今回から、向かい飛車(金無双)と三間飛車(美濃)の相振り飛車の将棋を検討していきます。

 

相振り飛車はそもそも課題局面を想定しづらいので扱いづらいのですが、とりあえず典型的な形から始めて、この戦型の特徴を少しずつ理解を深めたいなと思っています。ただ、今回のテーマはなかなか大変というか、これを書いている段階では明確な解決策がわからないので、これまで以上に試行錯誤しながらの道になると思います。

 

さて、自分は相振りでは三間に振って美濃に囲う事は決めていますので、三間目線からの金無双志向の向かい飛車対策を検討していきます。

 

先手が向かい飛車、後手が三間飛車です。

 

今回は、先手の▲65歩に対して、後手が△64歩と仕掛ける形について見ていきたいと思います。


なかなか凄いところから行きますが、色々な相振り本で出てくる仕掛けです。美濃の6筋が堅いというのも、これをやれる理由の一つでしょう。

 

 

 

では局面の検討に移ります。基本図は下図です。

 

 

先手はここで早々に▲65歩を突きます。

 

後手は△64歩からの仕掛けを狙うため△44銀と出ますが、先手は後手の飛車の横利きが止まったので、▲84歩から8筋の歩を切りに来るのが普通です。

 

先手の飛車の引き場所は難しいところですが、今回は▲86飛と浮き飛車に引いておきます。相振りではオーソドックスな引き場所でしょう。

 

後手は△33角として角にひもをつけておき、仕掛ける準備をします。先手は手が広いところですが、▲38玉と寄っておきましょうか。

 

ここで後手が△64歩と仕掛けた図を第一図(下図)とします。

 

 

先手の応手はいくつか考えられますが、今回は▲同歩の変化を見ていきます。

 

▲同歩に後手は△55銀と出て、次に△66歩を狙います。この歩が打てれば後手十分です。先手の対処ごとに変化を見ていきます。

 

(1)▲56銀

 

 

銀をぶつけてきた場合です。△同銀▲同歩△64飛に、先手がまともに受けるなら後手の攻めが続きます。補足ですが、△33角と上がっていないと、△同銀とは取れないところでした。

 

先手が反撃するなら▲33角成△同桂▲22角くらいですが、△69飛成と成り込んで後手十分。▲22角に代えて▲55角は△34飛で受かります。

 

 

(2)▲56歩

 

 

▲75歩型なら△64銀と引く手が有力(▲75歩の取りになる)になるところですが、この局面では△66歩と打ちます。

 

先手は▲56歩を打ったからには引くわけにいかないので、▲55歩△67歩成▲同金△64飛まではほぼ必然。

 

先手は手が広いですが、▲66歩なら△24角と覗いた手が少し受けづらく、▲46銀で受けるのでは先手不満でしょう。

 

 

先手は▲66歩に代えて▲68歩の方が勝り、角道を止めない上、△24角の受けにまでなります。

 

 

攻めるなら△78銀▲66金△67歩ですが、▲75銀と打たれるとさすがに攻めが止まります。

 

 

となると、第一図で△64歩と仕掛けるのは実戦的にはありだと思いますが、厳密には無理筋かもしれません。

 

そこで、▲38玉と寄った局面まで戻って、後手は△24歩と突いて様子を見る事にします。以下、▲96歩△25歩▲75歩に△64歩と仕掛けた局面を第二図とします。

 

 

この局面から、▲64同歩△55銀以下の分岐を見ていきます。

 

(1)▲56歩

 

今度は△64銀が▲75歩の取りになります。

 

 

△75銀を普通に受けるなら▲76銀でしょう。後手は攻めを継続したいところです。ここから、△36歩と△77角成の変化を見ていきます。

 

(A)△36歩

 

▲同歩△同飛▲37歩なら、△56飛で後手十分でしょう。放っておけば、後手は好きな時に△65銀▲同銀△86飛▲同角△99角成があります。

 

 

△56飛に▲57歩なら、△54飛▲48金上なら△55銀(次に△66銀)、▲33角成△同桂▲22角には△44角で切り返します(▲97香なら△45桂)。

 

よって、△36歩には▲66歩が賢明ですが、△26歩▲同歩△25歩が継続手。

 

▲36歩△26歩▲37銀△35歩▲同歩△同飛▲36歩なら△75銀で捌けます。

 

 

△25歩に▲同歩なら△13桂で△25桂を狙います。

 

 

(B)△77角成

 

角交換した後、△66角が継続手。△77角成と△75銀が狙いで、先手は対処が難しいです。

 

 

▲67金なら△75銀▲同銀△同角▲76飛△74飛が一例最後の△74飛はAIの示す最善手で、次に△66歩を狙っています。

 

 

△74飛に代えて△66歩▲同金△同角▲同飛△57銀▲65飛△58金のような展開も有力で、後手の飛車が少し遊んでいる印象も受けますが、実戦的には金銀がはがされている金無双が勝ちにくそうです。▲28銀型も祟る展開でしょう。

 

 

 

(2)▲76銀

 

事前に△75銀を受けた手です。AIは全然示してこない手ですが、指されてみると何を指せばいいのか難しいです。

 

 

△64銀は大悪手で、▲33角成△同桂▲84歩△同歩▲83歩△同銀▲56角で先手優勢です。

 

 

しかし、代えて△66歩で拠点を作りつつ先手の角道を止めておく手(菅井ノート推奨手)や△64飛▲65歩△54飛▲85銀△82玉のような手なら無難ですが、先手が無理に動かない限り、明確な後続の攻めは難しいです。

 

あえて攻めを継続するなら△66銀が一応あり、▲88角△67歩と垂らしておきます。

 

 

後手は次に△64飛と回り、△68歩成▲同金△75銀(▲同銀なら△68飛成)や△57銀成▲同金△88角成▲同飛△79角が狙えます。△64飛に▲69歩ならそれ以上の攻めはありませんが、後手がポイントを挙げたと見てもいいでしょう。

 

△67歩の時、△64飛を防ぐ▲65銀なら、△75銀▲85飛△64銀▲56銀△88角成▲同飛△75銀(次に△66銀~△74飛)▲67銀△66歩▲56銀△76銀▲68歩△33角(次に△67歩成)でどうか。形勢は互角ですが、攻めている後手の方が多少気が楽でしょうか。

 

 

結論として、▲76銀と上がった場合、(先手が無理をしない限りは)大きな戦果を挙げる事は難しそうですが、一定のポイントを後手が挙げる事はできるかもしれません。

 

 

(3)▲68金上

 

平然と金無双を完成させる手です。▲76歩型では△66歩でダメでしたが、▲75歩型では▲86飛の横利きが通っており、後手はすぐに△66歩を打てません。△64飛には、おとなしく▲66歩を打ちます。

 

 

後手が攻めを継続するなら△65歩で、▲同歩△同飛で△75飛を狙います。

 

▲66歩なら、△75飛で歩を取れてもそれ以上の継続の攻めは難しいです。ただ、後手に一歩得の主張は残ります。

 

▲66歩に代えて、先手が反発するなら▲56歩です。

 

 

△44銀では収まってしまいますので、攻めを継続するなら△64銀(次に△75銀)と引きます。

 

先手も咎めないと不利になるので▲76銀と立ちます。以下、△75銀▲65銀△86銀▲同角△88飛まではほぼ一直線。後手は飛車を先に打ち込めましたが、銀損ですし、さすがに少し不満でしょうか。

 

 

 

という事で、今回は△64歩からの仕掛けについて見てきました。

 

実戦的にはあり得る仕掛けで、注意点は▲75歩型かどうかで▲56歩に対する後手の最善手が変わる点です。

 

ただ、▲56歩のように先手が反発してこなければ、後手が攻め潰すのは容易ではないようです。

 

また、△64歩を必ずしも先手が▲同歩と取るわけでもありません。

 

次回は、△64歩に▲56銀と出てくる変化についても見てみます。