2026.5臨時号 NO.244 モンローシュギ VS
ドンローシュギ
私が生まれる10年前の1940年9月に故石原莞爾が『世界最終戦論』を発表した。最終戦争として日米開戦を想定したが、それは20年程度の先と考えていた。今は米国と互角に戦える力を蓄える時期だとして。
その石原は陸軍大学校の3期先輩にあたる故東條英機を常日頃馬鹿呼ばわりし、東條が首相になると開戦前の1941年3月に予備役に回されてしまう (結果として、1931年9月の日中戦争の端緒となる満州事変の首謀者ながら、反東條を主因として東京裁判で戦犯になることを逃れた)。
そして、東條首相の下、1941年12月8日の真珠湾攻撃をもって石原がまだ早いと思っていた日米開戦の火蓋が切って落とされた(敗戦後石原は世界最終戦論は間違いだったと述懐している)。
その21年後の1962年キューバ危機にて二大核大国の米ソ間において核戦争の危機が迫っていた。が、米国のケネディ大統領とソ連のフルシチョフ第一書記との勇断、英断により世界の破滅につながる核戦争が回避された。
そして21世紀の現在、世界の覇権を争う二大強国米中が、台湾有事において衝突することが懸念された。
しかるに、昨年10月の米中首脳会談の際、相手の王将を捕らえる将棋型の米国のトランプ大統領がG2と言い出した。英国グリニッジ天文台・グリニッジ子午線(経度0度)の西側を米国が、東側を中国が管理しようと。もともと中国は囲碁型で米国に棲み分けを望んでいたから、トランプ大統領の発言を好感しているのか。
しかし、時事通信の記事によれば、トランプ政権に助言を続けているヘリテージ財団のスティーブ・イエーツ上級研究員は、米中関係は協調ではなく「冷戦に酷似している」と指摘している。
トランプ大統領が唱えるドンロー主義に対して、Wikipediaは、「ドンロー主義は、1823年にモンロー大統領が宣言したモンロー主義『欧州と米州の相互不干渉』を、21世紀の地政学リスクとトランプの『アメリカ第一主義(America First)』に適合させたものである。」「従来のモンロー主義が『相互不干渉』を建前としていたのに対し、ドンロー主義は『積極的介入』と『経済的利活用』を公言している点に特徴がある。トランプは『米国は西半球の家主であり、不法侵入者(中露)を追い出し、家賃(資源や市場)を適切に徴収する権利がある』と主張している。」と記述している。
たしかに、ベネズエラの石油が中国に流れてるのを止めようとしてベネズエラのマドゥロ大統領を逮捕連行した。表向き理由は、米国に麻薬を持ち込む麻薬組織の首長として。
世界の警察官の任を降りた米国にとって、国際法は関係ない。西部劇のごとく、米国人の保安官がメキシコ等から来る悪者を退治するだけだ。正義の味方なのだと言わんばかりに。
トランプ大統領が、本家のモンロー主義(欧州との相互不可侵)を踏襲するならば、ウクライナへの支援を止める。NATOからも脱退して後はNATOが好きなようにすれば良いと言えば、ウクライナ戦争は終わるのだが。
ボクシングでは、審判は一存にて劣勢の選手をストップさせることができる。観客は相手選手に対する依怙贔屓とは思わない。劣勢の選手の命を護ったと理解する。ファイトマネー以外で勝った方が褒美を貰えるのは当たり前(KOでなく判定での12回終了では「引き分けだ」と理不尽なことを言われるなら、優勢側の選手は延長してKOするまで闘うと主張するだろう)。ロシアが有利でない形で停戦すればプーチン大統領は国民から支持を失う(日本でも日露戦争に勝ったのに賠償金もない不利な講和条約に国民が怒り日比谷焼き討ち事件が起きた)。ウクライナの国民を窮状から救うためには、優勢のロシアに有利な条件でウクライナに承諾させれば良いだけなのだが。
ドンロー主義のトランプ大統領は、ウクライナ戦争で米国がロシアに敗北したことを認めたくないのか。戦争を裏で仕掛けたバイデン前大統領と同じくロシアを弱体化させたいのだろう。ロシアに協力的な中国に石油を供給するイランも攻撃する(中国にとっては、マイナス面だけではなく、米国がアジアから目を逸らす、軍事機器が枯渇するメリットもある)。
トランプ大統領はノーベル平和賞受賞は諦めたのだろう。満座の前で恥をかかされたとトランプ大統領が恨みを抱くオバマ元大統領のノーベル平和賞受賞への対抗心からであったが。ただ、ノーベル平和賞を受賞したベネズエラの反体制派マチャド女史からノーベル平和賞のメダルがトランプ氏に贈呈されたという。トランプ大統領が受賞者になったわけではないが、「オバマが持っているメダルを私も持っている」ということで、自らを納得させ、別のレガシーを求めていくのか?
それがイスラエルの口車に乗ったイラン攻撃なのか(ドンロー主義と整合性はあるのか)。これも米国だけでなく世界から批判されている。何もかも上手くいかず精神錯乱状態のトランプ大統領は、もはやドンロー主義ではなく、ジャイアニズム(『ドラえもん』のジャイアンに見られる「お前の物は俺の物、俺の物も俺の物」という自己中心的で理不尽な考え方や行動様式を指す俗語) に過ぎないのでは。4/8のABCニュースによれば、イランとの停戦協議に関して「米国とイランが共同でホルムズ海峡通航料を徴収し得る」と発言したのを見ても(国際法違反と知り取り下げ、ホルムズ海峡の逆封鎖へ。交渉カードの狙いも、原油高から自身の首を絞めることに)。
中間選挙では、下院は民主党が優位となり3度目の弾劾訴追が必須か。トランプ大統領はレガシーではなく汚名を歴史に残す公算が高いのではないか(米軍による政権転覆ではなく国そのものを崩壊させるのを目の当たりにしては反体制派のイラン国民もトランプ大統領を原油高で中間選挙に大敗させ政治生命を奪うことを支持しよう)。
核は戦争の抑止力になると言われてきた。それは核保有国同士においてに過ぎない、当たり前のことを再認識することになった。
ロシアがウクライナに侵攻する。米軍がイランを攻撃し、ベネズエラの主権を侵した。 非核保有国は核大国からの攻撃を真剣に心配せざるを得なくなった。
日本は、日本海側の対岸諸国が韓国を除いて中国、ロシア、北朝鮮すべて核保有国。韓国は、国民は核武装を希望しているが、政府は在韓米軍に依存姿勢。トランプ大統領が韓国の原子力潜水艦保有を容認したとの報道が出たが、核兵器を運用する弾道ミサイル搭載原潜(SSBN)ではなく、敵艦艇を監視・追尾・攻撃する攻撃型原潜(SSN)だという。核(原子力) の潜水艦には違いなく見栄は張れるが、それだと無用の長物になるだけと言われている。
こうした情勢の中では、日本も、タカ派を中心として、核武装をすべきだとの声が上がるのは不思議ではない。
日本の読者が自らを“知の巨人”にしてくれたと思う親日派トッド氏は以前から日本も核武装すべきと言っていた。しかし、トッド氏はその方法や実現性には一切言及していない。
佐藤優氏も、文藝春秋2026年1月号にて『米国の敗北を直視して核武装せよ』と題したフランスの“知の巨人”トッド氏と日本の“知の巨人”佐藤優氏との対談の中で、「トッドさんの日本への最大の貢献は、核兵器へのタブーを取り払って議論せよという問題提起をなされたことだと思います。」と発言しているが、前々から核武装は現実的でないと言っている。
2024年10月12日付東洋経済オンラインにおいても『日本の核武装が「どう考えても無理」な具体的根拠 核兵器の開発は「気合でできる」ものではない』と題して述べている。
一般的な理由として、唯一の被爆国として核兵器廃絶を世界に呼びかけている、NPT(核拡散防止条約)の事務局的存在(官邸幹部「核保有」発言の折米国報道官は「日本は核不拡散のリーダーだ」と)の日本が核武装への兆候を見せれば世界から叩かれる、核実験する場所がない等、が挙げられている。
佐藤氏の意見で注目なのは、「日本は神風特別攻撃隊をつくった国。民族の性質は、80年や100年そこらでは変わらないそんな国に核兵器を持たせたら何をやるかわからないと米国は考える。アングロ・サクソンの国はそういう考えの下で、絶対にドイツと日本には核兵器を持たせない」との意見だ。
男女の恋愛関係では、私のように振られた方はいつまでも覚えているが、振った方は時間が経つと覚えていない(海馬で一時的に保管されるが、長期記憶として大事な情報が保管される大脳皮質に移管されない為か)。
一方、国家間の戦争においては、攻撃された方はいつまでも忘れないのは同じだが、攻撃した方も忘れない。むしろ攻撃した方が復讐されることを強く意識しているのでは。
日本人は核爆弾を落されたことは忘れはしない。だが、核兵器で米国に何としても復讐してやると息まく人は80年経った今皆無に等しいだろう。核爆弾を投下した米国は違う。国際法は「平等」を宗とするから、核兵器で2度攻撃されたら、2度核兵器で反撃できる権利があると思うのでは。米国人気質として攻撃された日本の立場なら絶対にやりかえせずにおくものかと思うから、日本もいつかやり返してくるとの懸念が米国には残り続ける。
あのトランプ大統領さえ、梶原麻衣子氏の『安倍晋三ドナルド・トランプ交友録』(星海社)によれば、2016年の安倍首相との初会談の折父晋太郎氏が特攻隊員だったことに感銘を受けたと言っているが、裏では「シンゾーには注意して接した方がいい。シンゾーの父親はカミカゼパイロットだったんだから」と言っていたという。
欧州も同じ。ソ連も今のロシアも西側に攻め込んだことはない。西側が露に攻め込んだ。一度目は1812年ロシア戦役。ナポレオン一世がロシア帝国に侵攻した。二度目は1941年独ソ戦。ナチス・ドイツがソ連に対して奇襲攻撃をかけた。
ともに、ロシア兵の不屈の精神とともにそれ以上に冬将軍が敵を後退させた。そしてナポレオンとヒトラーが共に権勢が退潮していく転換点となる。
なのに、NATO諸国は、ロシアがウクライナの後我々に攻めてくると軍事力の増強を図る。とくに、エストニア、ラトビア、リトアニアの旧ソ連圏のバルト三国は、ウクライナ戦争の初期においてさんざんロシアに対して悪態をついてたのに、ロシアの勝勢を見て次は我々が攻められると怯え出す。しかし、ウクライナと違いバルト三国はNATO加盟国。ロシアが1国でも攻めればNATO諸国全体を敵に回すことになる。
朝日新聞出版の近著『2030 来るべき未来』の中で、著者の一人トッド氏も、ロシアは、バルト三国には、騒ぐのをやめさせ、落ち着いていられるよう多少圧力をかけるかもしれないが、そこまでだろうと見ている。
怖いのはロシアの方ではないか。NATOは32国もあり、ロシアはベラルーシを入れてもたった2国。米国を除いたNATOの軍事力だけでもロシアより2倍以上(2025年5月臨時号 NO.226「プーチン VS プーサン」ご参照) 。
NATOは猫であり、ロシアは大きいと言っても鼠に過ぎない。鼠が攻撃するのは窮鼠のときだけ。核兵器ではロシアが圧倒的だが、人格はともかく冷徹かつ聡明なプーチン大統領には使用できないだろう(戦後最初に核兵器を実践使用する国があるとすれば、核開発を諦めないイランよりも、唯我独尊、何でもありのイスラエルの方だろう) 。
プーチン大統領は就任後ロシアも白鳥だからEUの仲間入りを希望したが、アヒルの子はダメとばかりに拒否され、その代わりNATOは東方拡大はしないとの言を信用した。が、旧東側諸国までNATOに加盟し(ロシア側についても経済発展は望めないと思った面もあるが)、裏切られたと思う。
NATO諸国と国境を接するのを嫌うプーチン大統領は同胞と思うウクライナに最後の砦としてNATOとの緩衝地帯としたいと思い、EUに加盟してもよい、武装も構わない、NATOへの中立化さえ守ればとゼレンスキー大統領に求めていた。
しかし、高い人気で大統領になるも素人の哀しさで政権運営が上手く行かず支持率が急降下した為保身から乾坤一擲ロシアとの戦争を選んだ。米副大統領であったバイデン氏が手を回し2014年2月マイダン革命で親ロ派大統領から親米大統領に替えさせ(その1ヶ月後ロシアがクリミア半島の併合を宣言)、その大統領により憲法に「NATO加盟方針」を明記されてしまい、選択肢が無くなっていたこともあるが。それにしても国民を戦争に巻き込んだ、汚職疑惑もあるゼレンスキー大統領を私は許せない。
西側はウクライナへの「侵攻」と言うが、プーチン大統領は「進攻」と思っている(台湾有事があれば、西側は侵攻と言うが、習主席は進攻と言うだろう)。
移民問題、貧富の差拡大等国内問題をさておいて軍備を拡充してロシアを挑発する、虎の威を借りたNATOを主導するのが、口だけのマクロン仏大統領と今回ではなく前のイスラエルがイランを攻撃した際「我々のために汚れ仕事をしている」とほざいたメルツ独首相。そんなNATOに対して、NATOの親分とは同盟関係がある日本が連携を強化しようとするなど、どうなのか。
日欧の関係が緊密になれば、世界の安定に大きく寄与するだろうと主張してきたトッド氏も、その考えは放棄したと言っている。さらに、「米国だけではなく欧州も狂っている。今米国がドイツを戦争に引き込むことに成功しつつある。日本は、ヨーロッパを信用してはいけない。ヨーロッパのように行動してはいけない」と言っている。
私は、欧州と安全保障で連携するなら、ウクライナ戦争の初め「プーチン大統領は重病」「もう死んでいる」とフェイクを流して呆れさせたが、日英同盟という良き思い出がある“腐っても鯛”の英国だけでよいのではと思っている。
今の日本に必要なのは、「軍事力の増強」より「外交力の強化」だとする立場なら、尚更に。
NATO諸国もロシアも互いに怖いのなら、互いに歩み寄ればいいだけ。過去それをさせないのが、(1949年に出来たNATOのカウンターパワーとして1955年に結成された、ソ連を親分とするワルシャワ条約機構が米ソ冷戦が終結にの伴い1991年7月に解散された。NATOも役割を終えたハズの)NATOの親分米国大統領であったろう。
米国に依存するために防衛費を対GNP5%(ウクライナから遠いスペインは反対した。ロシアはたとえ首都キーウまで侵攻するとしても西部は併合しない。線ではなく面での緩衝地帯として残すだろう。NATO諸国と国境を接するのをプーチン大統領は嫌う為)にするぐらいなら、米国から自立してロシアと和戦両様の構えを構築した方がよいと思うのだが。
エプスタイン事件や物価対策、不法移民問題等に対する失政に加えイラン攻撃が加わり支持率の低下で錯乱状態のトランプ大統領についていけないと仏・独はそれを模索し出したか。自立の動きを見せれば、それを米政府と軍産複合体にとって不利益と思うトランプ大統領は態度を軟化させるのか。
日中関係においても、日本が過去中国に戦争をしかけている。中国側からは元寇(1274年、1281年)があるが、それは夷狄が作った「元」国の仕業(二度の神風・台風により挫折に終わる。日本国民が敗戦するまで、「日本は神国」と思い込む契機に)。
近代、日清戦争と日中戦争とを日本から仕掛けたが、日中戦争は、日本と蒋介石率いる中国国民党との戦いであり、中国共産党にとって日本は敵の敵、味方という側面もあった。
中国にとって日清戦争(1894年7月25日~1895年4月17日)に負けたことが記憶から消し去りたいができない最大の汚点。世界に中国(夷狄が作った「清」国) は“眠れる獅子”ではなく“張り子の虎”と嗤われた。そして、台湾を日本に割譲されただけではなく、欧米列強の植民地化の憂き目に遭い、上海租界の公園に「犬と支那人入るべからず」と使用規則に書かれてしまう。
その屈辱を習近平主席が何としても晴らしたいと思っている。だからといって、日本を征服したいと思っているか。日本人も核兵器で米国に復讐したいとは思っていない。
米国と違い漢民族の中国は、戦争下手な文系の国。台湾との統一も、出来れば平和的に実現したいと思っていよう。
文藝春秋6月号の連載最終回で著者の元米国大統領副補佐官は、イラン戦争が台湾・日本の良い教訓になるという。米国・イスラエルの圧倒的な空爆をもってしても政権交代はなしえない。数十万規模の兵士を伴う地上侵攻が必要という。
台湾には大海の「天然の防壁」がある。中国は侵攻戦略の見直しが必要になるか。台湾への軍事侵攻は遠のくのか。
今や体の大きさからすれば、中国は鷲で、日本は鷹(ミドルパワー)に過ぎない。鷹が台湾有事発言をしたのなら、鷹より大きい鷲が金毛の鷲の威を借りて牝鷹がほざいていると鷹揚に構えてらいいのに、本気で牝鷹を潰そうとしている。
若者達が人間爆弾、人間魚雷となった頃から80年経っても五輪やWBC、WCの若い選手達は、愛国心、団結心、犠牲的精神が少しも変わっていない。中国からすれば依然として脅威に映るのだろう。
とはいえ、侵略した日本側の方がより中国の脅威を感じているのかも知れない。だが自前で核武装できない。その為に安倍首相は核のシェアリング(共有)を提唱したが、共有では米国の同意が無ければ使用できない。(中国を仮想敵国とするなら)距離的には今まで通り米軍で事足りると米国通の明海大学小谷哲男教授が明解に否定していた。
米国は絶対的NO.1の座は断念したが相対的NO.1にはこだわっている間は日本との同盟関係は解消しないだろう。問題は、米国の孤立主義が深化し在留米軍基地を撤収して同盟関係を破棄した場合。周りを核保有の国に囲まれて孤立する。
核保有は米国から置き土産ではないが核兵器を譲ってもらえれば良いが、上述の理由で、譲ってはもらえない。
ウクライナ国民は陸続きで徒歩でも国外に脱出できる。軍事力で中国が日本を攻撃した場合、日本人は、むざむざと多数の戦闘用ドローンの餌食なりたくなければ避難すると言っても海外脱出せねばならぬ。とくに低所得者はボートピープルにならざるを得ないが、台湾は中国に統一されてなくても封鎖される。韓国には受け入れを拒否されると、米国が受け入れを認めてもグアムまで約2,500㎞もある。1日10時間(50㎞)歩き続けても50日間要する距離だ。海上においては絶望的か。
日本は海に囲まれており、他国からの侵略を受けにくい利点があった。しかし、核攻撃においては、ドイツのごとく他国に囲まれている国より、狙われやすい。それもあって広島、長崎に原子爆弾が投下された。
たとえ核兵器を所有しても、核戦争になれば日本は小型の数発で地図上から消える。ロシアや中国のような広大な土地がある国とは勝ち目がない(かつて毛沢東は 「米国と核戦争をやっても怖くない。5億人死んでもまだ5億人いる」と嘯いた。相手が日本であればあながちホラ話とは片づけられない)。日本に必要なのは、「軍事力」ではなく、「外交力」の強化なのだ。
ロシアに対しても、ウクライナ戦争が勃発した時に、米国は表向き参戦していないのであるから、岸田首相は中立的な立場として早期停戦を世界に発信すべきであったろう。
幸い今は台湾有事が日本有事にはならない方向に進むか。今年米中首脳会談が4回行われるという。トランプ大統領が、「中国は西半球に介入しない、米国も台湾には干渉しない」で同意するか。中国と台湾の間で台湾有事が起きても米国参戦ない限り日本は動けない。日本有事にはならない。
そもそも、日本は中国とは経済において密接な関係にある。2025年4月の外務省調べによると、2024年日中貿易総額は44.2兆円(2,926億ドル)、前年比4.7%増で、日本にとり中国は最大の貿易相手国。中国にとり日本は米国、韓国に次ぐ3番目の貿易相手国。
タカ派の人々は、そんな中国に対してなぜ喧嘩腰なのか。経済や国民のことを考えないウクライナのゼレンスキー大統領と同じなのか。
タカ派の人達は隣の家にも喧嘩腰なのか。いざとなったら引っ越しすればよいと思っているのか。
国は引っ越しできない。好きであれ嫌いであれ、無難な対応をとるものだろう。タカ派の人達は見下していた中国が大きく発展してるのが気に入らないのか。中国への朝貢国にされることを恐れているのか。今も日米同盟という麗しい名の元に間接支配され、米国に80兆円もの朝貢をしているではないか。
『世界を解き明かす地政学』(日経BP)の著者田中孝幸氏は、軍事費は国と国との信頼度が低下すれば、その分増加する性質がある。国民生活に重荷になる軍事費を減らすためには、官民の交流を活発にして、国民の間の信頼度や相互理解を高める地道な活動が求められるという。根っからのタカ派の国会議員は、それを承知していながら、なぜ国家財政が逼迫している最中で中国と軍拡競争をしようと言うのか。軍事費利権が目的なのか(本気なら、まず国民の安全を図るために防空壕や核シェルターを整備するものだろう。核を持たない永世中立国のスイスのように)。
れいわ新選組の奥田ふみよ共同代表だけではなく、国民も知りたいと思う。第二次世界大戦の折、ノブレスオブリージュとして、昭和天皇の弟君であられる秩父宮雍仁親王(陸軍)、高松宮宣仁親王(海軍)、三笠宮崇仁親王(陸軍)が軍服姿にて戦地にお赴いておられる。
タカ派の国会議員は自ら血を流す覚悟と言っているとのことだが、国会に居て血を流すのは倒れて顔面を強打する時ぐらい。戦争になればタカ派の国会議員は迷彩服を着て戦場の最前線に立つのか、その覚悟のほどを国民に話すべきだろう。奥田氏の物言いが不穏当として話を逸らすのではなく。
元々中国人を反日にさせたのは日本側。1915年1月日本の大隈内閣が、中国の袁世凱政府に対し、高圧的な二十一カ条の要求を突きつけたことに起因する。
その後の支那政策に対して、岩田規久男氏の『経済とイデオロギーが引き起こす戦争』(光文社)によれば、元老松方正義は、憂慮を示し、「我が強盛を頼みにして、支那の弱小に乗じ、支那を威嚇し、支那を恫喝し、時にだまし討ちの小計を弄し、時につたない政策を実施し、ただ支那を追い詰めて自分の望む結果を得ようとし、支那を日本から離反させ、それによって日本を支那の不倶戴天の敵にし、日本を子々孫々までも呪詛の対象とし」と言い、「我が対支政策は、巧な策や劣った策を交互に行って支那の恨みを促すのみならず、その軽蔑を招く」と警告したという。
しかし日本は松方の諫言を無視し、日中戦争を始め目的を見失いながら戦線を拡大していき、日本の敗戦に結びつく。
日本は、体制や文化が違うが、好き嫌いは別にして中国を一つの大国としてもう認めるべきだと私はそう思う。
環太平洋で言えば、日本は米中の覇権争いに加わらず極力中立の立場をとるべきだ。そして、米中が軍事衝突すれば日本が戦場となることから避けられない。日本が米中衝突をさせないため、つまり、米中双方とも日本の言うことを聞かせるためには、日本(政権)が米中双方から有能であり信頼に足る、米中双方に敵には回せられないと思わせる必要がある。
男女関係で言えば、日米同盟の米国は夫で日本が妻。夫は遠い北アメリカに別居中。中国は近所で昔からの知り合い。夫もその知り合いと付き合いがあり、妻が貞操を守る限り妻がその知り合いとビジネス交流しているのを黙認している。夫と知り合いが喧嘩になりそうになれば妻が仲裁に入る。
領域の広さを競う囲碁の対局で言えば、本因坊米国に対して挑戦者中国とがタイトルを争う。対局室には、他にいるのは日本だけ。記録係以上立会人未満の立場にて。
最後に、麻雀に例えると、麻雀牌は数牌、字牌合わせて34種類あるが、数字、漢字いずれも刻まれていない牌は白牌(俗にパイパンと呼ぶ)だけである。日本は白牌、Only Oneを目指そう。發、中、白の3種という最少の種類で役満を構成する役を大三元と呼ぶ。發(はつと読む。青とも呼ぶ)、中(チュンと呼ぶ、字は赤い)、それと白だ。米国を發牌と擬えれば中国は中牌にあたる。NO1争いは發と中でやってくれ。日本としては、「青」の色を少しずつ落としていき、「赤」にも染められず、それでも環太平洋での平和という大三元の役満には、ASEAN等の小国の意見をまとめる「白」という日本が不可欠という、そういう存在を目指すところか。
トッド氏も2025年10月25日付け朝日地球会議の基本講演で、結びに(要約すると)、「日本は、自分を通常兵器をさらに作り続ける米国の同盟国と考えるべきではなく、日本はもっと広い視野で自らの歴史と西洋諸国と非西洋諸国との関係について省察すべきである。そして中立の立場でものごとを考えるべきだ。私が日本の長い歴史を学んで思うのは、日本の伝統は、中立にあり、同盟により戦争に巻き込まれることではない」と述べている。けだし、至言である。
さらに、イランを初め最強国米国の圧力に対して抵抗力を持つようになった背景には中国の経済的な力の増大があるという。日本人に対して「米国に使え、その代理として中国と戦争するよりも、中国とうまくやるべきだ」とトッド氏は警告している。
(次回244号は5/10アップ予定)