今回はタイムループ物の中では傑作とまでは行かないんだけど、ポップで楽しく、気軽に観れる反面、普遍的なメッセージを持っていて、なおかつ考察しがいがあるタイムループ物の恋愛映画をご紹介します。
パーム・スプリングス
主演︰アンディ・サムバーグ/クリスティン・ミリオティ
出演︰ピーター・ギャラガー/J・K・シモンズ/タイラー・ホークリン/デイル・ディッキー/カミラ・メンデス/メレディス・ハグナー/クリストファー・パン/ジューン・スキップ/ジャクリーン・オブラドーン
・あらすじ(ネタバレ)
アメリカ、カリフォルニア州。パーム・スプリングス。一頭のヤギが荒野を歩いていました。砂漠地帯には地割れが起き、大きな亀裂ができると、亀裂の中からオレンジ色の光が発光していました。
2019年11月9日、朝、ナイルズは恋人のミスティに「起きて。」と言われ、目を覚まします。ナイルズはホテルの一室にいました。ミスティは彼の横で足にクリームを塗っていて、彼が「いい足だね。」と褒めると、ミスティは「しょうがないなぁ。さっさと済ませよう。」と返します。早速、ナイルズとミスティは行為を行いますが、ミスティは「ごめん。明る過ぎるし、汗かいてるよ。」と汗をかきたくないと言い、「私を見ながらイッて。」と代わりに自慰をするようナイルズに告げます。ナイルズが勃起させようとしている間、ミスティは自分の荷物を確認して祖母の指輪がないことに気づき、慌てて指輪を探します。指輪は見つかり、ナイルズが服を着たあと、ミスティは「イカなかった男はあなたが初めてよ。私がイカないことはよくあるけど、年のせいにしないでね。」と指摘します。ナイルズは「君のせいじゃない。」と言いますが、「違った。俺は悪くない。君だ。」と訂正します。彼が「殺してくれ。」と嘆くと、ミスティは「結婚式って緊張するけど、この事は持ち込まないで。神聖な日なんだから。それに私らじゃなくて、タラとエイブ(エイブラハム)の式なのよ。」と説明します。その日はミスティの友人のタラの結婚式で、ミスティは結婚式に招待されて来ていました。ナイルズは彼女の付き添いで来ていて、タラとエイブ、彼らの家族と関わりがありません。その後、ナイルズはアロハシャツ姿で屋外のプールに飛び込み、ピザの浮き輪に乗ってプールの上で横になっていました。同じ式で招待されていた黒人男性のジェリーが「調子はどうだ?」と言って話しかけてくると、ナイルズは持っていたビールを渡し、ジェリーが「今日の気分は?」と尋ねると、ナイルズは「今日も明日も昨日も同じさ。」と答えます。
夕方、結婚式が始まり、チャペルでは結婚式の司会者、トレヴァーが陽気にスピーチを行っていました。ナイルズが場の空気を読まずにアロハシャツ姿でビールを開封します。日が暮れ、披露宴に入ると、ミスティは「なんてステキな夫婦なの。#人生の目標だわ。私たちはこのイベントの目撃者として…」と式でスピーチを行っていました。花嫁の付添人であるタラの妹、サラはワインを飲みながら憂鬱そうにスピーチを聞いていると、スピーチを終えたミスティが「新婦の実姉を紹介します。」と言ってスピーチを振り、戸惑うサラは仕方なくスピーチしに行こうと立ち上がりますが、するとそこへナイルズが現れ、サラを助けようと「助っ人の俺が愛について語ってやる。」と言ってマイクを手に取ります。周囲はざわつき、ナイルズは即興でスピーチを始めます。ナイルズは「皆、生まれながら迷い子だ。いつか見出されるが、誰もが皆迷い子だ。だが、暗闇にいても、光は差す。タラ・ワイルダーとエイブラハム・シュリーフェン。美女と野獣だ。2人の楽観的な性格と他人を思う心は親譲りだ。特にタラ、君のことを皆にもっと知ってもらうべきだ。俺が話そう。タラがチャリティに捧げたのは金や時間だけじゃない。自分自身の体の一部も捧げた。そう、骨髄だ。タラのおかげで弟のニコは命を救われた。今日は君に捧げよう。君は今、ここの誰よりも険しい崖の上に立たされている。怖くて不安に感じているだろう。でも覚えておいて。君は1人じゃない。ここにいる皆が君の家族だ。君が夢を叶えるのをワクワクしながら応援しているんだ。」とスピーチをし、スピーチを聞いた一同は拍手し、ナイルズがグラスを掲げるよう求めると、「かつては迷い子だが、今、見出された。」と言って乾杯します。
食事が終わり、夜の式場でダンスタイムが行われます。披露宴に参加しているほとんどが式場で流れる音楽に乗せて踊るなか、周りに合わせたくなかったサラはひとりワインを飲んで席に座っていました。新郎の付添人でエイブの友人であるランディは酔ったままサラを誘いますが、タラは「私にはその気がない。」と言って断ります。するとその直後、そこへナイルズが参加者をかき分けてサラの前に現れます。ナイルズは踊りに誘い、タラは1度断りますが、ナイルズのことが気になり、彼に話しかけます。サラは「なにか匂う?」と臭いを嗅ぐ彼に聞くと、彼は「君のヘアミスト、"オーキッド・エクスプロージョン"だろ?」とサラが着けていた香水を言い当てます。バーテンダーのデイジーがナイルズのお酒を2杯分持ってくると、彼は「頼むのが面倒だから2杯目も頼んだ。」と言い、サラは「ただの依存症かもね。」と言い、サラと酒を酌み交わします。お互いに自己紹介をしたあと、ナイルズは再び踊りに誘いますが、サラは「足が痛くて。」と言って再び断ります。そこへエイブの祖母ナナが現れ、「これまで多くの結婚式に参列したけど、あなたのスピーチは今まで聞いた中で1番最高だったわ。」とスピーチを褒めます。ナイルズは嬉しい気持ちになり、サラが「あのスピーチ、嘘だよね?」と指摘すると、ナイルズは「そうだ。誰もが独りさ。」とそれを認めます。ナイルズは式場の外を確認しつつ、「ここを抜け出して2人にならない?」と積極的に誘い、誘いを受けたサラは「2人で消えたら、ミスティが誤解する。」と言いますが、ナイルズは「あいつは平気さ。」と言います。ナイルズはミスティの居場所を知っていて、サラに居場所を案内すると、ミスティは部屋の洗面所で司会者のトレヴァーと行為に及んでいました。その様子を覗き見たサラは驚き、ナイルズは「いい子なんだけど、これは傷つく。」と言い、サラが止めるよう求めると、ナイルズは「止めたところでいつもこうなるんだ。」と説明します。一方、サラは「これは慰めになればいいけど、私は一家の恥なの。酒飲みで尻軽で厄介者なんだって。家族はいつも私を気遣ってくれているけど、正直それが重い。」と説明します。サラは自分が厄介者だという自覚がありました。ミスティの喘ぎ声が聞こえるなか、興奮してきたサラは「ムラムラする。」と言い出し、ナイルズが「キスしないで。」と言うと、サラは「指図しないで。」と告げます。お互いにいい雰囲気になり、ナイルズはサラを近くの荒野に連れ出すと、岩場で肌を重ねようとします。サラはナイルズのズボンを開けることができず、ナイルズが下に着ていた水着とパンツを脱ごうとしますが、突然、彼の肩に弓矢が突き刺さります。暗闇には謎の襲撃者が弓矢を引いてナイルズを殺しにかかろうとしていました。サラは悲鳴を上げ、ナイルズは「来ると思った。」と言い、サラを置いて襲撃者から逃げ出します。襲撃者はナイルズを追いかけ、困惑したサラは2人に声をかけますが、返答はありません。謎の襲撃者、ロイは弓矢をナイルズのお尻に命中させ、ナイルズは「おい、しつこいぞ。ロイ。」と言って岩陰に身を潜めます。ロイは「好きなだけ逃げろ。俺は必ず見つけてやる。」告げ、目の前の洞窟の中へと向かっていきます。その洞窟の奥はオレンジ色の光が発せられていて、ナイルズはあとを追うように這って洞窟の中に入ります。ところが、彼を心配したサラがナイルズを追いかけ、「ナイルズ?大丈夫?」と声をかけます。ナイルズは「ダメだ。ついて来るな!」と警告します。
11月9日、部屋のベッドで目覚めたナイルズは横でクリームを塗っていたミスティに「いい足だ。」と声をかけ、ミスティは「さっさとヤッちゃおう。」と返します。暫く時間が経ち、ナイルズはピザの浮き輪に乗り、プールの上で寝そべっていましたが、ジェリーと言葉を交わしている途中、サラが屋外プールに現れ、「いたわね!一体私に何をしたの?」とナイルズに言い寄ってきました。サラは側にあったビール缶を水面に投げつけ、ナイルズが水の底に潜ると、サラはプールに飛び込み、「どういうことか説明して!」と詰め寄ります。あの時、彼を心配したサラはナイルズの警告を無視して洞窟の奥へと近寄り、オレンジ色の光に魅入られ、突然光の中へと引き寄せられたのです。そして、次の瞬間、サラは部屋のベッドで目覚め、携帯を確認すると、11月9日9時40分と表示されていることに気づくのでした。事態を飲み込めないサラがダイニングに向かうと、娘を心配して探していた父親のハワードと繼母のピアがサラを迎え入れます。ハワードは「朝の6時に部屋に行ったんだが。」と言うと、サラは「早起きして散歩に行ってたの。」と誤魔化します。タラとエイブの家族はダイニングで結婚式の準備に取り組んでいて、サラは「本当に結婚式をやるの?」「結婚式はもうやった。」と訴えますが、ハワードとピアは彼女に理解を示しません。そんな時、サラはプールで寝ていたナイルズに気づき、「一体私に何したの?」「どういうことか説明して!」と詰め寄ります。
現在、騒ぎを聞きつけたタラがプールに現れ、「姉さん、何してるのよ?」と言ってやって来ますが、足を滑らせて転倒してしまい、頭を打って前歯を3本折ってしまいます。ハワードとピアたちは結婚式の6時間前に新婦の歯が折れたことで慌てふためき、ハワードが歯医者に連絡すると、タラや側にいたミスティは礼を述べます。事態に混乱していたサラは吐き気を催します。サラがプールに戻ってナイルズに事情を説明するよう求めると、ナイルズは「追いかけるからだ。止めたのに。」と言い、サラが「どうなってるの?今はいつ?」と聞くと、ナイルズは「今日は今日で、昨日でもある。で、明日もまた今日なんだ。つまりよく聞くだろ。同じ日がループする話。」と説明します。サラは「どうやって止めるの?明日は明日がいい。」と言いますが、ナイルズは「残念だが、止められない。これから先、明日はずっと今日なんだ。」と答えます。ナイルズは2019年11月9日を何回も繰り返し、タイムループの中で時間を過ごしていたのです。サラは洞窟に連れて行くよう求めますが、ナイルズが洞窟があった荒野に案内すると、洞窟はどこにもありません。サラが「洞窟はどこ?」と尋ねると、ナイルズはビールを飲みながら「俺の言う通り、待て。」と答えます。暫く待ち、ナイルズが両手を広げて「俺は反キリストだ。」とジョークを言ったその時、地震が起き、地割れで地面に亀裂ができます。ナイルズは「地震は毎日起こる。地震で洞窟が現れるんだ。」と言って洞窟がある場所を教え、「行っても何も見つからないぞ。入ったらリセットされて、今朝起きた瞬間に戻るだけさ。起きたらまた同じ日が始まる。その繰り返しさ。」と洞窟に行きたがるサラに説明します。洞窟に入ったら今日が終わると知ったサラは何とか明日に戻ろうと洞窟に入りますが、次の瞬間、自分が今朝に戻って部屋のベッドの上にいることに気づきます。ナイルズもまた11月9日の朝に戻されます。
明日を迎えたかったサラは車でパーム・スプリングスを出ると、ガソリンスタンドで給油し、南東に向かって車を走らせました。ナイルズは「怖くて逃げたんだ。家族、結婚、愛情、メラノーマ、ナノテク、監視状態。あとは酒。すぐに戻るさ。」とホテルから消えた娘を心配するハワードとピアに話します。夜になり、結婚式でミスティがスピーチを始めても、サラはパーム・スプリングスに戻ってきません。サラは車を走らせたまま翌朝を迎え、テキサス州にある自宅に帰宅しますが、睡魔には勝てず、ソファーの上で居眠りしてしまいます。そして次の瞬間、サラは部屋のベッドの上で目覚め、11月9日に戻されてしまうのでした。
その後、サラはナイルズとミスティの部屋に押し入り、ナイルズを起こすと、彼を外に連れ出しました。サラはナイルズを車に乗せて走行し、話を聞くと、彼は「俺にも分からない。生か死なのか。夢なのか、俺らの妄想なのか。煉獄か。バーチャルシミュレーターの欠陥なのか。分からないから、俺はもう諦めたんだ。つまり、解明するのはやめたんだ。この世界では何もかもリセットされて、ここでは「全て無意味」なんだよ。」と言います。サラが「生きる意味は?」と聞くと、ナイルズは「俺たちは生きるしかないんだから、存在の苦しみを学ぶのが1番いいと思う。」と答えます。自殺しても、同じ1日が繰り返され、今朝に戻されるというのです。ナイルズは「死ねる方法はまだ突き止めていない。自殺は何度も試したけど、無駄だ。」と話すと、サラは「嫌だ。このループから脱出する。」と言い出し、アクセルを踏んでスピードを上げ始めます。ナイルズは死ぬ準備をして「死ねないけど痛みは感じる。ICU行きはゴメンだ。」と言い、サラは目の前を走っていたトレーラーに正面衝突しますが、結局、サラはナイルズと共に部屋のベッドに引き戻されてしまいます。
仕方なくサラはナイルズと共に彼がよく行く近くのバーで話をしました。ナイルズは「俺の言う通りだ。平穏を見つけるしかない。」と事態を受け入れるよう落ち込むサラを諭そうとすると、サラは「テキサスまで行ったのに目覚めたらここだった。」と答え、ナイルズは「俺なんてヤクをやって、赤道ギニアまで行ったこともあるけど、向こうに着いて、飛行機で着いた瞬間に意識がぶっ飛んだ。ラリって楽しかったけど、気を失って目覚めたらここさ。時間の無駄だ。」と話します。その直後、ナイルズはバーに通う老女、ダーラとダーツで勝負します。その様子を見ていたサラはナイルズを襲った謎の襲撃者ロイを思い出し、「あんたを襲った奴はだれ?」と尋ねると、ダーツの矢を投げ終えたナイルズは「あれはロイ。エイブの父親の親戚だ。知ってるのはそれだけだ。」と答えます。サラがロイがナイルズを殺す理由を彼に訊ねると、ナイルズは詳しい経緯を語り始めました。まだ1日を繰り返したばかりで、皆と馴染みが無かった時の頃、挙式の披露宴、バーテンダーのデイジーを口説いていたナイルズは元々結婚式に招待されていたロイに声をかけられます。ナイルズは彼と知り合い、酒を酌み交わします。2人は披露宴を見ながら会話を交わします。ロイは「孔子の言葉に「結婚は底なしの言葉がある。」という言葉がある。だが、底というのはちゃんとある。真っ暗闇の場所なんだ。」と語ったあと、結婚式の司会者、トレヴァーが所持しているドラッグを盗んでハイになろうと持ちかけます。誘いに乗ったナイルズはトレヴァーからドラッグを盗むのに成功すると、ロイと一緒に部屋の浴室に閉じ籠もってハイになり、お互いに意気投合します。やがて2人は洞窟がある荒野で酒を飲み、酔ったロイは「最高の夜になった。一生ここで暮らしたい。」と呟きます。その言葉を聞いたナイルズは洞窟を案内すると、「あんたの"望み"がある場所だ。」と言って紹介し、何も知らないロイは洞窟の中に入ってしまいます。同じく酔っていたナイルズは正気を取り戻しますが、時既に遅し、ロイは彼と同じように同じ時間を繰り返すことになるのでした。現在、ナイルズは「ロイは新たな人生を楽しめなかったんだ。幸いなことにヤツの家はアーバインだから、ここに現れるのは数日か数週間に1度だ。」と言います。サラがロイの動機を聞くと、ナイルズは「俺への復讐だ。根に持つタイプなんだ。」と答えます。ロイは自分を巻き込んだナイルズを恨むようになり、何度も何度もあらゆる方法で彼を殺して復讐していたのです。同じ時間を繰り返しているのはナイルズ、サラ、ロイの3人だけです。

勝負を終えたナイルズは「もう仲間を増やして面倒を見るのはゴメンだ。」と言い、サラとダーラと共にテーブル席で語り合います。サラは「このままずっと彼から逃げ続けるのは無理よ。」と意見すると、ナイルズは「何言ってんだ。無理なもんか。」と答えます。その後、ナイルズはサラと共にメキシカンブリトーの店で食事をします。会話中、サラは「セックスはしたの?」と結婚式にいた人たちと関係を持ったことはあるかと聞くと、ナイルズは「したけど、簡単にはいかない。出来れば、苦労せずに生きていきたい。」と答えます。サラが「ミスティ以外で誰と寝た?」と更に話を聞くと、ナイルズはバーテンダーのデイジー、バーに通う老女ダーラとヤッたと明かし、タラとは何度も誘ったものの、失敗に終わったと言います。ナイルズは同性でありながら結婚式の付添人であるジェリーとも関係を持ったと話し、ハワードとも関係を持ったと冗談を言ってタラを困惑させます。ナイルズが軽い気持ちで「君のセックスライフは?」と聞くと、タラは「あんたとは寝ない。」と答え、「この前はあんたとヤりかけたけど、今は嫌だ。」と身体の関係を拒みます。ナイルズは「俺もだ。同じことを考えてた。いつも会うんだし、複雑にするのはよそう。」と言い、サラは「私たちは未経験?」と確認しますが、ナイルズは「あんまりよく覚えてないけど、ヤッてない。」と否定します。ナイルズは結婚式に出席するよう提案しますが、サラは「戻るわけない。」と断り、ナイルズが「飲み食いして愛に浸れる。結婚式だぞ。」と言うと、サラは「あんたは何にも分かってない。あんたも私も皆、人はみんな孤独が耐えられないのよ。だから、クソみたいな祝い事を信じるわけよ。」と豪語します。その直後、サラは「そうか。カルマの仕業よ。このループから抜け出すには無私無欲になればいい。私たち以外の皆は元の世界で普通に人生を歩んでいるのかもしれないのよ。今まで考えたことある?」と言い出し、その話ナイルズは「じゃあもしそれが正しいと仮定して、無私無欲の行為って例えばなに?この日を終わらせるくらいのね。」と問いかけます。
数十分後、ナイルズとサラは夕方の挙式に参加します。トレヴァーが「君たち2人なら、人生という名の船は沈むことはない。」とスピーチするなか、サラは彼の司会進行を止めると、突然タラに抱きつき、耳元で何かを囁やきました。その言葉を聞いたタラは驚き、サラはその場から立ち去っていきます。すると次の瞬間、荒野で起きているはずの地響きが式場にも起き、サラの言葉を聞いたタラはショックを受けて泣いていました。夜になり、披露宴を抜け出したナイルズはバーで常連のアランとビリヤードをしていたサラを訪れ、「タラに何言ったんだ?」と聞くと、サラは「姉妹の内輪話よ。無私無欲って素晴らしいわ。」と答えます。サラは相手にとって迷惑だと思うことをすれば、1日を繰り返さずに済むのではないかと思い付いたのです。サラはタラに嫌な事を言って泣かせたのでしょう。サラは「この世界は最高とは言えないけど、楽しかったわ。そうだ。お願いだから、あんたのループの世界で2度と私を洞窟に連れて行かないで。それと、あんたを狙うじいさんと仲良くね。奴が元に戻れるカギかもよ。」と自信満々に言います。ところが、サラの自信はことこどく打ち砕かれ、彼女はまた部屋のベッドで目覚めます。今朝に戻された彼女はループから抜け出せないと諦め、ナイルズを外に誘い出します。誘われたナイルズはミスティが浮気を疑っていると言い当て、暗記していた彼女の言葉をそっくりそのまま真似します。
その後、ナイルズは事態を受け入れたサラをお金持ちの家族が暮らすとある別荘に案内します。サラが「ここどこなの?」と聞くと、ナイルズは「俺の"セーフハウス"だ。持ち主は留守にしてて、いつ戻るか知らないけど、今日じゃない。」と答えます。2人は浮き輪に乗り、ビールを片手に別荘の温水プールの上で寝そべります。別荘を出ると、2人はこの地帯に住む初老の男性、スパッズの元を訪れ、銃器の試しに撃って楽しみます。同じ日が何日も繰り返され、サラは同じ時間を過ごすナイルズと打ち解け合います。ある時は2人で飛行場の飛行機に乗り込み、空を飛んで楽しみ、ある時は2人でバーにのりこみ、陽気に軽快な音楽に乗せて踊ります。そして、ある時はサラに好意を寄せていた付添人のランディに「バスルームに来てくれる?」と誘惑して目隠しを渡すと、ミスティの浮気の現場に行かせるよう仕向けてイタズラし、ある時は披露宴のウェディングケーキの中に時限爆弾を仕掛け、披露宴中に茶番劇をして結婚式にいる人たちを困らせます。2人でお互いの背中に性器のタトゥーを彫ることもありました。次第に2人の距離は縮まっていき、ある時、サラはバーでループを繰り返すナイルズの誕生日を祝うこともありました。ナイルズにとって仲間のサラとの時間はかけがえのないものとなっていました。
ある夜、2人は砂漠地帯でテントを立て、キャンプを行います。焚き火の前で夜空を見ている最中、ナイルズは食べかけのチョコレート菓子を見せながら「このチョコレートは半分欠けてるけど、その部分は俺の腹の中にある。つまり過去だ。残された部分はチョコに包まれた未来だ。俺は欠けた部分に興味はない。君が何であろうと、ここにいることが大事なんだ。」と説明します。その話にサラは「でも気になる人の過去は知りたいでしょ。違う?過去を含めて全て知りたい。」と話すと、ナイルズは「そうは思わない。次のひとかじりが…」と言ってチョコレート菓子を食べ、「大事なんだ。」と言います。するとサラは「2年結婚してたの…。分かってたの。この結婚はうまくいかないって。プロポーズを受けた時から失敗するって。挙式の間もうまくいくと思えなかった。そのま結婚したけど、ダメだった。でも、この事実を無視し続けると、同じ事を繰り返すわ。」と自分はバツイチで、次の恋愛に踏み出せてないと打ち明けます。その流れでナイルズに自分の過去を話すよう求めますが、ループを繰り返すあまり、元々どんな人間だったのか思い出せないのか、ナイルズは「正直思い出せない。本当に覚えていない。もう随分前のことだから。 」と言います。ナイルズは憂いを帯びた顔を見せつつ、「マジックマッシュルームはある?」と聞くと、サラは「ここだと楽しめないな。この魔法の砂漠はあんまり好きじゃないの。」と言い、ナイルズは「それって寂しいな。」と返します。サラは「私を気にかけてくれてるの?」と訊ねますが、ナイルズは「俺が「寂しい」って言ったのはそういうことじゃなくて、例えば、ビールを飲み干して、2本目を開ける時と同じ感情だ。」と言ってビールを開け、「これで寂しくない。束の間の感情だ。」と言います。ナイルズは「過ぎ去っていく。何だってそうだろ。」と言い、サラが「何が過ぎ去るの?」と聞くと、ナイルズは「全部さ。」と答えます。ナイルズが2本目のビールで乾杯したその時、現実なのか、幻覚なのか、2人は3匹の首長竜が遠くでゆっくり歩いているのを目にします。驚く2人はこの光景を手を繋いで見つめていました。テントで就寝する手前、サラは「一線越えちゃう?」とナイルズを誘うと、ナイルズはその誘いに応じ、肌を重ねました。結ばれた2人は瞳を閉じて眠りにつきます。
11月9日の朝、2人は気持ち良さそうに部屋のベッドで目覚め、笑みを浮かべますが、新郎のエイブがサラの寝ているベッドの前に現れ、「そろそろ出ていってくれ。誰かに見られたらマズい。」と彼女に告げます。サラはエイブの部屋のベッドで寝ていて、結婚式の前日にエイブと関係を持っていたのです。それから彼女と結ばれたことを嬉しく思うナイルズと11月8日に自分が何をしたのかを思い出し、ループを思い出したいと思うようになったサラは2人でドライブに出ていました。サラの思いを知らないナイルズは「今朝はいつもと違う感じがしたんだ。何ていうか、いい気分だ。昨夜が原因だ。」と今朝は目覚めが良かったと言いますが、サラは「そう、そうね。」と適当に返します。ナイルズが「後悔してる?」と聞くと、サラは「楽しかったよ。本当よ。」と言いつつ、「もう繰り返しは嫌。」と明かします。ナイルズは「確かに、目覚める時は変だけど…でもほら、眠る時はマシかもよ。」と話します。しかし、その直後、サラは後方から1台のパトカーが自分たちのあとを付けてきていることに気が付きます。警察を気に留めないナイルズは「ちょっと話そう。昨日、セックスしたことについてさ…。」と言いますが、サラは「何を話すよ。全て無意味よ。」と返し、ナイルズは「全て無意味なのは困る。」と言います。サラはパトカーを伺おうとダッシュボードにあった空き缶を窓から投げ捨て、スピードを上げると、パトカーは反応を示し、ナイルズがロイかもしれないと指摘すると、サラは車を停め、「あんたが逃げるなら、私がやる。」と自分が襲撃しに来たロイと立ち向かうと言い出します。するとその直後、サラは「殺される。彼に殺されるわ。」と叫んで被害者を装い、パトカーの警察官に近づきます。警察官は投降するよう呼びかけ、その声を聞いて警察官だと思ったナイルズは車から降り、大人しく投降しました。ところが、ナイルズが後ろを振り向くと、そこには警察官の制服を着たロイが銃を構えて立っていました。警察官を装ったロイがナイルズを殺しにやって来たのです。ナイルズが殺されると思った次の瞬間、サラが隙を狙ってロイのパトカーを発進させ、彼を轢き殺すのでした。ナイルズがこの行為を咎めようとすると、サラは「こいつを殺さなきゃ、あんたが殺られてた!」と訴えますが、そこへ白バイに乗った本物の警察官が現れ、2人の身柄を確保します。重傷を負ったロイはイカれたサラの行動に戸惑っていました。警察官は2人に手錠をかけて道路脇に座らせます。警察官が目を離している間、人を傷つけてたくなかったマイルズは「リセットされるからと言って、むやみに人を傷つけていいわけないだろ。経験上、心は満たされない。例え、人の記憶に残らなくとも、俺たちは自分がしたことを覚えてるんだ。」と訴え、ループから抜け出したかったサラは「あんたがヘタレだから代わりに私がやっつけたのよ。」と主張します。やがて2人はサラが洞窟に入ってループに巻き込まれたことを巡って口論を起こします。口論の途中、ナイルズは「もう1000回はヤッてるぞ。」と呟き、その言葉に引っ掛かりを覚えたサラが「今なんて言った?」と尋ねると、ナイルズは「嘘ついた。君とは寝てる。何度もね。スピーチの後に口説くだけ。毎回リセットされてたけど、君がこの世界に来た。言うべきだったけど、言えなかった。でも言いたくなかった。だから嘘をついてた。それだけ。」と打ち明けます。ナイルズはサラがループに巻き込まれる前に何度も彼女と関係を持っていたのです。その告白を聞いたサラは何を思ったのか、「元の世界に戻る。」と告げると、道路に飛び出し、横を通り過ぎようとしていたトレーラーに轢かれます。
11月9日の朝に戻り、ナイルズは目覚めると、部屋にサラが訪れて来ないことに気づきます。異変を感じたナイルズはピアにサラの居場所を尋ねますが、ピアは「今朝、うちの夫が起こしに行ったらいなかった。」と答え、サラの部屋を確認すると、部屋には誰もいません。サラはナイルズの前から何も言わずに姿を消したのでした。ナイルズが「誰か、サラが部屋で寝てるのを見た人はいる?毎朝俺を起こしに来てくれたんだ。」と皆に呼びかけても、ミスティやタラとサラの親は理解を示しません。ナイルズは何日も同じ日を繰り返し、サラが行きそうな場所に行って探しますが、彼女はどこにもいません。ナイルズはサラを見つけられず、同じ日を繰り返しながら孤独な時間を過ごし、サラの存在がいかに大切な存在であったかを思い知らされます。
そんなある夜、披露宴の途中、ナイルズはエイブ、トレヴァー、ジェリー、ランディと一緒につるみ、エイブの部屋でひと休みしていました。エイブたちはトレヴァーが持ってきたドラッグを吸ってハイになっていましたが、失意に暮れていたナイルズは部屋のベッドで横になっていました。しかし、ナイルズが側にあった枕に頭を沈めていた時、枕カバーに嗅いだことのある香水の匂いがついていることに気づきます。サラが着けていた香水が枕カバーに付着していたのです。エイブが立ち去ったあと、ナイルズは「昨日(8日)、タラはここで寝た?」とトレヴァーたちに確認すると、トレヴァーは「いや、式が終わるまで2人の部屋は別々だ。」と答えます。エイブはタラの知らないところでサラを部屋に連れ込んだのでしょう。そのあと、ナイルズは枕を持って披露宴の会場に乗り込み、「君の姉さんはエイブと寝てたんだ。毎朝、こいつの隣で目覚めて、こっそり部屋から抜け出してたのさ。それで自己嫌悪になったのさ。」と暴露します。彼はその証拠としてタラに枕カバーについた香水匂いを嗅がせ、浮気を知ったタラはショックを受けます。彼は「式の前夜に花嫁の姉と浮気か。それとお前らもクソだ!サラはいい子だ!何に不満があるというのだ!」と訴えますが、式を台無しにされたエイブはナイルズに飛びかかり、取っ組み合いを起こしました。それから彼は同じ日を繰り返し、タラとエイブの幸せをぶち壊したことに罪悪感を覚えます。披露宴に参加していたナイルズはハワードとピアが歌う『ラヴァーズ・コンチェルト』を悲しそうな顔で聴いていました。披露宴が終わり、ジェリーを連れて部屋に戻ったナイルズは泣きながら「サラに会いたい。愛してるんだ。」と思いを吐露します。
次の9日の朝、何日経ってもサラに会えないナイルズは車でアーバインに住むロイの家を訪れます。彼が住宅街にあるロイの家の前で「ロイ、こっちから来てやったぞ!拷問は歓迎だ!あんたの言う通り、確かに真っ暗闇だ。」と挑発すると、料理をしていたロイは驚いてナイルズを止めに入ります。仕方なくロイは彼を家に上がらせ、「ここに来るな。」と注意します。ロイには家族がいて、妻、長男、双子の息子と娘と一緒に暮らしています。ロイは妻のジェイミーにナイルズは古い友人だと誤魔化し、彼を裏庭に連れ出しました。裏庭には犬のフンに水やりをしている双子の息子ジョーイと馬のおもちゃに跨っている娘がいました。ロイは「この年で父親だ。マイタイを飲みすぎてゴムを着け忘れて避妊に失敗した結果さ。だからマイタイに乾杯。」と言い、ナイルズと酒を酌み交わします。ロイが渡したビールには何も入っていません。ナイルズが「これがあんたの人生か。」と言うと、ロイは「いいだろ?美しい妻と可愛い子どもたち。ジョーイは犬のフンに餌やり。変な子だ。でも悲しくない。」と語り、ナイルズが「結婚は底なしの悲しみじゃないのか?」とロイが前に披露宴の時に言った言葉を持ち出すと、ロイは「物事は変化する。大切なものは変わってくる。」と言います。ジェイミーが不審がるなか、ナイルズは「暫く現れなかったよな。」となぜサラが消えたと同時に襲わなくなったのか聞くと、ロイは「あれから俺は病院に運ばれて、昏睡に陥らないように眠らせて貰えなかった。俺はお前を恨んでた。だって、子供の成長が見られないんだ。バージンロードも歩けない。以前の俺は自分のことばかりでよく考えず、お前を苦しめていた。でもあの時入院してみて気づいたんだ。ここの暮らしはいつも楽しい。だって、妻は人生で1番輝いてるし、息子は懸命にフンを育てている。娘は昼に家族の絵を描いてるんだが、全員動物なんだ。俺は熊ちゃんだ。最高の人生じゃないか。」と答えます。ロイは同じ日の繰り返しの中で子供の成長は見られなかったものの、平穏な毎日の大切さに気付かされ、ナイルズの復讐をやめて家族と穏やかに暮らしていたのです。ロイは「君も幸せを見つけろ。」と言うと、ナイルズは「俺には見つからないよ。」と言いますが、ロイは「誰にでも見つかる。」と言います。先日自分を轢いたサラが同じループに巻き込まれた人間だと知ったロイは「少なくともその子がいる。1人でこの世界で生きるよりはマシだ。」と助言します。次第に双子の娘も不審がるようになり、ナイルズは今度食事がしたいと提案しますが、ロイは「いや、もうお互いに会わないほうがいい。お前じゃない、俺の問題だ。」と言います。それならばとナイルズは渋滞を避けたいという理由で自分を殺すよう頼み、ロイは人目につかない場所に移動すると、「幸せを見つけろ。」と言って弓矢でナイルズを射殺するのでした。
ところ変わって、明日を迎えたかったサラはナイルズの前にトレーラーに轢かれ、9日の朝、エイブの部屋のベッドで目を覚ましました。起き上がったサラはシャワーを浴びていたエイブに「あんたと寝たのは最大の過ちよ。ヤッたのは間違いだった。もし私たちが報い受けても、文句は言えないわ。恥ずべき行為だった。でも私は心を入れ替える。」と告げます。罪悪感を感じたエイブは泣き出し、「どうしてバカなことをしたんだ。俺は最低のクズだ。」と嘆き悲しみます。サラは朝早くから車でホテルを抜け出すと、パソコンと資料を持ってダイナーに立ち寄り、オンライン講座で量子物理学を勉強しました。彼女は居眠りすることもありましたが、何日も勉強を続け、洞窟に入って検証を行います。そして、充分な知識を身に付けた彼女はループから抜け出す方法を思いつき、スパッズの家で飼われていたヤギを使うと、そのヤギに爆弾を巻き付けて洞窟に連れて行き、実験を行いました。実験は成功し、抜け出す方法を見つけた彼女はナイルズに会うことにしました。
次の9日の朝、射殺されたナイルズが目覚めると、そこにはサラがナイルズの前に座っていました。サラは「ただいま。」と言うと、驚くナイルズは「良かった。元気そうだ。」と言って再会を喜びます。ミスティが部屋の外で締め出したサラに怒るなか、サラが「調子はどう?」と聞くと、ナイルズは「最悪だった。実はかなり落ち込んでたんだ。」と答えます。ナイルズは「悪かったよ。俺たちの過去を黙ってて本当にごめん。君が怒って出ていったのは分かるよ。でも考えてみると、俺が正直に打ち明けるまでは俺たちすごくうまくいってた。だからもう1回やり直せないかな?」ともう1度やり直したいと言いますが、サラはナイルズの話をサラリと受け流し、「元に戻る方法が分かったの。」と話を切り出します。その後、サラはループから抜け出す方法を詳しく説明します。彼女は口紅で鏡に絵を描きながら「同じ日に目覚める3.2秒以内に箱から出ればここから抜け出せるはず。」と言い、ナイルズが「どうやって出ればいい?」と聞くと、彼女は「洞窟で爆死するの。タイミングよくピッタリの瞬間にC4爆薬で自爆すれば、ループから脱出できる。」と話し、ナイルズは「どこに?」と聞きますが、彼女は「目が覚めたら今日か20年後かもしれないし、崩れた洞窟の中かもしれないし、それは分からない。確証がないからあくまでセオリーと言うんだけど、試す価値はある。」と答えます。9日の朝に戻る前に爆死すれば、ループから出られるのですが、どこに移動させられるのかは分かりません。サラは式に出ようと着替えに行き、その方法に乗りないナイルズは「でも必要あるか?また君が絶望するのは見たくないんだ。前に失敗しただろ?」と意見しますが、着替えを済ませたサラは「今回は違う。テスト済みよ。」と言い、「スパッズのヤギよ。洞窟に連れてって、爆破させたらいなくなった。どこかに消えたの。」と実験をして成功したことを報告します。彼女は「今日は大人しく過ごして、夜にはここには抜け出すよ。」と話すと、ナイルズは「もっと検証したらどう?洞窟は逃げないし、焦る必要はない。もし脱出できたら?」と返し、彼女はナイルズが洞窟での自爆でループを抜け出す方法を聞いて怖がっていると見抜こうとします。しかし、ナイルズは「出たくはないんだ。怖いのとは違う。」と怖いのではなく、ループの世界にいたいからだと伝え、「君と一緒にいたいんだ。俺は君を愛してる。」と告白します。それに対しサラは「なぜそんなことが言えるの?この世界にはあんたと私しかいない。元に戻ったとしても、大勢の中から私を選ぶって言うの?」と訴え、ナイルズは「戻る必要はないだろ。死に貧困、精神的苦痛の世界だ。ここならずっと一緒にいられる。」と伝えますが、サラは「目を覚まして。ここでは何をやっても全て無意味なのよ。」と訴えます。ナイルズは「エイブのことは知っている。戻ったら戻ったで面倒だろ。」と指摘したうえ、「俺はそういうの気にしない性格だ。深く考えるな。」と言うと、サラは「あそこで目覚めたくない。人生を取り戻したいの。」とこの世界から抜け出す意思を伝えます。サラは「ここから出たいなら、私と一緒に来て。」と一緒に抜け出そうと誘うと、ナイルズは「断る。でも一緒にいてほしい。」と断り、サラは彼を抱き締めて別れを告げるのでした。一旦部屋を出たナイルズは廊下で待機していたミスティに「もう別れよう。俺が嫌いだろ。」と別れを切り出し、ミスティは「告げるのは私よ。フるのは私なんだから。」と言って機嫌を悪くします。
その後、ナイルズとサラは別々に行動し、サラは大人しく過ごそうとタラとエイブの結婚式に参加します。夜になり、披露宴でミスティのスピーチが終わると、ミスティはタラの姉のサラにスピーチするよう求めました。サラはスピーチで姉への思いを語り始めます。彼女は「12歳の頃、新しい学校に通い始めたの
。そこで異なる環境に怖気づいて、毎晩悪夢を見ることに悩まされた。でもぐっすり眠れた日があって、目を開けたらタラが私にくっついて、眠ってた。うなされてた私に気づいて、きっと安心させるためにベッドに潜り込んだのね。まだタラは5歳だったのね。以後、悪夢は見なくなった。タラ、あなたの持つ他人を思う心と頼もしさは特別なものよ。とても貴重だわ。普通は姉は妹の手本になるべきだけど、私は今日もこれからもずっとずっとあなたをお手本にするわ。」とタラに感謝に告げ、「それとエイブ、絶対にぶち壊さないで。」と言って浮気相手のエイブを睨みつけました。彼女はタラと抱擁を交わし、タラはサラの髪についた香水の匂いをいい匂いだと褒めつつ、「大好きよ。」と伝えます。その後、スピーチを終えたサラは関係を持ったエイブなのか、この世界に残るはずのナイルズなのか、誰かに留守番電話を残したあと、そこへエイブの祖母ナナが現れ、「感動的なスピーチだったわ。」と声をかけられます。ナナは「私も幼い頃に母親を亡くしたの。」と言い、「そろそろ行くんでしょ?幸運を祈ってる。」と言い残して彼女の前から去っていきます。ナナもナイルズやロイと同じ、ループの世界にいる仲間だったのでしょうか。
その頃、サラに振られたナイルズは近くのバーでひとりで酒に溺れていました。ダーラが話しかけると、ナイルズは浮かない表情で「あらゆる感情を経験した。もう何も感じることはない。」「うまくやれると思ってたけど、ダメだった。もう無理だ。」と嘆き悲しみます。ダーラは「周りを見てみな。あんたが求めているものはここにはないよ。」と諭します。その言葉にナイルズは誕生日を祝ってくれたサラの顔を思い出し、自分にとって彼女が必要だと気づかされます。ナイルズは「俺はバカだった。」と呟き、酒をグイッと一杯飲み干すと、「車の鍵をよこせ!」と店主のテッドに要求して中指を立てます。ナイルズは常連客に追い出されたものの、テッドがこっそり車の鍵を渡します。ナイルズはテッドの車で洞窟へと向かおうとしますが、車がパンクしてしまい、夜中に射撃の練習をしていたスパッズの元を訪れます。ナイルズを知らないスパッズは銃を構えて警戒すると、ナイルズは「30年前、バーでトレイシーという女に出会っただろ?トイレで彼女に童貞を奪われてそれっきりだ。俺はあんたの息子なんだ。」と大嘘を言い、話を信じたスパッズはバイクで彼を洞窟まで送り届けます。サラはひとりでループから抜け出そうとC4爆弾を背負って洞窟の前に立っていました。
到着したナイルズは「やっと分かった。確かに俺は恐れてた。でももう平気だ。」と言い、話を続けようとしますが、洞窟の奥で発光するのを伺っていたサラは「長い演説は聞きたくない。」と話を止め、「1文にまとめて。」と条件を提示します。ナイルズは「自分でも気づかないフリをしてたけど、俺は君なしでは生きられないんだ。でもそれでいいし、だって人は1人じゃ生きられない。それに君には生きててほしい。」と伝えます。しかし、ナイルズはサラの条件を無視して話を続け、「…生きててほしくて、それで、というより。つまり、俺は君を誰よりも知ってる。恐竜を見た夜を覚えてる?君が言ったんだ。「良い面も悪い面も全部見ろ。」って。俺は君の両面を見たけど、やはり、俺には君以上の人はいないと思う。この空間(ループの世界)て1番好きな人に出会う確率もすごいけど、この空間にハマる俺らもすごい。」と言います。話を聞くサラは「まとめに入って。」と言い、ナイルズは「爆破が成功してくれるといいけど、でも、一緒にいられるなら、結果はどうだっていい。もし死んだら…1人で生きるよりも君と死ぬほうがいい。ここでピリオドだ。」と自分の気持ちをぶつけます。感動しそうになったサラは「ひどい文章ね。最後は感嘆符(!)がいい。」と話すと、ナイルズは「控えめにしたんだ。」と答え、サラが「もしお互いにうんざりしたら?」と確認すると、ナイルズは「もうとっくにうんざりしてる。最高にね。」と言います。サラは感極まり、「私は1人でも平気よ。でももしあんたがいたら、退屈な生活が少し楽になる。」と正直な思いを伝えます。サラは「行こう。爆死するか実験よ。」と言い、2人は洞窟の中に入ります。
不安が残るナイルズは「成功したら初デートはどこに行きたい?」と聞くと、サラは「あんたの実家。」と答え、ナイルズは気まずそうな表情を浮かべます。2人はオレンジ色の光の前に近寄り、サラは「念のために言っておくわ。私も愛してる。」と言いました。2人はキスをしつつ、徐々に光に吸い込まれていき、その隙にサラはC4爆弾のスイッチを押しました。走馬灯が流れるなか、2人は洞窟内で自爆します。
ナイルズとサラは2人でそれぞれピザの浮き輪に乗って、別荘のプールで横になっていました。サラは「これからどうする?」とナイルズに聞くと、ナイルズは「犬を迎えに行く。」と答えます。サラは驚き、ナイルズは「名前はフレッドって言うんだ。」と明かします。サラは「初耳だわ。」と話すと、ナイルズは「聞かれてない。」と返し、サラは「どこにいるの?」と聞くと、ナイルズは「預けている。」と笑顔で答えます。2人はフレッドの話題で盛り上がろうとしたその時、そこへ別荘の所有者とその家族がプールサイドに現れます。家族を見たナイルズは「これが11月10日か。」と言い、2人で笑い合うのでした。別荘から遠く離れた場所に首長竜の群れが歩いていました。
(エンディング)
夜、結婚式の披露宴、ロイは「お前の彼女から昨日聞いたぞ。うまくいくと思うか?」とループから抜け出す方法をスーツ姿のナイルズに詳しく聞こうとしますが、ナイルズは「知り合いですか?」と知らない様子を見せます。ナイルズが自己紹介をすると、この世界にいないと悟ったロイは「嘘だろ!」と笑顔で喜び、「デイジー、ありったけの酒をあるだけ持ってこい。」と注文しました。
THE END
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感想・考察
この映画は今作が初の長編映画監督作品となったマックス・バーバコウ監督によるアメリカ、カリフォルニア州のリゾート地パーム・スプリングスを舞台にした、結婚式の日にタイムループに巻き込まれた1組の男女を描いたSFラブコメディ。アメリカ本国ではHuluで配給・配信され、配信日の2020年7月10日から3日間の視聴者数が歴代最高を記録している作品です。
前回の記事で新型コロナに感染したと書いたのですが、2021年が終わるまで残り2か月、今年は映画以外のことに時間を使おうと昨年より少し新作映画の観賞本数を減らそうと思ってはいたのですが、今年上半期に期待していた新作の邦画は観ていたものの、今年上半期に期待していた新作の洋画をまだ観ていないことに気づき、病院で療養してから数日後、2021年を迎える前から非常に気になっていた『パーム・スプリングス』をレンタル店で借りて観賞しました。この作品、個人的にはジャンルとしては好物なタイムループ物に洋画の中では生涯ベスト級に入る『ブリグズビー・ベア』で主演を務めているアンディ・サムバーグさんが主演ということで、滅茶苦茶期待していたのですが、先に結論から言うと、期待以上の面白さとまではいかなかったけど、タイムループ物の作品の中ではかなり好きな作品でしたね。
本作は以前紹介した『ハッピー・デス・デイ』や『三尺魂』など、同じ日時や時間、場所、シチュエーションを繰り返すタイムループ物というひとつのSFジャンルにあたる作品で、主人公であるナイルズとヒロインのサラが突然何らかの原因でタイムループに巻き込まれてはいるものの、ナイルズが最初からタイムループに巻き込まれた状態にあり、なおかつ同じ状況を繰り返す世界であらゆる行動を既に行っていたところから物語が始まっています。タイムループ物のSFにラブロマンス、コメディを組み合わせていて、話運びは抜群にテンポが良く、ラブコメとしては定番的で普通の展開が続くんだけど、一見、軽そうに見えて、実は普遍的なメッセージを持った味わい深い作品になっていると思いました。
まず、冒頭の約15分、主人公のナイルズが何万回も同じ日を繰り返していて、ループの世界に囚われていることを知ったうえで観ると、脚本が如何に巧妙であったかに気づかされます。例えば、最初のほうで自室でナイルズが恋人のミスティとの会話シーン、ミスティから自慰行為で勃たなかったことを指摘され、ナイルズが「君は悪くない。」「違った。俺は悪くない。」と言うんだけど、この会話のやり取りだと、ナイルズがこのシチュエーションを何通りかやって、過去の自分が「君は悪くない。」「俺は悪くない。君が悪いんだ。」と言った覚えがあるから、けだるそうにミンティに返答していることが伺えるし、或いは、ナイルズが彼に興味があったサラの前に「君のヘアミスト、"オーキッド・エクスプロージョン"だろ?」と香水の名前を言い当ててるんだけど、後半で明かされるナイルズがサラと肉体関係を持った事実の伏線になっていて、恐らくナイルズがサラとのベッドインの時に彼女から直接何の香水を使っていたのかを聞き出していたか、もしくは彼女を口説くためにわざわざ物語で語られてない何日か前に香水を調べていたか、あらゆる妄想を膨らませて推察することが可能なんですよね。
で、ループ巻き込まれた人物としては先輩にあたるナイルズは一貫して同じ日々を何回も何回も繰り返していることに謳歌して、今まで好きなように日々を過ごしてきたことが分かるんだけど、時折、その裏では彼が心の暗部のようなものを表に出さないように振る舞っていて、彼の陰と陽のうちの陰の部分が明確に浮かび上がっている描写があったりするんですよね。特に中盤、ナイルズとサラが首長竜を見る夜のシーン、首長竜を見つける直前、ナイルズはサラと話している時に「俺が"寂しい"と言ったのはビールを飲み干して、2本目を開ける時と同じ感情だ。束の間の感情だ。過ぎ去っていく。何でもそうだろ。」と言うんだけど、ナイルズの悲しくも切ない表情が全てを物語っていて、何回も何回もループしていくことが楽しい、その現状に満足してはいるんだけど、本当はこの現状を続けていく中で大きな虚無感があることに気づいているのに気づいていないフリをしているというのが読み取れるし、同じような日が来たら人々の記憶がリセットされるから、誰の記憶にも残らない、今までの日々で積み重ねってきた孤独感がひしひしと伝わってくるんですね。ここはナイルズのキャラクター像を見せるうえで非常に味わい深いシーンになっているんではないのでしょうか。
一方、作品で語られている普遍的なメッセージはタイムループ物を見尽くしている人の中にはよくあるメッセージかもしれないけど、決して説教臭くなく、穏やかで軽い空気感でサラッと伝えていて、非常に好ましいと感じましたね。それを深く印象付けているのは3幕目と言える後半のロイとナイルズの裏庭での会話シーン、そこではロイがICU(集中治療室)で睡眠を禁じられたことがきっかけでナイルズへの復讐心を捨てて、自分の家族といる時間がいかに大切だったのかを語るんだけど、今生きている日常の中には自分にとって幸せだと思える素敵な瞬間、愛おしい瞬間があるかもしれないと気付かせてくれるし、生きていくうえで何が幸せなのか、何がかけがえのない大切なものなのかを問いかけてくるシーンではあると思うんですよね。
それと同様、終盤、同じ日を繰り返している現状に満足しているナイルズと新郎エイブとの浮気、ナイルズと寝ていた事実から来る罪悪感から環境を変えたいサラがお互いの考え方の相違で2人でループから抜け出す交渉が決裂してしまうシーン、ラブコメ、恋愛ドラマとして考えると、相思相愛の男女のすれ違いで、その障害をシリアス寄りに描いてはいるんだけど、ここで語られているのは生きている日々の中でどうやったら毎日幸せに生きていけるのかを問い直す議論であって、ずっと楽しい日々が続くことが幸せなのか、或いは、悲しくて辛い日々の中でたまに楽しい日があるのが幸せに繋がるのか、ナイルズの考え方は理想的で、サラの考え方こそが現実的で自分たちが生きている日常で大切なことだとは思うんだけど、どちらにも共感させられるし、単調な日常の中で何が幸せなのか、何が楽しい日であるのかをふと考えさせてくれます。要するに、この2つのシーンほどっちとも、人生をより良く楽しく生きるには一体何が必要なのか、何が大切なのかを観ている観客に問いかけてくれる意外と深いシーンではあるんじゃないかという風に感じられるんですよね。
考察する要素としてはラスト、ナイルズとサラが別荘のプールでくつろいでいるシーン、ナイルズとサラがループから抜け出す方法を使って明日(11月10日)を迎えたことが明確に提示されているわけなんだけど、普通に何も考えずに観れば、2人がタイムループから抜け出して11月10日の白昼に勝手に他人の別荘のプールで休んでいたのが濃厚だとは思うんだけど、中盤、首長竜を見た夜のシーン、ナイルズが自身の過去が思い出せない辺りを踏まえると、ラストでナイルズがどこかに預けていた飼い犬のフレッドを迎えに行きたいと発言するのに妙な矛盾を感じちゃうんですよね。或いは、最後の最後に遠方に現実世界にいないはずの首長竜の群れが歩いているのが映されるんだけど、ナイルズとサラがループから抜け出して11月10日に行っても、ネッシーさながら、現実世界に本当に首長竜が実在していたのか、或いは、2人は実験に失敗して、死後の世界にいるから首長竜が実在していることになっているのか、様々な見方が取れちゃうんですよね。個人的にはこのラストシーン、仮に序盤のナイルズとサラの食事中の会話に出てきた「多言宇宙論」という言葉がある種の伏線だったとして、元々は物語の真の主人公であるサラが行動してループから抜け出す方法を実行に移して、ナイルズを巻き込んだわけだから、サラだけが別の世界線に行っていて、実際に彼女の前にいるナイルズはループに巻き込まれたサラとの記憶がある別の世界線にいるナイルズなんじゃないかなと推測しましたね。つまり、白石晃士監督の『ある殺人者の優しき記録』のラストシーンのように表面的にはサラとナイルズがハッピーエンドに見えて、本当はサラだけにとってのハッピーエンドになっている、もっと言えば、本当にハッピーエンドなのか?とほんの少し違和感を抱かせてくれる終わり方になっていると思われます。
加えて、エンドロール中のシーン、ロイが本来の11月9日の世界にいるナイルズと会って、2人がループから抜け出して元の世界に戻ったと悟るんだけど、恐らくクライマックスの手前にあったサラの通話描写がこのシーンの伏線になっていて、ロイはサラからお先にループから抜け出すことに対する謝罪とループから抜け出す方法を聞いたと思われるんだけど、ロイの心理描写から察するに、恐らくロイは心から11月9日の世界にいるナイルズと酒を酌み交わし、彼とコミュニケーションを交わしただけなんじゃないのかなと思いました。物語の後半、ロイは「もうお互いに会わないほうがいい。これは俺は問題だ。」とナイルズに言って、ループに巻き込まれたナイルズとの関係に折り合いをつけてはいたんだけど、そこでロイとの記憶を持たないナイルズと出会うことでまた娘の動物の絵の話や息子が糞を育てる話をして意気投合させていくのは断言できそうです。ちなみに、他の映画ブログのレビューを見ると、ロイが自ら11月9日の世界にいるナイルズに酒とドラッグを誘って、このナイルズを今の自分のようにループ世界の住人にさせるという解釈もあったんだけど、後半、ロイがICUでの時間で家族といることが日々の幸せだと気付いた以上、再びナイルズへの復讐心が芽生えてきて、自分自らナイルズに襲われる側に事態を起こすのはいくらなんでもあり得ないんじゃないかなと感じました。例え、そうだったとしても、ロイが復讐目的でやるんじゃなくて、かつてのナイルズのように酩酊状態にいる最中にうっかりナイルズに案内して、勝手にナイルズが洞窟の奥に入ることになっていくのかなと思いましたね。
あと、中盤のナイルズとサラがループに巻き込まれた仲間同士として2人でループを繰り返して楽しく過ごしている一連のくだり、ラブコメとしては定番的で王道なコメディ部分なんだけど、要所要所で感動させられたシーンが何シーンかありましたね。特に最後のシーン、披露宴で用意されていたウェディングケーキを盗んで、テッドが経営するバーでサプライズでナイルズに1万歳の誕生日を祝うシーンがあるんだけど、音楽の選曲も相まって、ナイルズが自分の味方、或いは理解者がいることのかけがえのなさ、同じ時間を共有することの充実感を自然に伝えていて、冒頭のナイルズのスピーチで言った「君は今、ここの誰よりも険しい崖の上に立っている。でも覚えておいて。君は1人じゃない。」という台詞がこの誕生日のシーン、ついでに言うと、クライマックスのナイルズが洞窟の前でサラに思いを伝えるシーンで物凄く生きてくるんですね。なので、ナイルズとサラの同じ時間を共有することの幸せとか、ロイと彼の家族によるありふれた時間とか、"人は1人なしでは生きられない"、そのメッセージは深みより軽さが勝っているんだけど、人と人が誰かと共有すること、誰かと繋がれることがいかに愛おしくて幸せなのかを思うと、この誕生日のシーンは滅茶苦茶感動させられるシーンでした。
敢えて言えば、サラと同じようにタイムループに巻き込まれたJ・K・シモンズ演じるロイ、序盤でサラがループに巻き込まれる発端となるくだりだと、悪役的な役割を果たしていて、非常に存在感があったんだけど、中盤部分でナイルズとサラの恋愛関係の構築に重きを置いているせいか、ロイの役割があんまり生かして切れているとは言えないかなと思いましたね。物語上、彼の人物設定は住んでいるカリフォルニア州アーバインからパーム・スプリングスに行くには遠いから数日、もしくは数週間に1回のペースでナイルズを復讐目的で殺害するんだけど、恐らく時系列的には彼が数週間に1回のペースでやったとすれば、中盤で警官に扮してナイルズを殺す計画がそれだったんだろうけど、その設定にしたことで逆にちょっと意外性がない、中盤はよくある展開に終始しちゃってる感じがしていると思いましたね。或いは、序盤で長い尺を使ってロイがループに巻き込まれたきっかけを説明するのはいいとしても、後半の裏庭でのロイとナイルズの会話シーンでロイが「俺は自分のことばかりでよく考えず、お前を苦しめていた。だが、入院してみて気づいたんだ。ここの暮らしはいつも楽しい。」と話すんだけど、実質的にロイが数日、もしくは数週間に1回のペースで殺害している分、彼がどこまで殺害計画に時間をかけているかは観客の想像次第なんだけど、彼の重要な台詞に重みのようなものが感じられなかったんですよね。もちろん、プロットを考えると、ナイルズとサラがパーム・スプリング内であちこち色んな場所に行くからロイがなかなか見つけられないと言えるし、後半で警官に扮したロイが襲撃した時はようやく彼らを見つけられたという見方が読み取れるんだけど、ロイの復讐はナイルズとサラの恋愛模様に絡めるようにもうちょっと練り込むことができたんじゃないかなと思いました。
あと、物語の中盤、ナイルズとサラがタイムループを利用して2人で楽しく時間を過ごしている様子がダイジェストで見せられてはいるんだけど、確かに、所々で感動させられた描写はあったんだけど、ナイルズがこの世界で思う存分楽しんだ分、ナイルズとサラのコンビがこの世界で楽しんでいる様子に観客の予想を上回る要素、観客の意表を突くようなものがあんまり見当たらなくて、もうちょっとナイルズとサラのコンビによるぶっ飛んだ行動を描き切れることができたんじゃないかなと思って、ここのくだりははっきり言って滅茶苦茶物足りない感じがしましたし、この映画に否定的な意見を持つ人に同意しちゃうかなと思いましたね。それこそ、例えば、ナイルズとサラが結婚式の披露宴でC4爆弾を持って茶番劇をするシーンとか、2人がお互いの背中に男性器のタトゥーを彫り込むシーンとか、2人が事態の深刻さを気にしないでハチャメチャやってるシーンがちゃんとある。なのに、良くも悪くもただただナイルズとサラが親密な関係を築いていくだけの普通のラブコメの展開になっているのは否めないんですよね。物語の展開で言えば、後半、ナイルズがサラとエイブが関係を持っていたと知って、披露宴の最中に彼の浮気を暴露するシーン、ここはフォークが刺さったエイブの反応がオーバーで普通に笑えるんだけど、編集のテンポ感のせいか、次の日の披露宴のシーンに切り替わった瞬間、さっきのシーンがナイルズが同じ日を繰り返しているのか、それともナイルズの単なる妄想の中で描かれていたことなのか、多少混乱を招きかねないことになっているのはもったいないかなと感じました。ただ、個人的には本作の笑いどころはゲラゲラ笑えるシーンは2、3シーンぐらいしか無かったんだけど、基本、割りとクスクス笑えるシーンが多めで楽しく観れましたね。
あと、長編映画デビューした新鋭監督であって、なおかつ上映時間90分というコンパクトにまとめている作りだから目を瞑るべきなのかもしれないけど、演出面でもうちょっとウェットさがあったらもっと感動できたのになと思いましたね。特にクライマックス、ナイルズとサラが洞窟内で爆死するシーン、サラが爆弾のスイッチを押す瞬間は意外と緩急が無くて、唐突にこれまで過ごしてきた日々が走馬灯のように早送りで流れるから、感動しそうで感動しにくい展開にはなっているんですよね。なので、サラが爆弾のスイッチを押す瞬間から白画面になるまでの一連のくだりはもっと自然に感動できそうな演出を用意して、走馬灯が流れる辺りはもう少し長尺でやったほうが効果的だったんじゃないかな…と思いました。
ということで、今まで観たタイムループものの作品なんかと比べると、これはもうちょっと良くなったんじゃないかっていう惜しさが残ってて、大傑作とまではいかなかったのですが、王道のラブストーリーとして、ロマンスコメディとして良く出来てるし、タイムループものの中ではかなり好きな作品だと思いましたね。もちろん、全体的にはコミカルで陽気、主人公とヒロインが同じ日を繰り返している割りには全編に渡ってほぼほぼ深刻な事態が起こらない映画だから気軽に楽しめる、或いは頭を空っぽにして楽しめるという勧め方がしやすいとは思うんだけど、ありふれた人生で何が大切なのか、生きていくうえで何が幸せなのか、軽さの中に普遍的なメッセージを持っている非常に味わい深い1作だと思いました。生涯ベスト級じゃないけど、年に一度は何度も観たくなる愛すべき作品だと思いました。是非是非レンタルや配信で観賞してみてください。