2026.1 NO.237 サナエ VS サザエ
先の自民党総裁選の決選投票で小泉進次郎氏を破り、自民党の総裁となり、総理となった。11月初め左派のTBSのJNN世論調査で内閣支持率は何と82%になったという。その人気は小泉純一郎首相を彷彿させる。
とくに若い層が支持しているように見える。が、私を含め政治的民度が低い中でZ世代等若者たちが経済、政治の側面からではなくイメージ(アニメのサザエさんのごとく)にて支持しているのではと私には思える(東大生らは無礼なこと言うなと怒るかもしれないが)。
Wikipediaによると、サザエさんは、快活でそそっかしく気性も激しい。そこは(タカイチ)サナエさんも似ているか。
さらにサザエさんはお世辞に弱く「若い」とか「美人」などと言われると途端に機嫌が良くなるという。サナエさんはどうなのか。 10/28にトランプ米大統領と米軍横須賀基地を訪れ、米空母を視察。米兵らの喝采を受け飛び跳ねるように腕を突き上げた姿が、「はしゃぎすぎ」との批判されたが。
高市氏は総裁選で勝利したその挨拶で、「ワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて働いて働いて働いて働いて、まいります」と語った。
「ワークライフバランス」は被雇用者の為のもの。それに必要な「働き改革」を後退させると言っているとの印象を受ける。師匠の安倍政権の施策なのに。
そんな矢先、「高市首相は7日、衆院予算委員会の準備のため同日午前3時から首相公邸で勉強会を開いたことについて、『秘書官、SP(警護官)さん、ドライバーの方にはご迷惑をかけたと思っている』と陳謝した」と11/7付けにてFNNプライムオンラインが報じた。
国家公務員は労働基準法等労働関連法が適用されない(国家公務員法があるが)が、こき使っても構わないものではない。
(国会質問の在り方に問題があるにしろ)歴代首相の中にもやむを得ない場合があったろうが、誇るべき行為ではなく、表沙汰にならないようにしていただろう。
民間の大企業のトップが同じことをして報道されれば、「専制君主きどりか!?」「働き方改革を逆行させる気か!?」と大炎上するだろう。
どうも、高市首相はスタンドプレーだけではなく、本気で働き改革を後退させるつもりなのか。それも一存で。
「労働時間規制の緩和」発言や「最低賃金引き上げ慎重」姿勢を勘案すると、国が国民の生活を守り向上させるのではなく、国民がいかに国に奉仕するか、戦前の全体主義に回帰させるつもりなのかと疑ってしまう。時代錯誤なことを。
なのに、高市首相に対してはネット民は擁護する。政治家も識者も皆、午前3時を指示した首相の健康を気にかけ、指示された秘書官らのことには気遣わない(深夜にせっかくレクチャーしたのに、TBSの星浩氏によれば、「戦艦」という官僚が使わない言葉を使い用意された答弁以上のことまで自らの見解を交えて踏み込んでしまったという。中国側の激怒を招き、高市首相に対する秘書官からの心証は如何に)。
サナエフィーバーの世相を、週刊新潮11/13号の新刊本紹介コーナーにてコラムニスト林操氏は『サッチャー』(中公新書)の紹介文の見出しに「奇病・サナエ熱につけるサッチャー論という薬」と書いた。
もっとも、働き方改革を本気で後退させる気なら兼業主婦を初め同じ女性から醒めていくのでは。石破前首相と並んで「嫌われている」と言われるのは、トップとして不可欠な「他人への気遣い」ができないからでは(さらに、公明党から逃げられ、首相になる為に引き入れた維新が実家の自民党の反発を招く火種に)。
民間企業のトップは会社との委任契約。(本来無報酬で)24時間365日会社の為に働く。内閣総理大臣は国家公務員。当然一職員ではなく、内閣の特別職の職員。位置づけは、民間のトップと同じ。「四六時中働きます」と大声で言うことではなく、当たり前のこと。
高市首相の一番の仕事は、ジタバタして疲れてる姿を見せるのではなく、最悪の国家財政状態、少数与党の現状の中で、如何に日本経済を浮揚させるか、どうすれば国民の生活を改善させられるかを考えること(自慢にもならない睡眠2時間の頭で考えられるのか)。内閣内の議員、国家公務員試験を合格した有能な官僚を、こき使うことではなく、最大限に活用し、自由自在に使いこなすこと(官僚達にこの首相なら苦労も厭わないと思ってもらうことが、まず先決)。
高市首相のこれまでの言動では、自身の能力に自信が持てず、頑張っている姿を見せるしかない。そう思っているように見えてしまう。
ゴルフの人気女子プロがトーナメントで夜遅くまでパットの練習する。それをマスコミが美談として報じる。私はそんなのは努力とは思わない。修正、調整の必要はあるが、夜遅くまではスタンドプレーとみなす。
大天才大谷翔平選手は基本努力している姿をファンに見せない。彼だけ特別扱いなのを他の天才選手たちが嫉妬しないのは、自身では到底マネできない努力を日々しているのを傍で見ているから。努力している姿を公に見せないのが真のプロ。選手時代の故長嶋茂雄しかり。
我が母校から二人も首相を輩出したのは喜ばしい限り。だが、第75代故宇野宗佑は、首相としては有能と評価されていたが、“指3本”で失脚し、内閣から早期排出された。
第104代高市首相はいかに。政治評論家田崎史郎氏は、82%もの高支持率は今後下がっていくけれども、見せ方が上手いので、短命政権で終わらない可能性もあるとしている。
ただ、早くも試練が訪れた。高市首相が国会で台湾有事発言をして中国がハレーションを起こした。中国側は、首脳会談の直後に面子を潰され、しかも核心的利益という逆鱗に触れたと激怒している。
この国会発言に対して、経済誌プレジデントの元編集長・小倉健一氏は11/24付け集英社オンラインにて「米国には勝手な軍事介入の予言による不信感を与え、中国には関係崩壊の決定的な口実を与え、台湾には現状変更を迫られる迷惑と恐怖を与え、そして日本国民には経済的損失と戦争に巻き込まれるリスクを与えた。」「これらを引き起こした原因は、すべて高市政権の『能力不足』に帰結する。複雑な国際情勢を読み解く知性、法律の整合性を保つ論理性、相手国の立場を想像する共感力、そして経済的リスクを計算する経営能力。」と私の駄文とは違い格調高くかつ手厳しい。
高市首相を敵対すべき相手として再認識した習近平国家主席は、関心のない人民と違って、ことさらこの問題を大きくかつ長引かせるとの見方も出てきた。
経済への影響が大きく発言を撤回すべきとの声も高くなってきた。だが、従来からの曖昧戦略を踏み越え地雷を踏んでしまったとはいえ、間違っていないことは撤回はできないと言うならば、問題は長期化し、困るのはリスクを負う国民。
官房長官は否定しているが、トランプ大統領から米中歩み寄っている中水を差すことは控えてと注意されたとの見方が大勢だ。首相として度量の見せ所だが、タカ派から支持された首相としては動くに動けずか。結果的には女の意地を通したとなってしまうのか。
結局事態の収拾には首相交代しかないとなるのか。中国側も振り上げた拳を下せる口実に(中国側が友好関係にある公明党を与党に戻す障害を取り除く意味でも)。
ともあれ、米・中・露との外交は、天才肌かつタフネゴシエーター(敵役ながら相手にあっぱれと思わせる)の茂木外相に任せた方がよいと思う。
しがない一大学の先輩でしかない私は、陰ながら応援をすべきところではあるが、如何せん安倍政権の二の舞になると思う気持ちが強い(執拗に批判する小沢代議士も同じでは)。
高市首相は「責任ある積極財政」と謳う。“責任ある”と、なぜ当たり前のことにそんな修飾語を付けるのか。
昔言われた“明るい農村”と同じで、積極財政は無責任なものと暗に仄めかしているのか。それとも財政難の中では大した財政支出はできないと予防線を張っているのか。
「夏のサザエは口ばかり」の諺は、旬を過ぎたサザエは身が痩せてしまって、大きさの変わらない殻の口が相対的に大きく見えることから、口先だけの人を揶揄する。「首相のサナエ(さん)も口ばかり」になるのか。
かの小沢一郎代議士が個人的に何かあったのかと思うほど、高市首相に執拗に噛みついている。高市首相が立憲民主党の物価対策としての「食料品の消費税率0%への引き下げ」を否定したことに対しても。11/6のよろず~ニュースによれば、小沢氏は首相就任前の今年5月時点で高市氏が「食料品の消費税率ゼロを確信」との立場を示していたことを矛盾点として引き合いに出し「就任前は散々講釈を垂れて人を批判していたのに、総理になった途端、それまでの持論を封印し、結局は何もできず何もやらずに終わる。そうならば、高市総理も石破前総理と全く同じということになる。一体、何のために総理になったのか?」と批判する。
国会でも野党から今年5月『国の品格として食料品の消費税率は0%にするべき』と発言されているのにと追及されると、自民党税制調査会の賛同が得られなかったからと自民党総裁でもある首相が部下に反対されたからと平然と答える。
さらに、公明党が議員定数削減がなぜ1割かと問うと高市首相は維新の提案だと答える。万事責任転嫁で済ませるのかと先が思いやられる(首相にならなければ、小沢代議士や私ごときにこんな言われ方されないのにとも思う)。
小泉進次郎大臣も、「殷鑑不遠」、高市首相を他山の石とすべし。首相になれば発言が変わるだけで批判されるだけではなく、首相でない時と同じ発言でも首相としてなら大問題となる。「そんなことになるとは」では済まされない。
大臣が失言しても後ろに首相がいる。少なくとも首相なる前に主要ポストを経験する必要があるのだ。
進次郎氏も、天才でないと自覚するなら、人気があっても、担がれても、自身が一歩づつ階段を上り外相、財相等主要ポストを経ないと首相は務まらないものと悟ってもらいたい。支持者たちもそう理解すべきだと思う。
私は安倍首相を現役時代からずっと批判してきたが、不慮の死を遂げたので、批判を封印するつもりだった。が、高市現首相が安倍首相の後継を公言したので、安倍政権の批判を再開せざるを得ない。
2000年4月小渕首相急逝を受けて故村上正邦参院議員会長ら5人組の密談により、森喜朗首相が誕生した。そして21世紀に入り当時傍流に追いやられていた清和会が主流となり、小泉政権、安倍政権と人気の高い政権が続いたが、バブル崩壊後の失われた10年が30年になっただけだった。ようやく岸田政権が誕生して、その後も石破政権が引継ぎ清和会政権が終焉したと思ったら、また清和会政権に戻った。清和会のDNAなのかまた見せ方が上手い首相が誕生した。
しかも、安倍政権を教訓としてと言うならともかく、ABEイズムを継承すると言うから吃驚仰天。失われた30年が40年に向かうのかと愕然とする。
安倍首相-黒田日銀総裁体制での無駄に終わった超金融緩和の後遺症として、2024年度の名目GDPの615.9兆円に対する国債を主とする国の借入金は1,323.7兆円。国の借金が国のいわゆる売上の2倍以上にもなってしまった。
日本より悪い国は、内戦に明け暮れ、数千人の命が奪われ、数百万人の避難民がいるアフリカのスーダンだけ。
GLOBAL NOTEによれば、2025.10.25付け政府総債務残高対GDP比の国際比較を見ると、スーダンは261.43%。日本は236.11%。2倍を超える国はこの2国だけ。この比率が低下傾向にあるからよいというレベルの話ではない。国際通貨ドルという打ち出の小槌を有する米国でさえ122.32%(11位)。
こんな最悪な状況でも積極財政を主張する、その拠り所はMMT理論だろうが(現代貨幣理論;私に言わせればオワコンと同じ)、簡単に言えば(難しくは私には言えないが)自国通貨を発行し円建て国債を発行する信任が政府にある限り、どんなに円通貨や円建て国債を発行しても国(政府)は破綻しない。メリーゴーランドは廻り続けるというもの。
日本が江戸時代のように鎖国しているなら、そうかも知れない(それでもメリーゴーランドはいつか止まるが)。が、海外の国や評価機関は日本は大丈夫とは見ていない(現に積極財政を謳う高市政権下、直近対ユーロで史上初の180円台まで円安が進み、対ドルでも157円台まで下落している)。
私が昭和48年に銀行に入行し翌年新宿支店に転勤となり貸付事務係に配属となったとき、「手形割引(銀行が手形を買い取る)は自身のお金で買い取るつもりで手形をよく信用調査せよ」と並んで上司から教えられたことは、「企業の借入総額が年商と同じレベルならその会社は倒産予備軍」ということ。
それを承知ながら支店長が貸出続けて相手企業が倒産し銀行が損害を被ったとき支店長は会社法の特別背任罪に問われる。銀行はそれを未然に防ぐ為に倒産予備軍の企業への融資の権限を支店長決済から本部決済に移行させる。
本部の姿勢も倒産企業を出したくないとの姿勢があればそれに歯止めをかけるべく、自己資本比率規制等(バーゼル規制)がある。銀行等の経営の健全性を判断するための国際的に統一された基準(自己資本比率、流動性比率等)により金融庁から監督されている。
各国の財務内容を直接規制する国際制度はない(G7財務大臣・中央銀行総裁会議は、経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制・監督等意見交換しても強制力は持たない)。が、国債評価の機関が、デフォルト(債務不履行)に関する情報を投資家に与えるとともに一国の財政破綻が世界同時不況(大恐慌)の引き金にならないよう監視する役割を果たしていると言える。とくに影響力の大きい日本は注視されているだろう。
三菱UFJ銀行のシンクタンクBUFGの7/22付けの調査レポートは、こう警鐘を鳴らしている。
● 減税が実施されれば、日本国債格下げリスクは高ま
る。
● 現在高格付けであることは、信用問題を引き起こさな
い保証にならず。
・ イタリアの国債格付けは、欧州債務危機でAA格から
一気にBBB格に。
・ イタリアの政府債務残高(対GDP比)は2011年
119%と日本(240%)と比べ低い。
● 格付に敏感な海外投資家の日本国債への影響力は着実
に高まっている(なお、海外投資家の所有比率は12%近く
になっているという)。
● 欧米では、運用対象をA格以上と規定している年金基
金も多く、A格を失った場合、自動的に売却される可能
性は高い。
野村総研の木内登英氏も7/25付けにて自社メディア・未来創発ラボにて「参院選後に積極財政傾向が強まる可能性と日本国債格下げのリスク」と題して、参院選後に積極財政路線が強まる場合、特に消費税減税が決まれば、日本国債の格下げの動きが10年ぶりに再開される可能性が出てくるのではないか。投機的格付けであるS&P社のBB格、Moody’s社のBa格までにはなお距離があるが、ともにあと3ノッチの格下げで投資適格最低ゾーンのBBB格に入っていく。」とこれまた注意喚起している。
国債の格付けが下がり、債権が売られ、債券価格が暴落するとともに金利が暴騰する。株式も暴落し、さらなる円安が待ち受ける。
2つのシンクタンクが同じ時期に同じ危惧を発信するのは、10年前の2015年9月16日にS&P社がAA-からA+(最高格付けのAAAに続きAA+、AA、AA-の下)に引き下げたのが最後の格下げで、その後も状態が悪化していることからいつさらなる格下げがあっても不思議ではないとの危機感から。
今の物価高の主因は、貿易収支の赤字ではなく、この日本財政への信頼の低下に基づく長期化する円安が問題なのだ。
「ディマンドプルインフレ」(供給<需要によるインフレ)なら、景気がよいので税収増も期待できる。それであれば、一時的な消費税減税も有効であろう。しかし、現状は円安による輸入物価上昇の「コストプッシュインフレ」であり、一時的な消費税減税では済まない。国債格付けのさらなる低下が懸念される折消費税減税は出来るものではない。
たとえ、食料品に限って消費税を10%→0%にしたところで、今までスーパーで1回の支出が2,200円の低所得者のメリットは200円だけ。1回の支出が2万2千円の(生活に困っていない)富裕層は2,000円のメリットを享受する。批判されるバラマキ給付と変わらないのでは。
今できる事は、自業自得であろうとなかろうと、憲法第25条(「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」)で保障されている、日本人としてその最低限の生活がままならない人達を救済することだ(しかし、政府は「児童手当、子供1人あたり2万円上乗せ」方針をとる。この期に及んでまたぞろ富裕層にもばら撒くという。子供はおろか結婚もできない人々を見捨てると言うのか。山上被告人の犯行に対しては旧統一教会問題に矮小化していないか。一度落ちたら貧困から抜け出せない社会に対する絶望感と憤怒も関係しているのではないか)。
それ以外の我ら低所得者層は、政府をあてにせず自ら生活防衛するしかない。付け焼刃なもので政府の失政に免罪符を与えず、このような事態になったのは我々主権者たる国民が政府の実情に関心を持たず放置した責任もあると思うならば。恩恵を受けた富裕層より何倍も多い低所得層の有権者が政治に関心を持たず選挙のときに人気やイメージだけで安倍政権を支持してきたのであれば(適菜収氏は『日本崩壊 百の兆候』の中の池田清彦氏との対談で、「安倍政権の特徴は国民に対する丁寧な説明を行わず、社会に一定数いる“騙されやすい人間”を嘘やデマを最大限利用することで動員し、権力基盤を強化していったという構造がある」という)。
誰かに八つ当たりしたいなら、その矛先はメディアに向けたらいい。「超金融緩和」は効果がないと分っていても止めようとしなかった黒田東彦日銀総裁に対して当時敢然と反対や批判していたのは上述の木内登英審議委員と日銀出身の日本総研河村小百合女史だけではなかったか。
それに対して、メディアは一体何をしていたのか。有能なのは政治記者にいても経済記者にはいないのか。そうではなく、皆権力を監視する第四の権力を放棄していたのか。
2017年任期満了で木内審議委員は退任し、後はすべてイエスマンになってしまった(その中の一人が今ゾンビのごとく蘇生し無責任な発言をしているのか? それを木内氏はどう思っているのだろうか)。
日銀には独立性が担保されている。とはいえ、政府の意向に反して独走することがあっては困るので、政策金利の変更など重要議題を協議する為の日銀政策委員会を設け木内氏のごとく外部からも人材を入れている。
ところが、安倍政権への追従を鮮明にする黒田総裁体制の場合においては政策委員会が総裁の独裁専行を隠す、いわば隠れ蓑になってしまっている。そして責任を引き継ぐべき者たちが貧乏くじを引こうとせず、お鉢が廻ってきた経済学者の植田和男現総裁が尻ぬぐいに苦慮している。
特殊銀行である日銀の黒田前総裁は、会社法の適用を受けることはなく叙勲も許される。だが、叙勲は植田総裁が無事に総裁を卒業した時にこそ授与されるに値する(金利を上げざるを得ない中で、パウエルFRB議長に対するトランプ大統領ほどではないにしろ高市首相からの金利抑制圧力に耐えて)。
そして、今頃になってメディアは木内氏を経済・金融の解説に重用している。
高市首相は責任ある積極財政と言いながら、プライマリーバランス(PB;社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費を、税収等で賄えているかどうかを示す指標)における、これまでの「単年度での黒字化」の旗を降ろし、中期的に債務残高対GDP比の引き下げを安定的に実現するという。これは明らかに改悪ではないか。何もせずとも金利上昇下国債の借り換えに対し金利の上昇分だけ借金が増える。
健全財政のドイツの首相がそう言うなら納得できるが。
ドイツの政府総債務残高対GDP比はなんと63.47%でしかない。国債格付けも最高ランクのAAA。
ドイツには、マーストリヒト条約(欧州連合条約)の安定成長協定で定められた債務上限が課せられている上に、憲法には均衡財政を想定した「債務ブレーキ」条項があるという。
日本は、「単年度での黒字化」を標榜しても赤字になるのに、それを緩めてしまえば、放漫財政にならないか。
GDP増大への経済対策にAIや宇宙産業など17項目を挙げている。これは「手段」ではなく「課題」の列挙に過ぎない。これから、①どの項目を優先するか、優先順位決め、②その課題に対する具体的施策を決定し、③その予算を算定する。
財政支出は確実だが、GNPの増大は成功するか不確実。将来日の目を見ても、日本の陽が沈んでるかもしれない。その前に国債が格下げされてしまって。
なのに、積極財政派は高を括っているとしか思えない。
2024年12月末の家計金融資産は2,230兆円。構成比は現預金50.9%。国の借入金1,323.7兆円(国の負債)に対して同程度の預貯金(国民の債権)があるから大丈夫。いざとなれば、国の負債と国民の債権を相殺すればよいと思っているのか。
それを容易にさせるのが「緊急事態条項」。災害対策を目的としても、「戦争」と「国家の破綻」以上の緊急事態はあるのか。緊急事態を発令すれば、徴兵制がなくとも国民皆兵を指示できる。国の債務と国民の債権を相殺できるのでは。
実際自民と維新との連立合意文書に「緊急事態条項」が載っているという。国民投票になれば富裕層も「緊急事態条項」には反対するだろう。
超富裕層は、最悪の事態を想定して、海外に脱出するかすでに手を打っているだろう。その下の富裕層は海外資産への逃避や貨幣価値の下落を見越して、預金や株式等の金融資産を不動産等実物資産に替えていくだろう(円安下中国投資家の需要もあり都内の新築マンションの分譲価格が上がり、どこも1億円以上とか)。
娘の進学の為社宅から文教区、否、文京区のマンションへ移ることを考えていた長男が「とても手が出ず都内だがもっと遠方、超長期のローンで」と言う話を「そうなのか」とただ聞き置くことしかできない、無い袖は振れない私のような爺は、物価高で日増しにひも爺になっていくだけ。
同志社大学名誉教授浜矩子女史はアベノミクスを「アホノミクス」と揶揄したが、実態からすれば、的外れではなかった。私はサナエノミクスを「サザエノミクス」と別称しよう。
よもや、万が一、高市政権が短命に終わらず、しかもサナエノミクスが成功したなら、土下座はしないが、積極財政派から「バ~カ」と嗤われても甘受する。
その方が、国民にとって良いことではあろうから。
(次回238号は12/20アップ)