相三間飛車 #5 ~美濃囲い vs 金無双(後手、石田流本組志向 part1)~
今回も前回と同様、先手が美濃、後手が金無双を選択したケースについて見ていきますが、今度の後手は角交換には応じず、石田流本組を目指してみます。アマチュアでは良くある指し方で、普通に有力です。基本図は下図(△33桂まで)です。ちなみに、基本図から▲38銀△13角に▲33角成△同飛▲25桂は、石田流本組に対して部分的にある筋ですが、以下、△32飛▲13桂成△同香▲68銀△42銀のように進んで、△13香型がやや悪形とはいえ、角と桂が持ち駒になったのは後手としては実戦的に大きい。普通に後手の駒が捌けただけなので、先手が指しすぎです。この後、後手は普通に向かい飛車に振り直して、前回と同じように戦って十分です。角と桂が手持ちな分、通常よりも後手の手が広いでしょう。この「本組の形を荒らすだけの筋」に関しては、その後に何らかの有効な筋や意図が先手にあるならまだしも、序盤早々に意味もなくこういう事をされると、興醒めする石田流プレイヤーもいるかと思います。誤解してほしくないのですが、興醒めするのはこの筋が嫌だという意味ではなくて、先手が何も考えずに本組を荒らしに来るのが気持ち悪いという意味です。さて、△13角の局面に戻りまして、▲68銀△42銀▲46歩と進んだ局面を第一図とします。この第一図からの分岐を見ていきます。(1)△36歩▲47金の前に3筋の歩を切りに行く手です。ただ、▲36同歩△同飛▲47金△34飛▲36歩△44歩▲37銀で先手に厚く構えられる可能性があります。後手は4筋が1つの狙い目でしたが、先手の▲37銀+▲47金型により46の地点が堅すぎて手が出せません。また、△33桂型を決めていて引き飛車にする余地がないのもまずいです。先手の囲いと後手の石田流の攻撃陣の距離が近すぎて、後手が押さえ込まれそうです。(2)△54歩▲47金△53銀▲77銀△64銀この指し方は▲75歩型に対して定番なのですが、今回は少し無理気味。▲66銀△31角▲76飛でひとまず受かります。以下、△24歩▲56歩△25歩▲96歩△24飛には▲55歩と仕掛けて先手十分。後手は引き角のラインに力を足した分、居角のラインが受けにくくなっています。(3)△44歩▲47金△43銀▲77銀ここで後手が△54歩と△54銀のどちらを選択するかで将棋が変わりますので、分岐して見ていきます。(ア)△54歩△54銀がなくなり、後手から当面の早い攻めが消えたので、先手は攻撃陣の整備を進めます。▲76銀△24歩▲66角△25歩▲77桂△24飛▲84歩△同歩▲同飛△83歩▲89飛△26歩▲同歩△同飛▲27歩△24飛▲96歩と進んだ局面を第二図とします。ここで後手の指し手ごとに分岐を見ていきます。(a)△94歩端歩を受けた場合です。先手は攻撃態勢が整っているので、▲95歩と仕掛けます。△同歩▲93歩に△同桂は▲95香で先手好調。▲93歩に△同香は、▲85銀と出て▲74歩△同歩▲同銀の一歩交換を狙います。△73歩▲85銀なら、次に▲94歩が狙えます。▲93歩に△同銀は▲95香△94歩▲74歩△同歩(△95歩は▲73歩成△同金▲85桂)▲93角成が一例。△同桂は▲94香△92歩▲93香成△同歩▲73歩で後手陣耐えきれません。△同香は▲92銀△73金▲81銀不成△62玉▲85桂の要領で攻めが続きます。(b)△31角角が13にいても働いていなかったので、引き角のラインに置いた手です。先手としては7筋の歩を切りたいので▲85銀と出ます。後手は△42角で△33桂にひもをつけ、△45歩を突けるようにします。この局面で▲74歩△同歩▲同銀△73歩▲85銀は先手が少し危険で、△45歩▲同歩△26歩▲同歩△同飛▲27歩△66飛▲同歩と十字飛車で飛車角交換に持ち込まれた後に△78角があり、後手十分です。先手は飛車を持てましたが、飛車だけでは後手の金無双に早い攻めがありません。よって、先手は▲56歩でこの筋を消しておき、▲74歩を楽しみにするのが賢明です。後手は△15歩と端の位を取って端攻めを狙います。▲95歩に△16歩▲同歩△17歩は▲同玉と取って耐えれます。ただ、△16香▲同玉△28歩▲17桂(下図)のような進行は実戦的にはかなり怖いでしょうね。(ウ)△64歩▲85銀に△63金上のような手で▲74歩を受ける手を作っています。また、△65歩▲同桂△64歩のような手も狙っています。先手は▲56歩で角の逃げ場所を作っておくのが無難でしょうか。△64歩型になった事で6筋を争点にしやすくなったので、▲57角~▲66歩~▲69飛から▲65歩の仕掛けを狙いたいところです。下図が一例です。▲57角型は△24飛を睨んでもいるので、▲56歩に△21飛と引くのも自然な対応です。尚も▲57角では、後手に△45歩の仕掛けがあります。▲同歩△同桂(角当たり)▲66角△36歩▲同金(▲同歩は△46歩)△57桂成▲33角成△31飛が一例で、難しいですが後手ペースかと思います。▲66馬には△47歩と垂らします。△21飛に先手は手が難しいですが、千日手は打開したいので▲95歩で端攻めの味を作ります。後手が△42金で桂馬にひもをつけて△45歩を狙う手に▲57角は、△34銀で次に△45歩を狙われ、▲57角が目標になりそうです。かといって▲85銀では△45歩▲同歩△36歩と仕掛けられ、後手十分。▲同歩は△68角成です。よって△42金には△68角成を消しておく▲58金が手堅い受け。△45歩▲同歩△34銀▲85銀に△36歩は▲同金(▲同歩は△46歩~△45銀でダメ)で大丈夫です。△36歩に代えて△45銀には▲46歩△34銀で一旦銀を追い返せます。ただ、後手には次に△36歩▲同歩△45歩▲同歩△46歩▲48金引△45銀(下図)があります。厳密には難しいですが、後手が指せる感があります。次回、△54銀と出る手を見ていきます。