仮面ライダージオウ第29話にて
白ウォズによってアナザーブレイドにされてしまった天音ちゃん。
そうとは知らずアナザーブレイドと戦うジオウの前に相川始が姿を現す。
「その子に手を出すな」
始はカリスに変身しジオウに襲いかかる。
圧倒的強さを見せるカリスだったがある気配を察知する。
剣崎一真であった。
始!力を使ったな?!
俺はお前の為に自分の力を封印したつもりだったのに、お前が封印を破った!
どうしてだ?!始!
ブレイドを知らない人を置き去りにして突如始まるブレイド劇場。
ブレイドとカリスは呆然とするジオウの前で戦い始める。
(自分はカリスのピチピチのスーツが好きです)
剣崎一真と相川始。
それは、会いたくても会えなかった二人の15年振りの邂逅であった・・・・
さて、時間軸を15年前の2004年に戻しましょう。
人類基盤史研究所(通称BOARD)は不死の生命体・アンデッドを研究する機関でした。
しかし3年前にある理由からアンデッドの封印が解かれ人間を襲うようになっていたのです。
BOARDではアンデッドを「ラウズカード」に封印すべく「ライダーシステム」を開発。
その任に当たっていたのが剣崎一真(椿隆之)「仮面ライダーブレイド」と先輩の橘さん(現雛型あきこの旦那)「仮面ライダーギャレン」でした。
つまり仮面ライダーのお仕事はアンデッドをカードに封印する事(ここポイントね)
ブレイドたちはカードに封印したアンデッドの力と融合して変身し戦います。
剣崎一真
剣崎一真は22歳の天涯孤独な青年です。
ちょっと短気で不器用なので友達を作るのが苦手だし、人を信じては裏切られてしまうビミョーに不幸体質。
冒頭いきなりBOARDが壊滅して拠り所をなくしてしまうわ、アパートを追い出されるわ、先輩の橘に裏切られるわでさんざんな主人公笑
でも子供の時火事で両親を亡くした過去を持つ彼は、人を守りたいという思いが人一倍強かったのです。
相川始
剣崎は戦いの中で相川始(森本亮治)と出会います。
始は喫茶店「ハカランダ」を営む栗原親子の所に居候する無口な青年でした。
ちなみに撮影に使われたのは、東松山市の「キッチンカフェクランボン」現在も営業中。
剣崎は謎のライダーであるカリスは始なのではないかと疑っていました。
カリスは栗原親子が危機に陥ると現れアンデッドから守る為に戦ったからです。
天音ちゃん
栗原家の娘の天音ちゃんは始をとても慕っていました。
小学生女子らしくちょっと生意気なおませで明るい少女です。
彼女は雪山で遭難して亡くなった父親の面影を始に見ているようでした。
それとも初恋だったのかもしれません。
始が居候するようになったのは、雪山で天音の父の死に立ち会ったからです。
(実は自分の戦いに巻き込まれて死んだ)
自分の命よりも妻と娘の身を案ずる姿が引っ掛かかり、栗原家を訪れた始はそこに居候するようになったのでした。
始めて会った時とても悲しそうな目をしてたから、という理由で始を受け入れてしまう天音ちゃんママは人がいいしとにかく二人は始に優しい。
栗原家で初めて触れる人間の優しさに戸惑いながら、始の中では何かが変わっていきました。
しかし栗原親子以外には心を開かず人間を軽蔑する始は、その無愛想な態度もあって剣崎と対立してしまいます。
始は人間ではなく仮面ライダーの敵アンデッドです。
アンデッドは地球上の様々な生物の祖であり、一万年に一度行われるバトルファイトで自らの種の繁栄を賭け覇権を争います。
その為アンデッドは最後の一人になるまで戦い続けねばならない宿命にあるのです(ここ大事)
これはギラファノコギリクワガタと虎のアンデッドさん。
ブレイドの怪人はデザインがカッコいいです。
上級アンデッド(怪人の幹部)は強さだけでなく知性もあって人間態にもなれるので、怪人側のドラマにも比重が置かれています。
そして始は、こいつがバトルファイトに勝ち残ったら全ての生命が滅亡してしまうと言う伝説のアンデッド「ジョーカー」が擬態した姿だったのです。
剣崎は一向に打ち解けない始と幾度も戦う事になります。
が、ジョーカーなのに天音を必死で守ろうとする姿に心を動かされるようになります。
ある時、崖下に落ちた瀕死の始を助け山小屋で介抱してやるのです。
優しい・・・
最初は圧倒的な強さを見せるカリスと違い、戦い慣れてないブレイドは弱くてカリスにやられっぱなし。
だが元来アンデッドとの融合率が高い剣崎は、精神的な成長もありどんどん強くなります。
二人は時に対立し時に共闘しながら次第にわかりあうようになるのです。
一方、始は苦しんでいました。
自分の中に沸き上がるジョーカーの衝動を必死で抑え込もうとしていました。
(だいぶ端折ってます)
剣崎には始が人間として生きたいと思い始めている事が痛いほどわかるのでした。
剣崎は始を信じようとし、その為に橘と衝突してもその強い意志を曲げませんでした。
その心に始は答え、二人は共に助け合い、友情を深めていったのです。
ちなみに始が小柄に見えるのは剣崎がデカ過ぎるから(185センチ)
主演の演技がアレなのでネット上で揶揄されたりもしましたが、剣崎の不器用ながらも真っ直ぐ生きようとする純粋なキャラと相まって、自分はこの作品の中の椿氏の美しさを愛してやみませぬ。
けれど、始以外のアンデッドは全て倒され世界は破滅へのカウントダウンが始まってしまいます。
始を封印しなければ人類は滅亡してしまう。
でも、始はもう友であり共に戦った仲間でした。
始は自分を封印する事ができる剣崎を待っていました。
いつか剣崎が始を介抱してくれたあの思い出の山小屋で。
戦うより仕方ない自分の運命に抗う術がなく始は叫びます。
戦え!剣崎!
俺とお前は戦う事でしかわかりあえない!
二人は激しくぶつかり合いますが、始は必殺技を出さずわざと剣崎に封印されようとします。
大勢の命を助ける為に一人の命が犠牲になるのは仕方のない事なのか?
これはヒーロー物の永遠のテーマじゃないでしょうか。
剣崎は世界も友も両方救おうとしました。
キングフォーム(ブレイドの最強にして危険が伴うフォーム)で戦い続ける事でアンデッドと融合し過ぎて自分自身がアンデッドになる事によって。
アンデッドが二人になった事で世界の破滅は停止しますが、再びバトルファイトが開始されます。
アンデッドは戦う事が宿命なので、二人は一緒にいると戦わねばならなくなってしまったのです。
剣崎の異変に気付き駆け寄ろうとする始を「来るな!」と拒絶した剣崎は始にこう言います。
お前は人間たちの中で生き続けろ
俺たちは二度と会うことはない
触れ合う事もない
それでいいんだ
始と戦う事を拒否し剣崎は始の前から姿を消してしまうのです。
俺は運命と戦う!そして勝って見せる!
という言葉を残して。
剣崎の始への献身や自己犠牲は、クウガの五代雄介に通じる物があると自分は思います。
たとえ運命が決められているとしても、運命と戦う勇気と強さを持てとこの物語は教えてくれるのです。
しかしながら、自分は剣崎の行く末を、彼の孤独を思いました。
それと同時に、残された始の悲しみもいかばかりかと思いやったのです。
仮面ライダー史上これほど衝動的で切ないラストを自分は知りません。
───全ての戦いは終わり平和になった世界。
始はハカランダを手伝いながら栗原親子の元で暮らしています。
色づいた銀杏並木を歩く始はベンチに座る剣崎の姿を見つけます。
「始・・・」
と優しく笑う剣崎に近寄ろうとした途端それは幻だったと知るのです。
剣崎はたった一人で遠くへ行ってしまった。
そして今もどこかで戦っている。
それは伝説となり数多の後日談が作られ、剣崎一真は平成仮面ライダーの中でも稀有な存在となった。
始はきっと待っているだろう。
何年、何十年たっても、不死のアンデッドとなった二人は互いを思いながらも、再び戦う事を恐れ二度と会う事はないのだ。
そして、2019年の時間軸・・・
ジオウ世界で再会した二人。
本日の自分はちょっぴり感傷的です。