2019.9 NO.121  たい VS たい(2)

日本にも大きな影響を及ぼす、2月末の2回目の米朝首脳会談は物別れに終わった。しかし、後戻りできない米朝トップは、突如6/30に板門店で3回目の首脳会談が行われた。

北朝鮮の核保有はソ連、中国の大国に翻弄された朝鮮戦争の手痛い教訓から金日成の遺言?となり新憲法にも載る。核を完全放棄すれば金正恩委員長といえども失脚するだろう。

北朝鮮の最終的譲歩は新しい核は造らない(既保有核の完全なる廃棄はしない)ことではないか。日本にとって悪夢は、それをトランプ大統領がのみ、終戦宣言、平和協定に繋がり、ひいては韓国からの米軍撤退に帰結することだ。それでは、若き狼(北朝鮮)に赤ずきんちゃん(韓国)は飲み込まれてしまう。さらに一国二制度での中台統一が実現すれば、日本は完全に孤立する。核を持つべきではない、また物理的に持つことができない日本は在留米軍に撤退してもらうというよりは「ぜひ日本に留まってください」と懇願せざるを得ない。真の独立国家への道はますます遠のいてしまう。

日本の安全保障にとって重要なことは、韓国がSouthKoreaであり続けること。ロシア・中国・北朝鮮独裁国家に向かい、韓国が前衛に位置し、中衛に台湾と日本が位置し、後衛に大将米国が陣取り、「自由と民主主義」への防衛体制を維持強化しなければならない。米国とは同盟関係。台湾は無二の親友。韓国とは罵り合っても兄弟の縁は切ってはならない。

ところが、北朝鮮との統一を夢見る韓国文政権の日本に対する軽視や無視する態度に業を煮やし?韓国に対して行った輸出管理強化策は、文大統領に逆手にとられ、却って反日を煽る文大統領に対する国民からの支持率を一時的に上昇させた。

韓国の反発に対し、外務省OBは徴用工問題の報復の為にもと冒頭で口をすべらせてしまった失敗を論い外務省を外して行った官邸や経産省を暗に非難した。一方経産省OBはもともと「特別一般包括許可」制度があるので輸出規制でも何でもないと慌てて火消した。

韓国経済の一層の低迷を誘発させ2022年まで任期のある韓国文在寅政権のレームダック化と北朝鮮との融和を進める進歩派(反日はもとより反米、親中、親北)政権の継続阻止を目指した戦略的意図があるのかと思ったが官邸にはそんな意図はなかったということか。

それならば、安倍首相は最悪の事態を避けるべく文大統領とトップ会談すべきであった。が、癇癪を起したままで、そうしなかった。それを文大統領はまた利用(文大統領の最側近・法相候補曺国氏のスキャンダル報道から韓国民の目を逸らす)、あろうことか、米日韓防衛体制の象徴・軍事情報協定GSOMIAを破棄してしまった。

韓国民自体は、観光都市・首都ソウルで行政による日本製品不買運動の旗設置に対して抗議して撤去させた。GSOMIAの破棄への反対の声も多いことを考えれば、今回は「反日」ではなく、「反安倍首相」であり、疑惑の曺国氏を法相に任命強行した「反文大統領」では。

日本の安全保障の観点からに加え経済への影響も見過せない。政治の役割は経世済民。政治が徒らに経済を不振にして日韓両国民を苦しめることがあってはならない。

戦略的無視と言っているが、その後どんな絵を描いているのか。従来の日本がとってきた「とりあえずの謝罪、譲歩」はすべきではないが、官邸で独裁する首相と青瓦台で独裁する文大統領とでトップ同士の差しの話し合いを一刻も早くすべきではないか(首脳会談とは聞こえが良いが同盟国でもないプーチン大統領個人と友好を深めている場合ではない。北方領土の問題は安倍首相の拙速な言動でロ国民を怒らせてしまい少なくとも安倍首相の在任中は棚上げのままだろうに)

 

台湾においては、習近平国家主席による「台湾同胞の利益と安寧を守る」という一国二制度による平和的中台統一に支障が生じたと言えるだろう。

6月の香港の200万人を動員したデモ(現在は「逃亡犯条例改正」反対だけではなく要求を拡大させている。中国化への恐怖心、反中意識を露にしたデモ隊と香港警察との衝突激化に対して、とりあえず逃亡犯条例改正案が撤回され、武装警察による鎮圧は避けられた)は、一国二制度がまやかしであること世界に再認識させたと同時に台湾人に勇気を与えた。

 台湾は戦後40年に及ぶ国民党による恐怖政治を経た後民主化を得て30年になる。白色テロの時代に逆戻りすることを台湾人は拒絶するだろう。若者も外省人の三世ですら台湾人としてのアイデンティティを持っている。習近平国家主席が国民党を通じて「一国二制度」による中台統一を強行すれば香港以上の大規模なデモ、衝突が起きることになろう。

 中国共産党は、アラブの春ならぬ“アジアの春”が香港、台湾を経て中国本土に飛び火することを懸念する。中国共産党にとって、米国より怖いのが、10億人以上の農民層。賤が貴を倒し、新しい国名の独裁国家が生まれる歴史が繰り返されること。それを恐れる。

中国の価値観は「貴・賤」。中国農民は、貧富格差自体は是として、自らが賤に置かれていることに対して怒る(中国人の価値観は根本的に社会主義とは相容れない)

 任期中に習国家主席が平和的方法により中台統一を図ることは難しいと言えるだろう。

 

習国家主席は面子にかけて任期中に中台統一を図るべく武力行使することはあるのか。

人民解放軍は1979年中越戦争以降1989年に天安門で人民に戦車を向けたことしかしていない。それ以降“人民弾圧軍”は訓練と実験しかしていない。

今やロシアを凌ぐ世界第二の軍事大国とも言えるが、日清戦争の時と同じく「眠れる獅子ではなく、張り子の虎。軍兵士の人質が低い、愛国心が無い」と侮っている者達に「目にもの見せてやる」と人民解放軍はいきり立っているのか。

武力行使すれば、米国の台湾関係法に基づき米国と開戦することになる。中国が沖縄の嘉手納米軍基地を攻撃すれば、安保法制から否応なしに日本も戦争に巻き込まれる。

 2014年に日本語版が出た、トム・クランシーの遺作小説『米中開戦14(新潮文庫)では、台湾海峡における戦闘、サイバー攻撃等において中国側が優位とする視点に立ち、開戦を強行しようとする中央軍事委員会主席を米国政府の秘密情報組織が中国内で暗殺し、国家主席が自害することで話を終わらせている。

 現実の世界では、中央軍事委員会主席も兼務する習国家主席の目を国内に転じさせる。つまり、農民の蜂起を煽る、農民を束ねる指導者を支援することが考えられるか。それは現状米国のCIAに委ねるしかないし、簡単なことではない。

 一番良いのは、内には経済停滞、外には米国との軋轢と香港、台湾のナショナリズムの抬頭を招く習国家主席の「世界一の強国」を目指す強圧・強硬路線を中国北戴河会議のメンバーが危ぶみ習氏を失脚させる。あるいは、それを察知して習国家主席が軌道修正することではあるのだが。