神社改築のための本件寄付金の主体は、控訴人会社ではなく、個人である納税者甲(控訴人会社の役員)と | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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神社改築のための本件寄付金の主体は、控訴人会社ではなく、個人である納税者甲(控訴人会社の役員)と認めるのが相当であるとされた事例

 

 

法人税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      高松高等裁判所判決/平成5年(行コ)第9号

【判決日付】      平成8年2月26日

【判示事項】      (1) 租税賦課決定処分の取消訴訟において、審理の対象となるのは、当該処分によって確定された税額の適否であって処分理由の適否ではないとされた事例(原審判決引用)

             (2) 減額更正処分の取消しを求める訴えは、同処分が税額の上で納税者に不利益を与えるものではないから、訴えの利益がないとして却下された事例(原審判決引用)

             (3) 青色更正の付記理由と異なる主張の可否(原審判決引用)

             (4) 神社改築のための本件寄付金の主体は、控訴人会社ではなく、個人である納税者甲(控訴人会社の役員)と認めるのが相当であるとされた事例(原審判決引用)

             (5) 控訴人会社は、納税者甲(控訴人会社の役員)の負担すべき個人的費用を控訴人会社において負担し、甲に代わって支出したことになり、その後甲から右支出について何らの弁済も受けていないのであるから、右支出は甲に対する賞与の支給というべきであるとされた事例(原審判決引用)

             (6) 減額再更正処分の取消しを求める訴えの適否

【判決要旨】      (1)・(2) 省略

             (3) 課税庁は、昭和六〇年九月期分及び昭和六二年九月期分に係る各更正通知書の更正の理由に、「法人税法第一三二条第一項の規定を適用し、寄付金を甲に対する役員賞与として損金算入を否認した」旨記載していることが認められる。しかし、この更正理由は、本件訴訟において課税庁が主張するような理由を掲げて、本件寄付金は甲個人が負担すべきであったものを控訴人会社が負担したものである上、このような行為が可能であったのは控訴人会社が同族会社であるという特殊性に由来するものであるとして、前記結論を導いていることが明らかである。このような場合、更正理由書の付記理由と本件訴訟において課税庁が主張する理由との間には、基本的な課税要件事実の同一性があり、控訴人会社らの手続的権利に格別の支障はないものというべきであるから、右のような処分理由の差替えも許されるものといわなければならない。

             (4)・(5) 省略

             (6) 減額再更正処分は、それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり、それ自体は、再更正処分の理由いかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分であるから、納税者としては、右再更正処分の取消しを求める訴えの利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消しを求めれば足りるので、右訴えは訴えの利益がなく不適法であるから却下を免れない。

【掲載誌】        税務訴訟資料215号672頁

 

法人税法

(同族会社等の行為又は計算の否認)

第百三十二条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

一 内国法人である同族会社

二 イからハまでのいずれにも該当する内国法人

イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。

ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。

ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。

2 前項の場合において、内国法人が同項各号に掲げる法人に該当するかどうかの判定は、同項に規定する行為又は計算の事実のあつた時の現況によるものとする。

3 第一項の規定は、同項に規定する更正又は決定をする場合において、同項各号に掲げる法人の行為又は計算につき、所得税法第百五十七条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)若しくは相続税法第六十四条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)又は地価税法(平成三年法律第六十九号)第三十二条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)の規定の適用があつたときについて準用する。

 

 

              法人税更正処分等取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成8年(行ツ)第143号

【判決日付】      平成12年1月27日

【判示事項】      (1) 減額更正処分の取消を求める訴えは、同処分が税額の上で納税者に不利益を与えるものではないから、訴えの利益がないとして不適法とされた事例

             (2) 納税者が行った寄付は、納税者が役員を務める上告人会社振出しの小切手をもって納税者が行ったもので、当該小切手の振出により上告人会社が納税者に対し役員賞与をしたことになり、上告人会社の所得の計算上損金に計上することはできないとされた事例

【判決要旨】      (1)・(2) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料246号303頁

 

 右当事者間の高松高等裁判所平成五年(行コ)第九号法人税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成八年二月二六日に言い渡した判決に対し、上告人らから上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人田中浩三、同田中達也の上告理由書記載の上告理由第五点について

 記録に照らせば、平成元年四月二〇日付けの上告人大塚正士に対する昭和六二年分所得税の更正処分、平成三年一月一四日付けの同上告人に対する昭和六二年分所得税の再更正処分及び平成元年四月二〇日付けの上告人大塚静江に対する昭和六二年分所得税の更正処分の取消しを求める各訴えを不適法とした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

 上告代理人田中浩三、同田中達也のその余の上告理由及び上告人株式会社大塚製薬工場、同大塚正士の上告理由について

 原判決挙示の証拠関係に照らし、本件各寄附は上告人株式会社大塚製薬工場振出しの小切手をもって上告人大塚正士が行ったものであり、右小切手の振出しにより上告人株式会社大塚製薬工場が上告人大塚正士に対し役員賞与を支給したこととなるのであって、これを上告人株式会社大塚製薬工場の所得の金額の計算上損金の額に算入することができないとした原審の認定判断は、正当として是認することができる。その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定に沿わない事実を交え、原審と異なる見解に基づいて原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、採用することができない。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷