2024.3 NO.204  ひまり VS ひま
 新年を迎えたのに、常日頃能天気な私が、無常を感じている。昨秋より10/8故谷村新司(74歳)、10/18故もんたよしのり(72歳)、10/19故大橋純子(73歳)、12/30故八代亜紀(73歳)と、同世代の人気歌手が次々と亡くなっている。
 華やかな舞台でスポットライトを浴び大勢の観衆に感動を与え、歌手自らもドーパミンを全開させ快感を得る。その一方でストレスが体を蝕むのか。数十年も続くのであれば。

 私はまだ遠い先のことと高を括っていた「臨終」が身近に感じてしまう。
 元日に能登地震が発生した。被災地でなくとも我々もお屠蘇気分が吹き飛んでしまった。
 私は本ブログ2012年3月号NO.9(「アダムとサダム」)にて「平成7年に起きた神戸の大地震のときには、神戸に地震が起きるなど44年神戸に在住して一度も聞いたことがなかったこと。自分自身は前年の平成6年に神戸を捨て居を東京に移したことを負い目に感じたことから、やり場のない怒りがこみ上げた。地震で壊れた生田神社をTVで見て、神社に八つ当たりし、もう浅草寺・神社をはじめ初詣ですらどこにも行っていない。」と書いている。
 今回の能登地震でも神社が壊れていた。荒廃からの復興のシンボルは欧米なら教会か。日本なら神社ではないか。無論民家もそうだが神社も壊れないで欲しいと思う。
 29年前の1995年阪神・淡路大震災(M7.3)以降、M6以上.の大地震は、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2005年福岡県西方沖地震(M7.0)、2007年能登半島地震(M6.9)、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)、2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2011年東日本大震災(M9.0)、2016年熊本地震(M7.3)、2018年大阪北部地震(M6.1)、2018年北海道胆振東部地震(M6.7)、2021年福島県沖地震(M7.3)、2022年福島県沖地震(M7.4)、2023年石川県能登地方を震源とする地震(M6.5)、2024年能登半島地震(M7.6)。2021年以降毎年大きな地震が起きている。嫌な予感も。杞憂であれば。
 日本は地震列島。どこにでも起こりうる。まだ地震予知はできない。予知できるようになっても止めることは現代科学では無理。日本は火山列島でもある。天災は日本人に課せられた宿命と思うしかない。
 能登の被災状況をみていると、イスラエルの攻撃を受けるガザ地区を思い起こす。石造りと木造の違いはあれど。
 地震の為ではないが、戦前広い領土を求めて満州に進出したが、結局戦争により満州は失った上米軍から日本の各地に大空襲され、広島長崎に原爆を落とされ、大地震以上に日本は焼野原となってしまった。
 「天災」から逃げられない日本は、事前の備え・避難体制やスクラップ&ビルドを背負わされている。その費用は天は支払ってくれない。もちろん奪った命も返してくれない。

 しかし、最大の「人災」と言える戦争は避けることが出来る。天災で苦難を義務づけられたような日本で戦争を口にする者は金持ちかつ強欲な者だけだろう。

 松本人志氏の性加害疑惑も、世の中を嫌な気分にさせる。2019年6月に吉本興行の芸人の闇営業問題が発覚した頃芸能界に関心を持ち、とくに松本人志氏に注目していた。公人及び公人に準ずる著名人を批評するスタンスなので。

 他人様の顔をとやかく言える立場にないブ男の私ではあるが、松本氏は若い頃それなのに女性にモテる顔をしていたと思う。が、数十年経って人相が悪くなった(加齢はあるもその理由が分らずそうは書けなかったが)。相方の浜田雅功氏や明石家さんま氏は変わらないのにと、当時そう思っていた。
 2020年6月臨時号 NO.134「 ボブ VS ボク(2)」において、「松本氏の天才的な所は、当意即妙な切り返し、アドリブにあると思う。だが、思いつきやアドリブなら、ツイッター発言は失言に繋がりやすい。」と記した。続いて、松本氏の営業自粛で生活苦の芸人に対する「上限100万円の無利子貸し付け」に関して、「ただ、その報道がなされた5/4、『善意にケチを付ける人達がいます。あーほー』と松本氏はツイートした。それは、松本氏を支持するネット民が言うことであって、本人が発してよい言葉ではない。才能ある若手芸人を助けたいとの一心なら、他人の評価なんかに動じないハズ。世にインパクトを与えた有徳な功業を成そうとする時に、そういう発言を軽々にするから『善意の衣の下に名誉心・権力欲という鎧が透けて見える』と言われかねない事態を自ら招く(それこそある程度の実績を残さねば、その時は何を言われるか分からない)。長年ボランティアをし続ける俳優杉良太郎さんは、売名行為だとの心無い声を浴びせられてきたが、「ああ、売名行為ですよ。みなさんもなされたら、どうですか」と言い放つ。」と私は松本氏を叱咤した。
 それから、こう書いた。「人は変わる。と言っても、変わらないように見える人もいる。周りの見る目が変わってもいつまでも本人は変わらない人と言えば、明石家さんまさんだ。さんまさんは変わらない。『みんなを笑わせたい。笑顔にしたい』と言うだけで、それ以上でもそれ以下でもない。浜田雅功さんも、人柄が滲み出た人懐っこい顔は若い時から変わらない。礼儀知らずの若手やぼやぼやした番組スタッフには厳しいらしいが。」と。
 松本氏は権力欲に執着しているのでは。政治スタンスがラサール石井氏とは真逆のようで、安倍元首相ら国の権力者に与みする中で自身はお笑い界の権力者になりたいと思っているのではと私は見ていた。

 時事問題を扱うフジTV『ワイドナショー』にて次第に出演を減らして行ったのも、本人が「同番組内での発言を部分的に切り取った記事が出される」ことを嫌ったと報道されているが、国の権力者らに対して批判するようなことを言いたくないからではと私は見ていた。

 私がどう見ていようと松本氏にとっては「大きなお世話」にもならなかったハズなのに。権力は腐敗する。そして結末を迎える。ただ、お笑い界の権力者松本氏の腐敗が女性問題に現れるとは思わなかった(週刊文春の報道が事実に近いのであれば)。その不明を恥じる。
 松本氏は2009年「出来ちゃった婚」で日テレのお天気キャスターを卒業した女性と結婚した。私もお天気キャスターとして可愛い女(ひと)だと観ていたので、いよいよ年貢を納めるのだと思った。その後も『人志松本の酒のツマミになる話』の中でも、家に帰ったら男物の雪駄があり動揺した(奥さんが趣味の和太鼓の稽古の為に用意しただけ)とか奥さんへの愛情を示す発言もあり、女遊びは卒業していると私は勘違いしていたのか。
 問題となる疑惑が平成15年だとすると娘さんはまだ小学生に上がる前後か。週刊文春の記事が出る前だが、上記番組で、お笑い『おぎやはぎ』の小木博明氏が参加者に「朝帰りする妻から『浮気していい』と言われているが、みなさんならどうします」と問いかけた。松本氏は「浮気する」と答えた。もう一度小木氏から聞かれた時、松本氏は「娘次第やな」と答えを変えた。それが父親心の吐露で本心だと思う。

 娘を溺愛と言われる松本氏は文藝春秋(週刊文春)を相手どり提訴した。思春期の娘さんを思ってのことではないか。だが、娘さんにとって良いことなのか。本人にとっても。

 「当該事実は一切ない」と言っていた吉本興業ではなく松本氏個人が裁判慣れの文藝春秋と闘うというのも、どうなのか。吉本興業は松本氏と距離を置いたのか。

 週刊文春は被害を訴える女性がいると報道しているだけ。飲み会は認めた形の松本氏と証人として出廷する被害を訴える女性(以下「被害女性」)との間で性行為の同意の有無について争われると思うが、密室だけに水かけ論になる可能性も高い。たとえ被害女性が、不利な立場になっても、証人として出廷しなくても、被害女性の言い分を信じるだけの証拠や裏付け調査や他の被害女性たちの証言集めを(本疑惑を報道する「公共性」を充足させる為にも)全社あげて既に対応していよう。週刊文春は負けない自信を持っているのではないか。
 高額賠償請求も、松本氏が裁判に専念すると勝手に休業しただけ。民事裁判では弁護士が出廷し最後の本人尋問時に松本氏が出廷するだけでは。仮に松本氏が勝訴しても名誉棄損でそんな高額は現実的でないと週刊文春側も思っていよう。
 裁判が始まれば、週刊文春側は“花見コウ”に過ぎないと余裕でこれでもかと攻めたて、さらなる娘さんが目を覆う、耳を塞ぐような話が世に出てしまうだけかもしれない。

 安倍派を中心とする政治パーティの裏金疑惑問題は、大山鳴動して鼠数匹で早々と収束したように見える。民間が相手なら何でもありのような東京地検特捜部が。メディアも森本宏・最高検刑事部長(以下「刑事部長」)、伊藤文規・特捜部長のコンビと年末に地方検事も動員しての大掛かりな体制だと国民の期待を煽っていたのだが。
 検察OBは庇う。「政治資金規正法の建付けが、会計責任者の責任を問うことになっており、政治家を挙げるには、法律を変えるべし」と言う。
 事務総長との共謀の証拠が見つけられないのか。『ドラえもん』にとっていい迷惑だが、事務総長たちから、「一生そばにいるから 一生そばにいて」と因果を含められたら、会計責任者は断れないだろう。断れば、罪の重さに耐えきれなかったのか「虹」のはるか上に旅立ったとのニュースが流れるのかも。会計責任者は賢い。就任時に覚悟を決めているハズ。そんなことは検察もハナから予想していただろうに。
 特捜部長時代の森本刑事部長に対しては、奇しくも上述NO.134の次号2020年7月号NO.135(「ひんかく」VSひんいかく)で次のように批判している。
 「その検察は今どうなのか。公権力の私物化疑惑ではなく、一民間企業の権力の私物化を捜査し大山鳴動した事件は裁判の未開廷と日産の業績・株価大幅悪化で終焉を迎える。逃亡したゴーン氏はレバノンからICBMのごとく日産・検察に反撃する。政府関与?の国策捜査の不当性、人質司法の非人道性を世界に晒し、海外メディアは一定の理解を示した。ゴーン氏への捜査、弘中弁護士事務所への強制捜査等における『検察の強さ』をよりはき違えたような特捜部の捜査手法も合わさり『検察の品格』が今問われている。」

 当時『深層 カルロス・ゴーンとの対話』(小学館)を上梓した検察OBの郷原信郎弁護士はゴーン氏の日産「私物化」以上に森本特捜部は検察の権限を「私物化」をした(国連作業部会も「4度にわたる逮捕と勾留は根本的に不当だ」と意見書)と言えるのではと結論づけている。
 このままでは失態と言える森本刑事部長の検察庁トップの芽は完全になくなっただろう。名明石市長から過激なインフルエンサーに変身したかのような泉房穂氏は今すぐにでもと言っていたが、森本刑事部長がトップなることがあるならその時には、検察庁の看板にペンキを投げつける市民がまた現れるのではないか。
 
 暗い世相の中で、心が晴れることもある。
 ドジャースの選手として大谷翔平選手が3/20にデビューする。今から待ち遠しい。今季は打者に専念するので、三冠王になることが期待される。

 チームは強力打線なので打点は100打点をかなり上回るか。ホームラン王、打点王は可能性が高い。
 問題は打率。大谷選手は昨季ア・リーグで自己最高の0.304だが、立ちはだかる高い壁となりそうなナ・リーグの首位打者アラエス選手は何と0.354。昨年のナ・リーグMVPのアクーニャJR選手も0.337と高い。同僚となったフリーマン選手(0.331)、ベッツ選手(0.307)もいる。打率をどう改善していくか、それを観るのも楽しみだ。
 日本人である大谷選手が怪力自慢のMLBスター選手をパワーで凌駕するのは痛快。人格も称賛され、MLBを代表する選手と見られるのは、日本人として誇らしい。

 大谷選手だけではなく、昨年WBCで優勝した日本チームの選手たちも世界から敬仰されている。
 (私的な立場では色々取り沙汰されるが)弱冠21歳の佐々木朗希投手が準決勝・メキシコ戦で先発し3ランを浴びる。敗色が濃くなった7回吉田正尚選手が起死回生の同点3ランを放った時涙目で試合を見つめていた佐々木投手は狂喜し帽子を地面に叩きつけた。170キロ?で肩が抜けたかと思うほどに。
 第二次世界大戦で日本の敗戦が濃厚になった頃チャーチル英首相とルーズベルト米大統領とは、見下していた黄色人種の日本軍のあまりの強さに恐れを抱いていた。チャーチル首相は、日本から武器を取り上げ、アメ(経済繁栄)を与え、二度と歯向かわないようにと考えた。
 天国の二人は、思惑通り日本の政治家は武士から商人(あきんど)になり牙が抜けたことを見て、ほくそ笑んでいるか。
 しかし、日本国民、とくに若者は、80年経っても変わらない。WC、WBC、五輪でも、日の丸を背負えば、皆一致団結し、死ぬ気で最後まで戦う。それを観て、世界は日本人との戦争は避けたいと思うだろう。軍事力を増強するよりよほど戦争への抑止力となろう。

 能登地震の翌日救援に向かう離陸待機の海保機と日航旅客機が衝突した。不幸中の幸いにも奇跡的に18分でJAL乗客全員無事に脱出できた。CAの機転と適格な誘導とそれに従う冷静な乗客(度重なる天災で培われた国民性~助け合い精神と規律性)に世界は称賛した。
 空の船長である機長も今にも爆発炎上の危険の中乗客が一人も残っていないか点検し一番最後に脱出した。

 日本に追い付いた、追い越したと思う韓国の人々も、まだまだと思ったことだろう。
 新型コロナ禍の1年前か長男がJALのマイルを使って航空券を用意してくれてパリに短期留学していた長男ファミリーに夫婦で会いに行った。シャルル・ド・ゴール空港に着き荷物が廻って出てくるのを待っていたらベテラン?女性CAがたまたま私を見かけ「席の下にハンカチを落としていましたよ。少し待っててくださいね」と言って、たかが安物のハンカチなのに忘れ物預り所へ走って取りに行き手渡してくれた。多数いるエコノミー席の一人に過ぎない私を覚えていて親切に対応してくれた。
 少し感動を覚えた私は、2021年2月号NO.146(「トラベルVSトラブル)にて、そのことに触れ、「耐用年数を過ぎた脳コンピューターに『JALはJALでしかない。今後とも乗らない。しかし、女性CAは優秀のようだ』と上書き保存した。」と書いた。
 私は、JALの上層部の姿勢、「親方日の丸」体質に対して偏見があったが、社長が女性に代わる。それも吸収合併された側のCA出身とのこと。JALは変わる、変わろうとしているとの思いに至り、クルーの優秀さも再認識した私は、この度アンチJALを返上することにした。

 天災は嫌いだが、天才は大好きだ。世界が注目する天才少女ヴァイオリニストがいる。HIMARIの名で世界で活躍する吉村陽鞠(12歳)さん。日の光のマリなら「太陽」であり、オーケストラという宇宙で輝くひまりさんを観続ける我々は「ひまわり」(向日葵)と言える。
 父親は作曲家・シンセサイザー演奏家の吉村龍太氏、母親はヴァイオリニストの吉田恭子さんの音楽一家。3歳で弾き始め、8歳の時には国際コンクールで審査員3人全員が満点を出した上あり得ないことにアンコールを意味する手拍子をした。2022年米名門カーチス音楽院を最年少(10歳)で合格している逸材。
 日本には、ひまりさん以外にも、村田夏帆さん(16歳)、服部百音さん(24歳)、五嶋みどりさん(52歳)等の天才女性ヴァイオリニストがいる。夫々のファンがかまびすしい。クラシックに疎い私は、語る資格はないし、優劣に興味はない。
 ただ、私はひまりさんが奏でる音色が好きだし、小さいながら指揮者と共にオーケストラをリードする姿にオーラを感じる。なによりも感心するのは、10歳までに42の賞を獲得しているひまりさんは「コンクールは自分の為に弾くから好きではない。聴衆の為に弾くのが好き」と言う。小学生にてマズローの欲求6段階説の最上位の「利他行の実践」の域に達している(第5段階:自己実現の欲求、第4段階:自尊の欲求)。
 「同じ匂いがする」は悪い意味で使われることが多いので、ひまりさんは大谷選手と同じ香りがする。頭がよく読書好き。ヴァイオリン以外でも積極的に学ぼうとする。
 ひまりさんに限っては「神童も二十歳過ぎればただの人」にはならないと確信している。
 「蛙の子は蛙」という意味では、野田樹潤さん(明日18歳の誕生日)もいる。通称は「Juju」(JUJUは人気女性歌手)。

 並み居る男性ドライバーを従え、F3(時速260キロ)で女性ドライバー初の年間チャンピオンとなった。新幹線の運転手も、同260キロで操縦するが、障害物のないレールの上を走る。3歳からカートに乗るJujuさんは怖くないという。F1ドライバーであった父親野田英樹氏は操縦する適性(才能)は自身より娘の方が高いと言う。Jujuさんは最高峰F1(同350キロ)を目指すらしい。すごい女性が現れたものだ。
 こうしてみると、日本はまだまだ捨てたものではないと思える。喜ばしいことだ。
 問題は、やはり「政治」であり、「政治家」だ。立憲民主党が二大政党制の片方の雄として復活するチャンスが到来した。旧民主党時代の「行政仕分け」みたいなスタンドプレーを反省し、いきなりの政権奪取ではなく、日本の政治を正す為に、真正面から「政治改革」の論戦を挑んでもらいたい。主権者たる国民から強い不信の眼が向けられているのに背を向け、論点ずらしの派閥解散をし、それに乗じて党内で権力争いする、傲慢かつ劣化した自民党に対して。
(次回206号は2/20にアップ予定)