2020.6 NO.133 きあい VS きらい(1)
今回は新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」)に纏わる我が家のちょっとした騒動を披露する。後半は世に少し毒を吐く。もっとも、新型コロナのような毒性も感染力もないが。
2/20過ぎカラオケ会の幹事から思いがけないメールが着た。高校の同期生ら6名(うち女子2名)で3ヶ月に一度程度でカラオケ&飲み会をしており、次回の3/19を延期したいと言ってきた。新型コロナを鑑みてと言っても、一番元気で長生きしそうな彼がなぜと訝った。聞けば、奥方に持病あり彼自身は無症状でもという愛妻を気遣った話だった。
4月以降の方が新型コロナが深刻化する公算が高い。とりあえず実施の方向で、当日電車の中ではマスクをと念押して3月頭に再案内することになった。「女子」と言ってもアラ古希の有閑マダム2名だが不参加なら中止すると決めた。ところが、再案内する前に2月末に女子からキャンセルの連絡があったので、決定通り中止にした。
その頃忌々しいことが我が身に降りかかる。前立腺がんを放射線治療で退治すると免疫細胞が暇になったのか年々花粉症が酷くなり毎年2月に入るとマスクをしている。
マスクをしないで歩いているときは、女性が私に目をやると目を背けるか何も見なかった如く通り過ぎていく。マスクをすると、髪は真っ黒、白い顎鬚は隠れ顔は眼鏡越しの目しか見えず、服は長男のお下がりも着て若作り。女性は整えるべく髪に手をやる。私を異性と認識してくれる。アラフィフぐらいにしか見えないのだと細君ならぬ太君に嘯く。「ふん! 後ろ姿だったらね」と妻は言い返すが。
ところが、2/24の祝日短期留学のパリから戻り会社の借上げ社宅に住む長男に招かれて焼肉を馳走になりその後孫娘らと公園で遊んだ帰りの電車でのこと。つり革をもって立っていた。電車が止まる直前座っていた若者が立ち上がったので降りるのかと思ったら、私に座れと合図する。私はハァっと口が開いたまま(マスクで見えないが)フリーズしてしまった。傍にいた妻が「いいんですよ! 次の駅で降りますから」と助け舟を出した。
同期のカラオケ会を中止にするか思案しているときで、左右後ろキョロキョロして、「女はみんなマスクしている。男は半分程度か」と調べていた。空いている席がないか探していると勘違いされただけなのだ。妻は、降りて、ドアが閉まり、電車が離れていくのを確認するやいなや、クックッと笑って「ショックだったでしょ!?」とぬかしおった。今まで席を譲られたことは一度ない。よりよって愚妻の目の前で(善意の若者は何も悪くないが)。
人を嗤う者は人に嗤われる。今度は妻が失態をやらかし凹んだ。3月に入ると長男から妻にLINEが入った。「まさかカラオケなんか行っていないと思うけど」と。妻は、ポチ犬からナメクジに扱いを下げた私のことはこれっぽちも怖いと思わないが、長男のことは怖いと思っている。それでも、負い目を感じながらカラオケ店に行き、それで事件が起きた。
私が利用するカラオケ店とは違う店で妻は一人カラオケを楽しんでいた。リュックを持ちトイレに行き、「感染でもしたらご長男様に何と言われるか分からない」とばかりに念入りに手を洗い、ドアノブも素手で触らず、これで一安心と思い部屋に戻った。5分ぐらい経ちスマホを見ようとしたらリュックがない。慌ててトイレに駆け込んだが、無くなっていた。店長が防犯カメラを確認すると一人の老婆がリュックを持って帰るのが映っていた。受付で携帯番号が書かれていたので、店長が電話をすると知らないとしらを切る。
それで警察に来てもらったが、妻は若い婦警に「紛失届、被害届、どっちにするの!? どうせ出てこないけど」とかまされた。妻は「そう言われても」と返事に窮したが、結局被害届を出すべく署に向かった。妻は「忙しい時に、すみません。すみません」と繰り返すので、その婦警に「アンタは被害者なんだから謝る必要はない」と宥められたという。
スマホのLINEに長男の家の新住所、我妻が合鍵を持っている経緯が書かれているので、長男に連絡せざるを得ない。妻は、カラオケ店で盗難に遭ったこと、長男から母の日に貰ったブランド品の財布も一緒に盗まれたことを伏せ、合鍵含め盗難されたことを報告した。長男も数日前居酒屋で鍵を無くしたらしく、あまり突っ込んで聴かれずに済んだらしい。
リュックは数日後パチンコ店から届け出があり、戻ってきたが、現金と妻の母の形見の 焼銭(荼毘で焦げた100円硬貨)とが無くなっていた。鍵・合鍵、スマホ、Suica、預金通帳、キャッシュカード、クレジットカード数枚、nanaco等のカード、保険証、大事な長男からの財布も戻ってきた(忘れぽっい私には考えられないが、カラオケに行くのにまるで金庫をリュックに入れて持ち歩いているかのよう)。財布以外皆切り替えた後なので、後の祭り。マッチ箱の家でも鍵が二重で取り替えるのに4万円以上もした。高い勉強代になった。
日頃観察力に優れ、確認を怠らない妻は、うっかり、度忘れ、横着の私に向かって、アニマル浜口さんが愛娘の京子さんに気合いだ! 気合いだ!と連呼するように、嫌いよ! 嫌いよ!とよく言っていた。その妻がこれを機に少し優しくなった。巷では「コロナ離婚」が囁かれるが、我が家は、「雨降って地固まる」とは言わないか、「災い転じて福となす」だ。
私は最初の頃素人の浅知恵、思い込みで新型コロナをなめていた。第一に、インフルエンザと同じではないか(最近ではSARSやエイズウイルスに似ているとも言われる)。私は、馬鹿でも風邪をひくが、少なくとも30年ほど医師からインフルエンザと言われたことがない。第二に、若い頃からタバコを吸わない。タバコの煙の成分は肺に悪いし、タールは気管支の繊毛も塗り固めてしまう。喫煙者は新型コロナが気管支で留まらず肺により容易に落ちてしまう。第三に、持病がない。前立腺がんを治療して8年になる。妻娘が「頭がおかしい」と言うが、自覚症状はない。最後第四に、素人考えだが、感染しても無症状な人がいると言うのなら、日和見菌と同じではないか。免疫力の低下した人が問題になるのでは。だから病院でクラスター(感染者集団)が起きやすい。ニューヨークの感染爆発も病院の前で大行列したことを原因とする説もある。私は現在いたって健康。免疫力が落ちない様、十分な睡眠と栄養をとるのを心掛けたら、運動不足と相まって、少し太ってしまったが。
ところが、志村けんさんが新型コロナで亡くなったときは大きなショックを受けた。数日前にテレビで元気な姿を拝見した矢先のことでもあり、なおさら驚いた。
訃報報道に「70歳」「高齢者」の文字が躍る。同じ昭和25年生まれ。学年は私が1年下になるが、私は高齢者なんだと気づかされた。
岡江久美子さんの訃報も新型コロナの怖さ、不気味さをより一層感じさせた。38回の連射を体験した私からすれば放射線治療により免疫力が低下したとの見方には首を傾げるが。
TV『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの生物学者池田清彦氏が、積極的にツイッター投稿し、「新型コロナウイルスの感染者が増えている都会に遊びに行くのは『自殺行為』、少ない地方を観光するのは『殺人行為』」「悪魔のような安倍政権」「安倍氏もネトウヨもアホだけど」といつになく過激発言を連発している。それほど怖いウイルスなのかと思わされる。
ただ、東京五輪中止以降急に感染者数が増え、連日「本日の都内の新たな感染者は100数十人」と報道されていたが、仮に140人だとすると都民(14百万人)が感染する確率は10万人に1人に過ぎない。PCR検査件数が少ないのか、そもそも検査台数が少ないからなのか。それとも一部に言われるBCG接種が効いており日本は世界より感染しにくいのか。
検査数が少ないと、陽性率(陽性者数/検査数)が高く(全国10%、東京都30%台?) ても実際の陽性者数を把握できず、気づかないうちにオーバーシュート(爆発的急増)になる恐れがあるとの指摘もある。PCR検査体制の一層の拡充と抗体検査の実施が焦眉の急だ。
新型コロナの正体というか底が見えず「正しく恐れる」とは何か分からない。それまでは妻が看守の牢獄に繋がれるしかない。早々と止めた一人カラオケに続き、緊急事態宣言が出される前に、皆さんがよく我慢してガラガラの映画館に足を運ぶのも止めている。もちろん地方に観光に訪れ上述の池田先生に殺人者呼ばわりされることもあるわけない。