2024.5 NO.207  んのう VS んのう
 今年2月の初めTV番組『ざわつく!金曜日』にてレギュラーの長嶋一茂氏が、共演する高嶋ちさ子さんに勧められ、医療脱毛を始め、とりあえずVIO脱毛だけをしたと言った後、施術した二人の担当女性を食事に誘ったと話した。それを観た女性たちがキモい!とネット上でドン引きしていた。

 VIO脱毛における、Vラインとはいわゆるビキニライン、Iラインとは性器の周り、Oラインとはお尻の穴の周りのことだという。永久脱毛には8回以上かかると言われている。
 このVIO脱毛を含め今私が思っていることを書いてみることにする。
 神戸で生まれ育った私は小学3年生まで母親と銭湯に行き女子風呂に入っていた。そのことについて、本ブログ2017年4月号 NO.70(ジョシブロVSジョシプロ)に書いた。そして(他にも覚えていることはあるが言わぬが花だ)とカッコ書きしたのだが、それについて今回少し触れてみる。
 65年前の私は、二次性徴にもまだ間があり、今と違ってパソコンもスマホもなく親、兄からも情報が無く、銭湯に行くのは毎夜寝ることと変わりがなかった。物心付いてから5年ほど何百回と女湯に入っているハズだが、あまり記憶がない。それでも、はっきり覚えているのは、湯殿では女性はどこも隠さない。が、アンダーヘアが薄い人が恥ずかしそうにしていたこと。それから数年後経った頃親戚に嫁入り前の娘がいたが、薄いと悩みを私の母に打ち明けていた。
 アンダーヘアが無毛(以下「パイパン」)なのはホルモン異常である為か、パイパンの人の方がかなり少なかったのか。それで当時偏見視されていたのか。
 小学4年生以降女子風呂の様子は私には分からない。が、2017.3.2付けの『教えてGOO』での男性からの質問に対してベストアンサーの庶民女性は次のように回答している。
 「日本の女には3通りありまして、抵抗なくつるつるにできる人と恥ずかしがりながらも好きな男が言うならできる人とアホか冗談じゃないと切って捨てれる人とです。私の勝手な感覚では、1:0.5:8.5くらいの割合じゃないですかね。。。」「女風呂に入ったことないでしょう?日帰り温泉にいっても、あそこがつるつるの人、見たことないです。キレイに整えている人をたま~に見るくらい。」「生きている場所によって、かなり違ってきます。外国じゃないですからね。ここは日本です。あそこの毛をそるのは商売女のすること・・・とされてきたのです。庶民の女は基本、ぼうぼうです。」
 あくまでも一人の庶民女性の意見ではあるが、私が女子風呂に入っていた頃と大きく変わっていないように思える。パイパンの人を見かけないのは公衆浴場を避けていることもあるのではないか。
 最近アイドルグループ出身の女子タレント達がパイパンを公表した。古い人間としては驚きだが、VIO脱毛によるもので、生まれつきのパイパン女性の負い目も知らず、欧州のセレブと同じとの優越感から口にしたのであろうか。もっとも、VIO脱毛せよ公衆浴場に堂々入るパイパンの人が増えて奇異な目を向けられることが無くなれば、それ自体はよいことではあるが。
 数年前欧州で活躍するサッカーの日本男子選手も、パイパンにすると言っていた(単にカミソリで剃るだけかVIO脱毛による永久脱毛か知らないが)。エチケットなのか相手の欧州の女性がVIO脱毛しているに合わせるためか。
 子作りを終えた日本のセレブたちが、お金を使い、痛みを我慢して何をしようと勝手である。しかし、妊娠・出産をこれから予定する庶民の若い女性がセレブのマネをすることには、賛同しない。
 彼氏に言われれば剃る彼女は、上記7年前のベストアンサーの女性は10%+5%と言うが、今はもっと多いだろう。しかし“老爺心”ながら、永久脱毛は止めた方がいい。彼氏と別れて新にできた彼氏から、ロリコン趣味はない、その気になれないと言われるかもしれない。パイパンが市民権を得たとしても、人の好き嫌いは仕方がない。それは差別ではない。

 人間が二足歩行を始めるとお尻が目立たなくなり、胸を大きくしていったとされる。それでも、日本男性は、本能かは分からないがアンダーヘアの方に注視するのではないか。
 新年早々前評判が高かったエマ・ストーンさん主演の『哀れなるものたち』を映画館で観た。驚いたことに、清純派として人気の高いエマさん自身が全裸となり、アンダーヘアまで見せていた。

 そんな事前情報はなかった。R-18も後で知った。まさに体を張った演技でハリウッドではエマさんを絶賛(2024アカデミー賞主演女優賞を授賞)しているが、ファンの私としては見たいような見たくないような複雑な気分となった。
 これまで金髪かブラウン系の髪色のエマさんはこの映画では漆黒の髪にしている。アンダーヘアも真っ黒に見える。それで裸体は日本女性とよく似ていると言える。ハリウッドセレブのエマさんはVIO脱毛とは無縁なのかもしれない。
 命に関わる頭を護る髪の毛は生まれる前から生えている。アンダーヘアや脇毛は二次性徴として遅れて生える。大事な所を護る意味もあるが、とくに女性の場合それよりも男をその気にさせる意味合いが強いのかも(腋毛はフェロモンを拡散させるに役立つらしいが、日本女性はアンダーヘアを想像されたくないとして剃ってしまう)。
 約700万年前に人が猿から分かれたのであれば、最初は体じゅう毛むじゃらで進化とともに毛が少なくなってきたということか。その中で、アンダーヘアが、退化せず変わらないとすれば、やはり生物学的に大きな意味があるのだろう。
  人間の女は、動物のメスのように決まった繁殖期や発情期はないと言われる。むしろ性行為は頻繁?に行われるから、ある意味、男も女も365日発情期とも言える。ただ、男は、女と違って、打ち上げ花火のこどく筒を立てなければならない。それには男は(人間だけ?の)欲情する必要がある。
 欧米の女性のアンダーヘアはブロンドやブラウンの色が多いが、それでは白い肌とのコントラストがあまりなく雑草みたいに見える。しかし、日本女性のは、昔「白壁にコウモリ」と呼ばれたように、コントラストが際立った日本女性の裸体は、男を欲情させるほど卑猥であり、かつ芸術的なのだ。それでこそ上記女優で当該映画のプロデュースにも関わるエマさんも日本の女性のようにした方が映画としても芸術性が高くなると判断したのではなかろうか。
 VIO脱毛業界はもっともらしいアンケート調査結果をもって世論を誘導しているように見える。

 『オトナのハウコレ編集部』に至っては、2021.09.08付け『パイパンに対する男の本音 毛があるのとないのどっちが好きなの?』と題した記事の中で、女性ライターが「日本人男性はアンダーヘアに対してこれほどまでに執着するのは、パイパンという言葉が世の中にまだ浸透していないからではなく、彼らが単純に変態だからではないでしょうか。」と書いていた。私は変態なのか(助平は認めるが)。
 アンダーヘアがあるなら、手入れはしても、わざわざ無くす必要はない。小さな庭なのに、庭の手入れはしても草が生えるのは嫌だと更地にする人はいないだろう。
 香水の本場フランスの風呂に入る習慣がないと言われたフランス人と違い、湿気が高い一方水資源に恵まれた日本では、私のようなズボラな人間でも毎日風呂に入る。ましてや女性なら(毎日入れる環境にない女性でも環境が整えば毎日入りたいと思うだろう)。行為に及ぶ際にも風呂に入るかシャワーを浴びるだろう。そんな清潔好きな日本人にとってアンダーヘアは不潔な存在ではないハズ。
 パイパンが好きな人はそれでいい。しかし、影響力のある著名識者たちがイメージを気にしてこの問題では口を挟みにくいことをいいことにして、日本女性の特性を顧みずパイパンであるべきだとの極端な主張をするのなら、それはいかがなものかと思う。
 欧米、アングロサクソンのやることが全て正しいと認める時代ではもはやない。何事も盲従する必要はない。

 日本女性は、上記に加え肌のきめ細やかさもあるハード面だけではなく、奥ゆかしさ、優しさ、強圧的ではなく掌の上で男を転がす等ソフト面を含めると、世界の男たちにとってNO.1。アニメ、グルメ、治安と並んで世界一だ。それに対して、日本女性はもっと自信と自覚を持つべきだ。
 
 65年前神戸下町の当時の相場なのか条例なのか知らないが、私は小学4年生からは男湯に入っていた。
 今は、2020年12月に、混浴に関するトラブル等の防止のため「公衆浴場における衛生等管理要領」が改正されたのに伴い、東京都では条例改正を行い、東京都内の公衆浴場の混浴制限年齢を10歳から7歳に引き下げた。2022年より施行されているという。
 私が10歳のときより今の10歳はマセている。年齢の引き下げは妥当だろう。ただ、7歳なら小学1年生か。男の子をもつ母子家庭のママは心配だろう。父子家庭で7歳の女の子が一人で女子風呂に入っても心配ない。母性豊な大人の女性も温かく見守ってくれるだろう。男の子は潜ったりするから心配だ。周りの男性は気遣いしてくれるか。(昔は男性も座っていたが)番台の女性によく配慮してもらう必要があるだろう。
 そんな中、男性が女性に扮して女子風呂に入ろうとして逮捕される事件がまだ見受けられる。子供の頃に銭湯に通っていれば、女装してまで女子風呂に入ろうとは思わないのにと私などそう思うが、そんな問題ではないのか。

 煩悩が昂じて、女に成りすまして、透明人間になってと妄想することは男性にとって不思議ではないが、それを実践までしてしまう人がいる。昔と違い女性の裸を見るならAV動画があるというのに。
 スカート内の盗撮も、登りのエスカレーターで前方にミニスカートの女性がいれば私も気にはなるが、それを盗撮したいとは思わない。かつて年収1億円と言われた著名エコノミストが盗撮で(選挙に纏わる陰謀論も出ていたが)有罪となった。リスク対リターンが全然釣り合っていないと思うが、地位や年収を失いかねないスリルがたまらないのであろうか。

 「LGBT理解増進法」が2023年6月16日に国会で成立し、23日に施行された。作家百田尚樹氏がその法案成立に危惧していた。近著『大常識』(新潮新書)にて。

 私は9年前『大放言』(新潮新書)を読み腹を立て二度と百田氏の本は読むまいと誓うも、怖いもの見たさからか、肩もこらないし、ついつい購読してしまう。この『大常識』も他の件では怒る(7/10アップ予定8月号NO.212「さいはんVSさいばん」にて)のではあるが、次の件に関しては別だ。
 百田氏はLGBT理解増進法が成立すれば、男性器がついた自称女性が女性の裸を観たいがために女子風呂に入ってくると懸念する。そして「法案反対派が恐れるのはそんな輩であり、決して本物のトランスジェンダーのことではありません」と言う。
 さらに、「『少数意見の尊重』『弱者の救済』とは異論をはさみにくい耳障りのよい言葉ですが、少数派の為に大多数が我慢、いや被害を強いられる社会を『差別のない社会』とはいいません」と言う。私はこれを支持する。
 男性のシンボルがついたたまの女性が、戸籍抄本か証明書を首からぶら下げて(それが本物だとして)女子風呂に入っても、それでも不快とか怖いとか感じる女性は少なからずいるのではないか。
 2023年10月25日、生殖機能をなくす手術を性別変更の事実上の要件とする性同一性障害特例法の規定が憲法違反かどうかについて、最高裁は「違憲」との判断を示した。
 これまで合憲とされた「性同一性障害特例法」の5要件(①18歳以上②婚姻していない③未成年の子供がいない④生殖腺がないか、生殖機能が欠く状態⑤変更後の性別に近い外観を備える)。
 この内今回「④生殖腺がないか、生殖機能が欠く状態」が違憲とされた。しかし、「⑤変更後の性別に近い外観を備える」については視今回最高裁は判断を示さなかった。
 しかも、違憲判決出る前の2023年6月において厚労省が「公衆浴場における男女の区別について『風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、身体的な特徴をもって判断する』」との通知を出している。
 今般の違憲判決を受け、心が女と言えば女湯に入れるのかとネット上で一時騒然となったが、現時点おいても体が男なのに心が女だからと言って女子風呂に入れる訳ではない。
 百田氏は、トイレもジェンダーレスに統一するのではなく、現行「女子トイレ+男子トイレ」を「女子トイレ+ジェンダーレストイレ」にすべきと提案する。私も賛同する。
 欧米では、リベラルが「理想」を御旗に極端に走るきらいがある。しかし、結局米国も英国も国民が分断されてしまっているではないか。度重なる天災の中で培われてきた助け合い・和の精神の日本には馴染まない。少数派も多数派も互いに相手のことを尊重し、気遣い、時には譲歩しあう。傲慢だった戦前はともかく、それが古来からの日本人というものではないのか。

(次回208号は4/20アップ予定)