生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例
生活保護変更決定取消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成22年(行ツ)第392号、平成22年(行ヒ)第416号
【判決日付】 平成24年2月28日
【判示事項】 生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例
【判決要旨】 生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。
(1)ア 上記改定開始の5年前には,老齢加算の対象となる70歳以上の者の需要は収入階層を問わず60ないし69歳の者の需要より少なく,70歳以上の単身者に対する老齢加算を除く生活扶助額は70歳以上の低所得単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていた。
イ 上記改定開始の20年前から2年前までの間における生活扶助に関する基準の改定率は消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており,上記改定開始の21年前から被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の7割前後で推移していた。
ウ 上記改定開始の24年前と同4年前とを比較すると,被保護勤労者世帯の平均において消費支出に占める食料費の割合は低下していた。
(2)ア 上記改定による老齢加算の廃止は,3年間かけて段階的な減額を経て行われた。
イ 上記改定開始の5年前には,老齢加算のある被保護者世帯における貯蓄の純増額は老齢加算の額と近似した水準に達しており,老齢加算のない被保護者世帯における貯蓄の純増額との差額が月額5000円を超えていた。
(3) 上記改定は,専門家によって構成される専門委員会が統計等の客観的な数値等や専門的知見に基づいて示した意見に沿ったものであった。
(生活扶助相当消費支出額:消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護者世帯は免除されているもの及び家事使用人給料等の最低生活費になじまないものを控除した残額)
【参照条文】 生活保護法3
生活保護法による保護の基準(平16厚生労働省告示130号改正前)別表第1第2章2
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集66巻3号1240頁
生活保護法
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
(基準及び程度の原則)
第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。