法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -48ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第5章 ポイント2│特許権者は、一定の要件を満たせば査証制度を利用できる。

次に、「査証制度」を利用するための要件について、説明します。

 

「査証制度」は、専門家が、工場などに立ち入って証拠を収集するものですので、強力な証拠の収集手続きです。 そこで、 「査証制度」を利用するための要件は、厳しく定められています。

 

具体的には、以下の4つの要件を満たすことが必要です。

 

査証の要件

① 必要性

侵害行為を証明するために、査証を利用することが必要であること

 

② 蓋然性

特許権が侵害されている可能性がある程度存在するといえること

(相手方が特許権を侵害したと疑うのに足りる相当な理由がある)

 

③ 補充性

査証以外の手段では、侵害を証明するための証拠が十分に集まらないこと

 

④ 相当性

査証を実施することによって、相手方の負担が重くなりすぎないこと

 

この4つの要件は、新設された特許法102条の2第1項に定められています。

 

(査証人に対する査証の命令)

第105条の2

1 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、 又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。)について、確認、作動、計測、実験その他の措置をとることによる証拠の収集が必要であると認められる場合において、 特許権又は専用実施権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められ、かつ、申立人が自ら又は他の手段によつては、当該証拠の収集を行うことができないと見込まれるときは、 相手方の意見を聴いて、査証人に対し、査証を命ずることができる。 ただし、当該証拠の収集に要すべき時間又は査証を受けるべき当事者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。

 

 

 

第105条の2第1項の読み方

裁判所は、

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、

当事者の申立てにより、

①立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。) について、確認、作動、計測、実験その他の措置をとることによる証拠の収集が必要であると認められる場合において、

②特許権又は専用実施権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められ、

かつ、

③申立人が自ら又は他の手段によつては、当該証拠の収集を行うことができないと見込まれるときは、

相手方の意見を聴いて、

査証人に対し、査証を命ずることができる。

 

④ただし、当該証拠の収集に要すべき時間又は査証を受けるべき当事者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。

 

 

 

査証人の選定

専門家の属性について法律の規定はありませんが、専門分野や要証事実(証明しなければならない事実)、手続の内容などを考慮して、弁護士・弁理士・学識経験者などから裁判所が選定すると想定されています。

 

査証手続の費用

特許法105条の2の9によると、査証手続に係る費用のうち、同条に列挙された費用(査証人の旅費、日当、宿泊料、査証料、査証に必要な費用)については、訴訟費用の一部となります。

 

もっとも、サンプルの提供に係る費用など、査証を受けた当事者に発生する費用については、その当事者の負担となります。査証を受けることにより相手方に不相当な負担が見込まれるときには、その事情が発令の要件として考慮されます。

 

訴訟費用は、判決がなされた場合は敗訴者が負担し、和解が成立した場合は各自が負担することが一般的です。

 

相手側が査証を拒んだ場合は、特許法105条の2の5に従い、査証により原告が立証しようとする事実(侵害の事実)が認められます。

 

特許法105条の2の5

査証を受ける当事者が前条第二項の規定による査証人の工場等への立入りの要求若しくは質問若しくは書類等の提示の要求又は装置の作動、計測、実験その他査証のために必要な措置として裁判所の許可を受けた措置の要求に対し、正当な理由なくこれらに応じないときは、裁判所は、立証されるべき事実に関する申立人の主張を真実と認めることができる。

なお、この真実擬制(申立人の主張を真実とみなすこと)は、既存の文書提出命令や検証物提示命令についても規定されています。

1 土地開発公社が個人から買収した土地の買収価格に関する情報が名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得または財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たらないとされた事例

2 土地開発公社が土地を買収した際に個人に対して支払った建物、工作物、立木、動産等に係る補償金の額に関する情報が名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得または財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たるとされた事例

 

最2小判平成17年7月15日裁判集民事217号523頁 判タ1191号225頁 判時1909号25頁 

【判決要旨】 1 土地開発公社が個人から買収した土地の買収価格に関する情報は、公有地の拡大の推進に関する法律(平成16年法律第66号による改正前のもの)7条の適用により、同価格が地価公示法(平成11年法律第160号による改正前のもの)6条の規定による公示価格を規準として算定されたという事実関係の下においては、名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得または財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たらない。

2 土地開発公社が土地を買収した際に個人に対して支払った建物、工作物、立木、動産等に係る補償金の額に関する情報は、建物の内部の構造、使用資材、施工態様、損耗の状況等の詳細および上記個人がどのような工作物、立木、動産等を有するかが外部に明らかになっているものではないなど判示の事情の下においては、名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得または財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たる。

【参照条文】 名古屋市公文書公開条例(昭61名古屋市条例29号)9-1

       公有地の拡大の推進に関する法律(平16法66号改正前)7

       地価公示法(平11法160号改正前)2-1 、6

       地価公示法2-2(標準地の価格の判定等)

 

公有地の拡大の推進に関する法律

(土地の買取価格)

第七条 地方公共団体等は、届出等に係る土地を買い取る場合には、地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)第六条の規定による公示価格を規準として算定した価格(当該土地が同法第二条第一項の公示区域以外の区域内に所在するときは、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した当該土地の相当な価格)をもつてその価格としなければならない。

 

地価公示法

(標準地の価格の判定等)

第二条 土地鑑定委員会は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。以下「公示区域」という。)内の標準地について、毎年一回、国土交通省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。

 前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引を除く。)を除く。)において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。

 

業として金融機関から貸付先に対する貸付債権をバルクセールにおいて大量・一括に譲り受けて当該債権の回収を図る場合と弁護士法73条およびサービサー法3条違反の成否(消極)

 

東京地方裁判所判決/平成20年(ワ)第23846号

平成21年12月25日

譲受債権請求事件

【判示事項】    業として金融機関から貸付先に対する貸付債権をいわゆるバルクセールにおいて大量・一括に譲り受けて当該債権の回収を図る場合と弁護士法73条および債権管理回収に関する特別措置法3条違反の成否(消極)

【判決要旨】    業として金融機関から貸付先に対する貸付債権をいわゆるバルクセールにおいて大量・一括に譲り受けて当該債権の回収を図る場合であっても、金融機関が行う不良債権処理のためのバルクセールは正常な経済取引として認知されているところ、その金融機関がいわゆる政策金融機関として公的な存在であったことに加え、当該バルクセールに係る契約には社会的に不相当な定めはなく、また、債権の譲受人の連絡先として弁護士が表示されていて、これによって訴訟を誘発したり、紛議を助長したりすることにつながるような事情も認められないときは、弁護士法73条に違反するものではなく、そうである以上、債権管理回収に関する特別措置法3条違反が問題となる余地もない。

【参照条文】    民法466

          弁護士法73

          債権管理回収業に関する特別措置法

【掲載誌】     金融・商事判例1333号60頁

 

弁護士法

(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)

第七十三条 何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

 

債権管理回収業に関する特別措置法

(目的)

第一条 この法律は、特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

 

国鉄駅舎内の神棚への黙とうに抗議してなされた行為が、傷害罪、公務執行妨害罪にあたるとされた例

 

 

              傷害、公務執行妨害各被告控訴事件

【事件番号】      福岡高等裁判所宮崎支部判決/昭和48年(う)第58号

【判決日付】      昭和55年5月30日

【判示事項】      国鉄駅舎内の神棚への黙とうに抗議してなされた行為が、傷害罪、公務執行妨害罪にあたるとされた例

【参照条文】      憲法20-3

             刑法204

             刑法35

             刑事訴訟法318

             憲法13

【掲載誌】        判例時報979号120頁

             労働判例354号71頁

             刑事裁判資料246号14頁

             刑事裁判資料246号702頁

             刑事裁判資料246号804頁

             刑事裁判資料246号1142頁

 

憲法

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

刑法

(傷害)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

本件は、株式会社である控訴人が、その従業員持株会であるA持株会から、貸付金321億2973万5400円につき控訴人の発行済株式793万3268株により代物弁済を受けたところ、処分行政庁から、当該代物弁済により消滅した債権のうち、取得した株式に対応する資本等の金額を超える部分281億4184万0242円は「みなし配当」(所得税法25条1項柱書及び5号)に該当し、控訴人には所得税法181条1項に基づく源泉徴収義務があるとされて、原判決別表「課税の経緯(源泉所得税)」のとおり、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたので、被控訴人に対し、みなし配当に当たらない等と主張してこれらの処分の取消しを求める事案である。

 

 

              所得税納税告知処分取消等請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決

【判決日付】      平成24年2月16日

【掲載誌】        税務訴訟資料262号順号11882

【評釈論文】      税理56巻14号129頁

             税理56巻15号96頁

             税理57巻1号100頁

 

所得税法

(配当等とみなす金額)

第二十五条 法人(法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この項において同じ。)の株主等が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(同条第十二号の十五に規定する適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の同条第十六号に規定する資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、前条第一項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配又は金銭の分配とみなす。

一 当該法人の合併(法人課税信託に係る信託の併合を含むものとし、法人税法第二条第十二号の八に規定する適格合併を除く。)

二 当該法人の分割型分割(法人税法第二条第十二号の十二に規定する適格分割型分割を除く。)

三 当該法人の株式分配(法人税法第二条第十二号の十五の三に規定する適格株式分配を除く。)

四 当該法人の資本の払戻し(株式に係る剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は当該法人の解散による残余財産の分配

五 当該法人の自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第二条第十六項(定義)に規定する金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得及び第五十七条の四第三項第一号から第三号まで(株式交換等に係る譲渡所得等の特例)に掲げる株式又は出資の同項に規定する場合に該当する場合における取得を除く。)

六 当該法人の出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、当該法人の出資の払戻し、当該法人からの社員その他の出資者の退社若しくは脱退による持分の払戻し又は当該法人の株式若しくは出資を当該法人が取得することなく消滅させること。

七 当該法人の組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした当該法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)

2 合併法人(法人税法第二条第十二号に規定する合併法人をいう。以下この項において同じ。)又は分割法人(同条第十二号の二に規定する分割法人をいう。以下この項において同じ。)が被合併法人(同条第十一号に規定する被合併法人をいう。)の株主等又は当該分割法人の株主等に対し合併又は分割型分割により株式(出資を含む。以下この項において同じ。)その他の資産の交付をしなかつた場合においても、当該合併又は分割型分割が合併法人又は分割承継法人(同条第十二号の三に規定する分割承継法人をいう。以下この項において同じ。)の株式の交付が省略されたと認められる合併又は分割型分割として政令で定めるものに該当するときは、政令で定めるところによりこれらの株主等が当該合併法人又は分割承継法人の株式の交付を受けたものとみなして、前項の規定を適用する。

3 第一項に規定する株式又は出資に対応する部分の金額の計算の方法その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

(源泉徴収義務)

第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 処分行政庁が平成19年2月6日付けでした控訴人の平成16年7月分の源泉徴収にかかる所得税納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要

 1 本件は、株式会社である控訴人が、その従業員持株会であるA持株会から、貸付金321億2973万5400円につき控訴人の発行済株式793万3268株により代物弁済を受けたところ、処分行政庁から、当該代物弁済により消滅した債権のうち、取得した株式に対応する資本等の金額を超える部分281億4184万0242円は「みなし配当」(所得税法25条1項柱書及び5号)に該当し、控訴人には所得税法181条1項に基づく源泉徴収義務があるとされて、原判決別表「課税の経緯(源泉所得税)」のとおり、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたので、被控訴人に対し、みなし配当に当たらない等と主張してこれらの処分の取消しを求める事案である。

   原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人は、これを不服として控訴した。

第4章 「査証制度」とは

査証制度は、新たに制定された、侵害訴訟において証拠収集するための手続きです。

特許権侵害の被害者(特許権者)は、「査証制度」を利用することで、相手方(被疑侵害者側)にある証拠を集めることができ、その証拠により侵害を証明することができるようになりました。

 

「侵害訴訟」とは

特許権者が、自ら所有する特許権が無断で使用された(侵害された)場合に、無断で使用する相手(侵害者)に対して、何らかの責任を追及するために起こす訴訟です。

具体的には、侵害者に対して損害賠償の請求や、特許の無断使用を差し止める差止請求が行われます。

 

 

査証制度創設の背景

査証制度が創設された背景には、特許権の特殊性や、それによる証拠収集手続の課題があったとみられます。

 

侵害が容易

特許権はオンラインで公開されているため、誰でも閲覧することができます。また、特許権はデータとして保存されているので物理的に対象を盗む必要がなく、時間や場所の制約がありません。そのため、比較的容易に特許権が侵害されてしまいます。

 

立証・証拠収集が困難

近年、方法の特許(製造方法や通信方法など)やソフトウェア特許が増加しており、書類や製造機械、製品など検証物を調べるのみでは侵害の有無の判断が容易ではないといわれます。侵害の有無を判断するには製品のプログラムのソースコードまで辿る必要がありますが、ソースコードは改変が容易で、また量も膨大です。

 

また、データベースを用いたソフトウェア特許については、単にソースコードを調べるだけでは侵害等の判断が難しいと考えられます。そのためデータベースの内容の調査が必要となり、書類提出命令等では対応が難しい事例が生じてます。

 

このように、被害者である原告が証拠を収集し、特許権侵害を立証するのが困難であり、さらに原告よりも侵害者側が多くの証拠を持っているという問題がありました。

 

侵害抑止が困難

特許庁作成の資料によると、特許侵害は、差止請求や損害賠償請求など民事事件として争われるのみで、刑事事件として起訴されたことがありません。特許権が無効になるおそれがあり、また前述のとおり侵害の判断が困難なため、特許権者が刑事告訴しづらいと考えられます。

 

そのため、特許権を侵害してもリスクが小さいと判断され、刑事罰などによる侵害抑止が困難だといわれます。

 

「査証制度」導入の経緯

侵害訴訟では、特許権者が、侵害者の侵害行為を立証する必要があります。査証制度が創設される以前にも、侵害行為の立証をサポートする制度として、生産方法の推定(特許法第104条)、具体的態様の明示義務(同第104条の2)、文書提出命令(同第105条)、裁判所によるインカメラ手続規定(同第105条第2項)等がありました。

しかしながら、近年増加傾向である、製造方法の特許権侵害、B to B製品など市場で手に入らないものやソフトウェア製品の特許権侵害については、証拠が相手方にあることが多く、特許権侵害を立証するための証拠集めが困難でした。

例えば、侵害が疑われる行為が、被疑侵害者側の工場等で行われており、立ち入ることなくその証拠をつかむことは困難です。そのため、既存の制度では立証が不十分である場合があると指摘されていました。

 

査証制度のメリット

すでに述べたように、特許権の侵害訴訟では、証拠収集が困難な上、裁判官が侵害事実の有無を判断するのが難しいという課題がありました。損害額の推定(特許法102条)や、文書提出命令の特則として書類提出命令・検証物提示命令(同105条)といった規定が存在したものの、解決策としては不十分であり、また米国のディスカバリーや英国のディスクロージャーのように専門家による直接的な法的拘束力を有するわけではありませんでした。

 

しかし査証手続が認められると、中立な立場の専門家が計測や実験などを行うため、当事者が証拠収集に苦心する必要がなくなります。さらに、その専門家が査証の結果を報告書として裁判所に提出するため、裁判官による侵害事実の有無の判断が容易になると考えられます。

 

 

「査証制度」は、侵害訴訟における証拠の収集手続きです。

特許権者が、侵害を証明することが難しかったような場合も、「査証制度」を利用することで、証明できるようになることも期待されます。

 

「査証制度」は、このような問題を解決することを期待して。新設されました(特許法105条の2~105条の2の10の新設)。

 

 

中立的な専門家による査証制度の創設

査証制度は、中立的な立場の専門家が特許権を侵害していると疑われる相手方の工場などに立ち入り、必要な調査を行って裁判所へ報告書を提出するというものです。令和元年の特許法改正によって、一定の要件を満たせば査証制度を利用できることになりました。

 

特許はモノではなく公開されている情報なので、物理的に盗む必要がありません。また、侵害の証拠は侵害者側が握っており、被害者側は容易に立証できません。刑事事件のように起訴が行われるものでもないため、侵害を抑止しにくいといった特殊性もあります。査証制度は、特に侵害立証の難しさを解決する手段として導入されました。

 

 

侵害訴訟を提起した後、当事者が申し立てることで、所定の要件を満たした場合に「査証制度」を利用することができます。

 

この「査証制度」とは、裁判所の命令によって、中立公正な専門家(弁護士、弁理士などが想定されます)が、相手方当事者の工場などにおいて必要な資料を収集して、報告書を裁判所へ提出するものです。この報告書は、申立人(特許権者)が証拠として利用できます。

 

相手が調査を拒んだら、査証を申し立てた当事者(特許権者)の主張が「真実である」と認められる可能性、つまり「侵害があった」と認定されます(特許法第105条の2の5)。

 

 

なお、諸外国においては、強制力のある証拠収集手続きが導入されています。

例えば、アメリカでは、証拠収集手続きとして、ディスカバリーと呼ばれる当事者の請求に基づき事案に関連する広範な証拠を互いに開示させる手続きがあります。また、ドイツでは、裁判所が任命した専門家及び執行官が立ち入る査察制度があります。

今回の改正特許法により導入された「査証制度」は、諸外国で実施されている強制力のある証拠収集手続の日本版となるものです。

 

今後の侵害訴訟

今まで、第三者による特許権の侵害が疑わしい場合であっても、証拠を集めることが困難であるため放置されていることがしばしばありました。このような状況では、侵害した者勝ちということとなり、特許権の価値が疑わしいものとなってしまいます。

査証制度が設けられたことにより、特許権の保護が有効に実行されることが期待されます。

一方、侵害訴訟が提起され被疑侵害者となった場合、査証が行われる可能性があることを認識して、訴訟対応をしていく必要があるでしょう。

 

 

 

侵害訴訟とは、特許権侵害の被害者(特許権者)が、自身が有する特許を侵害された(無断で使用された)場合に、 無断で使用した相手(侵害者)に対して、何らかの責任追及をするために起こす訴訟です。

 

具体的には、以下の責任追及をすることが考えられます。

①侵害者に対して、損害賠償を請求する(民法709条)。

②侵害者に対して、特許の無断使用を差し止めるように請求する(特許法100条)。

 

②について、特許法では、特許権侵害による損害賠償額について、民法709条(不法行為)の特則として特許法102条を定めています。

 

 

また、民法709条に基づいて損害賠償を請求するためには、相手方の故意・過失が必要となりますが、 特許権の侵害訴訟においては、侵害者について過失が推定されます(特許法103条)。

 

 

 

 

査証では、相手の工場などに立ち入って、調査してもらえるのです。

相手が、調査を拒んだ場合は、査証を申し立てた当事者、基本的には特許権者の主張が「真実である」と認められる可能性があります。

つまり、「侵害があった」と認定されます。

 

新設された特許法105条の2の5を見てみましょう。

 

(査証を受ける当事者が工場等への立入りを拒む場合等の効果)

第105条の2の5

査証を受ける当事者が前条第二項の規定による査証人の工場等への立入りの要求若しくは質問若しくは 書類等の提示の要求又は装置の作動、計測、実験その他査証のために必要な措置として裁判所の許可を受けた措置の要求に対し、正当な理由なくこれらに応じないときは、 裁判所は、立証されるべき事実に関する申立人の主張を真実と認めることができる。

 

 

申立人の立会いは、原則不可能とされているようです。

 

 証拠保全手続において相手方に陳述の機会を与えることの要否

 

大阪高等裁判所決定昭和38年12月26日

検証目的物提示命令に対する再抗告申立事件

【判示事項】 証拠保全手続において相手方が所持する検証物の提示命令を発するにあたり相手方に陳述の機会を与えることの要否(消極)

【参照条文】 民事訴訟法314

       民事訴訟法335

       民事訴訟法343

【掲載誌】  下級裁判所民事裁判例集14巻12号2664頁

 

平成八年法律第百九号

民事訴訟法

(証拠保全)

第二百三十四条 裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。

 

宅地建物取引業法2条1号(用語の定義)にいう宅地に農地が含まれるか (肯定)

東京高判昭和41年10月17日訟務月報12巻11号1568頁 東京高等裁判所判決時報民事17巻10号226頁  判タ205号149頁 判時467号33頁  
【判示事項】 一 供託物還付請求につき供託官吏の審査権限の範囲 
二 宅地建物取引業法2条1号にいう宅地に農地が含まれるか 
【参照条文】 旧・宅地建物取引業法12の4-1 、2
       供託規則22 、30
       供託法10

宅地建物取引業法
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
一 宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。
二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。
四 宅地建物取引士 第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。

 

「不正者の天国」事件・行政監察業務に関する文害の秘密文害指定が、行政監察制度の目的から見て合理的理由があるとされた例

 

 

判定処分等取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和40年(行ツ)第52号

【判決日付】      昭和45年8月20日

【判示事項】      一、行政監察業務に関する文害の秘密文害指定が、行政監察制度の目的から見て合理的理由があるとされた例

             二、上掲文害から取材して、著書を刊行した行為等が、国家公務員法七八条三号に該当するとされた事例

【判決要旨】      行政管理庁行政監察局の職員が、上司の承認を得ることなく、同局保管の行政監察業務に関する文書で、その内容が秘密事項に属し、また、そのため適式に秘密文書として指定されたものから取材し、その内容を掲記した単行本または雑誌記事を著述発刊または掲載したときは、右職員は国家公務員法七八条三号に定める免職事由に該当する。

【参照条文】      国家公務員法78

【掲載誌】        訟務月報16巻12号1462頁

             最高裁判所裁判集民事100号399頁

 

国家公務員法

(本人の意に反する降任及び免職の場合)

第七十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合

二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合

四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

 

上告人会社が損金計上した役員報酬について、当該役員は支給対象期間中に退職していたことが認められるとして否認された事例

 

 

              法人税更正処分等取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成2年(行ツ)第61号

【判決日付】      平成3年1月31日

【判示事項】      (1) 上告人会社が損金計上した役員報酬について、当該役員は支給対象期間中に退職していたことが認められるとして否認された事例

             (2) 上告人会社が代表者の知人に支払う金員は、同人が上告人会社のために取引先の紹介等を行っていたことに対して支払われたものであるとしても、それは代表者に対する交誼に基づくものにすぎず、対価性を認めることはできないとして、右金員を損金に計上することはできないとされた事例

             (3) 原処分調査において、調査担当者が本件給与の損金算入を認容したと認めることはできないとして、右給与の損金算入を否認した本件更正処分は、信義則に違反するとの上告人会社の主張が排斥された事例

【判決要旨】      (1)~(3) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料182号214頁