2024.2 NO.203  たいん VS たい
 新年2024年は、日本は元日の能登地震、翌日の地震救援・海保機と日航機との衝突という最悪のスタートを切った。
 新年は選挙イヤーとも呼ばれるが、世界はどうなるのであろうか。3月にロシア大統領選、4月にはインド、韓国で総選挙、11月には米国大統領選がある。

 それに先駆けて、3日後の1月13日には台湾総統選がある。2期目の蔡英文総統は3選が禁じられており、与党民進党は、党首で副総統の頼清徳氏を擁立した。野党は最終的に2名が立候補。最大野党・国民党は新北市長の侯友宜氏が出馬した。台湾民衆党からも前台北市長の柯文哲氏が出馬した。

 昨年10/18付けアメブロ『中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾』によれば、「蔡英文政権の路線を引き継ぐ与党・民進党の頼清徳氏が野党各党の候補より一歩リードを保っている。最大の焦点は、支持率が伸び悩む国民党の侯友宜氏が他の野党候補と共闘して野党統一候補が結成できるか。実現できれば一気に野党有利の形勢に逆転できるが各党の思惑があり、まとまらない」とのこと。結局そのとおり、野党は一本化できなかった。
 そうなると、与党の頼氏が有利となるハズだが、11月21日から23日にかけて行った支持率に関する第77回民意調査では、民進党の頼候補は「31.4%」で、国民党の侯候補の支持率は「31.1%」と、拮抗しているという。遠藤誉女史が言うように、民進党副総統候補蕭美琴女史が米国かぶれと不人気に対して国民党副総統候補趙少康氏が73歳と高齢ながら人気があり、副総統候補の人気の差が影響しているのか。

 台湾独立を主張する頼氏が当選すれば、台湾独立へ舵を切るかと言えば、それはNOだろう。台湾の大手紙「聯合報」の世論調査を基にした過去10年間の傾向を見ると、世論は「独立支持」30%、「統一支持」14%、「現状維持支持」50%となるらしい。
 選挙は、「現状維持支持」派の支持を取り付けないと勝てない。頼氏も選挙前から台湾独立のトーンを落としている(独立支持派は不満も)。当選してもねじれ議会も懸念され、台湾独立に豹変できる環境でもない。

 対中融和路線の国民党侯氏が勝利しても、中台関係は雪解けが進むかもしれないが、台湾統一に向かうことは予想されにくい。外省人の二世・三世はもう台湾人としてのアイデンティティを有している。白色テロによる弾圧を乗り越え勝ち得た民主主義社会を手放すことを欲しないであろう。
 従って、どちらが勝利しても台湾は「現状維持」を継続する。台湾が「現状維持」を堅持している限り、中国が武力進攻することはない。もともと中国は戦争下手。中国四千年の中でまともな漢族の国家は、漢と明ぐらいでは。
 中国には諸葛亮孔明の格言がある。それは「賢者は戦う前に勝つ。愚者は戦って勝とうとする」。賢者は、展開しうるあらゆる局面を想定し、自らの有利となるように戦略的環境を操り、その上で最終的な勝利を確信してから戦いに臨む。習近平総書記は愚者と呼ばれたくないから、ウクライナのゼレンスキー大統領のマネ (高い人気で当選したものの政権運営に失敗し支持率が急降下したゼレンスキー大統領は、自らの保身のため、一か八か米国・NATOの支援を当て込んで、核保有大国に対して非核保有小国が無謀な戦争の道を選んだ) はしないだろう。
 孔明の格言もさることながら、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』(ビジネス社)の著者遠藤誉女史によれば、習近平総書記は荀子の「兵不血刃」(ひょうふけつじん; 「刃に血塗らずして勝つ」)を哲理としているという。
 それでも、習近平総書記が在任中に公約を果たしレガシーを残すことに執着するならば、台湾本土を攻撃するのではなく、中国から近い馬祖諸島か金門島を併合することはあるかもしれない。本土から取り残された金門島に人民解放軍が上陸すれば、金門島の住民は、一旦退散はしても、抵抗はしないだろう。金門島は中国の経済頼みであれば。
 それらの島だけでは、米国の防衛ライン(アチソンライン+韓国・台湾本土)に入っていないので、防衛大学校名誉教授の村井友秀氏が『日中危機の本質』(PHP研究所)で言うように、中国本土と近すぎて米国側にメリットもない。米国はあえて戦争しないかもしれない。それだけでも、習総書記にとっては、故毛沢東、故鄧小平がなし得なかったレガシーになるという。

 中国の戦略に影響を与えるウクライナ戦争は、泥沼化の様相にある。戦争が長期化すれば、人口規模、経済力、軍事力に大きく劣る小国が大国に負ける。
 反攻が思うに任せないゼレンスキー大統領はNATOの直接参戦を目的としてウクライナのNATOの加盟を訴える。ラスムセン前NATO事務総長は、停戦の条件を意味しないとして、ロシアが制圧している領土以外、いわゆる西ウクライナをNATOに加盟させてはと言う。それを呑むはずがないロシアのプーチン大統領は、戦争している国は確実にNATO入りできないからとわざと戦争を長引かせる戦略を採るかもしれない(EUへの加盟の話もあるが、それはゼレンスキー大統領への戦争継続させる為の単なるリップサービスか。しかもEUの大統領は任期満了前の7月に辞任するとか。何という無責任さ。もっとも戦争前からプーチン大統領はウクライナのEU加盟には問題視していない)。
 在日韓国人である政治学者姜尚中氏は、近著『アジアで生きる』(集英社新書)で、日本は「兵営国家」「諜報国家」としての韓国と米軍基地のある沖縄が共産主義陣営に対する緩衝地帯となり80年の平和を享受したと触れている。
 NATOの東方拡大に際し最後の砦としてウクライナを緩衝地帯と死守すべく、ロシアはウクライナに侵攻した。ウクライナがロシアに併合されれば、ポーランドはロシアと国境を接することになり、何としてもそれは避けたい。それで積極的にウクライナが支援してきたが、余力がなくなった。さらにウクライナ産穀物の輸入規制をめぐって対立しウクライナと関係がぎくしゃくし出した。
 昨年末のEUサミットでウクライナに対する500億ユーロ(約7.8兆円)の軍事支援について採決も、ハンガリーが拒否権を発動したため、否決された。
 肝心要の米国も、ウクライナの反攻が思うように進まず、ゼレンスキー大統領の汚職疑惑も浮上し、ウクライナ支援に反対する国民の声が過半数を超えてきた。
 そこに来てハマスとウクライナの戦争が勃発し、下院を牛耳る共和党はイスラエルの支援はしてもウクライナへの支援はやろうとしない。
 ウクライナ戦争の雌雄がはっきりしてきた。戦争継続の支援ができなくなるバイデン大統領はバイデン親子のウクライナ利権疑惑の秘密を知るゼレンスキー大統領に引導を渡すことは出来ないか。ロシア、ウクライナ双方と友好関係にある習近平総書記が両国の仲介の手柄をとることを黙認するのではないか(それがなくとも、来年1月にトランプ前大統領の復職なら、そうでなくとも共和党政権に替われば、戦争は終わるだろう)。
 そうした中でウクライナ戦争を終結させるためには、結局ロシアが占拠した東武・南部の4州以外を西ウクライナとしてロシア・NATO双方の緩衝地帯とせざるを得ないのではないか(戦争が続くほど、ロシアの占領する領土が増え、ウクライナは領土だけではなく無辜の住民の命も減る)。
 死活問題であるロシアと違い米国にとってウクライナは所詮“花見コウ”に過ぎない。
 NATO側の支援疲れとウクライナ側の苦戦でゼレンスキー大統領は世界に向けてウクライナが負ければ第3次世界大戦が起きると訴えるが、それは逆。ロシアが負けそうになれば核戦争の危険性が高まる。「NATO側の目的が、ウクライナが勝つことではなく、負けてしまわないこと、そしてロシアを弱らせ続けることだ」と真に理解し、2年前からウクライナ国民が遭っている悲惨な目がわが身に降りかかると発狂寸前のゼレンスキー大統領を持て余し、負けを認めたくないNATO諸国も潮時と思い始めているのではないか。
 ウクライナ内部においても、大統領と軍総司令官が対立し、ク―デターもなしとしない。ウクライナ国民も、戦闘が中止されアドレナリンが治まれば、ゼレンスキー大統領を選んだことを後悔することになるか。いや、もう国民は大統領を疑問視し始めている(ゼレンスキー大統領よりザルジニー軍総司令官の方が国民からの信頼が高いという)。
 
 防衛研究所の高橋杉雄氏は、職員の立場ではなく個人としての意見として、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』(文藝春秋)を上梓して、「戦争は始めるよりも終わらせることが難しい」とし、「戦争を始めさせないこと」が肝腎という。日米同盟を前提とし、プーチン大統領のウクライナ侵攻を蛮行とし、いかにロシア軍を撤退させるかを主眼とする立場で、北方領土の返還をライフワークとする鈴木宗男議員とは対極にある。
 姜氏は上記近著のエピローグで(要約すると)「ロシアのウクライナ侵攻を『蛮行』と言うなら、湾岸戦争からイラク戦争、アフガニスタン戦争と、米国の単独主義的軍事介入も『蛮行』に近いと言えるが、それが許されるのは覇権国家としての米国だけの特権だからなのか」と問う。
 私は、近著『問題はロシアより、むしろアメリカだ』(エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の対談;朝日新聞社)のタイトルどおり、そう言うトッド氏及び同調する遠藤誉女史等の見方をウクライナ戦争当初から支持している。私に言わせれば「問題はプーチン大統領よりむしろバイデン大統領だ」。
 高橋氏は、米国のバイデン政権はロシアにウクライナ戦争を思い止まる抑止に失敗したと見ている。だが、2014年2月マイダン革命が起こり、親ロ派のヤヌコビッチ大統領はロシアに逃亡し、親欧米派の野党が暫定政権を樹立した。これにバイデン大統領が副大統領時代に関与していたとみれば、話は変わってくる。その親欧米派政権がNATO入りを志向しているのに対抗すべくクリミア半島を併合した。ウクライナ戦争はその延長線上にある。米ロの対立だが、共に毛嫌いするバイデン大統領とプーチン大統領との確執よる戦いとも見れる。トランプ大統領が再選されていれば、ウクライナ戦争は起きなかったであろう。
 プーチン大統領がウクライナに侵攻するようバイデン政権が仕向けたと見るべきだ。ウクライナを犠牲にしてロシアを弱体化させる為に(1950年6月からの朝鮮戦争におけるソ連スターリン党書記長の戦略を逆手に取るように。1950年1月アチソン国務長官が防衛ラインを引くが韓国が入っておらず北朝鮮の金日成首相はスターリンに韓国攻撃を上申した。スターリン党書記は承認するもソ連兵は派遣せず北朝鮮を犠牲にして米国を弱体化させようとした。違いは、侵攻した側の金日成首相から国がボロボロとなり戦争の終結をスターリン党書記長に懇願するも認められず、一方侵攻された側のゼレンスキー大統領が戦争継続を求めるも米国・NATOに同意してもらえないかもしれないということ)。
 さらに、佐藤優氏等はバイデン大統領がロシアへの経済制裁を通じて天然ガス等をロシアからの輸入に頼る(EUで独り勝ちの)ドイツの弱体化も狙っていると見ている。 
 
 世界一強であるハズの米国の工業力低下の露呈、身勝手な米国に対するグローバルサウスの離反の増進等バイデン政権の失敗の中でも大失敗と言えるのは、プーチン大統領が軍事侵攻の決断するのを促すがごとく、「米国はロシアとの核戦争を避けるために参戦しない」と言ってしまったことだ。

 核の抑止力は、「敵が核兵器を使えば必ず核兵器で報復する。双方破滅する」ということにあるのに。そんなこと言えば、ロシアに戦術核にしろ使用の余地を与えてしまう。それどころか、世界中から、「自国本土を攻められたことがない米国はそれを極度に恐れているのか」と思われてしまう。
 米国はアメリカ合衆国を成立させた1775年からのアメリカ独立戦争(13の植民地とフランスとの連合軍とイギリス国軍との戦い)の勝利以降海外の外国と米本土での戦闘はしていない。2001年の未だに陰謀説が払拭されない9.11事件はテロ攻撃として、「テロとの戦い」と称して、アフガニスタン、イラクで戦争している。
 戦前日本と戦争状態にあったが、日本軍にハワイの真珠湾が奇襲された後、本土攻撃を恐れて疑心暗鬼から西海岸に居た無辜の日系人を強制収容所に押し込んだ。
 日米開戦の末期に日本は風船爆弾(気球爆弾)を飛ばした。米国本土に届いたが、米国は国民がパニックなることを恐れ、それを国民に秘匿した。その為木に引っかかって不発弾を触った民間の6人が犠牲となってしまった。心理的効果は日本の思惑通りであった。
 戦後の核大国米ソ対立においては、戦前に続く疑心暗鬼は  米国内に赤狩りの嵐を引き起こした。
 核攻撃ついて、米国がどの国よりも恐れを抱くのは不思議でもない。核爆弾を落とされた広島、長崎から落とした米国が膨大な資料・データーを持ち帰ったことでもあり、その惨たらしさを一番理解していよう。
 スターリン総書記に利用され朝鮮戦争で悲惨な目に遭い核保有を国是とした北朝鮮のミサイル実験は国というより金王朝存続の為の「盾」でしかない。さらに人民の生活を犠牲にしてまで推し進める核開発の必要性を国民にアピールすることとイラン等顧客にデモンストレーションしているだけに過ぎない。米国が必要以上に過剰反応するのは、危機感を煽り、日本に高額の防衛機器を買わせる為だと思っていたが、それだけではなく、北朝鮮からの自国本土への核攻撃を本気で恐れているのかと私は疑い始めた。
 ロシアもそう見ているのだろう。ロシアの著名な政治学者カラガノフ氏は“核先制攻撃論”を唱え、ロシアがNATOに核攻撃しても米国は核で反撃してこない(戦略核による米本土への報復を恐れて)と見透かす。メドヴェージェフ前大統領も再三米国本土への核攻撃を警告する。プーチン大統領も包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を撤回すると仄めかし、実際11月初めに批准を撤回した。
 米国は核が怖いなら通常兵器なら圧倒的に世界一であるので核兵器禁止に舵を切り替えればよいのだが、もう口にすることは出来なくなった。
 北朝鮮はICBMの実験を増やし、米国からの譲歩を引き出そうとするだろう。中国は、400個もない核兵器の増産に走り、米国の5千個までいかなくとも、ある程度確保できれば、習近平総書記は故毛沢東が言ったごとく「核戦争になれば米国2億人が全滅しても、14億人の中国人は全滅することはない」と嘯き、米国を脅すかもしれない。

 台湾有事が起きる一番の不安要素は、米国と言える(文藝春秋2023年12月号への寄稿『米国はすでに敗北している』にて“知の巨人”と呼ばれ親日派でもあるエマニュエル・トッド氏はバイデン民主党政権を「バイデンという老いぼれに率いられた子供っぽい集団」とこき下ろしている)。
 ただ、サウジアラビア(以下「サウジ」)とイランと間を仲介した中国に対抗して、バイデン政権によるイスラエルとサウジの仲介(着手はトランプ大統領)をしようとしていることよりとり残されるとの危機感も要因の一つとして、ハマスのイスラエル攻撃を招き、ウクライナだけではなく、イスラエルも支援せざるをえなくなった。当面の間台湾有事の危険は去ったと見られる。
 しかし、米国は、自国さえ攻撃されなければ、機を見て世界での覇権国の座を死守すべく台湾有事も辞さないのかもしれない。米国が目に見える形で今後も台湾に軍事支援し、中国を挑発していこう。中国通の遠藤誉女史が、「米国は中国が世界一の経済力・軍事力を有する前に叩きたいと思っている」と見ているように。
 米国の思惑どおり中台軍事衝突すれば、米国は軍事介入はしても(米国本土への反撃を受けないよう)中国本土への攻撃はしないだろう。中国が日本に戦術核にしろ核攻撃すれば、米国は反撃せず、日本を見捨てるかもしれない。日本は、“アジアでのウクライナ”と化し、国土は荒廃し、大勢の住民に死傷者が出てしまう。1945年当時の日本の二の舞に。
 
 日本としては、戦争を始めさせないためには、米国の挑発行為を止めさせることが必要であるが、今の日本でそんなことできるのか。
 米国と同盟国の英国スナク首相は、オスロ条約に加盟の立場から米国がウクライナに米国製クラスター弾を供与することに反対した。米国が意に介さないとしても英国の姿勢を世界に示した。同じく条約に加盟しているのに日本の岸田首相は、米国の供与に反対する意向も示さず悪びれた様子も見せず追認するだけ。
 日米同盟とは名ばかりで、実際は日米安保関係でしかない。ただ、属国でも主権国家であり、日本の国益を守らなければならないが、昨年6月頃バイデン大統領が、日本の防衛費の大幅増額とウクライナ支援に関し、「私が説得した」と発言した。慌てて日本は誤解を招くとして訂正を求めたが。黒田前日銀総裁は日銀の独立性を捨ててまで安倍政権に追従したのに、「日銀は政府の子会社」と安倍元首相に言われたのと同じ。「それを言っちゃ、おしまいよ」みたいな事を言われてしまうのは、ただ歓心を買おうとするからだ。最後は兄の米国に従わざるをえないとしても弟のファミリーの為に弟は言うべきことを言わなければ、単に舐められるだけに終わる。
 日没する米国と日出ずる中国との覇権争いの中で、グローバルサウスの小国たちは米国に頼ってればいいとはもう思っていない。TVドラマ『家なき子』で安達祐実さん扮する主人公は「同情するなら金をくれ」と言ったが、その小国たちは「介入するなら経済支援してくれ」と米国に言いたいのであろう。米国内で国民が分断されてしまっているのに拘わらず上から目線で民主主義、人権を押し付けてくるが、ハマスとイスラエルの戦闘でダブルスタンダートがより明確になった身勝手な米国よりも、罠かもしれないが有難迷惑なことを言わず経済援助してくれる中国にシンパシーを感じるだろう。

 グローバルサウスの大国であるインドやサウジは、表舞台に登場し全方位外交により世界への影響力を高めている。その中で、日本は退潮する米国の属国と見られていては影響力の低下は避けられない。
 私自身は、日本がまだ貧しかった中学生の頃、米ドラマ『ハワイアン・アイ』(日本1963年~66年)で、ホノルルの楽園、スポーツカー、コニー・スティーブンスさんの可愛さを観て、米国は天国かと憧れた。長じてもそれは続き、本ブログにても同盟するなら米国しかないと書いてきた。しかし、トランプ共和党政権よりもひどいバイデン民主党政権の誕生により、憧れ・敬意は幻滅に変わった。大統領が代われば、また尊敬できる米国に戻るのであろうか。
 人口の長期的減少、経済力の低下もありこのまま米国の属国に甘んじて生きていくのか。それとも属国からの離脱を模索するのか。その為には何をすべきなのか考える、そんな時期に来ていると思う。
 テレビによく出演している自衛隊OB、国の軍事研究者は、日米同盟を前提として国防の在り方を考える。国の方針を決めるのは政治家であり、政治家がそれを怠っているなら、それを批判するのがメディアの仕事である。ウクライナ戦争の戦況だけを語る自衛隊OB、国の軍事研究者だけが活気づき、それをBS情報番組が加油していると映るのは、国として健全と言えるのか。

 “環境破壊”の20世紀の遺物であるべき核兵器がゾンビのごとく復活してしまった今、上述トッド氏は著書で再三日本も核武装すべきと提唱する。
 北朝鮮は朝鮮戦争後大国は信用ならずと核で自国を守ろうと核開発を国是とし、今は米国も簡単に手出しできない。ウクライナはソ連崩壊から独立する時経済的、技術的問題があったとはいえ大国たちを信用してロシアに核を返還してしまい、ロシアに攻め込まれてしまった。
 核廃絶が理想であるが、現実は反対の方向に向かっている。国防面だけではなく属国から抜け出すためにも、日本においても一番の方策かもしれないが、トッド氏も日本が核武装できる方策は示していない。氏もそれが極めて難しいことを理解しているのだろう。
 唯一の被爆国として核廃絶を求め(実態は核保有大国の既得権を守っているだけだとしても)NPTで核保有国と非核保有後の橋渡しをしている。それを無視しても核実験する場所がない等日本が核武装できる可能性は極めて低い。
 現時点では日米同盟しか選択肢しかないのであれば、弟である日本が兄の言いなりになるのではなく、中国とも友好関係を築き、日本の国益も米国に主張しうる「愚兄賢弟関係」であるべき。そのためには、(21世紀に入って続いている)歴史観・国家観のない世襲ボンボン議員の首相であってはならない。
 AIに依存すれば、人間は考えることを止め人間は劣化すると言われる。その前に日本人は米国依存(隷属)で劣化している。それもトップから。魚が頭から腐るように。

 2023年度からの5年総額43兆円(同じ機器を買うだけでも円安で50兆円を超えるか)の防衛費(計画から積み上げられたものではなくトランプ大統領に安倍首相が約束し、そのツケを岸田首相が払うだけか)が年間だけで30兆円の国防費を持つ中国に対する抑止力になるとは思えない。むしろ中国を挑発することになるのでは。
 矢部宏治氏の『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)を読むと、米国にもの言える首相に代わっても米国が台湾有事を起こすのを日本が反対することはまず困難と思える。「遠い親戚より近くの他人」ではないが、隣国中国に挑発にのらないよう働きかけするしかない。それが日本が採る最善の策だ。
 戦後55年体制にて与党自民党は米国、野党第一党の社会党は中国と友好関係にあった。今自民党の軍国化に一定の歯止めをかけているとはいえ追認している以上は平和を標榜する公明党の存在価値は薄れていく。池田大作名誉会長が亡くなった。もう何が何でも与党にいる必要はないのでは。国民民主党が加われば、なおさらに。
 門外漢ではあるが、故池田の「平和外交路線」の遺志を継ぐのが党としての生き残れる道ではないかと思う。さらに世襲議員が少ない公明党は、「世襲廃止」「国会議員の削減」をアピールすれば、学会員以外からも支持が得られるかも。
 公明党は、同類と思われるのを由しとせず、パーティ券裏金問題で自民党を厳しく批判する。前々から国交省利権の独占を巡って苦々しく思う自民党がいよいよ業を煮やし、公明党が切られることもなしとしない。その前に下野し“雪駄の雪”の汚名を雪いでは(今のままでは中国に相手にされない)。
 小選挙区からの撤退は慌てなくてもいつでも出来る。安倍一強の後遺症にて旧統一教会問題、パーティ券裏金問題で自民党の足元が大きく揺らいでいる。一小選挙区2万票を軍資金として、「世襲が諸悪の根源」と言う野田佳彦元首相が再注目され始め、地に堕ちた評価も底を打った立憲民主党と連携しては。旧社会党の果たした役割を担い、中国に自重を求め、不幸にして戦闘に及んでも日本の民間人に対する攻撃はしないよう働きかけるべきではないか。
(次回204号は2/1アップ予定)