今回から角道オープン中飛車で、居飛車側の速攻を受けてみたいと思います。

 

角道オープン中飛車の思想的には、△64銀型自体を▲65歩で咎めに行く方針が理想になります。実際にどれくらいそれを実現できるのかを見ていきたいです。

 

中飛車に関しては殆ど実戦で指していない事もあり完全な素人ですので(他の戦型も素人ですが)、いつも以上に常識的な所にも引っかかって検討する可能性があるので、温かい目でご覧ください。

 

基本図は下図(▲58飛まで)です。

 

 

まずは、基本図から△74歩として一気に居飛車に速攻を仕掛けを目指してもらいます。

 

△74歩には▲68銀です。この手だけは、攻めるにしても受けるにしても絶対に指します。

 

△73銀に対して、本当はまだ突きたくないのですが、▲66歩と突きます。

 

代えて▲48玉の場合、△64銀▲66歩△75歩なら▲65歩と突いて、中飛車十分なのですが、△75歩ではなく△73桂とされると切り札の▲65歩を突けなくなってしまいます。

 

 

これでは△64銀型が安定してしまいますので、角道オープン中飛車の思想的には許したくない展開です。

 

▲66歩にも構わず△64銀と出るのは、▲65歩が用意の一手。△同銀には▲67銀~▲55歩~▲77桂で銀を取るのが狙いになりますが、居飛車も抵抗してくるので分岐を見ていきます。

 

 

(1)△85歩

 

▲77角なら無難ですが、チャンスを逃す可能性があります。良さを求めるなら、△65銀型を素早く咎めに行きます。

 

▲77桂△54銀▲55歩△45銀▲65桂が気持ちのいい跳躍。次の狙いは▲53桂成です。不成では駒得はできますが、火種を失うようです。

 

 

△52金左と受けるなら、▲46歩△同銀に▲56飛は有力ですが▲54歩の方がわかりやすいでしょう。

 

△同歩▲同飛に△42銀は▲56飛で銀取りをかけ、手順に▲54歩を作りつつ、▲54歩、▲55角、▲26飛などを狙います。

 

△42銀に代えて△86歩なら、▲53桂成△42銀▲52成桂△同金▲32金が一例。

 

 

以下、△53銀▲56飛△47銀▲57飛△58歩には▲同金と取り、すっきりさせるのが正解で、▲68玉のように突っ張ると△87歩成でと金が近く、少し危険な意味があります。

 

 

(2)△54銀

 

一歩持った事に満足して逃げようという手ですが、許さず追い続けます。

 

▲55歩△45銀▲46歩が好手。△同銀は▲79角△47銀成▲88飛で次の▲56銀が受かりません。

 

 

▲46歩に△34銀なら、▲54歩△同歩▲同飛と捌きます。△42玉なら▲55角、△52飛▲同飛成の飛車交換は▲83飛や▲55角が残っている中飛車よしです。

 

 

(3)△72飛

 

▲55歩に△75歩を突けるようにして、銀を助けようという意図があります。

 

▲65歩を突いたからには咎めに行かなければなりませんので、▲77桂で銀取りをかけます。△54銀なら(1)△86歩の変化と同様に▲55歩~▲46歩から▲65桂と跳ねていきます。

 

▲77桂には△76銀が意表の一手ですが、▲同銀△75歩▲67銀△76歩▲68金(下図)と自然に受けます。△77歩成▲同角で駒得の中飛車が十分です。

 

 

 

という事で、最速で△64銀と出る手には▲65歩が利き、居飛車は△73銀と引くことになりそうです。

 

ただ、△64銀を引かせただけでも、中飛車の主張は通ってはいるのですが、もちろんそれで将棋が勝ちなわけではありません。

 

ここからは、△73銀▲48玉以下の変化を少し検討していきたいと思います。

 

 

(1)△34歩

 

角道オープン中飛車としては△64銀を撤退させた時点で▲55歩を保留する理由がなくなるので、▲55歩で角道を止めるのが自然な手です。

 

ここで、居飛車がすぐに△54歩と突いたケースを少し見てみます。▲同歩は△88角成でダメなので、▲78金△55歩と進みます。

 

こういうのをどちらで取るのかとかが中飛車素人の自分には難しいのですが、将棋AIによると、この場合は最初に角で取り、飛車を残すのが正解のようです。

 

その理由を自分なりに考えてみました。▲55同飛以下、△42玉▲38玉△33角▲77角と進んだ場合、結局最初に飛車で取った場合と同じ感じの局面になるのですが、振り飛車側が▲88角型よりも▲77角型の方が都合がいいので、▲88角を先に捌く進行を選んでいるのかもしれません。

 

 

 

(2)△64歩

 

△64銀型を諦めないという強い意志を感じる手ですが、こちらとしてもそれを許すわけにはいかないですので、四間飛車に振り直して対抗します。

 

▲同歩△同銀▲57銀△62飛▲68飛で下図です。

 

 

この局面ですぐに△65銀と出る手には▲55角があります。以下、△64歩には▲65飛△同歩▲91角成△66歩▲68歩で中飛車よしです。△67歩成▲同歩に△88飛は▲58銀△89飛成▲81馬で次に▲63香を狙います。△88飛に代えて△67同飛成には▲68香があります。

 

 

△73桂▲38玉に△65銀も無理筋で、▲55角△64歩▲77桂△76銀▲64飛△同飛▲同角△63飛▲65歩△77銀成▲81飛で中飛車よしです。

 

 

そこで、居飛車は速攻は諦め、一旦駒組に入るのが相場です。最低限△72金+△73桂型に組めば▲55角は無筋ですが、△65銀には▲77桂△76銀▲62飛成から飛車交換が約束されていますので、居飛車は飛車交換に挑める陣形まで組む必要があります。

 

居飛車は△34歩を突くと、▲22角成で中飛車の角が捌けますので、実質角落ち状態なのが辛いところです。中飛車が打開するとしたら、▲46銀~▲55銀とぶつけて、飛車交換を挑むのが一案になります。

 

 

 

さて、ここまでは居飛車が最速で△64銀と出てくる仕掛けからの変化を見てきましたが、次は△85歩▲77角の交換を入れた後、△64銀と出てみます。

 

これにも▲65歩を突きます。△73銀なら中飛車側は成功と捉えていいので、△同銀を咎めきれるかの勝負になります。

 

中飛車は先程と同じく▲67銀と上がりますが、▲77角型のため、すぐに▲55歩~▲77桂で銀を取りに行く手はありません。

 

 

ここからまた分岐を見ていきますが、△42玉のような自陣に手を入れる手に関しては次回以降に考えます。

 

(1)△54銀

 

▲55歩を突かれる前に逃げようという手です。

 

これには▲55歩△45銀までは指すとして、その後は普通に駒組に移ります。

 

居飛車は△34歩を突くと銀が動けなくなり、▲68角~▲46歩のように取りに行く手があります。△35歩~△34銀のように逃げれば、▲54歩から飛車を捌けます。

 

中飛車は三間飛車に振り直して、△74歩型を咎めに行くのが一案です。下図は進行の一例で、▲75歩△同歩に▲68角と引いています。

 

 

 

(3)△72飛

 

▲55歩△75歩▲同歩△同飛には▲78飛と回って、次に▲95角の準王手飛車を狙います。

 

 

以下、△76歩▲95角△42玉▲66歩△74銀▲68角△34歩▲46角で、次に▲76銀を狙えます。

 

 

 


ではこの記事の最後に、また▲66歩を突いた局面に戻って、居飛車が7筋を突き捨てた後に△64銀と出てくる早仕掛けを見てみます。

 

 

中飛車は▲74歩、▲65歩、▲67銀、▲48玉など、有力手が複数あり、判断に困るところかもしれません。

 

この居玉棒銀的な形の中飛車の基本的な反撃筋は、結局▲65歩~▲55角になるのですが、そういう意味では▲65歩が有力に見えます。

 

ただし、▲65歩△75銀▲55角△92飛と進んでも、中飛車にすぐに明確な戦果が挙がるわけではありません。ちなみに、居飛車もすぐに△86歩▲同歩△同銀とすると、▲82歩で痺れます。

 

 

この早仕掛けを咎めに行くとしたら、▲74歩と伸ばす手でしょう。△84飛は▲95角で王手飛車です。

 

▲74歩に△75銀は、▲65歩△86歩▲55角と出ます。△92飛には、今度は▲73歩成がありますので△84飛です。

 

 

ここで▲91角成は△87歩成で紛れるので、一旦手を戻します。

 

▲86歩△同飛(△同銀は▲73歩成)▲79金に△88歩は▲77銀△87飛成▲88飛で無効。△88歩に代えて△78歩も▲77銀△87飛成▲78飛で受け止めています。

 

よって、▲77銀を消す△76銀が最善ですが、▲88歩△87歩▲同歩△同飛成▲88歩と頑強に受けて中飛車十分。▲79金型が堅いです。

 

 

というわけで、今回は居飛車側が最速で△64銀型からの仕掛けを狙ってきた場合について考えてみました。

 

中飛車に有利な変化が多いのですが、しっかりと咎める必要があるので実戦的には油断はできません。

 

次回は、一度△42玉を入れた後に居飛車が仕掛けてくるケースを考えてみます。