仁志敏久取材日記 -7ページ目
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2軍降格通告の日

『仁志敏久取材日記』 HP PROFILE を更新致しました。

もしよろしければご覧下さい。




{ 2006年7月1日東京ドーム。 阪神戦。

試合後。

出てきたのは荷物だった。

多くの選手は、ほぼ毎試合、試合が終わると
ユニフォームを脱ぎ、アンダーシャツ姿で、
バットを片手にロッカールームを出る。

行き先は、ブルペントレーニングルーム。

扉の向こうから、渇いた打球音が聞こえてくる。
各選手、様々な想いを胸に汗を流す。

仁志選手もその一人だ。

しかし、その日仁志選手は姿を現さなかった。

代わりに出てきたのは、、
台車に乗せられたナンバー8と書かれた荷物。

試合終了直後、別室に呼ばれた。

2軍降格。

告げたのは近藤ヘッドだった。

不調を理由に2軍再調整を命じられたのはプロ入り初。

その日、足早に球場を後にした。

翌日、既に仁志選手の姿は酷暑のジャイアンツ球場に。

誰よりも多くバットを振った。

7月14日。神宮球場。
1軍に再登録。

しかし、7月30日ナゴヤドーム。
試合後、今季2度目の登録抹消。

今回はコーチミーティング中、皆の前で告げられた。

8月8日現在2軍調整中。


          (東京ドームでのトシヒサコールに)

      『いつまでも見ていてくれる人達がいる。
       ほんとありがたいよね。
       今まで以上に感謝の気持ちでいっぱいだよ』 
  
         {5月16日 試合前東京ドームベンチ裏ミラールームにて}
                            聞き手 小川直樹


読売巨人軍  仁志敏久。

トシヒサコール。

その応えはグラウンドで。そして、答えをここに。 「仁志敏久取材日記」8月8日スタート。 }    




13日神宮球場

プレイボール。


初球、レフト前ヒット!


1番セカンドで先発出場。

相手投手は、ヤクルトの左腕丸山。


前日、帰り際に見せた表情が物語っていた。


一夜明けたこの日。丸山の投じた第一球は、昨夜掴んだ感覚を、

確かめるだけの為に、投げられたようなものだった。


真芯で捉えた。ヒット。結果も出た。


この日の3打席は全て先頭打者で迎えた。


2打席目は2回。2-3から、1球ファールの後、サードゴロ。

当りは悪くない。ライン際を詰めていた、3塁手が強い当りをバックハンドで処理。


3打席目は4回。

2球続けて変化球を見送った。2-0

1球外へ外して2-1。4球目は変化球。これも見送って2-2。

5球目、外角高めややボール気味の球を空振り。

三振。


3打数の1安打。


試合後のコメント。

(今日の感じも良かったのでは?)

「うん。良かった。

1打席目も、2打席目も当りは良かったし。

3打席目は最後はボールだったかな。

球は、よく見えてたから、なんとかなるかなぁと思って振ったけど、

なんとかなんなかった(笑)」


球場を出ると沢山のファンに囲まれた。


「調子も良くなってきたし、練習する意味も出てきた。」


今週は、遠征には帯同せずジャイアンツ球場で残留組と汗を流す予定です。







ヤクルト対巨人・イースタンリーグ

日中は激しい雷雨も、

午後6時の試合開始直前には、うっすらと晴れ間ものぞいた神宮球場。


無事、試合も決行されました。


練習中、はっきりとしない空を見上げながら、


「打席に立たないとわからないことがあるからね。

だけど、試合が出来なければ、出来ないで、それは

仕方のないことだから、その分練習すればいいし。

まぁ、試合をやらないと、どうにもならないってことは

確かなんだけどね。

でも、別に焦りっていうのはないよ。」


と試合前に話していた仁志選手。


本日は1番セカンドで先発出場しました。


ヤクルト投手は高木。これで、2軍戦出場3試合連続で右投手となった。


1打席目。

初球、変化球を見逃しボール。2球、3球とファールの後、4球目を打ち、

ショートゴロ。


2打席目は3回1アウトランナーなしで、0-2からの3球目をジャストミート。

左中間一番深いところに飛んだ打球だったが、

センターが背走しながらのジャンピングキャッチ。

惜しくもヒットにならず。


3打席目は5回2アウトランナーなし。初球ボールの後、2球目を叩きサードゴロ。


3打席を終え、ここで前2試合同様ベンチへ退いた。


結果、3打数の0安打ということになりました。


試合後のコメントです。

「今日はタイミングも比較的良かったし、そんなに悪くなかった。

2打席目は、ちょっと高めの球を打っちゃったけど、捕ってなければ

フェンス直撃くらい? 風もなかったし、あんまり伸びなかった。


悪い中でも、なんとなくイメージは湧いてきた。

やっぱ、こう、自分の中で眠ってるものがあるんだね。

それが起き上がってくれれば。

(そのためにはやはり試合に出て?)

そうだね。今はまだ半信半疑のところがあるから。


…結果だね。


上も下も関係なく、上で打てるやつは、下でも打てるし、

下で打てるやつは、上でも打てる。

上だからとか、下だからとか、レベルがどうとかじゃなく、

あくまでも、自分の感覚がしっかりしてれば…」


今日の打席に関しては、仁志選手自身の感覚の中で

ある程度手応えのようなものを感じたようでした。

 

そのことが表情に表れていたように思います。


明日(13日)も神宮での試合に出場予定です。

神宮試合前

060812_1526~01.jpg
現在、仁志選手含め、雨の中全体練習が行われています。

この後の天候が心配されます…。

ありのままで。

試合後の仁志選手の言葉。


みなさんからコメントをいただいたように、


現在の仁志選手の苦悩がストレートに伝わる内容だったと思います。


それを私がお伝えすることによって、

ファンの方々を心配にさせてしまうかもしれません。


しかし、私はできる限り、ありのままの姿を伝えていきたいと思っています。

なぜなら、何よりも仁志選手自身が、我々に対して、正直であり続けてくれるからです。


それが、取材をする人間として、読んで下さる方へ、そして仁志選手に対する礼儀であると思うからです。



 昨日の試合直後のコメントこそ、重苦しいものでしたが、

もちろん、気持ちは常に前を向いています。


2日目試合前の練習中、横須賀スタジアムの印象や、ファームの試合について

聞いてみると、


「2軍の試合をやるところとしてはいいと思うよ。

(照明の暗さについて)

外野から見たら、客席から舞台を見てるみたいだったけど(笑)


(実際、ボールを追う外野手の姿は暗闇の中に消えていくようだった…)


でも、こうゆうの見といて良かったよ。

将来のことを考えるとすごく良い経験だと思う…。

ずっと、上にいると華やかな世界しか見てないから。

若い頃だったら、こんな風に思わなかったかもしれないけど、

10年経って今、これを見れたのはいいことだと思う。

みんな、必死でプレイしている……」


{ 本当のプラス思考とは、絶望の底の底で光を見た人間の全身での驚きである。}
{ 『大河の一滴』より 五木寛之著  幻冬舎  ]

ジレンマと葛藤

昨日に引き続き、横須賀スタジアムでの2軍戦に出場しました。


3番セカンドです。


まずは、昨日の試合について試合前に話しを聞いてみました。

仁志選手にとって、この2軍での試合の意味するところは。


昨日の記事で、何よりも結果を重視するのか、それともフォームを含め、

内容を重視するのか難しいところです。と書かせていただきましたが…。


「結果出さないと駄目でしょ。

まず結果を出さないとどうしようもないからね。だけど、たとえ結果がヒットでも

なんだ、あんなのポテンヒットじゃんって言われればそれまでだし。

内容も良くしないと」


つまり、内容も良く、尚且つ結果を出す。

記録がヒットだから良いわけでもなく、納得のいく形でボールを捉えられたとしても

ヒットにならなければ意味はない。


「目標は高いところに置かないといけない。

また、そうしければいけないし、そうするべきだと思う。」


そう語った仁志選手。


私が考えるより、遥か上に意識を置いていた。

常に難しい状況で試合に臨み、どんな形であれ、とにかく結果を出したいと、

ヒットを渇望していた今シーズン。

その1軍での試合より、さらに難しい状況でこの2軍戦を迎えてるのかもしれない。


そして、本日のゲーム。


 



結果を先にお伝えすると3打数0安打でした。


1回2アウトランナーなしで迎えた1打席目。0-1からの2球目を打ち上げてしまい

ショートフライ。

2打席目は、4回に先頭打者で迎え、2-1から、止めたバットに当たるセカンドゴロ。

3打席目は、7回先頭で打席に立ちましたが、初球を叩きセンターフライでした。


良い球は、ファーストストライクから積極的にという姿勢が伝わってきましたが、

残念ながら結果には結びつきませんでした。


試合後。

「ぜんぜんだめだった…。

昨日より悪い。 昨日の方が、開き直れてたけど今日は…うーん

力が入ってたかな…。

難しいね…。

周りがすごく気を使ってくれてるのがわかるんだよね。

俺の結果待ちみたいなところもあるし。

うーん、ジレンマと葛藤で自分をがんじがらめにしちゃってる気がする。

今年はずっと悪いから、良いイメージが思い浮かばないんだよね…

なんかボールに入っていけない…

(試合で試したかったフォームについて)

今日はあんまり意識しないようにした…」


そう言うと、待ち構えていたファンに歩み寄りサインと記念写真に応じた後、


車に乗り込んだ。


今のところ、週末神宮での2軍戦に出ることになるだろうと

いうことです。


湘南シーレックス対巨人


8月9日 (水)

7月30日名古屋での中日戦以来の実戦。

また、イースタンのゲームとしては約3年ぶりに

本日2軍での試合に出場しました。


結果は、1番セカンドで先発し、3打数0安打。

5回裏、3打席目を終えると、6回の守備には

つかずベンチに退きました。


初回の1打席目は2-2からの5球目を叩きライトフライ。

3回の2打席目は、2アウトランナー2塁で迎え、1-0から

2球目をセンターフライ。

3打席目は、5回に2アウト満塁の場面で。

0-3から、2-3に。その後ファールで粘るも、

最後はセンターフライに打ち取られた。


今日の試合だけを見ると、結果は出ませんでしたが、

2打席目などは、しっかりとボールを捉えていました。


現在の状況を考えると、型はどうであれ、

目先の結果を求めるのか。

それとも、結果はともかく、自分のフォームで

しっかりとボールを叩くことに主眼を置くのか。

先の見えない状況では、判断が難しいところです。


明日、試合前に仁志選手にその辺りを聞いてみたいと思います。


仁志選手のコメントは明日掲載させていただきす。






8月8日!『仁志敏久取材日記』開設

本日平塚球場にて予定されていた、仁志選手出場予定試合、

湘南シーレックス対読売巨人は、残念ながら中止となってしまいました。


仁志選手は、午後2時から行われたジャイアンツ球場室内練習場での全体練習に参加。

ティーバッティング、守備練習、マシン打撃と約2時間半に亘って汗を流した。


打撃練習では、日曜日の練習終了後、

「火曜日の試合では、試したいことがある」と語っていたように、

練習中、自分で決めたテーマを1球ごとに確認しながら、

力強い打球を飛ばしていた。


明日、横須賀スタジアムにて行われる湘南シーレックスとの試合に、

1番セカンドで出場予定です。

天候がちょっと心配ですが…。



ところで、本日仁志選手の母校である常総学院が夏の甲子園に登場

いたしました。

甲子園出場時はいつもジュースの差し入れを送っているという仁志選手ですが、

今回は残念ながら1回戦敗退となってしまいました。


仁志選手も、練習開始直前に結果を耳に…。

終盤、満塁本塁打などで2点差まで追い上げた時には、

頬を緩ませていたのですが…。


自身も甲子園には1年生の夏から3年連続で出場していますが、

そんな仁志選手に、甲子園での印象に残ったプレーについて聞いて

みました。

「そうだなぁ。1年の時はランニングホームランで、あとは2年の時の

始球式。

始球式?

「あの時始球式が皇太子様だったんだよ。俺、どうしようってずっと考えてた…。

ちゃんと空振りできるかなぁって…もし打っちゃったら大変なことになっちゃうから…

2日間ぐらいずっと悩んでたんだよ。そしたら、おじさんが

『キャッチャーが捕ってから振ればいいんだよ』って

なんだよ、それを早く言ってくれよって(笑)」

「その試合は、うちが19点取ったんだけど、俺だけ無安打(笑)」

皇太子様の投球という、思わぬ理由でバッティングを崩された!?仁志選手。


これも甲子園ならではの貴重な体験。


「甲子園に出てなければ、今ここに居なかったかもしれない。

甲子園ていうのは、その一瞬一瞬が今後の人生を左右する可能性だってあるんだよね」

                    { 仁志敏久 8月8日 ジャイアンツ球場室内練習場にて}



{ 私は『甲子園は立派な卒業式会場だ』と思っているんです。

甲子園にいくと、子供たちがみんなにこやかになって、礼儀作法

をちゃんと覚えて、大人のいうことを素直に聞くようになるんです。

そんな立派になった子供たちを送りだしてやる場所が甲子園なんです。}


        『木内流子供の力の引き出し方』 常陽新聞新社 

                                       木内幸男[語り]


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