2020.11 NO.141 せいけん VS さいけん(1)
菅政権が船出した。世はお祭り騒ぎ。70歳爺の引かれ者の小唄ではないが、昔は「泣く子と地頭には勝てない」と言ったが、今は「大衆とメディアは度し難い」と嘆息する。安倍前首相も8年の苦労は何だったのかとの思いだろう。直近あれほど批判された前政権を引き継ぎ、影の総理が表の総理になっただけなのに。それが大衆の本質と言えばそれまでだが。
反ABEの視点から菅氏についてもこれまで注視してきた。それをふり返ってみる。
2017年9月号NO.75(「スガVSスカ」)では、モリ・カケ問題での最中「李下に冠を正すおしどり夫妻の尻ぬぐいに、弁慶の仁王立ちさながら全身で野党、メディアからの質問の矢を受け続けた。その忠誠心の強さは敬服に値するが、その対応が悪いと党内で非難を浴びた。私なら、やってられるか!と辞表をたたきつけるところだが、さすが苦労人である菅氏は辛抱した。ただ、報われるとは思えない。国民は「菅官房長官は気の毒だ、被害者だ」とは見ていない。安倍首相が(ヒトラーに擬え)アベラ―なら菅官房長官はアムラー(ヒトラーに仕えた親衛隊全国指導者・全ドイツ警察長官のヒムラー)との印象を受けただろう。首相への道は遠くなってしまったと言えるだろう。」と書いた。
その時は、スキャンダルをもみ消し、批判分子を排除する、言わば汚れ役の総務部長がトップになることはないとやや同情的に見ていた。
2年後の2019年7月号NO.116(「おもろいVSおもろな」)では、「いかんせん石破氏、岸田氏への待望論も湧いてこない。新元号発表時に注目を浴び、「令和おじさん」と人気が上がった、無派閥の菅官房長官にショートリリーフならと思うのかもしれない。森友学園問題が燻り続けている安倍首相も、官僚の手のひら返しも菅氏が首相になるなら安心だろう。しかし、菅氏が首相ならABE政治の継続を意味し、より独裁的になるかも。それならSHINZO病が治っても、新・SHINZO病に罹るだけ。おもろないと思うより、憂鬱だ。」と述べた。
ほんとうに新・SHINZO病に罹る日が来るとは想像していなかった。今思うに、米ペンス副大統領に会いに女房役の官房長官が単独で訪米したときに、岸田議員と石破議員はもっと危機感を持つべきであった。国民の目には、「二人とも何もしていない。首相になる気が本当にあるのか」と映っていたことだろう(領袖本人の責任だけではなく、所属議員も同罪だろう)。私は新元号「令和」を発表したときの菅氏の上気した顔を見て首相になる気だなと思った。
なお、新元号「平成」の発表の時には、小渕恵三官房長官が厳粛に発表し、竹下登首相は天皇に関する事柄として談話を遠慮した。政治利用しなかった。この経世会コンビの方が政治家としての見識が上だと思う。
この116号を掲載した3か月後の10月、戸坂弘毅(ペンネーム? 大手メディア関係者とも)氏はもっと踏み込み、『次期首相に最も近い男・菅官房長官、哀しいまでの「中身」のなさ』と題して、「自らを『国家観がない』と評して恥じない男に、わが国は命運を託すことになるのだろうか。政策や志ではなく、権謀術数と情報操作で霞が関や永田町を操る──その集大成として、首相の座に手をかけようとしている『安倍政権のゲッベルス』の本質を、われわれ国民は改めてじっくりと見極める必要があるだろう。」と文を締めている。
戸坂氏はなぜ菅氏をナチスの宣伝相であった雄弁家ゲッベルスに擬えたのか。権謀術数と情報操作並びに言論弾圧か。ゲッベルス自身は、自裁したヒトラーの遺言で首相になったが、終生ヒトラーを裏切らなかった。唯一背いたのは遺言で落ち延びろと指示されていたのに家族諸共ヒトラーの後を追ったことだ。
2020年4月臨時号NO,131(「へんせんVSしんせん(2)」)では、新型コロナが蔓延する中菅官房長官と彼の野心を警戒する安倍首相との関係について、「命運尽きかけたと言える安倍政権における安倍首相と菅官房長官の関係はファンタジー小説『十二国記』シリーズ(累計1,200万部を誇る国民的人気小説)での王と麒麟の関係に似ていると思えてきた。麒麟が王を選ぶ。麒麟は天命に反しない限り王に服従する。麒麟は王になれない。王は不死となるが、王の政治が乱れると麒麟が病の床につく。麒麟が逝くと王も終わる。」と綴った。
王が倒れれば麒麟は新しい王を探す。宏池会OB古賀誠氏が望んだように「岸田首相、菅官房長官」であれば、キングメーカーとして安倍前首相も異存はなかっただろう。
あろうことか、麒麟が、新王候補を潰し、王になった。麒麟はまず自民党新総裁になったとき、「国民のために働く内閣」と謳った。私は50年ほど前のある就活の面接で君の売りは何かと聞かれ「一生懸命働くことです」とアホな答えをしたことを思い出した。面接官に「それは当たり前だろう!」と一蹴された。菅首相自身も当事者の一人であった前政権の「友達の為に働く内閣」からチェンジするということなら意味をなすが。
そして首相になり、組閣がなされた。さすがにリスクを取れないのか噂に上がっていた三原じゅん子議員の大臣就任(厚労副大臣に)はなかった。代わりに私が女性首相候補一番手と評する上川陽子議員が入閣すると喜んだのはつかの間、法務大臣と分かり顔を曇らせた。
安倍政権(菅官房長官)の守護神黒川弘務元検事のライバル・現検事総長の林眞琴刑事局長(2018年当時)との意見対立により上川大臣は林氏の事務次官昇格を拒み名古屋高検に左遷させたと見られている。その因縁の対立が再燃することになるのか。
「桜を見る会」疑惑再燃に繋がるジャパンライフの警視庁による摘発は、菅首相の門出にぶつけたのか。疑惑には安倍前首相だけでなく菅首相も無関係とは言えないハズだ。
韓国文在寅政権と鋭く対立する尹錫悦検察総長の手足をもぎ取った法務部秋美愛長官(前任者と同様疑惑浮上で“タマネギ女”と揶揄される)の役割を担うことにならなければ、よいのだが。