読んでる 何にもやりたくない腐女子

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