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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

土地の売買がいわゆる数量指示売買に当たるとされた事例

 

 

              売買代金返還請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成12年(受)第372号

【判決日付】      平成13年11月22日

【判示事項】      土地の売買がいわゆる数量指示売買に当たるとされた事例

【判決要旨】      市街化区域内に所在する五〇坪余りの更地の売買契約において、契約書には目的物件の表示として公簿面積のみが記載されていたとしても、それが住宅用の敷地として売買されたものであり、代金額については、坪単価に面積を乗じる方法により算定することを前提にして、売主が提示した坪単価の額からの値下げの折衝を経て合意が形成され、当事者双方とも土地の実測面積が公簿面積に等しいとの認識を有しており、契約書における公簿面積の記載も実測面積が公簿面積と等しいか少なくともそれを下回らないという趣旨でされたものであるなど判示の事情の下においては、当該土地が公簿面積どおりの実測面積を有することが売主によって表示され、実測面積を基礎として代金額が定められたものということができ、その売買契約は、いわゆる数量指示売買に当たる。(反対意見がある。)

【参照条文】      民法565

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事203号743頁

 

民法

(買主の追完請求権)

第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

(買主の代金減額請求権)

第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

一 履行の追完が不能であるとき。

二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)

第五百六十五条 前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

 

 

 

       主   文

 

  本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人細井土夫、同小澤雄市、同金井正成の上告受理申立て理由第一及び第二について

 一 本件は、上告人から土地を購入した被上告人らが、同土地の実測面積が公簿面積に満たなかったとして、数量指示売買における売主の担保責任(民法五六五条、五六三条一項)に基づき売買代金の減額請求をし、支払った代金の一部の返還を求める事件である。原審が適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

 (1) 本件土地は、愛知県岡崎市内の市街化区域内に所在する隣接した二筆の土地であり、地目は畑であるが、現況は更地である。

 (2) 宅地建物取引業者である株式会社丸豊住宅は、平成三年八月二〇日ころ、被上告人らを訪ね、上告人所有の本件土地の売買を媒介したい旨申し入れた。丸豊住宅が持参した本件土地の広告には、「公簿一七七平方メートル(五三・五四坪)、価格三六四〇万円、三・三㎡単価六八万円」との記載があった。

 (3) 被上告人らが平成三年八月一三日ころ丸豊住宅を通じて坪単価が安くならないか上告人と折衝したところ、上告人は、同月二四日ころ、坪単価六五万円に値下げする旨回答した。

 (4) そこで、被上告人らは、本件土地をその価格で購入しようと考え、平成三年八月二七日ころ、丸豊住宅と本件土地購入について専属専任媒介契約を締結した。その契約書には、目的物件の表示として、本件土地の実測面積が一七七㎡、公簿面積も同様である旨の記載がされていた。

 (5) 上告人も、本件土地を上記価格で売却しようと考え、そのころ、丸豊住宅と本件土地売却について専属専任媒介契約を締結した。もっとも、その契約書には、被上告人らと丸豊住宅との間の契約書と異なり、目的物件の表示として、本件土地の公簿面積が一七七醉である旨の記載はされていたが、実測面積についての記載はなかった。

 (6) 被上告人らが平成三年九月四日ころ丸豊住宅に対し本件土地の実測図面を要求したところ、丸豊住宅は、本件土地の面積が一七七醉である旨が記載された公図の写しを被上告人らに交付した。被上告人らは、この図面で本件土地の実測面積が一七七平方メートルあることが確認されたと考え、それ以上に実測図面を要求しなかった。

 (7) 丸豊住宅は、そのころ、上告人と被上告人らに対し、重要事項説明書を交付した。同説明書には、本件土地の地積として、「登記簿一七七平方メートル(五三・五四坪ごとの記載はあったが、実測面積の欄は空欄であった。また、同説明書の建築基準法に基づく制限の概要の欄には、本件土地の建築面積の限度として、「敷地面積一七七平方メートル×六〇%=一〇六・二平方メートル」、本件土地の延べ建築面積の限度として、「敷地面積一七七平方メートル×二〇〇%=三五四平方メートル」との各記載があった。

 (8) 平成三年一〇月六日ころ、丸豊住宅の作成した案文に基づき、本件売買契約の契約書が作成され、その際、丸豊住宅は、上告人と被上告人らに同契約書の条項を読み聞かせた。同契約書には、売買物件の表示として、「末尾記載の通りとしすべて面積は公簿による。」との条項(以下「本件条項」という。)があるが、丸豊住宅からはその文言の意味の説明はなく、上告人と被上告人らとの間でその意味が確認されたこともなかった。被上告人らは同月一六日までに売買代金全額を支払った。

 (9) 被上告人らは、住居の敷地とする目的で本件土地を購入した尾のであり、平成九年秋ころ、住居を新築するために土地家屋調査士に依頼して本件土地を測量したところ、その実測面積が一六七・七九平方メートルであって、本件売買契約書に表示された面積一七七平方メートルに九・二一平方メートル不足することが判明した。

 (10) 被上告人らは、平成一〇年二月二〇日、上告人に対し売買代金の減額請求をした。

 二 原審は、上記事実関係に基づき、本件売買契約書における本件土地の公簿面積の記載は、実測面積が少なくとも公簿面積と同じだけあるという趣旨でされたものであり、売買代金の額は本件土地の実測面積が公簿面積どおりにあるとして決定されたものと解釈し、本件売買契約はいわゆる数量指示売買に当たると判断して、被上告人らの請求を一部認容した。

 論旨は、要するに、上記の原審の契約解釈及び判断は、経験則に違反し、民法五六五条の解釈を誤ったものであるというのである。

 三 いわゆる数量指示売買とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数又は尺度があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買をいう(最高裁昭和四一年(オ)第七七〇号同四三年八月二〇日第三小法廷判決・民集二二巻八号一六九二頁参照)。

 前記事実関係によれば、上告人と被上告人らは、本件売買契約の代金額を坪単価に面積を乗じる方法により算定することを前提にして、その坪単価について折衝し、代金額の合意に至ったというのである。そして、本件土地は、市街化区域内にあり、小規模住宅用の敷地として売買されたものであって、面積は五〇坪余りにすぎないというのであるから、山林や原野など広大な土地の売買の場合とは異なり、このような零細宅地における前記のような開差五%を超える実測面積と公簿面積との食違いは、売買契約の当事者にとって通常無視し得ないものというべきである上、被上告人らは、丸豊住宅に対して本件土地の実測図面を要求するなどしたというのであるから、本件土地の実測面積に関心を持っていたものというべきであり、記録によれば、本件売買契約当時、当事者双方とも、本件土地の実測面積が公簿面積に等しいとの認識を有していたことがうかがわれるところである。

 もとより、土地の売買契約において、実測面積を基礎とせずに代金額が決定される場合でも、代金額算定の便宜上、坪単価に面積(公簿面積)を乗じる方法が採られることもあり得るが、本件売買契約においては、上告人と被上告人らが、本件土地の実測面積を離れ、それ以外の要素に着目して本件土地を評価し、代金額の決定に至ったと認めるべき事情はうかがわれないのである。なお、本件条項自体は、実測面積と公簿面積とが食い違う場合に代金額の減額を要しないという趣旨を定めたものとはいえないし、原審の認定したところによれば、本件条項がそのような意味を有する旨の説明が丸豊住宅からされたことなどもないというのであるから、本件条項が存在することから直ちに実測面積に増減があっても公簿面積を基礎として本件売買契約の代金額が決定されたこととする趣旨であったと断定することはできないものというべきである。

 以上の点にかんがみると、本件売買契約書において登記簿の記載に基づいて本件土地の面積が記載されたのは実測面積が公簿面積と等しいか少なくともそれを下回らないという趣旨によるものであり、本件売買契約の代金額は本件土地の実測面積を基礎として決定されたものであるとした原審の契約解釈は、経験則に違反するものとはいえないというべきである。

 そうすると、本件売買契約においては本件土地が公簿面積どおりの実測面積を有することが表示され、実測面積を基礎として代金額が定められたものであるから、本件売買契約は、数量指示売買に当たり、被上告人らは、上告人に対し、民法五六五条、五六三条一項に基づいて、代金減額請求をすることができるものというべきである。

 これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。この判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は、採用することができない。

 よって、裁判官町田顯の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官町田顯の反対意見は、次のとおりである。

 原審及びこれを支持する多数意見は、上告人を売主とし、被上告人らを買主とする本件土地の売買契約は、いわゆる数量指示売買に当たると判断するが、私は、この判断には賛成することはできない。その理由は、次のとおりである。

 数量指示売買というためには、多数意見が述べるとおり、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数又は尺度があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められていることが必要である。しかし、原審が認定した事実等によれば、本件売買契約において売主である上告人が本件土地につき一定の面積があることを契約において表示したものと解することはできない。

 すなわち、本件売買の仲介をした宅地建物取引業者である丸豊住宅が被上告人らに提示した本件土地の広告には、広告に記載された土地面積一七七平方メートル(五三・五四坪)が実測ではなく公簿面積であることが明示されており、本件契約に際し、丸豊住宅が宅地建物取引業法三五条の規定に基づき上告人及び被上告人らに交付した重要事項説明書にも、地積欄には「登記簿一七七㎡(五三・五四坪)」と記載され、実測面積の欄は空欄にされていて、表示された面積が登記簿上のものであることが明らかにされており、本件の売買契約書には、第一条の売買物件の表示の定めにおいて、「末尾記載の通りとしすべて面積は公簿による。」と定められており、このうち「公簿」の部分だけは不動文字ではなく、手書きされたもので、契約書の末尾には本件土地の所在地、地目とともに地積として「二九平方メートル、一四八平方メートル」の計一七七平方メートルの記載があって、本件契約において、上告人が本件土地が実測一七七平方メートル(五三・五四坪)あることを表示したことを直接うかがわせるものはない。

 原審及び多数意見は、(1)前記広告の価格欄に三六四〇万円、「三・三平方メートル単価六八万円」と記載され、被上告人らが丸豊住宅を通じて坪単価の引下げの折衝をしたこと、(2)被上告人らと丸豊住宅との専属専任媒介契約書には、目的物件の表示として本件土地の実測面積が一七七霜、公簿面積も同様である旨の記載がされていたこと、(3)被上告人らが丸豊住宅に本件土地の実測図面を要求したところ、本件土地部分に一七七平方メートルと書き込みをした公図の写しの交付を受けたこと、(4)前記重要事項説明書の建築基準法に基づく制限の概要欄に、建築面積の限度として「敷地面積一七七平方メートル×六〇%=一〇六・二㎡」等の記載があったことなどを理由に、本件契約が数量指示売買であるとする。

 しかし、(1)の点は、多数意見も認めるとおり、公簿面積に坪単価を乗じて売買価格が決定されることもあり、前記のとおり、この坪単価に乗じられた面積が公簿面積であることが広告上に明示されているのであるから、このことをもって上告人が実測面積を保証したものとは解されず、(2)の点は、問題の専属専任媒介契約書は被上告人らと丸豊住宅との契約に係るものであって、上告人とは無関係のものであり、現に上告人と丸豊住宅の専属専任媒介契約書には実測面積欄は記載されず、公簿面積欄のみ記載されていたのであって、これをもって上告人が実測面積が一七七㎡であると表示したものとはいえず、(3)の点も、被上告人らと丸豊住宅の問題であって、上告人とは関係なく、しかも、交付された図面は公図の写しに公簿面積が書き込まれたにすぎないものであって、一見して実測図でないことが明らかなものであり、(4)の点も、重要事項説明書の地積欄には一七七平方メートルが公簿面積であることが明示されているのであるから、公簿面積を基準とした場合の数値が示されていることは容易に看取することができ、しかも、重要事項説明書は宅地建物取引業者である丸豊住宅の責任で記載されるものである。

 以上のことに、記録によれば、被上告人中川博文本人が本件契約に当たり一七七㎡が実測面積であるかどうかについて上告人と話し合ったことがないことを自認していることを併せ考えれば、本件契約において、上告人が本件土地の実測面積が一七七平方メートルあることを表示したものとは、到底解されない。

 よって、本件契約を数量指示売買に当たるものとして被上告人らの請求を認容した原判決はこれを破棄し、上記と同旨の第一審の判断は正当であるから、被上告人らの控訴は理由がないものとして棄却すべきである。

(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 町田 顯 深澤武久)

 

 

赤い羽根共同募金などを自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は、思想信条の自由を侵害し、公序良俗に反し無効であるとされた事例

 

 

決議無効確認等請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成18年(ネ)第3446号

【判決日付】      平成19年8月24日

【判示事項】      赤い羽根共同募金などを自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は、思想信条の自由を侵害し、公序良俗に反し無効であるとされた事例

【参照条文】      民法90

             憲法19

【掲載誌】        判例時報1992号72頁

【評釈論文】      判例時報2011号184頁

             民事法情報261号71頁

 

民法

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

憲法

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 

 

       主   文

 

  一 原判決を取り消す。

  二 平成一八年三月二六日開催の被控訴人の定期総会でなされた、自治会費を年六〇〇〇円から年八〇〇〇円に増額する旨の決議が無効であることを確認する。

  三 控訴人らの被控訴人に対する会費の支払債務は、年額六〇〇〇円を超えて存在しないことを確認する。

  四 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第一 控訴の趣旨

 主文と同旨

第二 事案の概要

 一 本件は、地域自治会である被控訴人が平成一八年三月二六日開催の定期総会において自治会費を年六〇〇〇円から年八〇〇〇円に増額する旨の決議(以下「本件決議」という。)をしたことにつき、被控訴人の会員である控訴人らが、本件決議は控訴人らの思想及び良心の自由等を侵害し公序良俗に違反するなどと主張して、本件決議が無効であることの確認及び控訴人らの被控訴人に対する会費の支払債務が年六〇〇〇円を超えて存在しないことの確認を求めた事案である。

 原審は、控訴人らの本訴請求のうち、控訴人らの被控訴人に対する会費の支払債務が年六〇〇〇円を超えて存在しないことの確認を求める部分については、本件決議が無効であることの確認を求める請求に当然に含まれるから、同請求と併せて確認を求める利益はないとして、この部分に係る訴えを却下し、本件決議の無効確認を求める部分については、理由がないとしてこれを棄却した。

 二 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)〈編注・本誌では証拠の表示は一部を除き省略ないし割愛します〉

 (1) 控訴人らは、いずれも被控訴人の会員である。

 (2) 被控訴人は、滋賀県甲賀市甲南町希望ヶ丘一丁目から五丁目までの区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体であり、平成一四年二月一四日に地方自治法二六〇条の二に規定する「地縁による団体」として認可を受け法人格を取得した。

 なお、平成一八年ころの被控訴人の会員の世帯数は、対象区域内の一〇六〇世帯の約八八・六パーセントに当たる九三九世帯であった。

 (3) 被控訴人は、平成一八年三月二六日開催の定期総会において、自治会費を年六〇〇〇円から年八〇〇〇円に増額する旨の決議(本件決議)をした。

 (4) 本件決議による増額分の会費二〇〇〇円は、被控訴人において他の自治会費六〇〇〇円とは別に管理し、その全額を、希望ヶ丘小学校教育後援会、甲南中学校教育後援会、赤い羽根共同募金会、甲賀市緑化推進委員会(緑の募金)、甲賀市社会福祉協議会、日本赤十字社及び滋賀県共同募金会(歳末助け合い運動)(以下、まとめて「本件各会」という。)への募金や寄付金に充て、翌年度には繰り越さないことが予定されていた。

 三 争点及びこれに対する当事者の主張

 本件決議が無効であるか否か。

 (控訴人ら)

 (1) 寄付をするか否かは、本来個人の自由な意思に委ねられるべきものであり、その決定は、思想及び良心の自由として憲法一九条により保障されているところ、本件決議は、本来任意に行われるべき寄付を、支払を義務づけられる会費とすることにより、強制するものであるから、控訴人らの思想及び良心の自由を侵害し違法である。

 小学校及び中学校の教育後援会への寄付金を強制的に徴収することは、義務教育無償の原則に基づき寄付をしたくないという会員の思想の自由を侵害する。また、赤い羽根共同募金は社会福祉法一一六条により、緑の募金は緑の募金による森林整備等の推進に関する法律一六条により、いずれも寄付者の自発的な協力を基礎とするものでなければならないと規定されている。社会福祉協議会や日本赤十字社は、特定の目的のために設立された被控訴人とは別個の組織であり、これに加入するか否かは個人の自由であり、これに対する会費や社費の支払は、これに加入した者が行うべきものであるところ、本件決議によりこれらへの会費や社費を徴収することは、思想信条上又は経済的な理由により加入しない者についてまで、加入したものとみなすこととなり、憲法二一条で保障された結社の自由、団体参加の自由を侵害する。

 (2) また、地方自治法二六〇条の二は、同条一項の認可を受けた「地縁による団体」は、「正当な理由がない限り、その区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない。」(七項)、「民主的な運営の下に、自主的に活動するものとし、構成員に対し不当な差別的取扱いをしてはならない。」(八頁)と規定しているが、被控訴人は、本件決議後開かれた役員総務会において、会費増額に反対して会費の支払を拒否する会員には自治会離脱届の提出を求めることを決議している。また、被控訴人は、被控訴人に加入しない者に対し、配布物を自治会組織で配布しない、災害や葬儀等の時に被控訴人として一切協力しない、ごみステーションを利用できないなどの生活上の不利益が及ぶことを明言している。そうすると、本件決議は、寄付金の強制徴収に反対する会員に対し不当な差別的取扱いを行うものであり、上記法条に違反する。また、本件決議は、これに反対して自治会費を支払わない会員に対し、被控訴人からの退会を求めることにより、被控訴人の所在する地域に居住する自由をも侵害するものであり、居住の自由を保障した憲法二二条一項に違反する。

 (3) 本件決議は、上記のように、人権の諸規定に違反するものであるから、公序良俗(民法九〇条)に違反し、無効である。

 

神社改築のための本件寄付金の主体は、控訴人会社ではなく、個人である納税者甲(控訴人会社の役員)と認めるのが相当であるとされた事例

 

 

法人税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      高松高等裁判所判決/平成5年(行コ)第9号

【判決日付】      平成8年2月26日

【判示事項】      (1) 租税賦課決定処分の取消訴訟において、審理の対象となるのは、当該処分によって確定された税額の適否であって処分理由の適否ではないとされた事例(原審判決引用)

             (2) 減額更正処分の取消しを求める訴えは、同処分が税額の上で納税者に不利益を与えるものではないから、訴えの利益がないとして却下された事例(原審判決引用)

             (3) 青色更正の付記理由と異なる主張の可否(原審判決引用)

             (4) 神社改築のための本件寄付金の主体は、控訴人会社ではなく、個人である納税者甲(控訴人会社の役員)と認めるのが相当であるとされた事例(原審判決引用)

             (5) 控訴人会社は、納税者甲(控訴人会社の役員)の負担すべき個人的費用を控訴人会社において負担し、甲に代わって支出したことになり、その後甲から右支出について何らの弁済も受けていないのであるから、右支出は甲に対する賞与の支給というべきであるとされた事例(原審判決引用)

             (6) 減額再更正処分の取消しを求める訴えの適否

【判決要旨】      (1)・(2) 省略

             (3) 課税庁は、昭和六〇年九月期分及び昭和六二年九月期分に係る各更正通知書の更正の理由に、「法人税法第一三二条第一項の規定を適用し、寄付金を甲に対する役員賞与として損金算入を否認した」旨記載していることが認められる。しかし、この更正理由は、本件訴訟において課税庁が主張するような理由を掲げて、本件寄付金は甲個人が負担すべきであったものを控訴人会社が負担したものである上、このような行為が可能であったのは控訴人会社が同族会社であるという特殊性に由来するものであるとして、前記結論を導いていることが明らかである。このような場合、更正理由書の付記理由と本件訴訟において課税庁が主張する理由との間には、基本的な課税要件事実の同一性があり、控訴人会社らの手続的権利に格別の支障はないものというべきであるから、右のような処分理由の差替えも許されるものといわなければならない。

             (4)・(5) 省略

             (6) 減額再更正処分は、それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり、それ自体は、再更正処分の理由いかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分であるから、納税者としては、右再更正処分の取消しを求める訴えの利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消しを求めれば足りるので、右訴えは訴えの利益がなく不適法であるから却下を免れない。

【掲載誌】        税務訴訟資料215号672頁

 

法人税法

(同族会社等の行為又は計算の否認)

第百三十二条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

一 内国法人である同族会社

二 イからハまでのいずれにも該当する内国法人

イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。

ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。

ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。

2 前項の場合において、内国法人が同項各号に掲げる法人に該当するかどうかの判定は、同項に規定する行為又は計算の事実のあつた時の現況によるものとする。

3 第一項の規定は、同項に規定する更正又は決定をする場合において、同項各号に掲げる法人の行為又は計算につき、所得税法第百五十七条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)若しくは相続税法第六十四条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)又は地価税法(平成三年法律第六十九号)第三十二条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)の規定の適用があつたときについて準用する。

 

 

              法人税更正処分等取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成8年(行ツ)第143号

【判決日付】      平成12年1月27日

【判示事項】      (1) 減額更正処分の取消を求める訴えは、同処分が税額の上で納税者に不利益を与えるものではないから、訴えの利益がないとして不適法とされた事例

             (2) 納税者が行った寄付は、納税者が役員を務める上告人会社振出しの小切手をもって納税者が行ったもので、当該小切手の振出により上告人会社が納税者に対し役員賞与をしたことになり、上告人会社の所得の計算上損金に計上することはできないとされた事例

【判決要旨】      (1)・(2) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料246号303頁

 

 右当事者間の高松高等裁判所平成五年(行コ)第九号法人税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成八年二月二六日に言い渡した判決に対し、上告人らから上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人田中浩三、同田中達也の上告理由書記載の上告理由第五点について

 記録に照らせば、平成元年四月二〇日付けの上告人大塚正士に対する昭和六二年分所得税の更正処分、平成三年一月一四日付けの同上告人に対する昭和六二年分所得税の再更正処分及び平成元年四月二〇日付けの上告人大塚静江に対する昭和六二年分所得税の更正処分の取消しを求める各訴えを不適法とした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

 上告代理人田中浩三、同田中達也のその余の上告理由及び上告人株式会社大塚製薬工場、同大塚正士の上告理由について

 原判決挙示の証拠関係に照らし、本件各寄附は上告人株式会社大塚製薬工場振出しの小切手をもって上告人大塚正士が行ったものであり、右小切手の振出しにより上告人株式会社大塚製薬工場が上告人大塚正士に対し役員賞与を支給したこととなるのであって、これを上告人株式会社大塚製薬工場の所得の金額の計算上損金の額に算入することができないとした原審の認定判断は、正当として是認することができる。その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定に沿わない事実を交え、原審と異なる見解に基づいて原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、採用することができない。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

第7章 意匠権の存続期間(令和2年4月1日施行)
意匠権の存続期間が「登録日から20年」から「出願日から25年」に延長される。
旧意匠法では、意匠権の存続期間は、「登録日から20年」となっていましたが、新法では、 「出願日から25年」 に延長されます。

昨今、意匠登録後、時間をかけて製品を開発して、販売するという例が多くなっていました。 たとえば、飛行機や自動車など開発に時間がかかるものについては、 旧意匠法の下では、販売されるまでの間に、存続期間が切れてしまうこともありました。 そこで、存続期間を延長することになりました。

 

パークロックシステムの無人駐車場に第3者により放置された自動車の引渡しを求めた所有者に対し、駐車場経営者の駐車料金等を被担保債権とする留置権を認めた事例

 

名古屋高等裁判所判決/平成13年(ネ)第632号

平成14年6月28日

自動車引渡等本訴、留置権確認請求反訴控訴事件

【判示事項】    パークロックシステムの無人駐車場に第3者により放置された自動車の引渡しを求めた所有者に対し、駐車場経営者の駐車料金等を被担保債権とする留置権を認めた事例

【参照条文】    民法295

【掲載誌】     判例タイムズ1139号129頁

 

民法

(留置権の内容)

第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

 

 

事案の概要

 自動車賃貸業者であるXが、Aに本件自動車を賃貸したところ、AがこれをY経営のパークロックシステムの無人駐車場に放置したまま所在不明となり、Yからその連絡を受けたXが本件自動車の引渡を求めたのに対し、YがAに対する駐車料金等の請求権を被担保債権とする留置権を主張して、その支払を受けるまで本件自動車の引渡を拒んだことから、Xが本件自動車の引渡ないし代償請求ならびに賃料相当損害金の支払を求めて本訴請求に及んだところ、Yが本訴の抗弁として留置権を主張し、かつ、留置権確認請求の反訴を提起した。

通達の提出が国の重大な利益にかかわる公務上の秘密にあたるとして拒否されても、これに代わる証人の取調をすることなく証明不十分として無罪の言渡をした原審の措置が違法とされた事例

 

              自衛隊法違反被告事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和50年(う)第676号

【判決日付】      昭和52年1月31日

【判示事項】      通達の提出が国の重大な利益にかかわる公務上の秘密にあたるとして拒否されても、これに代わる証人の取調をすることなく証明不十分として無罪の言渡をした原審の措置が違法とされた事例

【判決要旨】      通達にいう特別警備訓練が治安出動訓練を含むものではないかとの疑いは、その内容と程度からみて、通達そのものを公判廷に顕出してその記載内容を明らかにしないかぎり払拭できないというほど重大なものではなく、検察官の申請した通達起案者らの取調請求を却下し、検察官に十分な立証の機会を与えなかつた原審の訴訟手続は違法である。

【参照条文】      自衛隊法64

             自衛隊法119

             刑事訴訟法103

             刑事訴訟法298

             刑事訴訟法379

【掲載誌】        高等裁判所刑事判例集30巻1号1頁

             高等裁判所刑事裁判速報集2207号

             刑事裁判月報9巻1~2号14頁

             東京高等裁判所判決時報刑事28巻1号6頁

             判例タイムズ347号161頁

             判例時報843号17頁

             刑事裁判資料230号653頁

 

刑事訴訟法

第百三条 公務員又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない。但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

 

第二百九十八条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。

② 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。

 

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

自衛隊法

(団体の結成等の禁止)

第六十四条 隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。

2 隊員は、同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。

3 何人も、前項の行為を企て、又はその遂行を共謀し、教唆し、若しくはせヽんヽ動してはならない。

4 前三項の規定に違反する行為をした隊員は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任用上の権利をもつて対抗することができない。

 

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

一 削除

二 第六十四条第一項の規定に違反して組合その他の団体を結成した者

三 第六十四条第二項の規定に違反した者

四 第七十条第一項第一号の規定による防衛招集命令を受けた予備自衛官又は第七十五条の四第一項第一号若しくは第三号の規定による防衛招集命令若しくは治安招集命令を受けた即応予備自衛官で、正当な理由がなくて指定された日から三日を過ぎてなお指定された場所に出頭しないもの

五 第七十七条又は第七十九条第一項の規定による出動待機命令を受けた者で、正当な理由がなくて職務の場所を離れ七日を過ぎたもの又は職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由がなくて七日を過ぎてなお職務の場所につかないもの

六 第七十八条第一項又は第八十一条第二項に規定する治安出動命令を受けた者で、上官の職務上の命令に反抗し、又はこれに服従しないもの

七 上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者

八 正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者

2 前項第二号若しくは第四号から第六号までに規定する行為の遂行を教唆し、若しくはそのほヽうヽ助をした者又は同項第三号、第七号若しくは第八号に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、若しくはせヽんヽ動した者は、それぞれ同項の刑に処する。

 

 

生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例

 

 

              生活保護変更決定取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成22年(行ツ)第392号、平成22年(行ヒ)第416号

【判決日付】      平成24年2月28日

【判示事項】      生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例

【判決要旨】      生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。

             (1)ア 上記改定開始の5年前には,老齢加算の対象となる70歳以上の者の需要は収入階層を問わず60ないし69歳の者の需要より少なく,70歳以上の単身者に対する老齢加算を除く生活扶助額は70歳以上の低所得単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていた。

             イ 上記改定開始の20年前から2年前までの間における生活扶助に関する基準の改定率は消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており,上記改定開始の21年前から被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の7割前後で推移していた。

             ウ 上記改定開始の24年前と同4年前とを比較すると,被保護勤労者世帯の平均において消費支出に占める食料費の割合は低下していた。

             (2)ア 上記改定による老齢加算の廃止は,3年間かけて段階的な減額を経て行われた。

             イ 上記改定開始の5年前には,老齢加算のある被保護者世帯における貯蓄の純増額は老齢加算の額と近似した水準に達しており,老齢加算のない被保護者世帯における貯蓄の純増額との差額が月額5000円を超えていた。

             (3) 上記改定は,専門家によって構成される専門委員会が統計等の客観的な数値等や専門的知見に基づいて示した意見に沿ったものであった。

             (生活扶助相当消費支出額:消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護者世帯は免除されているもの及び家事使用人給料等の最低生活費になじまないものを控除した残額)

【参照条文】      生活保護法3

             生活保護法

             生活保護法による保護の基準(平16厚生労働省告示130号改正前)別表第1第2章2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集66巻3号1240頁

 

生活保護法

(最低生活)

第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

 

(基準及び程度の原則)

第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。

 

 

協同組合の専務理事につき、定款で、「専務理事は理事長を補佐して本組合の業務を執行し、理事長に事故のあったときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。」旨定めている場合において、右専務理事の地位にある者は、本来、法人の目的である事業の遂行に専念すべき者であって、使用人としての立場と両立し得ない職制上の地位にあるといえるから、実際の職務内容いかんにかかわらず、法人税法35条5項、同法施行令71条1項1号にいう専務理事に該当し、同人に支給された賞与を損金に算入することは許されないとした事例

 

 

              法人税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      岡山地方裁判所判決/昭和62年(行ウ)第9号

【判決日付】      昭和63年12月20日

【判示事項】      協同組合の専務理事につき、定款で、「専務理事は理事長を補佐して本組合の業務を執行し、理事長に事故のあったときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。」旨定めている場合において、右専務理事の地位にある者は、本来、法人の目的である事業の遂行に専念すべき者であって、使用人としての立場と両立し得ない職制上の地位にあるといえるから、実際の職務内容いかんにかかわらず、法人税法35条5項、同法施行令71条1項1号にいう専務理事に該当し、同人に支給された賞与を損金に算入することは許されないとした事例

【掲載誌】        行政事件裁判例集39巻12号1555頁

 

法人税法

第三目 役員の給与等

(役員給与の損金不算入)

第三十四条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)

二 その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(当該株式若しくは当該特定譲渡制限付株式に係る第五十四条第一項に規定する承継譲渡制限付株式又は当該新株予約権若しくは当該特定新株予約権に係る第五十四条の二第一項に規定する承継新株予約権による給与を含むものとし、次に掲げる場合に該当する場合にはそれぞれ次に定める要件を満たすものに限る。)

イ その給与が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給する給与で金銭によるものに限る。)以外の給与(株式又は新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係るものとして政令で定めるものを除く。)である場合 政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること。

ロ 株式を交付する場合 当該株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格株式」という。)であること。

ハ 新株予約権を交付する場合 当該新株予約権がその行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格新株予約権」という。)であること。

三 内国法人(同族会社にあつては、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものに限る。)がその業務執行役員(業務を執行する役員として政令で定めるものをいう。以下この号において同じ。)に対して支給する業績連動給与(金銭以外の資産が交付されるものにあつては、適格株式又は適格新株予約権が交付されるものに限る。)で、次に掲げる要件を満たすもの(他の業務執行役員の全てに対して次に掲げる要件を満たす業績連動給与を支給する場合に限る。)

イ 交付される金銭の額若しくは株式若しくは新株予約権の数又は交付される新株予約権の数のうち無償で取得され、若しくは消滅する数の算定方法が、その給与に係る職務を執行する期間の開始の日(イにおいて「職務執行期間開始日」という。)以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標(利益の額、利益の額に有価証券報告書(金融商品取引法第二十四条第一項(有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書をいう。イにおいて同じ。)に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の利益に関する指標として政令で定めるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。イにおいて同じ。)、職務執行期間開始日の属する事業年度開始の日以後の所定の期間若しくは職務執行期間開始日以後の所定の日における株式の市場価格の状況を示す指標(当該内国法人又は当該内国法人との間に完全支配関係がある法人の株式の市場価格又はその平均値その他の株式の市場価格に関する指標として政令で定めるものに限る。イにおいて同じ。)又は職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の売上高の状況を示す指標(売上高、売上高に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の売上高に関する指標として政令で定めるもののうち、利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの(次に掲げる要件を満たすものに限る。)であること。

(1) 金銭による給与にあつては確定した額を、株式又は新株予約権による給与にあつては確定した数を、それぞれ限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること。

(2) 政令で定める日までに、会社法第四百四条第三項(指名委員会等の権限等)の報酬委員会(その委員の過半数が当該内国法人の同法第二条第十五号(定義)に規定する社外取締役のうち職務の独立性が確保された者として政令で定める者((2)において「独立社外取締役」という。)であるものに限るものとし、当該内国法人の業務執行役員と政令で定める特殊の関係のある者がその委員であるものを除く。)が決定(当該報酬委員会の委員である独立社外取締役の全員が当該決定に係る当該報酬委員会の決議に賛成している場合における当該決定に限る。)をしていることその他の政令で定める適正な手続を経ていること。

(3) その内容が、(2)の政令で定める適正な手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること。

ロ その他政令で定める要件

2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 内国法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

4 前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。

5 第一項に規定する業績連動給与とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の同項の内国法人又は当該内国法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額又は数の金銭又は株式若しくは新株予約権による給与及び第五十四条第一項に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は第五十四条の二第一項に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与で無償で取得され、又は消滅する株式又は新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するものをいう。

6 第一項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。

7 第一項第二号ロ及びハに規定する関係法人とは、同項の内国法人との間に支配関係がある法人として政令で定める法人をいう。

8 第四項から前項までに定めるもののほか、第一項から第三項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

第三十五条 削除

(過大な使用人給与の損金不算入)

第三十六条 内国法人がその役員と政令で定める特殊の関係のある使用人に対して支給する給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 

法人税法35条は、批判があり、産駒所されましたが、法人税法施行令71条は実質的に残っています。

 

法人税法施行令

(使用人兼務役員とされない役員)

第七十一条 法第三十四条第六項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。

一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人

二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員

三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員

四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事

五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者

イ 当該会社の株主グループにつきその所有割合が最も大きいものから順次その順位を付し、その第一順位の株主グループ(同順位の株主グループが二以上ある場合には、その全ての株主グループ。イにおいて同じ。)の所有割合を算定し、又はこれに順次第二順位及び第三順位の株主グループの所有割合を加算した場合において、当該役員が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること。

(1) 第一順位の株主グループの所有割合が百分の五十を超える場合における当該株主グループ

(2) 第一順位及び第二順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ

(3) 第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ

ロ 当該役員の属する株主グループの当該会社に係る所有割合が百分の十を超えていること。

ハ 当該役員(その配偶者及びこれらの者の所有割合が百分の五十を超える場合における他の会社を含む。)の当該会社に係る所有割合が百分の五を超えていること。

2 前項第五号に規定する株主グループとは、その会社の一の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)並びに当該株主等と法第二条第十号(定義)に規定する特殊の関係のある個人及び法人をいう。

3 第一項第五号に規定する所有割合とは、その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合にはその株主グループ(前項に規定する株主グループをいう。以下この項において同じ。)の有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに占める割合をいい、その会社が第四条第三項第二号イからニまで(同族関係者の範囲)に掲げる議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合にはその株主グループの有する当該議決権の数がその会社の当該議決権の総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)のうちに占める割合をいい、その会社が社員又は業務を執行する社員の数による判定により同族会社に該当する場合にはその株主グループに属する社員又は業務を執行する社員の数がその会社の社員又は業務を執行する社員の総数のうちに占める割合をいう。

4 第四条第六項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。

 

第6章 関連意匠制度の拡充(令和2年4月1日施行)

「関連意匠」とは、 一つのデザインコンセプトに基づいて、最初に登録された意匠(本意匠)から、様々なバリエーションのデザインを生み出したときに発生する意匠 をいいます。

関連意匠制度について、次の2点が見直されました。

①関連意匠の登録出願期間が延長される

②関連意匠のみ類似する意匠も登録できる

 

これまでは、関連意匠の出願可能期間が本意匠の意匠公報発行前まで(本意匠の出願から8か月程度)でしたが、改正により、基礎意匠の出願から10年を経過する日前までとなりました。

また、これまでは、関連意匠にのみ類似する意匠は登録できませんでしたが、改正により、「関連意匠を本意匠とする関連意匠」の出願・登録を認めることとなりました。

 

関連意匠の出願可能時期が、「本意匠の出願日から10年経過する日前まで」に。

(関連意匠の意匠権の満了日は、「本意匠の出願日から25年経過した日」)

※意匠が実際に登録されるためには、意匠法に規定された登録要件(新規性、創作非容易性)を満たす必要があります。

 

関連意匠の登録出願期間が延長される

 

関連意匠の出願可能期間について、改正前の意匠法では、 「本意匠の意匠公報発行日まで(約8カ月)」でした。 そのため、企業は、本意匠の出願と同時期に、関連意匠の出願を行っていました。

 

しかし、昨今、企業のデザイン戦略として、本意匠を出願してから、市場の動向などを様子見しながら、 関連するデザインを制作する例が増えています。 そのため、従来の出願可能期間内に、関連意匠の出願を行うことは難しい状況にありました。

 

そこで、改正では関連意匠の出願可能期間が延長され、 「本意匠の出願から10年が経過する日まで」 となりました。

 

関連意匠の登録出願期間が延長される

関連意匠のみ類似する意匠も登録できる

 

旧意匠法では、関連意匠にのみ類似する意匠は登録できませんでした。 最初に登録した意匠(本意匠)に類似するものでなければ、登録することができなかったのです。 しかしながら、昨今、企業のデザイン戦略として、一貫したデザインコンセプトによって、 ブランド価値を高める動きが増えてきました。 そのため、本意匠には類似しないものの関連意匠に類似する意匠が多く登場することになります。

 

ところが、意匠法は、新規性と創作非容易性がなければ、意匠として登録することができません(意匠法3条1号・2号)。 この場合、 関連意匠に類似する意匠は、新規性・創作非容易性を欠くものとして、意匠登録することができなかった のです。

 

そこで、改正意匠法では、 これを廃止し、関連意匠に類似する意匠についても登録できることになりました。

 

宅地建物取引業法の一部を改正する法律(昭和32年法律第131号)附則第7項および第8項(営業保証金の供託義務)と憲法第22条、第13条

 宅地建物取引業法の一部を改正する法律(昭和32年法律第131号)附則第7項および第8項が既存の宅地建物取引業者に対し新らたに営業保証金の供託義務を課していることは、憲法第22条、第13条に違反しない。

 

最大判昭和37年10月24日民集16巻10号2143頁 判タ140号68

【判示事項】 宅地建物取引業法の一部を改正する法律(昭和32年法律第131号)附則第7項および第8項と憲法第22条、第13条

 宅地建物取引業法の一部を改正する法律(昭和32年法律第131号)附則第7項および第8項が既存の宅地建物取引業者に対し新らたに営業保証金の供託義務を課していることは、憲法第22条、第13条に違反しない。

【参照条文】 宅地建物取引業法の一部を改正する法律(昭和32年法律第131号)附則6、附則7、附則8

       憲法22 、13

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

 

宅地建物取引業法

(営業保証金の供託等)

第二十五条 宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。

2 前項の営業保証金の額は、主たる事務所及びその他の事務所ごとに、宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して、政令で定める額とする。

3 第一項の営業保証金は、国土交通省令の定めるところにより、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。)をもつて、これに充てることができる。

4 宅地建物取引業者は、営業保証金を供託したときは、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

5 宅地建物取引業者は、前項の規定による届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。

6 国土交通大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の免許をした日から三月以内に宅地建物取引業者が第四項の規定による届出をしないときは、その届出をすべき旨の催告をしなければならない。

7 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の催告が到達した日から一月以内に宅地建物取引業者が第四項の規定による届出をしないときは、その免許を取り消すことができる。

8 第二項の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、営業保証金の追加の供託又はその取戻しに関して、所要の経過措置(経過措置に関し監督上必要な措置を含む。)を定めることができる。